いつかの生活と本

いつかの生活と本

本と舞台と旅行が好き

良書報告、2020年3月

ますます物騒な世の中になってしまったなあ……。新型コロナウイルスめ。

3月はずっと在宅勤務となり、慣れない在宅勤務に終わりの見えない繁忙期が重なり、振り返れば発狂しそうだった。一人暮らしの私は話す機会がぐっと減ったことも、精神的にきつくなった要因。人間(というか私)は、目に見えない形でいかに他人に助けられているかを思い知った。

繁忙期が終わって日中の時間にゆとりができたので近所を散歩してみたら、桜が咲き誇っていて心から感動した。無機質な空間にずっといたので、春爛漫な小道を歩ける幸せを噛み締めた。

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内向的性格に外出自粛が追い打ちをかけ、3月は11冊の本を読んだ。どれも一級品で楽しかったー!

狭い部屋で軟禁生活をしてたけど、本はいつでもどこでも生活に新鮮味を与えてくれるから素晴らしい。ウイルスに負けずに生きたい。

 

1.井上康『敦煌

なんでいままで読んでこなかったんだろう。読了後の興奮醒めやまず、いろんな人にこの本を薦めている。読んだ人と朝まで語りたい一冊。

ジャンルは中国歴史ロマン。官吏試験に落第した趙行徳は絶望の最中、全裸の西夏女性に出会う。彼女が持っていた一枚の布切れに書かれた文字に引き寄せられた彼は、生活の全てを投げうって、文字の謎を解く旅に出る。

この物語を面白くしているのが、主人公・超行徳がどこまでも知的欲求に従って生きているという点。物語の舞台は血なまぐさい戦が絶えない戦国時代であり、厳密な階級社会でもあり、いわば生きるか死ぬかの必死な毎日だった。それでも、湧き出る知的欲求を満たすために尽力する超行徳が尊く美しい。

そして、圧巻のラスト。ま、まさか、こんな形で行徳の精神を現在につなげるのかー!

筆者のバトンを受け継いだ私は、図らずとも背筋が伸び、手が震え、学ぶ大切さを身に染みて感じた。学ぶってほんと人間の特権だな。

敦煌 (新潮文庫)

敦煌 (新潮文庫)

  • 作者:靖, 井上
  • 発売日: 1965/06/30
  • メディア: 文庫
 

 2.ケン・リュウ編『折りたたみ北京』

最近の中国SFブームに乗って、私も毎月1,2冊、中国SFを読んでいる。

やはり表題作『折りたたみ北京』が面白かった。タイトルどおり北京が折りたたまれてるんだけど、そこに人間模様も入れ子構造になっていて、世界観が圧倒的に魅力的。

それに設定がややこしいと思いきや、俯瞰すると現代の資本主義と全く同じ構造で笑ってしまう。金持ちは生まれながらにして金持ちだし、成金では覆せない事実は変わらない。でも大事なのは、人間の心は平等で、地位は介入できないということ。この物語でもひとつのテーマになっている。

どれも短編で面白いので、息抜きにどうぞ。

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

  • 作者:郝 景芳
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ちなみに、早川書房がでKindleセールしてる!この本含めて、おすすめ本がたくさんセール価格になってるよ!

『三体』も、『三つ編み』も、『ミレニアム6』も。国内外約1,000作品が最大50%割引、 「春のハヤカワ電子書籍祭」開催!|Hayakawa Books & Magazines(β)

 

3.J.オースティン『高慢と偏見

これ200年前に書かれた小説なんだけど、なんでこんなに面白いの!!!と一人叫びながら夜な夜な読んでた。

これぞ、ラブコメの極み!

読んでいるときの感覚は、修学旅行で枕突合せながら恋バナした、あの頃の感覚と似ている。クラスメイト同士の人物相関図を頭の中で描きながら、誰がどういう気持ちなのかを確認しあう。もしも好きな人が被ってたらどうしようとか、相手からどう思われてるのか気になるけど知りたくないとか、今となってはどうでも良いことに一喜一憂していたあの頃。翌日異性の目線が妙に気になったとかもあったなー(恥ずかしい)。

200年経っても全く変わらない恋模様を、オースティンは見事に描いている。登場人物が多いのに、一人ひとりの気持ちが手に取るように分かるってすごくない?

登場人物の気持ちが分かるからこそ、誰かを応援したくなったり、こうなってほしいと望んだりして、読んでるときのわくわくが止まらない。

それに、主人公・エリザベスは賢くてちょっと皮肉っぽいところに親近感がわく。物語に登場する愛すべきおバカたちを、正当に面白おかしく非難してくれるから。

でも読み進めるうちに、読者の笑いや非難、羨望が”高慢”と”偏見”に満ちていることに気づき、ギクリとさせられるのである。

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

 
高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

 

 4.米原万里『不実な美女か貞淑な醜女か』

在宅勤務に飽きたら気分転換にこれ読んで!と言いたい1冊。エッセイで読みやすい上に、筆者の仕事論やエピソード(笑える下ネタ)が満載なので、仕事の合間に読むとやる気が湧いてくる。

ちなみに筆者は凄腕のロシア通訳者。通訳とはできて当たり前で、訳せなかった瞬間に非難されるという感謝されにくい職業。さらに、通訳者の理解が聞き手の理解の最大値になるのでビジネス的センスも非常に問われる重要な役割だが、その場で正解が分かる人がいないので評価されない。そんな中、自身で通訳の重要性、仕事の面白みを見出し、「頂上のない登山」をする姿はかっこいい。

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

 

 

3月はこんな感じかな。以上、良書報告でした~!

良書報告、2020年2月。

コロナウイルスという見えない敵と、なんとしてもオリンピックするぞ!という政府の強い意志に踊らされている今日この頃だけど、ふと窓の外を見ると晴れやかな日差しが差し込んでいて、春だなあと思わずにはいられない。

2020年2月もあっという間に終わってしまったなーーー。

今月(というか更新遅れて先月、、)は7冊の本を読みました。個人的には満足。そのうち良かった本を紹介します。

 

1、アゴタ・クリストフ悪童日記

SNSで訳者のインタビューを見つけ、なんとなく読んでみたところ、訳者の思想とこの本が辿った運命がとても人間臭くて、思わず本棚を探って読み返した一冊。大学生の頃に初めて読んだ衝撃が蘇り、ついつい夜更けまで一気に読破。衝動ってこわいね、翌朝は眠かったー。

双子の「ぼくら」がおばあちゃんの家に疎開し、厳しい戦時下をしたたかに生きていくという物語。双子による日記という形式を採用したからこそ、読者は背徳感や没入感を自由に得られる。

他の戦争小説と一線を画すのは、戦争の荒涼とした心身状態、貧困といった環境から生まれる「ぼくら」の独創性が天才的だからだろう。他者への深い敵対心とは、無意味に拒否するのではなく、フラットな視点で物事を判断するからこそ生まれる。極限までそぎ落とされた文体が、私たちをより一層「ぼくら」の狂気にいざなう。

世間をナナメにみている天邪鬼に読んでほしい。 

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

 

 とってもよかった訳者インタビュー。人を動かすのは、何事も衝動なのだ。

 

2、エミリー・ブロンデ『嵐が丘

究極の恋愛小説!最高の復讐劇!とよく言われている本書、本当は性悪小説だろっ!と訂正したい。そして、いつの時代もダメ男は得をする無常に納得してしまった

乞食同然だった少年ヒースクリフ嵐が丘に拾われたことをきっかけに、ヒースクリフ嵐が丘の少女キャサリンとの恋愛を描く。貧乏少年が可愛いお金持ち少女と結婚すれば、逆シンデレラでめでたしめでたし。となるところだけど、ブロンデ先生はそんなの許してくれない。キャサリンを資産家エドガーと結婚させたり、エドガーの妹イザベラとヒースクリフを駆け落ちさせたり、ヒースクリフとイザベラの子供をキャサリンが好きになったり、、、びっくりするほどやりたい放題。

溜息が出てしまうほど複雑に重なり合った人物相関だけど、ヒースクリフの憎悪とキャサリンの無垢さが通奏低音として物語を成り立たせていて、その変化を追うだけでも自分の様々な感情が浄化される。

ヒースクリフはどこまでも汚いヤツなんだけど、ふとした瞬間に染み出す人間味が捨てきれなくて、どこか愛着を持ってしまうんだよなー。ほんとうにダメ男は怖い。

嵐が丘 (新潮文庫)

嵐が丘 (新潮文庫)

 

 

3、アリス・ウォーカー『カラーパープル

カラーパープルめっちゃ良かったから読んで!!!

20世紀に欧米で起こった人種差別、女性差別が凝縮された一冊。昨今のフェミニズム論争からすると少し時代遅れなのかもしれないけど、日本に暮らして欧米よりも人種差別などを感じなかった身からすると、すべてのセリフが新鮮だった。

黒人娘・セリーはミスター**(名前も知らない旦那!)に嫁ぎ、虐待させられ、誰からも見向きもされなかったが、歌手・シャグとの出会いにより自身の生きる道を自覚し逞しく進む物語。セリーの妹・ネッティーが宣教師としてアフリカに渡り、地元から知識人として信頼を得ている点もセリーと対照的で、物語に一層深みを出している。

外の世界で成功しているネッティーを見て、姉であるセリーは我慢ならないと思うんだけど、今の状況を受け入れて必死に歯を食いしばって生きるセリーを見ると、素直に生きることの尊さを感じる。 

黒人女性が男性に話しかけられない世界なんてどう考えたって間違っているんだけど、「なんでこうなっちゃったの」と原因を探る私に対して「そういう運命なの」と悔しさに蓋をして真面目に前を向いて生きているのがセリー。逃げ場がないなかでも腐らずにいるってすごいことだと感心してしまった。セリーは落ち込んでも生き生きしていて、私も腐ってらんねーな!と鼻息荒げてしまった。

そして、ミスター**こそ現代を代表しているような気がしていて、すごく興味深かった。というのも、ミスター**は女性に人権はないと思っているし、性犯罪起こしまくりだし、自身の見栄えに執着していて、どこまでも酷いヤツ。近くにいたらつまみ出したいくらい。そんな凝り固まった人でも、セリーの活躍を見ることで自分の言動を見つめ直して他人に寄り添おうと変化したのだ。物語だからと侮ってはいけず、ミスター**の変化を感じ、読者は自身の正義を問い直すきっかけになるのでは。

カラーパープル (集英社文庫)

カラーパープル (集英社文庫)

 

 

2月はこの3冊かな。以上、良書報告でした。

今月もいっぱい読んで思考するぞー。

良書報告、2020年1月。

2020年の目標のひとつは「読んだ本を記録する」ってことなので、2020年1月の良書報告はじめます〜。(今月読んだ本の中で、良かった本だけ書きます)

今月は12冊の本を読んだけど、間違いなくKindleセールが原因。今年もKindleにお世話になりそうです。

 

1、ガブリエル ガルシア=マルケス百年の孤独

今年の初読みでした。

この本はコロンビアのある家族の栄枯盛衰に関する物語で、だれしも忘れられるという当たり前だけど信じたくない事実を重厚な文体で描ききってます。

まず、文章にシビれた。そして、血が繋がっているからこそ世代を超えて似ている側面がある一方で、ほとんどのことは子孫の記憶から遠のくという摂理が沁みた。

誰もが孤独なことくらい、今までの人生で経験済みである。そこに塗り重ねるように、どれだけ親が子を願ってもそれは一方的な愛であること、経済や政治みたいな見えざる手に人は左右されることなどを丹念に説明されると、悲しいほどに精神が打たれる。誰もわたしのことを心から大事に思っていないのでは、と暗闇に放り出され、不安にさいなまれる。だけど読後感は爽やかで、自分の暮らしと向き合うべき覚悟のようなものを与えてくれた。

正月休みに祖母の隣で読めたことで作品の深みをさらに感じれたし、幸先の良い1年になりそうです。

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

 
 
2、ジョージ・オーウェル動物農場

とはいえ『百年の孤独』は読むのに骨が折れるので、合間にちょこちょこ読んでたのが、オーウェルの『動物農場』。

表題作も良いけど、同時収録の『象を射つ』がビジネスマンとしての私にめっちゃ刺さった。社会の操り人形やなー、と思ったことある人は読んだ方がいい。背筋ゾクゾクする。

悲観的なこととか尖った考えとかでも、嫌味なく描いてるオーウェルさん、本当に天才で憧れる。

動物農場 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)

 

3、テッド・チャン 『息吹』

言わずもがなの話題作ですが、噂どおり面白かったし感動した。著者の本は初めて読んで、あまりの面白さに『あなたの人生の物語』もすぐさま読みました。ファンです。

テクノロジーと人間の心情のズレを徐々に読み手に気づかせる優しさに惹かれた。世界観を強要するんじゃなくて、生きるための論点を気づかせてくれるSFなんですよね。文字を追いながら無意識の意識をかき回されるのが快感で、ぐんぐん読んでしまった。

あと、筆者の作品へのアプローチって、ものすごくビジネス視点だな…!と思ったので、新しいこと考える仕事をしてる人にはおすすめ。違和感の掘り下げ方とかイメージの膨らませ方とかすごく勉強になりました。

息吹

息吹

 
あなたの人生の物語

あなたの人生の物語

 

 

4、ナオミ・オルダーマン『パワー』

オバマとエマワトソンが勧めていた、という安直な理由で読み始めたけど、やはり面白かったフェミニズム小説。

女の子だけが特別な力(=パワー)を持ったら世界はどう変わるのかを、痛烈にドラマチックに描いている。(っていうか、ディストピア小説だったとは!)

映画『ジョーカー』を見たときも思ったけど、主人公の設定が「ふつうじゃない」と成り立たない物語って、リアルな怖さを感じる。『パワー』の女性たちがしたことって、今まで男性がしてきたことの裏返しだからね。女性じゃないと話が成立しないって、ほんとうに今まで歴史が狂ってたんだなと。

キャリア上昇志向の人には刺さるかもしれない。少なくとも、わたしは刺さった。強く生きるとか、自分らしく生きるとかよく言ってるけど、その前にスタートラインに立てなくなる可能性を忘れないようにしたい。

パワー

パワー

 

 

番外編

その他の読み物。

川端康成『雪国』

新潟県湯沢町に行ったので、行きの新幹線で再読。

日本語って美しいな、と思わせてくれる無駄のない文章。駒子の意思強いのに一歩引いちゃう性格とか、良くも悪くも日本人っぽくて愛おしかった。日本人ってダメ人間が好きですよねえ。

ちなみに、温泉×Kindleが最高に合うことを発見してしまったので、ご報告します。露天風呂なんて入っちゃうと、時間が無限に溶けます。これは紙の本では成し得なかった至福体験です。雪景色を見ながら温泉に浸かり、極上のリラックスムードに包まれて本を読む。めちゃくちゃ良かった。

 

雪国 (新潮文庫)

雪国 (新潮文庫)

  • 作者:川端 康成
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: ペーパーバック
 

 

以上、1月良書報告でした。

今月もたくさん読んで、いろんなことに気づこう。

クリエイターの未来の描き方を感じ、自己嫌悪に陥った。 #マル秘展に行ってきた

巷がイルミネーションで浮かれている今日この頃、六本木の21_21 DESIGN SIGHTで行われている「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」に行ってきた。

この企画展はタイトルそのままに、超有名デザイナーの方々がどういう思考で創作しているのかを原画ベースで辿ろうというコンセプトなんだが、、、これがめちゃくちゃかっこよすぎて、吐き気するほど自分が嫌いになった。

超有名デザイナーとは、グラフィックデザイナーの原研哉・松永真、照明デザイナーの面出薫、デザインエンジニアの山中俊治などなど。作品を見れば「ああ!これ見たことある!すごいいいよね!」と思うようなデザインを世に送り出してきた人ばかりだ。

 

展示方法としてはとてもシンプルで、ショーケースにデッサンやら試作品やらが並べられているだけなんだけど、デザイナー毎に思考方法が全く異なっていて、その違いを読み解くのがとても面白い。

ひたすらデッサンをして体に概念をしみこませてからデザインコンセプトを考えている人もいれば、直感的に試作してみてクライアントに投げる人もいたり。きっと全員プロセスが違うし、こだわっているポイントも違う。そして、その違いが作品に活きている(と私は思った)。

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このようなアーティスティックな仕事の一面を垣間見ると、大勢の人が良いと思える共通項とは何かが気になる。

デザインは商品やサービスとそれを伝えるべき対象者(大抵は一般市民)が定まっている場合が多い*1。それでいて正解がなく数字でも測れない。判断基準はとてもシンプルで、対象者が気に入るかどうか。それなら世に打ち出してさっさとウケを判断したいものの企業イメージを頻繁に変えるのは難しい。企業イメージに直結する仕事であり多額の投資がされているので失敗も許されない。

だから、常に大衆ウケするものを考えるという点において、デザイナーはとてもシビアな世界にいるんじゃないかと思った。

 

そんなことを考えたときに、すべては未来志向ベースなのかなと考えた。

未来志向ベースというのは、「この商品は10年後にこうありたい!」「このサービスを使ったら、こんな幸せが待っている」みたいな夢をひたすら語るということ。

企業の人もそれくらい考えてるよ…と思うかもしれないけど、社会的なインパクトの大きな未来を語れる人ってそんなに多くない。この商品を使ったら〇〇の苦労が解消する、くらいは言えるかもしれないけど、その苦労が解消されるとその人の生活がどのように変わって、どれくらい幸せになって、、、とストーリーを語れる人は少ない。特に企業の人はその商品を知りすぎていて、実際の生活が見えていないことが多い。

で、そういった大きな夢を少年のような心で語り、視覚的に魅せ、消費者が共感し、その人たちを動かしていくのが一流デザイナーなのかなと思った。(デザイナー、かっこよすぎかよ…)

未来志向ベース、いわばムーンショットみたいな話は、たくさんの人の心を掴んで「あの商品良いよね」に繋がるんだろう。

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原氏の作品(コンセプトを分かりやすく絵に落とせるのがかっこいい)




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面出氏の作品(スケッチで概念を捉えていてかっこいい)


そんな半ば妄想のような考え事をしながら原画を見ながら考えていると、自分の仕事はデザイナーとは対照的にプロセスベースになっていて、ひどく凹んだ。

私の仕事はクライアントの要望が決まっているのが基本なので、その枠の中で仕事をするというプロセスベースになっていた。お金をもらって仕事を受けているので、ゴールとか将来像が決まっているのは当たり前っていえば当たり前なんだけど、それだと新しいことは何も生まれないし、誰も熱狂しないよな~~~。

プロセスベースで仕事するほうが楽にお金稼げるのはよくわかるけど、それじゃあ面白いことはできないので、少しは大きな夢を描きながら仕事をしたい。

もはや、展示をすべて見て退館する頃には、マル秘展とは全く関係のない決意をしていた。

 

会場の外に出ると日が暮れていて、ミッドタウンのイルミネーションがとても綺麗だった。青い光の道は大勢の人でにぎわっていて、これもまた誰かのデザインの勝利なんだよな。

 

***

この特設サイトは、実際の原画が公開されており、とても良いです。(というか、このサイトで大抵の人は満足するので、遠方で行けない人も覗いてみるといいかも)

インタビューは助長なので、マニアしか面白くないと思います。

designcommittee.jp

<さいごに>

この企画展行く人は、デートがいいです。六本木でちょっと良い店のランチを食べ、展示を見てあーだこーだ言って、イルミネーションを見て帰る。このコース完璧なので、誰か実践してください。

*1:デザインにもいろいろな種類があるけど、ここでいうデザインとは商品デザインとかロゴとかを意味します。

職人のこだわりとセンスに酔いしれた充実の休日 #ミシュランとエルメス

平日は仕事が忙しくて自分の時間がなく、家ではただ寝るだけ生活を送っている私ですが、、、この生活の弊害って、平日に自分の時間が取れないだけじゃなく、休日にもあると思います。

それは、「とにかく疲れすぎて、休日はダラダラしてしまう」こと。

昼前に起床して、ブランチを食べ、溜まった洗濯物や家の掃除をして、気づけば夕方。それでも身体の疲れは取れてなくて。という最悪な休日を過ごすこともしばしば。

この休日スタイルから抜け出したいと思うものの、朝から何かをやるぞー!っていう思いには至らないし、無理に予定を入れるってのも疲れの原因なので避けたい。目的がありつつもリラックスできるような余裕のある休日を過ごしたい。

そう思っていた矢先、職人さんたちのこだわりとセンスを感じて大満足の休日を過ごせたので、ちゃんと記したいと思います!(一緒に行ってくれた友人にも感謝)

お金もあまりかからなくて、一流に触れることができて、幸せ度が高かった~~~~~!私と同じ状況の同世代が、仕事に押しつぶされずに休日を充実させてくれることを祈ります!

 

ミシュラン店でランチ

ちょっと贅沢したいって気持ちは誰にでもあって、特に働きはじめて自由にお金が使えるようになった私たち世代には、その欲求が人一倍強いのではないかと思います。

とはいえ、ミシュランの名店でディナーをするのは予算に見合わず、臍を噛むことも少なくない。でもランチだったら、同じコースでもリーズナブルな値段で楽しむことができます。

それに、お昼から予定を入れることで、夕方までに帰宅して、夜は自分が別にしたかたことができる。充実感を得つつ、ダラダラ過ごさなくて済むという、私にとってはピッタリのプラン。

 

伺ったランチは、六本木ヒルズ内にある「よし澤」

友人が取ってくれたのだけど、後日調べるとミシュラン1つ星でした。

注文した懐石コースは、手の込んだ料理が手を変え品を変え出てくる。こういうお店に行って美味しいと思うのは当たり前だけど、季節を感じさせながら上品に味付けしていて、本当に美味しかった!(わたしは関東の濃いめ味付けが苦手なのです…)

それに、それぞれの素材の味がとても濃厚で、うまみが凝縮されていて、それでいて器の中で味が調和していて、職人さんのこだわりとセンスに感動でした。

特に名物の「土鍋ご飯」は、4段階で炊き立てのごはんを味わえて、それぞれの段階について料理人さんに解説していただけます。ごはんの美味しさと特徴を学ぶことができたのも良かったし、お料理の可能性は無限に広がっているのだなあと。

美味しいお料理があると会話も弾み、自分が自然と幸せに満たされていくのを実感。

行く前は「ランチにしてはちょっと高いかな」って思ったけど、たまにはこういうのも大切だなあ。(しみじみ)

エルメスの展覧会へ

おなかいっぱい、満たされた気持ちのまま、同じく六本木で開催されている、エルメスの展覧会「夢のかたち Hermès Bespoke Objects」へ。

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What is your dream?

こちらの展覧会、すごーくざっくり言うと、「超大富豪がエルメススペシャルオーダーして、こんなものまで作っちゃったよ!!!」っていう展覧会なのですが、やはりエルメス、すごい。どこまでもこだわって、依頼者の夢をかなえちゃうのです。

私はエルメスのオーダー品について知識が乏しかったので、依頼者の想いを汲み取って具現化するという職人さんの技に感動してしまいました。

たとえば、「京都のエルメスに行ったときに乗った人力車が忘れられないの。もう一度乗りたいわ」というマダムMの要望に対して、エルメスがめちゃくちゃかっこいい人力車を作って応える。

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人力車、ほんとうに作っちゃったよ、、、

乗り越えなければいけない壁はたくさんあっただろうに、それを感じさせない凛とした姿。レザーの感触はもちろんのこと、ステッチの方法や皮模様もちゃーんと計算されているので、どこから見ても美しい。近くでじっと眺めることができるのも、こうした展覧会の素晴らしさですよね。

他にも、自転車やバイク、鞄はもちろんのこと、釣り具やサーフボード、テーブルサッカー(!)まで依頼は様々。

どんな依頼であっても、飛びぬけたセンスで応えているエルメスの職人さま、かっこよすぎます。(それにしてもお金持ちは夢(依頼)がぶっとんでおり、私は共感できなかったことが悲しい)

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手触り良すぎバイク。怖くてオイル使えない。

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かごバッグのカーブが、たまらなく好き!

作品だけじゃなくて、職人さんのアトリエも再現されていました。こういうのを見ると、作り手の人間臭さみたいなのが垣間見れて、私は好きです。

仕事机って、機能性に重点を置きたいけれど、アイデアが出せるようなゆとりを持たせたい。他人の仕事机を見ると、その人の性格だけでなくて、仕事上の試行錯誤や悩みなども感じられるのが、人間観察気質の私にはたまらないんです。

それに、一流のアトリエだって、風景としては日頃私たちが見ているものと同じで、そう思うとなんでもできそうな気になってくるのもポイント。

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モノが生まれる現場は私たちの机とさほど変わらないのだ

この展覧会は無料にも関わらず、展示数はけっこう多くて、展示方法も工夫されていたのでとても楽しめました!

2019年11月17日(日)までやっているそうなので、気になる方はぜひ!

詳細はこちら→https://www.hermes.com/jp/ja/story/195141-bespoke-2019/

 

こうして職人さんに酔いしれ、大満足の一日を過ごし帰路につきました。

帰宅後はゆっくりお風呂に入ったり、本を読んだり、気になっていた映画を見たりと、これまたリラックスできて、こういうスタイルの休日ってとても良いな~!と思いました。

今度の週末も堪能できるよう、ライフもワークも頑張ります!