YOMUSIC

読む音楽 ライブ感想・曲感想など。使用している画像は全て自作です。 X:@tbk_pd

おいでよ

 

穏やかなギターの音色が染み入る。

<重い荷物かかえて帰る>

それは日常の一コマでもあるし、もしかしたら精神的な比喩表現かもしれない。

自分は疲れて帰る日に、そっと再生してささやかに自分を労う。

そう、我々は重い荷物を抱えている。みんなだいたい。

 

ドラムがスピード感を与えるが、メインフレーズはリフレインで貫かれる。

<ぼくはゆうれい そばにいたいよ>

大人になったらわかる、大事な事は何度も何度も言うもんだって。

 

「そばにいたいよ」と呟く聴者。

「そばにおいでよ」と招く演者。

音源だと「そばにいたいよ」と遠くでささやくような声。

それに応えるように近くなる「そばにおいでよ」という呼び声。

物語は素直に受け取ろう。

独りさまよう寂しがりやの幽霊に、『おいでよ』と呼びかける優しい歌。

 

ライブでは、<ぼくはゆうれい そばにいたいよ>をベース・ドラムの2人で歌い、波多野さんが<ぼくのゆうれい そばにおいでよ>と重ねる。

演奏と同時進行なので当然ながら、「そばにいたいよ!」と強めの発声になる。

そのため、音源とは違って迫力がある。

メッセージ性がある、わけではないと思う。

ただ、3人が真っ直ぐ客席を向いて一緒に歌い上げる姿に真摯さを感じる。

その真摯さを、迫力と受け止めているのだろうか。

音源とは違う表現に、初めてライブで見た時は驚いた。

グッときた。

 

後半、凪ぐように音が鎮まる。

そこから再び弾けるテンション、ラストスパートの演奏はエネルギーに満ち溢れたエピローグのよう。

"ゆうれい"が誰かの傍に寄り添えた。

その喜びが伝わるようだ。

ギターだけのアウトロは寂しさも感じつつ、温かい音だ。

だからきっと、"ゆうれい"はハッピーエンドを迎えた。

映画のラストシーンで、主人公が白い光に包まれて幸せになるように。

"ゆうれい"は、光に包まれた。

 

--------------------

イラストの話。

 

毛の生えたペットを飼った事がない。

だから猫を飼っている友人の話は、とても愛おしそうで少し、羨ましかった。

「うちの猫は10年以上生きているから、もうすぐシッポが割れて、ネコマタになるんだ。」

「それって、妖怪になるって事?」

「そう。そしたら、ずっと一緒にいられるじゃん。」

この時の会話が、なんだかとても切なく感じた。

冗談なのは分かっているが、 妖怪になったらいいなあ と心のどこかで本気で思ってるに違いない声だった。

その愛を想うと、なんだか自然と涙が出てきてしまったのだ。

会話の途中で突然泣いたら困らせてしまうから、その時感じた切なさは黙って秘めた。

 

"重い荷物を抱えた"主人公を、受験勉強で疲れた高校生とした。

主人公が抱きつく愛猫「が」幽霊と見てもいいし、幽霊になってしまった高校生「に」そばにいたい、と寄り添う猫、と見てもいい。

見る人に意味を委ねる絵が描きたいと思った。

ただ共通するのは、主人公とこの猫はずっと一緒にいるということ。

 

友人の猫も、いつの日か妖怪になったとして。

目に見えない存在になったとして、それでもずっとそばにいて欲しいと心から思う。

 

そういえば、曲の始まりに幽かに、鈴のような音が混じっている。

 

youtu.be

 

<未来を失う未来も 来ることを忘れないでね>

 

大好きな歌詞だ。

人によっては「暗い」と言うだろう。

でも、上っ面だけでポジティブなメッセージを押し付けられるよりよっぽど信頼できる。安心できる。

 

温かみのあるピアノのフレーズではじまる。

じぃん、ともびぃん、ともつかない打鍵音が心地よい。

前奏の終わりに鳴らされるシンバルによって、スパイスのようにピリッとしたアクセントが加わる。

全体的に音が高めというか、『花』というタイトルに相応しく、可愛い感じ。

ピアノが率いたフレーズが木琴(? もしかしたら、ピアノかキーボードのままかもしれないが。)に交代すると、可愛らしさが助長していく。

ここで使う可愛らしさとは、マンションの駐車場で無邪気に遊ぶ子供を眺めるような、そういう時の気持ちだ。

これまでの曲では、あまり聴かなかった音だと思う。

そのせいか、歌声の低さに少しはっとする。

ピアノ(木琴)フレーズは違わぬリズムで繰り返される。

ハッキリと、くっきりと、聴こえるが飽きないのは、ドラムやベースが違う表情で音を差し込んでくるからだ。

 

<青年がつばを吐き 老人は腰を曲げ>

<女は占いに夢中 黄昏は金色に>

<風鈴がひとつ鳴る>

メインフレーズに合わせて言葉(歌詞)が紡がれる、音の気持ち良さについ聞き流してしまうけれど、中身はなかなか難解だ。

曲の終盤の描写は、自分は"文明が栄える前の草原の民の夕暮れ"をイメージする。

(合唱曲『流浪の民』に似ている歌詞があるからか、ジブリ(宮崎駿)が描く架空の文明に生きる遊牧民だとか、そういう人々の暮らしを想像してしまう。何故だろう。)

穏やかな時間のなかで、悠久に思える自然の流れの真ん中に立ち、ぬくもりを僅かに残して花とともに沈んでゆく大陸の夕日。

 

<涙のなかからならみえる>

この歌詞も凄いと思う。

口語で、「〇〇の中、から、なら、見える」という文章はまず生まれない。

何故なら言いにくいから。

音に乗る歌詞"だからこそ"書ける文章だし、そしてドキッとする意味も含んでいる。

何が涙の中から見えるのか?

何故、涙の中から、しか、見えないのか?

 

<未来を失う未来も 来ることを忘れないでね>

そして最後のワンフレーズ。

誰にとっても当たり前で、そして出来れば目を逸らしたい真実。

我々の未来は有限で、その終わりはいつ来るか分からない。

その寂寞から目を逸らさず、涙の中から失う未来を見よう。

全てが明るくて、眩しいだけの未来なんて信じない。

夕暮れの薄闇のなか、夜空の濃紺と輝く茜空を同時に見つめて立っている。

そういう生き方も、いいじゃないか。

 

終わりの言葉に合わせて、何度も繰り返されたフレーズも終わりを迎える。

花が散るように。

とても綺麗だ。

 

 

youtu.be

 

 

 

 

さまよう

らん、ら、らん、ら、らら・・・とハミングで始まる一曲。

実際には「ふらっ、ふらっ、ふらっ、ふら・・・」と彷徨う擬音であった事を知ったのは、ライブで初めて聴いてから。

気づいた時に、(おしゃれだな~~~~)と嬉しくなったのを覚えている。

 

少年と少女が街を『さまよう』ストーリーだと、普段に比べてとても分かりやすい世界観。

ただし、"どこ"も"なぜ"も説明は無い。

聴者の想像に委ねられるから、そういうのが苦手な人にはとっつきにくいかもしれない。

ぼかされた風景は多くの人に伝わりにくいというデメリットがあるが、普遍的で長く聴き続けられるというメリットもある。と、自分は思う。

(多くの人に伝えるには、ハッキリとしたメッセージ――時には、大多数を肯定しそれ以外を否定するという排他的なやり方――が有効だ。だけど、People In The Boxを好きな人は、そのやり方に当てはまらないだろう?)

 

音の構成も分かりやすい方ではないだろうか。

Aメロ、Bメロ、サビ としっかりJ-POP。

(サビが4つ打ちか確かめるためにCut Fiveを見直したのですが、謎の打楽器とガーガーチキンで全く参考に出来ませんでした。いらない情報が多すぎて笑った。)

 

<きみは暗闇のなかにいて そろそろ目がなれてきたころさ>

暗闇から抜け出す事を歌う曲が多いが、暗闇と共存する歌詞にするのが、彼ら(波多野氏)らしい。

自分は、こういったメッセージの方が信じられる。

 

<外れない仮面を素顔というなら>

<コンクリートの雨粒の模様は 深夜の句読点>

ここら辺も詩的で素敵。

何食ったらこんな良い表現生み出せるんだろう。うどん?

 

<きみにわからないはずはない 利用された誰かの孤独を>

People In The Boxの中でも上位に好きな歌詞のひとつ。

風景がぼかされているが故に普遍的と冒頭で記したのは、この歌詞を味わう為のものでもある。

"利用された誰かの孤独"というのもあいまいで、どのように利用されたのかが聴者の想像に委ねられてしまう。

だから自分は、その"誰か"を少女と見立てた。

人に裏切られて街をさまよう少女の孤独を、"わからないはずがない"少年が追いかける。

・・・これは分かりやすくて、素敵なストーリーじゃないかな。

(タイミングの悪い事に2週間ほど前から闇金ウシジマくんを読み始めたので、"利用された誰かの孤独"というワードは必要以上に重く感じるようになってしまった。たぶんそこまで重くはない。・・・楽園くん・・・)

 

--------------------

Cut Fveの謎の打楽器、調べた所「ジャンベ」という物でした。

自分の知っているこういう形状の打楽器はコンガとボンゴしか無かったので、ちゃんと調べました。

コンガ→下のほうくにゃってなってるから違う→ボンゴ→「ぼんご おにぎり」が先に検索ヒットする。そっちじゃない。→画像検索→コンガは全長が短いので違う→「ボンゴ みたいな 楽器」で調べる→「ジャンベ」というやつが下のほうくにゃってなってて合ってそう→それでも確かなソースが欲しいので「ジャンベ People In The Box」で調べる→合ってた

People In The Box “空から降ってくる vol.9 〜劇場編〜” | JUNGLE☆LIFE

余談ですが、劇場辺と銘打ってるからか、メンバーが白シャツでフォーマルチックだったんですな。

・・・その格好でガーガーチキン鳴らすのはギャップがありすぎる。

が、そのシュールさがPeople In The Boxの良さだと思う。

つまり何が言いたいかって、そのライブ見たかった!!!

パリッとした白シャツでDPPLGNGRとか水晶体とか演られたら超カッコよくない?

お待ちしております。

 

youtu.be

手紙

 

カントリーダンスのように跳ねる音。

ギター?のキュッキュッって音がなんだか心地よいです。

 

『Wall,Window』は自然の描写が多くて好きだ。

<葉っぱが光をつらぬくよ>

<地中深く伸びる根の音>

もちろんこれはどの季節でも起こりうる事だが、音の瑞々しさが初夏を連想させる。

出された手紙の書き出しは<聴こえるかい?>という問いかけ。

瑞々しく動き出した植物たちを語るための、『手紙』なのだろうか。

しかし<虫の背中焦がす陽の音>という表現、あまりに目線が良すぎる。

想像してみたくなるものね。

「ちりちり」とか「ちち ぢち」とかかなぁ。

 

口ずさみたくなる歌、というか口ずさみ"やすい"曲だと思う。

<竦むきみを 駅のホーム 風が連れ去る>

<晴れた日に>

うーん、爽やか。

丁度いま位の穏やかな気候の中、駅のホームが思い浮かぶ。

(すくむ、を「竦む」と書くんですね。)

同じメロディで歌われる

<膝をついた 横断歩道 風が連れ去る>

<晴れた日に>

も良い。

映画のワンシーンみたいで素敵だ。

 

要所要所で奏でられる、「タッ、タッ、ターン」という3拍子がリズミカルに曲を引っ張っていく。

楽しいね。

 

<手紙は降り積もるよ きみは気づいていないけど>

<聴こえるかい?人波で倒れ込むきみを>

<聴こえるかい?あれは演技だと誰かがいった>

優しいだけではない苦みのある歌詞も好きだ。

(他の曲に比べると、かなりマイルドかもしれないが。)

「人込み」ではなく「人波」と言うワードセンスも好き。

人波で倒れ込んだ時、「あれは演技だ」と言うなんて、ひどいと思う。

それと同時に、「そういうもんかもな」とも納得する。

そして、演技だなんて言わない人になりたい、とも思う。

 

<それはそれは昔のお話>

<きみはいつしか変わってしまった>

<ひとは居場所を離れていく>

<音楽が手を離れていくように>

と、

<それはそれは同じお話>

<きみはちっとも変われなかった>

<ひとが居場所を守っている>

<音楽が手のなかで光るように>

この対比もたまらんですばい。

前半がネガティブな事を言っているわけではないんだけど、変わって「しまった」とか、離れていくという言葉には、寂しさが薄いベールのように纏わりついている。

後半も、ポジティブな事を言っているわけではない。

しかし、「ひとが居場所を守る」事を、「音楽が手のなかで光る」という目に見えないあたたかさ、よろこびで表現している所がグッと来る。

変わる事も、居場所を離れていく事も、個人的には当たり前の事だと思っている。

でも、この人にとっては、「音楽が手を離れていくように」寂しい事なのだろう。

 

そして、あぁ・・・「音楽が手のなかで光る」とはなんて美しい表現でしょうか・・・。

 

--------------------

 

普段は「楽しい~」と思いながら聴いているせいか、文章に書き起こすと意外と歌詞について語りたい事が多くて驚いた。

改めて見ると、『手紙』の歌詞めちゃくちゃ好きだ。

久しぶりに聴いたせいか音源の声もとても優しく聴こえて、癒された。

『Wall,Window』はそういう曲が多い印象。

ヒーリングミュージックというやつですね。

 

爽やかな初夏の風を浴びながら、また聴こう。

 

youtu.be

<ピエロが千人 七色 とび散る 影>

『Wall,window』のリリース直後、通しで聴いて一番「歌詞ヤベェな」と思った。

リズムよく、しかし不穏さもあるベースが印象的。

歌詞も音も(悪い意味では無いのだが)"得体の知れない曲"というイメージがあった。

 

改めて聴くと、昔とだいぶ印象が変わっていた。

サビの疾走感とメロディの爽やかさの方が印象に残り、純粋に「良い曲だな」と思った。

昔と印象が変わっている事が面白かった。

<爛々 爛々 光る頭のなか>

<映画みたいでそうではない>

<夏の青い日、は ポケットのなかに隠していけよ>

歌詞も、サビの方が今は好きだ。

忘れていたが、「らんらん、らん」とハミングだと思っていた箇所は「爛々」と光る様子の言葉が当てられていて、頭の中でどんな光が飛び回っているのかイメージしやすくて、良い。

([爛々]光かがやくさま。鋭く光るさま。)

 

1曲の中で展開が変わるのは、People In The Boxの魅力のひとつだと思う。

 

<挨拶を交わしてあたりを見渡せば>

<ひと足遅かった すでに誰もが別人>

歌詞も相まって、不穏な前半。

 

<鶯も百舌も雲雀もくちばしを広げた>

<ピアノ線に挟まれ餌付けを待っている>

<味わいたいものを味わうがいいよ>

一旦スピードを上げて、ドライブ感が加速する。

 

<ピエロは肉を食べる 知性は口をつぐむ>

シュールで皮肉気なのに、ワンテンポ穏やかでリズムも緩和する中盤。

歌詞を見た時の衝撃。

 

そして、爽やか溢れ出すサビに突入。

 

あぁ、ライブで聴いてみたいなぁ。

 

去年の夏は、通勤中Eveの『僕らまだアンダーグラウンド』をずっと聴いていたけれど、今年の夏は『影』を聴くのが楽しみだ。

あぁ、早く夏にならないかなぁ。

 

 

youtu.be

 

僕らまだアンダーグラウンド - Eve MV - YouTube

 

翻訳機

 

『Wall,Window』2014年発売の12枚目の音源作品。

・・・2014年!?

時代に流されない彼らの音楽だからこそ、10年経っても文章が書けるのだと思います。

 

『Wether Report』から11ヶ月経っちゃったけど、全曲感想をやり遂げたい気持ちは途切れていません。

低空飛行だけど飛ぶ事はやめずに、これからも海抜0mぐらいをふらふらと飛んでゆきます。

ひとまずは一時浮上。

音楽を燃料に、11週ぐらいは高く飛べそう。

 

--------------------

 

ライブでよくやる曲、という印象。

一時期、毎回ライブで演奏されるので「弾きやすいのかな」と勘ぐっていた。

(実際の所は分かりませんが・・・)

 

お得意(?)の、曲展開が変わってゆくタイプの曲ではなく、最初から最後まで爽やかで優しい音に一瞬、「違うアーティスト聴いてたかな?」と錯覚する。

だけども歌詞は、People(波多野氏)の世界観の総括というか、根底に流れているものが他曲に比べてストレートに表れていると思う。

<悲しみには終わりが無いね>

<終わりが無いのは悲しいからね>

<悲しいね ときどき 楽しいね>

人生の大半は悲しいことで出来ているが、ときどき楽しいことに出会うよ。

"達観"という言葉をよく知らない頃、この考えは自分に合っていた。

ネガティブ思考はクセみたいなもんで止められない。

後ろ歩きで前に進んだって良いと気づかせてくれた曲や言葉は沢山あるけれど、その中のかけがえのない一つだ。

たびたび、ふっと湧き上がるようにこの歌詞を思い出すから。

きっと『翻訳機』は、自分の根幹に近い所に置かれた曲なのだろう。

 

前述の通り、終始穏やかで(他の曲を知っていると)ベースとドラムが控え目に聴こえる。

その分、歌声がよく聴こえる。

全曲そういうわけではないが、『Wall,Window』の傾向というか、「今回はこういうアルバムですよー」という挨拶には申し分ない曲だと思う。

 

<きみはどこへ行ったの 言葉だけ残して>

<きみはどこへ行ったの 風だけおこして>

 

<あのひとごみのなかから きみはうまれた街を失う>

<歌を誰が歌うのさ>

<あのひとごみのなかから きみのうまれた街を繋ぐ>

<歌を僕が歌うのさ>

 

ていうか歌詞いいな。(今更?)

失うと繋ぐで掛けてんじゃーん

誰が歌うのさ?って問いかけに僕が歌うのさって答えんのエモじゃーん

 

タイアップした『聖者たち』と繋ぐかたちで、1つのMVになっている『翻訳機』ですが、当時は「ネコ被ってんな・・・」と穿(うが)った見方をしておりました。

最近People知った人はどう思うんだろう?笑 別に普通なのかな。

MVを貼ろうかと思ったのですが、検索すればすぐ出て来るし、ライブを見て「Peopleはライブが良いんだよ」再認識したので公式(?)ライブ映像を貼る事にしました。

・・・う~ん、やっぱり良い!

 

youtu.be

この時のアー写、かなり良いですよね。

また面白写真シリーズで撮ってくれんか。

 

--------------------

 

9年前、1年で2社辞めた時は辛かった。

「今が人生のどん底だ」と覚悟を決めて、『翻訳機』をひたすら聴いて、「どこにも行けない自分の代わりにどうか、世界中を飛び回って。」と妬みも嫉(そね)みも無く願っていた。

音楽といえば、他にはモーモールルギャバンの『悲しみは地下鉄で』しか聴けなくなっていた。

(誇張なくそれ以外聴けなかった時期がある。なぜか『悲しみは地下鉄で』だけ聴けていた。)

 

人生のタイミングによって、聴く音楽の印象が変わる事は多々ある。

それと同時に、人生を通してその1曲を聴けるという事は、その1曲に時を越える力が備わっているのだと思う。

そして、そんな凄いものを作れる人に憧れるし、誰かと分かち合いたいと思う。

 

ああ、1曲でもいからPeople In The Boxの曲が人類滅亡ギリギリまで残んねぇかな~~~~~!!

 

 

そっとこちらも。

悲しみは地下鉄で モーモールルギャバン - YouTube

実質IMAXじゃん 恵比寿GARDEN THEATER [3.31]

2024.03.30-31

恵比寿ガーデンシアター

[30]オールスタンディング

[31]全席指定

両日行かして頂きました。

本記事は31日の感想です。

 

※セトリ

1:日曜日/浴室

2:スマート製品

3:ベルリン

4:螺旋をほどく話

MC

5:潜水

6:親愛なるニュートン街の

7:数秒前の果物

8:鍵盤のない、

MC

9:ニコラとテスラ

10:どこでもないところ

11:水晶体に漂う世界

12:動物になりたい

13:いきている

14:真夜中

MC(グッズ紹介)

15:逆光

16:DPPLGNGR

17:旧市街

18:バースデイ

 

~私事の前置き~

整列番号は基本、見ないので会場に着いてから「そういや全席指定だったわ」と思い出し、スマホを見た。

「A・・・Aか。 A!?!?

ミュージカルだとS席とかあるじゃないですか。

A席ってワンランク落ちるんすよ。

きっとそういう事だろうと思って席を探した。

最前だった。

前日の開演が30分遅れたので、備えて本を持って来ていたのですがそれどころじゃない。

(昨日はオッペンハイマーIMAX最前で見て、今日はピープルIMAX最前か・・・)

(?)

オッペンハイマーは膝下から鳥肌立ちましたが、この日はつま先から震えていました。

(仕事頑張って良かったな・・・)

(神様がくれたご褒美なんだな・・・)

ちなみに、31日は定刻通り開演しました。

 

1:日曜日/浴室

昨日は『月曜日』、今日は『日曜日』。

そういう事するバンドだよ。

視覚情報の忙しさも相まって、ハッキリ「これ『日曜日』だ」と認識できたのは曲も半分ほど過ぎてからだった。

ビックリした。

そして薄く涙が溜まっていった。

『日曜日』がな、一番好きなんじゃ・・・。

一番好きな曲を一番前の席で聴けて(見られて)、もう命日なのかなって覚悟した。

 

開演まで恵比寿の街をふらふらしたり、カラオケに行くなどしてました。

カラオケで「折角だからピープル歌うか・・・」と『日曜日』を入れかけたけど、「いや、ピープルは聴くのが至高であって歌いたい音楽ではない!」と思いとどまった。

正解だった!!

ちなみに「歌いたい音楽」はサカナクションです。

 

2:スマート製品

いや~~ヤバイよこの席・・・昨日のスタンディングで見られなかった手元がずっと見られるよ・・・

目3つ欲しい。まじで。

 

3:ベルリン

(昨日に続き)おかわりありがとうございます。

2023年のヒューリックホールが非常に良かったので着席ライブは楽しみだったが、うかつに動けない事に気づく。

イスがね、隣の人と繋がっているので・・・。

これはこれで割としんどかったですね。

間奏のベースんとこ、じっと聴いてなきゃいけないのがね・・・。

ハンニバル・レクターばりに拘束して欲しかった。

 

<逆さに傘を差す>のコーラスが綺麗だった・・・。

2人であの重なり出るの凄いよなぁ。

 

どの曲でも言えるんだけど、手元と喉から出る歌声のリズムが別すぎて、本当によく間違えないなぁと毎回新鮮に驚く。

<レッド、レッド、レッド>のギター、どないなってます?

あれ弾きながらリズム崩さずメロディ歌うの、見れば見るほど訳分からなくなる。

これが変拍子バンドか~ (?)

 

4:螺旋をほどく話

着座は着座で体力を温存できるのが良い所なんですけどね。

動けんかったら、もう体力を視力に全振りするしかないんよ。

 

『螺旋を~』だったか定かじゃないんですが(ここまでの曲である事は確か)、ドラムスティックが折れたかすっぽ抜けたかで吹っ飛んでったんですよね。

スティックが飛んだのは分かったんですが、間髪入れずに予備?のスティックを抜いて演奏し続け、中断なくフッツーーに曲が続いていたのが「プロってすげぇ~!」ってなりました。

見えたか見えてないか分からないけど、波&健も全く気にしていなかったのがバンド力(ぢから)を感じましたね・・・。

 

=MC=

波「何でもないツアーをやりたかった。」

メッセージは一緒だけど、名曲のくだりは1日目だけでした~

 

5:潜水

どの曲もそうなんだけど、手元を見られるのがありがたいね。

ライブが好きなのは空間やお客さんを見て楽しむ(楽しんでる人を見るのが好き)のもあるけれど、やっぱり"演奏風景を見たい"が半分以上占める。

自分だけかもしれないけど、聴覚・感覚だけじゃなくて視覚もかなり使っています。

バシャーン、バシャーンと飛び込む音のようにシンバルが叩かれる。

ベースとギターが息ピッタリすぎて、ひとつの楽器かのように錯覚する。

高音コーラスも綺麗でいいよね。

 

6:親愛なるニュートン街の

また聴けて嬉しい。

<ハイホー!>からのクラップは、波多野さんが煽ってくれた事で生じたらしい!

ギターから手を離して踊りながらクラップしているのが、楽しそうだった。

しかし今日のお客さんはおとなしいというかお上品なので、昨日よりクラップの時間は短かった印象。

もっと叩いて良かったかもしれない・・・けど空気読んじゃった・・・

 

<夏を貫く長い一日が今日もやってくる  おは よう>

この「おはよう」の言い方がとても優しくて好きでした。

 

7:数秒前の果物

また聴けて嬉しい!

やっぱりマイブーム中の曲をライブで聴けるとテンション上がる。

<Cut The Fruit>のコーラスがみんな楽しそうで良かった。

カラフル照明は、後ろの席の方が綺麗に見えたかも。

前の方だと薄い感じ。

間奏の「ティッ↑ティッ↓ティッ↑ ティ↑リッ↓ ドゥルル↓ルルルル↓」※ギター が見ててもど~弾いてんだか分からん。

ギター弾けないので分からないけど、難しいんだろうなぁ。

 

8:鍵盤のない、

ライブでよくやる曲とはいえ、演奏風景を間近で見られるのは今回だけかもしれない。

目を皿のようにして見ました。

メインフレーズ?のギター、音がぽろぽろ鳴ってて可愛いですよね。

とりあえずめっちゃ細かく弾く事だけ、分かりました。

これまでの曲と同じギターで弾いてるとは思えない。音が違う。スゴイ。

 

=MC=

ドラムスティックを持ったまま静止するダイゴマン。

健「・・・」

ダ「・・・。(小声)だよね?」

健「(ウンウン)」

MCなの忘れて次曲やろうとしてたみたい。

 

ダ「駄菓子屋って最近行った?行ったか聞いてるんだよ?」

健「近所の?」

ダ「ウン。家の近くにあったの。・・・みんな、子供の頃駄菓子屋行ってた世代でしょ?僕が通ってた〇〇小学校の裏に文房具屋があってね、そこで駄菓子売ってたの。10円ガムってあるじゃん。あれ、最高12回連続でアタリ出た事ある。」

健「それは凄いね!」

ダ「学校帰りに食べちゃダメよ、って言われてたんだけどさ、歩きながら食べるわけ。そしたら当たるじゃん。で、戻るじゃん。また食べるじゃん。当たるじゃん。それを12回繰り返したわけ。」

そんな人初めて聞いたわ。普通に凄い。持ってんな~

ダ「今さ、うまい棒も10円じゃ買えないだろうね。」

健「10円じゃないの!?」

ダ「わかんない。誰か調べて?ケータイ今無いから。」

健「遠足のおやつも、今300円じゃ買えないんだろうね。」

ダ「500円ぐらい持ってかないと。でもね、確実に昔よりおいしくなってるよ。カットよっちゃん知ってる?今めちゃくちゃウマいから。」

そうなの?笑

帰りにコンビニ寄ったら、恵比寿のうまい棒は12円でした!

 

9:ニコラとテスラ

Citizen Soulから2曲目。

まだオッペンハイマーに脳を灼かれているのでこれは刺さる。

<風に揺れ膨らむ 風船が割れそうだ>

<新聞の一面飾る 造花をかこんで跳ねる動物たち>

<無限に連なって和解する世界>

知的なワードと不穏なサウンドが溶け合う、胸のざわめきを楽しむ。

 

ここまで書いて難だが、映画後のモチベーションでは『ニムロッド』が一番刺さったかもしれない。

歌詞を見返したらやはり良い感じだった。

 

10:どこでもないところ

昨日は場所的に見られなかったが、「ここの音ギターじゃなくてベースなんだ」と発見する所が多くて面白かったです。

何て言うのがいいのか分からないんだけど、歌うようなベースだと感じた。

 

11:水晶体に漂う世界

3人でコーラスする曲はなんぼあってもええですからね。

いや、まじ、演奏もさながら3人で歌われると目6つ無いと追いつかない。

しかしコーラスするためにマイクの方を向いて、手元を見ずにドラム叩くの凄すぎんか・・・?

当然の事なのだが、2人のコーラスと演奏に負けかけている波多野さんを心の中で応援していました。

ドラムとベースの音が凄い迫って来るから<ステイ、気づかないふりをしていろ>がかき消されかけてました笑

2対1だからね・・・!しかもゴリゴリに演奏してくるからね・・・!

 

12:動物になりたい

演奏前にベースの音(弦?)チェックを丁寧にしていたのが印象的。

なんとなく、ネックの持ち方も優しいなぁと見ていたら、弾かれる音もとても優しいものでした。

この曲のベースは、心臓の鼓動のように聴こえる。

ふかふかした大きな動物のもの。

 

13:いきている

優しい曲が続く。

ギターもベースも優しい音がした。

 

14:真夜中

セルフハンニバルで耐えた曲2つめ。

ギターだけが鳴らされる後奏、すごく丁寧な力が込められて弦を弾いているのが見えて、非常に良かった。

 

=MC=

ダ「コォーーンバーーンワァー!!!(高音)」

波&健「  」

『真夜中』の後のしっとりした空気を一瞬で変える方法、ダイゴマンの高音ボイスチェンジャー

リアルで肩がビクッとなる人間を一度に2人も見たのは人生初だよ。

波多野さん両耳押さえてましたからね。

二度とぶりっこしないで。嘘。もっとして。

ダ「オレニハネ、ヒクイコエガキコエテルカラタカイコエワッカンナイノ。」

波「ちょっと、ほんとに何言ってるかわかんない。」

ダ「(普通のマイク)ああ、落ち着く。あのマイク(高い声の方)、俺がただ使いたかっただけっていうね。」

波「僕らもこっちの方が・・・。コミュニケーションが取れてませんでしたからね。

 

[ノアの箱舟Tシャツ]

ダ「ノアの箱舟って知ってる?世界中の動物を、オスとメス一匹ずつ入れたんだよ。・・・人間は?ノアさん?ノアさん一人じゃダメだよね?誰か知ってる人いる?」

(勇気ある観客)「ノアと、ノアの息子と、その妻たちー!」

ダ「その妻たち!?ノア独り占め!?」

知らなかった!教えてくれた人ありがとう。

 

[Tシャツ]

ダ「みんな買った?」

(買えなかったお兄さん)「買えなかったぁーー!!」

ダ「まじ?あげようか?」

客席「!?」

ダ「3枚用意しておくから。お金も用意しといて~」

上げて落とすの笑ってしまった。

お兄さんに愛の手を。

 

[アクリルマグネット]

ダ「一部の人のためにまさおを描いてる。」

健「色がほんとにいいよね。まさお。おしゃれ。」

まさおめっちゃ褒めてくれる。

 

[角砂糖]

ダ「60%OFFになってます!」

昨日の効果か、開演前物販で角砂糖売り切れてましたよ!

フライトタグもな!(号泣)

 

[DVD]

ダ「Cut Oneから持ってる人~?Cut Oneってもう売ってないんだよね。あれに、色んなライブのオフショットがあるんだけど、うちのハードディスクに大量のオフショットが入ってたのね。使えないやつばっかなんだけど、めちゃくちゃ面白かった。」

なにそれ見た~い!

ダ「急に踊り出すのとか。(踊るような)そういう空気で踊るんじゃないんだよ。歩いてる途中で、ホントに急に踊り出すの。俺が、タンバリンを急に鳴らして。」

波「ああ・・・なんか覚えてる。リズム隊が、急激に踊り出した時。」

3人しかいないバンドで急に踊り出すひと2人いるの面白すぎる。

波「本当は好きな時に踊ればいいのに、家で一人でいても格好つけちゃうんだよね。誰も見てないのに、犬をなでて・・・」

ダ「うさぎでしょ?」

波「・・・。元ネタがあるんですよ。よくない元ネタが・・・後で話します。」

楽屋で(笑)

元ネタがあるんですね。

自分も同じ疑問が浮かんだので、「うさぎ」って突っ込んでくれて良かったです。

 

[残りわずか]

ダ「ピープルインザボクス、残り時間わずかとなりましたーーー!」

客席「えーーーーー!?」

ダ「残り2曲やってくんでよろしく!」

客席「えーーーーーーーーーー!?」

ダ「じゃ3曲!!」

わいは""2周目""なので知っている。

ここは「えーー!?」だ!!

客席「え(パチパチパチパチ)ー・・・」

拍手に負けちゃった。

他にもいたんですよ。一緒に「えー!?」って言った人は。

でも負けちゃった・・・ごめん弱腰な客で・・・

ちゃんと「4曲!」って宣言してくれました(笑)

 

15:逆光

これもライブで聴くのめっちゃ好きです。

『天使の胃袋』と『逆光』甲乙つけたいが・・・『逆光』の方がマイブームだったので嬉しい!

<20世紀 きみの愛した>

<20世紀 葬られた>

コーラスの高音と低音を使い分けるのが凄い。

終盤近くになってもエネルギーが全く衰えない、ドラムも凄い。

馬車、というより汽車の走る音のように感じる。

手元はもうなんかすっごい速く叩いてる事しか分かんなかったです。

 

16:DPPLGNGR

終盤でアルバム1曲目を差し込んで来る所が意味ありげ。

だけど<意味など無い>のだろう。

『逆光』でドラムの勢いが衰えないと書いてしまったが、それはギターとベースも同じこと。

まるで1曲目かのようなエネルギーで音が溢れ出す。

 

17:旧市街

熱に満ちた音の余韻を残しつつ、ベースが弾かれ始める。

『旧市街』のフレーズだと気づいた隣のお客さんが静かに体を揺らし始めた。

着座でもリズムに乗りたいよな、と嬉しくなる。

めちゃくちゃ初心者みたいな事言いますけど、<さあ角砂糖を献上せよ>って歌詞はやっぱ独特すぎて最高。

 

18:バースデイ

ベースの歪んだ低音が会場を満たした。

アンプから出力されるノイズとも取れる音振は、最後の曲であるという事実を拒む感情のざわめきに似ていた。

寂しさと情熱の入り交じるメロディは、いつだって心を豊かにしてくれる。

 

いやぁ、2日間楽しかったなあ。

ライブを楽しめるのは、感覚のチャンネルが正常である証拠だ。

ものづくりをする人がよく「降りてきた」なんて言うけれど、自分はあまり当てはまらない言い方だと思っていて、日常生活で組織や他人に同調していく事でズレていく感覚のチャンネルを、必死に自分自身に合わせ続けるのがインプットだ。

今回はそれが上手くいったと思う。

だってほら、ここまでで5776文字も書いてるんですよ。

 

スタンディングも着席も、どちらにも良さがあって、あとは好みの問題だろう。

そして、People In The Boxの作品はスタンディングでも着席でもどちらでも楽しめる振れ幅の広い音楽だという証拠にもなったと思う。

2023年のヒューリックホールのライブが刺さったのでホールライブで"鑑賞"する事も、熱量の高いお客さん達と楽しむスタンディングライブも、どちらも捨てがたい。

なんと欲張りなバンドである事か。

集客力が高い東京だから出来る事かもしれないが、大阪や他の都市でも、着席&スタンディングの欲張りツアーをやってあげて欲しい。

何だか上から目線な物言いに書いて申し訳ないが、こういう伝え方しか出来ない。

行ける人は、絶対にどっちも行った方がいい。

 

この後ライブの予定は無いけれど、船の出航を見送ったつもりは無い。

感じた熱が、得たワクワクが、その船に乗って全国を旅するだろう。

トップバッター、東京、とても良かった。

だけどこの後控えてる各都市が羨ましい。

だって、絶対に回数を重ねた方が良くなるもの。

多くの人の「楽しかった!」を乗せて、行ってらっしゃい!

 

[書き残し―①イラスト]

イラストの女性はノアの息子の妻をイメージしてます。(ほんとか?)

リンゴは「オッペンハイマー」のキーアイテムでもありますが、『親愛なるニュートン街の』のイメージとも重なるようで、描いてて楽しかったです。

そして、フライトタグね。

欲しかった~~~という悔しみを込めて。

 

[書き残し―②くつした]

終演後、お辞儀をして帰って行くメンバーに拍手をしている時のこと。

波多野さんの靴下が赤色だったのが見えて、「そういう事する人だよ・・・」と勝手にやられてました。

他ブラックで統一してるのに、さり気ないおしゃれ。

そういうのいいよね。