技術者は花形選手 !
100円の製品があります。この製品を作る費用(製造原価)を50円、その他販売費、管理費等が40円としたとき1個売る毎に10円儲かります。この時、製造原価を技術によって1割すなわち5円コストダウンすると、儲けは1.5倍となります。会社の利益を1.5倍にすることは大変なことです。しかし、努力すれば技術者1人の力でできるかもしれません。
花形選手になれるのです。
かなり、大げさに表現しましたが、そのためには技術者はコスト意識を持たなければならないのです。目の前にお金が埋まっています。ただし落とし穴もあります。
製品価格の構造
ご存じとは思いますが、下図はある製品を販売して収益を得るときにかかる費用の分析です。
かかる費用は大きく分けて、図中に記載しているように固定費と変動費があります。
固定費は売上高に関わらず必要な費用です。変動費は売上高に比例してかかる費用です。グラフから、売上高がある値以上にならないと利益が得られません。この時の売上高を損益分岐点と言います。固定費が少ないほど売上高が少なくても利益が得られます。損益分岐点が低くなります。変動費が少なくても同様です。
固定費と変動費、各詳細の中で、朱記してあるのは技術に深く関与されるものです。 ただし、技術にも製品開発技術と製造技術があり、この2つの技術が複雑に絡み合って費用が決まっていきます。材料費などは購買係の腕の見せどころの部分もありますが、基本は技術が買うものを決めます。
これらから製品販売にかかる費用の実に6割以上が技術内容によって決まると言って過言ではありません。技術者は強くコスト意識を持たなければなりません。製品開発技術者は製品開発の最初から部品、材料費のコストを、製造技術者と共同して組み立て調整人件費、設備費、設備稼働費、消耗品費等のコストを意識して下げる努力をしなければなりません。
資本回転率
認識してほしい会計用語に回転率があります。総資本回転率と運転資本回転率とかあり、詳しく知る必要ありません。投入したお金が製品を売ることにより、どれだけの期間で取り戻せるかです。魚屋は仕入れたその日に売り切らなければなりません。本屋は新本が積まれています。半導体製造は高い装置で長い工程を経てやっと出来上がります。コンピュータ1つで商売している人もいます。業種によって大きくこくなりますが、製造業では数か月程度と思われます。短いほど少ないお金で安定な事業をできることです。
技術者にとってはできるだけ安い設備で、短期間のリードタイムで、付加価値を高めるように開発努力することが回転率を上げるために求められます。
開発遅れにより逸する利益
製品を開発している技術者にはスケジュール遅れが頻繁に遅れます。様々な原因があるとは思いますが、スケジュール遅れが金銭面でどのような影響があるか、考えたことはあるでしょうか。
電気製品等は短いもので1年毎にモデルチェンジされます。スマホのモデルチェンジもそのくらいの頻度で行われます。時期も春頃が多いのではと思います。この周期に乗り遅れると大変な逸失利益となります。
上記のグラフにおいて、黒線は計画通り開発が完成して、市場投入できたとき、赤線は開発が遅れて市場投入が遅れた場合のグラフです。世の中の流れにおいて、製品の売れる時期は大体決まっています。夏物は夏になってからでは売れません。売れなくなる時期も決まっていますので、市場投入が遅れれば売れる期間が短くなり売り上げも減ります。また、競合相手にも先を越されます。ただし開発にかかる費用は人件費を含めて多くなります。両方が絡まって期待した利益は大きく落ち込みます。 技術者はこのことを十分認識しておかねばなりません。
「なぜ遅れたの?」、「だって難しかったもん ! 」と簡単には言い訳しない方が良いと思っています。
品質事故による損失
今まで、製品の品質トラブルにより傾いた会社が数多くあります。最近では小林製薬の紅麹のニュースがありました。品質問題は開発設計、製造、出荷検査の各段階での原因がありますが、製造、出荷検査ではミスポカ防止等の様々な形で品質維持のための教育がされていると思います。それでもゼロにはできていませんが、たとえ市場にでてもその製品だけの問題となります。
ここで大切なのは、開発、設計段階の上流での品質評価努力です。設計ミスで市場に出てから品質問題が起こると、すべての販売された製品を修理あるいは廃棄しなければなりません。自動車などで、時折耳にするリコールです。莫大な損害が生じます。技術者はこのことを非常に意識しなければなりません。
大切なのは、試作品の徹底的な評価です。ユーザーは設計技術者の及びもつかない環境、使い方をするかもしれません。設計ミスもさることながら、試作品評価において使用可能な範囲を把握し、マニュアルに明記しなければなりません。製品開発のできるだけ上流で品質確認する努力が必要となります。
品質管理については、奥が深いので、別の機会で論じたいと思っています。ここでは、技術者が手を抜くと莫大な損害を会社に与えかねないことを認識していただければと思います。
この辺りについては「フロントローディング」および「ロバスト性」をキーワードに調べてください。
まとめ 私の意見
このように、会社の業績は大きく技術に左右されます。技術者は技術に埋没するばかりでなく、会社全体を意識しなければなりません。自分の仕事の結果の良し悪しがどのように会社全体の業績につながっていくかを考える必要があります。先ずは目の前のコストに注目してみませんか。
私が思うに、技術者はタレントです。花形選手になれます。会社業績の浮沈に大きな影響を与えます。気になりますのは、今の日本企業の技術者への評価方法です。一人一人の技術者の全体への寄与の見える化ができるかが課題と思います。
参考になりますのは、サッカー選手です。彼らは、常に全体を見ながら動きます。パス等、敵、味方の次の動きを予想してプレーしています。わずかのミスも許されず、攻めと守りを両立させます。そして花形選手には莫大な報酬が与えられます。一握りの花形選手にあこがれて皆が頑張ります。子供にも将来の夢となります。技術者のあるべき姿に似ているように感じます。
花形技術者に1億円、2億円のボーナスをあげたら、どうなるでしょうか。
次回をお楽しみに
一休み カワセミ
今回は、野鳥観察定番のカワセミです。それほど珍しい鳥ではなく、都内でも池や小川があり小魚がたくさんいる公園ならば、かなりの確率で見つけられます。池や川に張り出した枝にとまり、魚を狙っています。枝からは斜めの視線で水の中を見ているので、カワセミは偏光メガネをかけていると言われています。斜めの角度で水面を見ても、通常は水中の魚は見えません。その時、カメラの偏光フィルターを通してみると、魚が見えるようになります。試してみてください。
一社)光融合技術協会社団法人光融合技術協会の技術紹介 その7
光融合技術協会による海外技術開発機関との連携の支援・調整 Part2/2
私共の鈴木理事はドイツを代表する研究所フラウンホーファー研究所の中のFEPの日本代表を兼任しています。この関係から海外の研究機関と密接なつながりがあります。前回に続いて、その一端を下記鈴木理事のスライドを通してご紹介いたします。この件に関しましてお問い合わせがある場合はkoichisuzuki@surftech.co.jp あるいは akira.ono1257@gmail.com
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一般社団法人光融合技術協会のホームページはhttps://www.i-opt.org/です。
次回に続く