赤ネクタイの文庫置き場

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平凡な家庭

築7年のマイホーム
妻のみゆき、長女の未希、長男の健太、そして私

一家の大黒柱である私は、朝から晩まで働きづめの毎日
唯一の休日の日曜にでさえ仕事が入り、今帰宅してきた頃だ。

家族はもう寝てしまっている。

至って普通の家庭。普通の家族。幸せな家族。

そんな当たり前の場所で、私は苛立っていた。
このうちの長女である娘の未希が、夜中に帰ってきたからだ。

短い針はすでに3時を指していた。

リビングで車に鞄を置いてきてしまった事に気付き、取りにいったとき
娘にばったり会ったのだ。未希はバツが悪そうな顔をしていた。

再び戻ってきたリビングで娘に問い詰めた。

「なんでこんな時間まで外に出てるんだ。母さん知ってるのか?」
「・・・」

「黙ってちゃ分からないだろう」

娘の未希も、もう17だ。遊びに出たい年頃なのだろう。
だが父親として深夜の帰宅は「良い」とは言えない。理由を聞く。

「なぁ、誰かと出かけてたのか?それとも一人で?」
「・・・・」
「・・・どっちにしろこんな時間に外に出歩いちゃ危ないだろう。それにちゃんと連絡をして・・・」
「っせ・・・・」

「?」
「るっさい!!!!」

きっとうるさいと言いたかったんだろう、未希は私の身体をぐいっと押すと
消え入るような声で何かを呟いて二階へ行ってしまった。


「・・・何なんだあいつ」

反抗期なのはわかっているが、先ほどなにを呟いたのだろう。聞き取れなかった。

「あとでちゃんと母さんと話をしないとな」

私は未希とぶつかったときに落ちてしまったジャケットを拾いあげると
床にメモ用紙が落ちていることに気付く。

しわくちゃになっていたが、四つ折りにされていた形跡がある
知らない電話番号が書かれていた。

未希の友人の電話番号かもしれない。後で渡しておこう。



そうして私はリビングを後にした。