紅茶の英米文学
『赤毛のアン』と同時代に書かれた類似作品を読んでいます。
『若草物語』は、私には苦痛極まりないけど、『ライラックの花の下』は楽しく読めそうです。
実は、小学生の時に読んだ小説を(未だに)探しているのです。
「もしかして、これでは?」と思う方、いらっしゃったら教えて下さい。
●作者→オルコットだったような・・
●舞台→アメリカの農村
●ストーリー→親を失くした都会のわがままな少女が田舎の親戚?に引き取られ、豊かな自然と温かい人々の中で暮らしていくうちに、優しく素直な心を取り戻す
当時はすごく好きな作品で読書感想文を書いたりしたのに、タイトルを忘れるとは・・。
もしかしてこれか?
- 作者: ルイザ・メイ・オルコット,Louisa May Alcott,村岡花子,佐川和子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1961/01/10
- メディア: 文庫
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南野モリコ
アンのレイヤーケーキ
『赤毛のアン』21章で、アンはアラン牧師夫妻を招いてのお茶会でレイヤーケーキを焼きます。
アンがレイヤーケーキにバニラと間違えて塗り薬を入れてしまい、
お茶会が大失敗に終わってしまうという
『赤毛のアン』の代表的な場面です。
小学5年生で初めてアンを読んだ時に
一番心惹かれたのは、レイヤーケーキと「いちご水」でおなじみの、アンのお茶会のエピソードでした。
アンのお茶会はどちらも失敗に終わるけど、
家に友人を招いて、ちょっとおすまししてお茶とお菓子でもてなすという、この大人の交流がとても素敵に見えたのです。
それも、完璧でなく、失敗に終わるのも、なんだか楽しげです。
小学5年生の私は、『アン』のように手作りの料理とお菓子で友人をもてなしたくなり、子供なりに実践しました。
結婚してからは、紅茶教室で本格的に学び、英国式のおもてなしを実践しようとしたりしました。
その時にふと疑問に思ったのです。
優秀な主婦であるモンゴメリなら、お茶会で失敗なんて恥ずかしかった筈。
なぜアンに出てくるお茶会は、2回とも失敗なのだろう?そこには、何か意味があるのではないだろうか?
もしかして、モンゴメリは、アンにお茶会を大失敗させて、女性は家にいるもの、というヴィクトリア二ズム的考えを批判したかったのではないか?と。
『快読「赤毛のアン」』では、レイヤーケーキに塗り薬を入れたのは、その当時、孤児が世話になっている里親に毒薬を入れた食事を食べさせた事件があり、孤児というと薬物を混入させるという偏見が持たれていたことに由来すると書かれています。
しかし、それとは別として、ヴィクトリア時代に日常的に行われていた「お茶のおもてなし」を楽しい失敗談にすることで、モンゴメリは女性を家に縛り付けるヴィクトリア二ズムをユーモアたっぷりに皮肉ったのではないかと思うのです。
アンの「お茶会」が象徴するもの
菱田信彦『快読「赤毛のアン」』は、
これまでの考察本にはない視点から解説されていて、
とても参考になった。
19世紀末から20世紀初頭の国際情勢により深く突っ込んでいる。
カナダを取り巻いているのは、アメリカ、イギリスだけではなく、フランス、そしてオーストラリアの存在もあることに気付いた。
『快読』で知った最もショックだったことは、アンの「名付け」がイギリスの入植への皮肉であること。
これは、フォスター&サイモンの『ケイティの読んだもの』でも論じられているらしく、
「喜びの白い道」や「輝く湖水」のような素敵な名前の裏にこのような深い意味があるとは。
ところで、
私が自分の論文でテーマにしていのは、この時代の喫茶文化なのです。アンに描かれているお茶会の失敗談にこそ、モンゴメリのヴィクトリア二ズムへの批判が込められていると私は考えています。
モリコ
- 作者: L.M.モンゴメリ,ウェンディ・E.バリー,メアリー・E・ドゥーディジョーンズ,マーガレット・アンドゥーディ,L.M. Montgomery,Margaret Anne Doody,Mary E.Doody Jones,Wendy E. Barry,山本史郎
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2014/07/30
- メディア: 単行本
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快読「赤毛のアン」菱田信彦②
菱田信彦先生の『快読「赤毛のアン」』は、
これまで読んだ『アン』考察本の中で一番、役に立っています。
原文を読む時の着目するべきポイントも分かったし、当時のカナダが国際的にどういう位置づけであったかも、この著者のおかげでするすると解って来ました。
『アン』で地域興しをした観光地ではない、素顔のプリンス・エドワード島も見えてきました。アンを読んで○年、初めてプリンス・エドワード島に行って、物語に描かれた場所を自分の目で見たいと思いました。
『赤毛のアン』ファンの皆さんにも強くお勧めします。
モリコ