I LOVE TCG

TCGデザイン論に関するブログ

【MTG】統率者レジェンズ環境分析とプレリレポ

 

2020年11月14日(土)に行われた統率者レジェンズのプレリリース・パーティに参加してきた。

備忘録代わりにそのレポと簡単な環境の印象を書く。

 

なお、記事中のカード画像はすべて公式カードイメージギャラリーから引用。

 

 

事前の印象

 

これまでコンスピラシーやバトルボンドのような特殊環境のリミテッドを数回プレイして、得た経験則が自分の中にいくつかあった。

 

 

 

インスタント除去は普段より強く、ソーサリーのピン除去は普段より弱い

 

多人数戦で特定のプレイヤーにトドメを刺せるような状況になったとき、残りライフ分をちょうど削りきれるようなアタックしか行われないことが多い。

たとえば残りライフ5の相手にはちょうど5点だけ抜けるようなアタックをして、残りの戦力は残存する他のプレイヤーとの攻防に回すことがほとんどだ。

 

つまり多人数戦ではフルパンによるオーバーキルが生じにくい。

そのためインスタント除去一枚握っているだけで確定死の状況を躱せるシーンがしばしば生まれる。

 

しかもこのリターンは自死だけでなく、他のプレイヤーの死亡ターンの回避にも使える。要するに交渉の材料になりうる。「あの厄介なエンチャントを解呪してくれたら助けてやる」という具合に。

 

このようにインスタント除去は通常の1vs1対戦よりも有用なシチュエーションが増えるため、普段より評価を高く設定する。

 

殺害 石の怒り

 

 

一方でソーサリー除去はターンが一周するまで三人の対戦相手にマナタップの隙を与えてしまうため、リスクは普段の三倍増しになる。

ソーサリータイミングでの除去はインスタントと違って死亡回避の確約に繋がらないため、交渉役としても信頼性が劣る。

 

また対処しなくてはならない盤面が普段の三倍に増えているのに、単体除去を撃っても一人分のボードを足止めにしているだけにすぎない。

加えて自分にとっての脅威は他のプレイヤーにとっても脅威であることが多く、その場合は単純に自分だけがマナと手札を消耗して、残りの対戦相手ふたりにタダで利益を与えているだけになる。

というわけで、ソーサリー除去は普段よりも点数を低く見積もる。

 

f:id:tenkoTCG:20201217171539p:plain

置物追放は偉いが、その隙を他のプレイヤーに利用されがち

 

 

回避能力が普段の三倍強い

 

統率者戦の初期ライフは普段の二倍だが、相対するのは普段の三倍の対戦相手、普段の三倍のクロックだ。

だから自分の5/5のアタックが通ってもゲームに与える影響は普段の1/6と小さく、逆に自分の5/5が守勢に回ることで防げる脅威は普段の1.5倍になっている。

攻勢に回ることのインパクトが極端に縮小しているのがこのフォーマットの特徴といえる。

 

そのため多人数戦においては120点分のライフを詰める攻撃力よりも自分の40点が詰められない防御力の方が重要になる。

前提は勝利条件を満たすのではなく敗北条件を満たさないこと。

(どっちにせよ120点分を自分ひとりで詰めることなんてできないわけだし)

 

そういった多人数戦の生存戦略において、もっとも基本となるのが回避能力の有無になる。

飛行は相手のライフを詰めるもっとも基本的な攻撃力だが、それ以上に相手の航空戦力から自分のライフを守ってくれる防御力としての価値が大きい。

たとえば対戦相手全員が2/2飛行を持っている状況では、3/3飛行を一体立たせられるだけで6点分のクロックを防いでくれることになる。

逆に自分だけが飛行をブロックできないような盤面になってしまうと、三人分の飛行クロックに一方的にタコ殴りにされるハメになる。

 

だから普段は軽視しがちな到達も、いつもより点数高く見積もっていいと感じた。

 

f:id:tenkoTCG:20201217165324p:plain

攻防両立という意味で、警戒も普段より評価が高くなる

 

多人数戦ではどのプレイヤーも「殴る動機」を探しており、中でも飛行をブロックできないことはいちばんシンプルで弁明不能な理由になる。

負けない構築とは、そのような簡単な言い訳を対戦相手に使わせないことでもある。

 

 

それ以外でカードプールを見て感じたのは、

  • 統治者ギミックがあるのでアドバンテージカードばかり入れてると意外と手札がダブつく
  • マナ加速はあるがマナ色のサポートが弱いので、土地は多めに入れる
  • 共闘はデッキの初期枚数を減らせる上に手札1枚増なので使い得(二色統率者よりも優先)

といったところ。

 

 

そんな事前の環境予測を頭に浮かべつつ開催店舗へ向かう。

総参加者は四人卓が三つぶん立つ程度だった。

《闇の男爵、センギア》のプロモを受けとり、いざ初めての統率者リミテッドの世界へ突入。

 

 

カードプール 

 

当たったレアは以下。

 

マナ吸収 逆嶋の手下

狡猾の宮廷

闇の男爵、センギア ラクシャーサの堕落者

激憤の宮廷 明けの林の主

ブレードグリフの試作品

 

シングル価格的には最後のパックで《マナ吸収》を引き当てていなければ盛大な討ち死にだった。

あぶねー

 

 

各色ごとに分けたカードプールは以下のとおり。

 

f:id:tenkoTCG:20201129144652j:plain

カードプール(白)

 

優秀な飛行と五枚の除去が頼もしいが、枚数はやや不足感がある。

統率者としては確定2ドロップとして優秀な《陽光たてがみの使い魔、ケレス》がおり、重たい共闘統率者の序盤の隙を埋めてくれる。

 

f:id:tenkoTCG:20201217190057p:plain

統率者にすると2ターン目のアクションが確約

 

 

 

f:id:tenkoTCG:20201129144725j:plain

カードプール(青)

三種類のレアが引けているが、総合的にはかなり寂しいプール。

生物も除去もほとんどなく、呪文回収やオーラなど用途の限定的なスペルが目立つ。

チャンスがあるとすれば青赤の海賊構築くらい。

基本的には進んで使いたいような内容ではない。

 

 

f:id:tenkoTCG:20201129144750j:plain

カードプール(黒)

共闘統率者の《センギア》は、それだけで黒を選ぶ理由たりえるほど魅力的。

ただ全体のカード枚数はじゃっかん不足気味で、スペルはコンバットトリックと墓地回収がダブってシンプルな除去がない。

ただ赤と組めば《一座の支配人、ジョーリ》と合わせて生け贄エンジンをうまく利用できそうなプールに見える。

地味に《冒涜する者、トーモッド》と相性のいいカードが多い。

 

f:id:tenkoTCG:20201217191316p:plain

f:id:tenkoTCG:20201221184059p:plain

墓地回収だけでなく、この手のコンバットトリックでも誘発

 

f:id:tenkoTCG:20201129145956j:plain

カードプール(赤)

 

枚数潤沢、除去多し。

飛行も到達もおり、《激憤の宮廷》と《火山の奔流》は間違いなくボム。

海賊が多めで生け贄シナジーは期待したほどではなかったが、今まで見た中だとかなり使いたいプールに入る。

 

f:id:tenkoTCG:20201217191719p:plain

続唱でアドバンテージも取れる、トップクラスのスイーパー

 

f:id:tenkoTCG:20201129150052j:plain

カードプール(緑)

緑なのにクリーチャーの絶対数が足りなすぎ。

そのマナカーブもずいぶん後ろに寄ってしまっている。

スペルも3枚の《古えの憎しみ》(インスタント格闘)と《押し潰す梢》ぐらいしかなく、できれば使いたくないプール。

 

 

f:id:tenkoTCG:20201129150138j:plain

カードプール(多色)

f:id:tenkoTCG:20201129150211j:plain

カードプール(無色)

《巡礼者の目》と《ブレードグリフの試作品》 、《統率者の宝球》あたりはどの構築でも入りそう。

《練達の職人、レヤブ》の価値を決める装備品は四枚。ただその内容はいまいち。

二枚の《海賊のカットラス》が海賊構築いけるかもという幻想を抱かせる。

 

練達の職人、レヤブ 海賊のカットラス

 

 

f:id:tenkoTCG:20201129150259j:plain

カードプール(伝説のみ)

 

パッと見た感じだと黒赤の生け贄、赤白の装備、白黒のトークン、青赤の海賊あたりが組めそうな印象を持った。

 

そんなわけでいざ構築。

 

 

デッキ構築

 

いちばん最初に組んだ構築がこちら。

f:id:tenkoTCG:20201217192759j:plain

黒赤生け贄

f:id:tenkoTCG:20201217163748p:plain 船壊し、ダーゴ

 

《センギア》と《ダーゴ》を素直に組み合わせた黒赤生け贄。

前述の理由から《一座の支配人、ジョーリ》よりも共闘統率者を優先する。

 ちなみに宝物トークンは1個で《船壊し、ダーゴ》のコストを(3)軽減してくれるので抜群に相性がいい。

 

どちらの統率者も重いので土地25+マナファクト4枚と厚めのマナベース。

統治者ギミックがあるので、フラッドするよりも土地が詰まるリスクのほうが大きいと判断した(スクリューでターンが飛ぶと、対戦相手が多いぶん普段の三倍リソースの差がつく)。

 

ただ4マナ域が過剰で、低マナ域が絶望的に薄い。

3枚の《ダイアモンド》をカウントしても不足感を感じるラインナップ。

黒のスペルがどれも状況を選ぶものしかなく、もうすこし質のいい除去などが欲しかったというのが正直な印象。

重たい生物が多く、維持できれば単体で勝てるクリーチャーも多いので、《超常的耐久力》を数枚差し込んでもいいかもしれない。

 

 

 

次に組んだデッキがこちら。

f:id:tenkoTCG:20201217193231j:plain

赤白装備品

 

前述のとおり白で組むと《陽光たてがみの使い魔、ケレス》が2ドロップを確定してくれるため、低マナ域を埋める必要がなくなるのが強み。

おかげで《練達の職人、レヤブ》以外の2マナ以下の生物をデッキから取り除くことができた。

そう考えると土地25+マナファクト2枚は過剰か。数枚を《魂の火》に差し替えてよさそう。

 

飛行か《ターゴ》に装備品をつけて殴るというコンセプトの明確性は好感触だが、4枚ある装備品の性能がそれほど高くないのが気がかり。

いちおう赤白二色の組み合わせはもっとも多く除去を採用できる(9枚)プールでもある。

 

 

 

この後、青赤海賊や白黒トークン、黒緑エルフを試したが、どれも完成度でこの二色に劣る印象を持った。

特に青に関しては海賊で組めなかったら他に選択肢がないようなカードプールだったので、構築の早い段階で色ごと切り捨てることになった。

 

黒赤サクリファイスか、赤白装備品か。

時間目いっぱい使って悩みに悩んだすえ、赤白を手に取ることにした。

決め手になったのは回避能力の多さとスペルの性能差で、これははっきり白>黒と明暗が分かれた。特に黒は異なるアーキタイプのパーツが多く、1枚1枚の方向性がバラバラだった。

 

不安点があるとすれば、統治者以外にアドバンテージ手段の薄い前傾アグロが3人×40点を削りきれるのかという部分。

こればっかりはこのフォーマットを体験してみなければわからない。

 

というわけで着席し、いざ対戦。

 

対戦結果

vs 青黒再演ドレッジ

  緑青続唱ランプ

  赤緑エルフ

 

1ゲーム目が一時間超えのすさまじいロングゲームになった結果、二ゲーム目も同卓で対戦することに。

結果はどちらも2~3位あたりで、青黒の再演ドレッジが二回とも1位。

 

鋭い目の航海士、マルコム ダスキネルの工作員、ネイディア

 

共闘統率者二体のシナジーが美しく(宝物生け贄でネイディアが育つ)、宝物によるマナ加速で《ファイレクシアの三重体》の再演も余裕、という横綱デッキだった。

 

目立たないナリをしているが、《マルコム》は単色共闘の中ではトップクラスに強力な統率者だと感じた。

前述したように回避能力が環境内で根本的に強く、単純にマナ加速が強力なだけでなく宝物トークン自体があらゆるシナジーの発生源になる。

 

 ファイレクシアの三重体

 

コンスピラシーの時もそうだったが、多人数戦では全員のライフを均すように調整しながら全員同時にレッドゾーンに突入していくようなライフ遷移が多い。

そのため危険水域に入った対戦相手を全員同時にハイパワーで刈り取れる、高スタッツ再演のインパクトは非常に大きく感じられた。

 

 

一方赤白装備品の手応えはどうだったかと言うと、「思ったよりもやれる」というのが正直なところ。

ただ「一人二人なら殴り倒せるが一位にはなれない」という赤白の宿業のような印象も持った。

愚直にコンバットを介して各個撃破するしかない以上、どうしても交戦後の消耗時に漁夫の利を取られてしまいやすい。

この手の直進デッキが一位になるには、たとえば《燃えさし爪の使い魔、ケディス》みたいな飛び道具が必要かもしれない。

 

燃えさし爪の使い魔、ケディス

 

 

 

そんな感じの統率者プレリ体験だった。

正直このフォーマットは抜群に面白い。

もちろんカジュアル的な意味でだが、今までのリミテッドでいちばん好きかもしれない。

盤面に落とされたボムの処理を巡って交渉が白熱し、厄介なエンチャントを解呪したプレイヤーに喝采が飛ぶ。その恩のために勝ち目の薄い戦いに挑み、英雄になることもあれば、敗残者同士で肩を叩きあうこともある。

 

構築の正解、プレイングの正解を追求せずとも楽しめる度量の深さは多人数戦ならでは。

プレリとは文字どおりプレリリース「パーティ」、カードで遊ぶ「祝祭」なのだと実感できた四時間だった。

 

統率者リミテッドパックが毎年の定番商品になることを願わずにはいられない。

 

いやー、本当に面白かった。

【読書感想】矢部嵩『少女庭国』:✕✕を自動生成するシステム

 

自分が崇拝するでびでび・でびる様がレビューしていたので読んだのだが、これが非常に面白かった。

 

詳細はネタバレ込みの下記感想に書くが、大前提としてこの本に百合を期待して読むと(どういう種類の百合を望むかによるが)基本的には肩透かしを食う、ということだけは伝えておく。この作品は正しくSFであり思考実験の記録だ。

 

〔少女庭国〕

〔少女庭国〕

 

 

 

読書感想を書き記すことまで含めて一つの読書体験、という感覚が自分の中にある――というか書評を書かないと読んだ本の内容をマジですぐに忘れてしまう。これは観た映画でも読んだ雑誌でもなんでもそう。

 

記憶は周期的なリトライやリプレイによって定着するというが、自分にとって感想を書いておき、それを折に触れて再読することは思い出の定着作業に近い。

 

 

 

以下、ネタバレ有り感想。

 

続きを読む

【PBW】【第六猟兵】『今年もアルラウネ収穫の季節がやってまいりました』マスターズノート Part.1

 

 

 

f:id:tenkoTCG:20190812104357j:plain

 

このたび自分が担当した『第六猟兵』のシナリオが無事完結したので、備忘録的にマスター視点のノートをまとめておきたいなと思った。

 

 

 

 

だが雪崩的に決壊が続いたリアル事情によって、かんたんなメモを書き上げるだけでなんと半年近い日にちが経ってしまった(!)

それでも自分にとってはとても大切な経験であったことに変わりはない。

もはや風化しつつある個人的感傷にすぎないのだが、備忘録としてこの場に書き残す。

 

 

 

第六猟兵なんぞや

 

『第六猟兵』というのはプレイバイウェブ(PBW)というジャンルのゲームで、まあすっごく乱暴にいえばテキスト形式でのTRPGのオンラインセッションみたいな感じ。

 

チャットセッションみたいにその場でプレイヤー⇔GM間を逐次的にやりとりしながら進行していくのではなく、PBWではプレイヤーがシナリオ中の行動方針を送る⇒数時間~数日後にGMが小説形式で行動の結果を返す、という方式になっている。

オンセとくらべ、より「読み物」としての一貫性を重視したゲーム形態になっているのが特徴。

あとTRPGとくらべ、プレイヤー側は拘束時間など諸々の参加コストが軽くて済む(シナリオ中に最大3回行動指針を送ればいいだけで、道中の行間はマスター側が補完してくれる)。

 

いにしえのTCGゲーマーの中には、ゲームぎゃざの真ん中らへんのページでガンダムとかRu/Li/Lu/Raの読参企画をやっていたのを覚えている人がいるのではなかろうか。 

あれらはプレイヤーとGMサイドが手紙/ハガキでやりとりするプレイバイメール(PBM)という形態だったのだが、これを手紙でなくネットを介して行うようにしたのがPBWと言える。

 

 

……などと解説してはみたものの、自分もPBWはこの第六猟兵が初めてである(TPRGも経験はゼロ)。

運営するトミーウォーカーという会社もPBW界隈では老舗らしいが、そのことを知ったのもつい最近だ。

(じゃあなぜPBWに参加しようと思ったのか? たまたまである。たまたまタイムラインに流れてきたからである……)

 

 

そんな完全に門外漢な自分が初めてPBWに参加したのだが、そこでいちばん驚いたのはリプレイ書いてもらうのが有料だということ(!) 

よく配信で見てたオンラインセッションの延長線上で考えていたので、GMから返答を貰うのにお金が必要とは知らなかった。

 

           いかにもおバカな当惑をつぶやく当時の自分

 

 

しかしよくよく考えてみれば、PBWというのはプレイヤーの参加コストの減少分をマスターが受け持つ(プレイヤーは行動方針を出し、マスターは一つの物語を執筆する)ことで成立しているゲーム形式で、プレイヤーとマスター間の参加コストはTPRGよりも明確に非対称的だ。

 

じっさい調べてみたら第六猟兵のGMはマスター兼「シナリオライター」として扱われていて、シナリオ一本ごとに運営会社であるトミーウォーカーからお給金も出ていた。

つまりプレイヤーからすれば「同じ卓を囲んで遊ぶ」というよりは「自分のPCの活躍をライターに小説にしてもらう」というようなプレイ体験に近い様子だった。

 

ちなみに参加者なら誰でもシナリオを投稿してマスターになれるわけではなく、専用の試験を受けて(指定された要項を満たした模擬オープニングやリプレイ回答をメールフォームから送信し)、運営会社からマスター合格の判定をもらう必要がある。

 

自分もユーザー登録してから3日後くらいに試験の存在を知り、どうにか回答をひねりだして送信。無事合格できた(公式の合否判定は迅速で、たしか翌日には送られてきた)。

 

PBW初参加にもかかわらずなぜマスターになろうと思ったのか?

それは……無課金でも遊べるからである……。

シナリオに参加するのは有料だが、シナリオを書く側に回ればタダで遊べるのである……。

 

そんなわけで年が明けていろいろ落ち着いてから、シナリオを一本書くことにした。

 

 

 

書くまえ

 

実は表題シナリオのまえに物は試しでオープニングを一本投げているのだが、運営の事前チェック段階で「書式がめちゃくちゃ」という理由でボツになった(オープニングに関してのみ公開前に運営のチェックが入る)。

書式を崩したのはシナリオ内容と絡めた意図的なものだったのだが、たいへん勉強になりました……。

(なお公式が定める書式の赤入れはかなり厳密で、たとえば文頭や文末に使える文字が決まっていたり、空行を二回連続で使えなかったりする)

 

 

さておき、第六猟兵のシナリオへの参加費用は1プレイングあたり500円。

思うに素人のショートテキストに500円払うというのはなかなかない。500円というのは文庫本が(プロの作品が!)一冊買える。

 

その支払いに見合うだけのものを書く、などとおこがましいことを考えるつもりはない。ただ少なくともお金を払ってもらう以上は、それなりにいいものを書きたいなという気持ちでいた。

できることならプレイヤー全員が「このシナリオに参加してよかったな」と思ってくれるようなものを書きたかった。

 

また自分はマスターとしてもPBWプレイヤーとしても新人であり、過去PBW作品からのプレイヤー間での付きあいや信頼関係の積み重ねみたいなものもない。

名無しの新人がベテランのマスターと同じ土俵に上がって参加者をとりあうわけで、なにかしら武器がないとシナリオに人を集められないなとも思っていた。

 

とはいえ自分のテキストに武器と呼べるようなものはなにもない。名無しの背くらべから頭一つ出せそうなアイディアも特に持っていない。

結局のところ思い浮かぶのは泥臭さの代名詞、「人より手間暇をかける」ぐらいのものだ。

なので第一作目だけはコストパフォーマンスだの時間効率だのは考えず、とにかく手間暇を尽くして自分に書けるだけのものを書くことにした。この先のマスター活動の名刺みたいなものを作るつもりで臨んだ。

 

 

以下、本編をオープニングから順番に本文をときどき引用しながらマスター視点で振り返る。

 

なおトミーウォーカーによると、下記の権利表示をしたらシナリオは外部サイトで公開してもOKらしい。web2.0的思想で非常にありがたい……。

ただしプレイングだけは転載NGとのこと。著作者がマスターではなくユーザーであるためだろう。

 

なのでこのエントリ内ではユーザーのプレイングに言及するが、内容はここに記載できなかったりする。対照したい方には面倒になるが、下記のリンク先にて都度確認していただければと思う。

 

 

 ●権利表示

『第六猟兵』(C)墨緒/トミーウォーカー

 

 

 オープニング

f:id:tenkoTCG:20190812095839j:plain

「――というわけであなたたちには、異常繁殖したアルラウネの収穫を手伝ってもらいたいの。で、その原因まで明らかにできたらベストね!」

 
1.アルラウネ ⇒ 2.花を活性化させるドラゴン ⇒ 3.商店の手伝い、とフラグメントガチャがたまたま運良く噛みあったので、このようなストーリー展開になった。
  
締めに商店フラグメントが配置されたのを見て「倒したアルラウネを販売する」というアイディアを連想し、そこから「アルラウネを育成している農園の収穫の手伝い」という一章の構成に至った。
 
 

農夫息子「犬も足りねえ、ホシカもねえ。このまま行けば耕地を越え、農道を覆い、街にまで種苗が広がって行っちまう」

 

ホシカというのは「干鰯(ほしか)」、つまり魚肥のこと。

アルラウネは肥料を与えるとおとなしくなる、というのがGMが事前に想定していた解の一つだった。

とはいえ敵設定は参加者に応じて適時作りなおすつもりでいたので、なるべく強調したりはせず、異物感のあるワードをぽんと配置する種蒔き程度にとどめた。

 

自分の中でこの手の伏線は別にきちんと回収される必要はなく、プレイヤーが使える道具を置いておく感覚に近い。

そばによく燃える木がありますよ、とか、ベランダにロープが置いてありますよ、みたいな感じだ。

プレイヤーが利用するならそれでいいし、そうでなければ背景にまぎれていつの間にか消えている。

この手の「プレイヤーが使えそうな道具やギミックを細かく撒いておく」という行為がマスタリングでは大事なんじゃないかと自分なりに考えていた。

 

そして魚肥とか金肥という風に書いてしまうとGMからのアピールが露骨すぎるように感じたので、農夫言葉の「ホシカ」にした。

こういう風に専門用語を混ぜ込むと「ん? ホシカってなんだろう」と読み手が違和感を感じて自発的に調べる可能性が高くなり、結果としてマスターからの誘導感を漂白してくれるのではないかという考えがあった。(奏功したのかは分からない)

 

 

スケッチには下半身が根茎状の、体長20cmほどの少女図が描かれている。

 

細かいところだがこれはちょっと小さく設定しすぎかなと投稿したあとに感じた。

想定していたアルラウネの大きさが大根ぐらいだったので、30~40cmぐらいと書くべきだった。

20cmだと「耕地を覆う」レベルになるまでどれだけの本数が必要になるんだ……

 

 

農地の行きすぎた破壊や焦土化は、現地で慎ましやかに暮らす農民たちにとって悪夢以外のなにものでもないだろう。

 

『第六猟兵』のゲームシステム上(最低400字からコンパクトに展開されるシナリオ)、現地民の人間性というか暮らしぶりみたいなのが物語の中で省略されやすいんじゃないかと思った。

今回は「農地」という泥臭いテーマがあったので、せっかくだから現地民の地に足をつけた姿を書きたいという心構えでいた。

最終章は日常回で商店を手伝う運びになっていたので、現地民のキャラクターをきちんと描写しておいた方が後の交流のシーンで活きるだろうという目算もあった。

 

f:id:tenkoTCG:20190812095839j:plain

「猟兵の力は強大だけど、大事なのはいつだって困ってる人に寄り添うあなたの気持ちよ!」

 

これはオープニング提出の30秒まえとかに「なんかここに前段の補強になるセリフを入れて文章のリズムを整えたいな」という感じで急遽付け足した一文だったのだが、思いがけずこのセリフがこの物語のメインテーマになっていたように思う。

このシナリオのテーマはなんですかと問われたら、「困っている人に寄り添うあなたの気持ち」と答える。

参加者のみなさまが物語のどこかの一節で、このセリフをもしも想起してくれていたのだとしたら、MSとしてこれ以上の喜びはない。

 

しかしこのシナリオを端的に表現するようなセリフが、まったくの後付けで生まれたものなのが個人的にはとても愉しい(というか後付けでこのテーマに物語を寄せていった部分も大いにある)。

このようなライブ感による遊星飛行もPBWならではの体験だった。

 

 

そんなこんなでオープニングを提出。そして半日も経たず無事承認。

参加者からのプレイング投稿をドキドキしながら待つことに……。

 

 

第一章

 

 

で、いきなり最適解のようなものが来た。

 

一人目 星羅 羽織PC

f:id:tenkoTCG:20190812082712j:plain

    がっぽがっぽ ←かわいい

 

初シナリオでほんとうにプレイングが来るのだろうか?

一人も参加者が来ないまま奈落に沈むのでは……?

と思っていたので、はじめてプレイングが来たときはほんとうにありがたかったし大変うれしかった。

しかもこれは確かオープニングが承認されたその日のうちに来たんじゃなかったかな。メールを受け取ったときは手を合わせてありがたや~~~と画面を拝んだ。

 

プレイングの内容もかなり的確、というか想定回答の百倍スマートだった。

「遠距離から引っこ抜く」みたいなプレイングは送られてくるかなと思っていたが、「ローブで覆うことで叫びを封じて」というのが鮮やかだ。羽織PCの独自性(ローブのヤドリガミであること)をうまく使っているし、絵的にも美しい。

なにより「アルラウネを傷つけすぎると商品価値がなくなる」ことをきちんと記述していたプレイングはこれだけだった。

 

加えてこのプレイングには彼女のキャラクター性もすごくよく出ていて、マスター的にもストーリーを作りやすかった(研究材料としてアルラウネが欲しい、お金がっぽがっぽ←かわいい)。

うまくいえないのだが「シナリオ内世界にきちんとキャラクターが入りこんでいる」という感じがした。おかげで遅筆な自分としてはものすごく早く書き上げられたと思う。

リプレイもそれらプレイングの手際を反映して、ほとんど絶賛の内容となった。

 

気になるところがあるとすれば、初手にして満点回答が出てしまったことぐらいである……。

後につづくプレイヤーが困るかもしれないと思った。

なんとか演出でうまく差別化したいところ……。

 

 

二人目 ハルピュイア・フォスターPC

 

f:id:tenkoTCG:20190812082944j:plain

     シナリオでも1、2を争う武闘派

 

で、羽織PCとは対照的にゴリゴリの肉弾戦タイプだったハルピュイアPCのプレイング。

 

猪突猛進気味な彼女のアクションは直前の羽織PCとの対照性を見せ、物語の緩急をうまく生み出していた。

ハルピュイアPCが意図していたかはわからないが、非常に美しい流れを作ってもらったと思う。

 

またMSとしては「アルラウネの音波がどの程度のダメージを与えるか」を提示できたのもシナリオ進行の面でありがたかった。後述するが、次章以降で彼女の行動が大きな意味を持ってくる。

 

音波の攻撃に対しては、彼女が防御策を用意していなかったためダメージを与えることになってしまったが、MSとしては「申し訳ねぇ……」と思いながら泣く泣く赤丸ひとつを加えた感じだった。

いちおうダメージ判定をマスター説明書で確認したところ、赤丸ひとつはほぼノーダメージと同義だったので、次シナリオに残らない最低限のダメージを与えることにした。

(とはいえ、あまりにもダメージ描写が浅すぎると以降の脅威度も薄れてしまうので塩梅が難しい)

 

序章段階での被弾をペナルティだとPLに感じてもらいたくなかったので、あくまで演出の一環だとプレイヤーに意識してもらえるように心を砕いた。

具体的にはダメージ描写で彼女のキャラクター性に一歩踏み込んで物語を描くことにした。

彼女の参加していた過去シナリオを読みこんで、その時に生じたイベントを演出に取りいれることにした。

 

(ここで再度リンクを貼るが、参加リプレイ部分に直接飛べないので各々スクロールしてもらわなければならない……⇒ 今年もアルラウネ収穫の季節がやってまいりました

 

ここはハルピュイアPLにのみ受けとってもらえればよいパートなので、ポエトリ色強めな(そこまで詳細に描写しない)書き方になった。

 

個人的には第六猟兵の活動すべてがそのキャラクターの土台になっている(活動履歴がそのキャラクターを形作る)感覚が好きでこのような演出に挑んでみたのだが、PCの個人的な領域に踏みこみすぎている感じもしていて非常に迷う部分でもあった。

このような演出を受け入れてもらえたのか、いまだ反応が知りたい部分でもある。

 

 

 

三人目&四人目  バッカンボーPC&エドゥアルトPC

 

f:id:tenkoTCG:20190812052844j:plainf:id:tenkoTCG:20190812100523j:plain        陽のバッカンボーと陰のエディ、二人のアプローチの違いが面白い

 

 

髭のおじさんPCのプレイングが続けて送られて来たので、はじめて連携採用というものにチャレンジした。(そんな理由でいいのか?)

 

バッカンボーPCはシナリオの方向性に完璧にフィットしたキャラクターで、こういうPCが自分のシナリオに参加してくれたことが本当にうれしかった。

際限なくカオティックな第六猟兵の世界観のなかで、地に足の着いた実直な農夫のキャラクターが自分にはとても新鮮に映った。

 

農夫への聞き込みというかたちで情報収集をプレイングに入れていたのは彼が初だったので、ありがたくこちらも情報をドコドコ出させてもらった(こういう堅実な役回りを率先して行ってくれたのも、彼のキャラクター性にきちんと添っていて好感を抱いた)

 

このとき「アルラウネは土グルメ」 という情報を提示した。単にプロローグで語られた内容の詳述なのだが、急遽ここで無力化の材料に土だけでなく水も加えることにした。

土肥だけだと利用幅が狭かったので、プレイングの受け皿を広げるつもりで付け足した。

 

 

一方でエドゥアルトPCはかなり玄人受けのキャラクターで書き出しにかなり悩んだ。

自己紹介を見てみたところロジカルという単語が出ていたので、いわゆる『論者』ということでいいのかな? という気もしたんだけど、プレイング自体にその要素はなさそうだったので確信が持てなかった。

「ござる」っていう語尾も違うはずだし……たしか……。 

迷いながらもプレイングの方向性に乗っかり、コメディリリーフ強めの扱いで動かすことに決めた。

(ただ本人が演出していないのに勝手に草生やした発言をさせたのはよくなかった。

投稿したあとでさすがにエドゥアルトPCのキャラクター性を軽視しすぎだと内省した。PLが不快に思っていたなら本当に申し訳ない)

 

 

エドゥアルトPCはプレイングの内容がどれも面白く、どんな立ち回りをしても読者の目を惹くタイプのキャラクターだと感じた。

ただそれゆえに連携して動かす際には他の参加者を食いすぎてしまわないように気を配った。

このパートでバッカンボーPCのセリフ量が若干多いのは(実直なキャラとキャッチーなキャラで)自分なりに嘱目のバランスをとろうと苦闘した結果なのだが、逆にエドゥアルトPCが割を食ったように感じていないか不安だった。

 

それにしても前段の長過ぎる自己紹介パートに対し、問題解決パートがすごく短いのが実にアンバランスだ。

でも仕方ないと思う、なぜなら文句のつけようがない完璧な回答だったのだから……。

 

しかしプレイヤーが歯ごたえを感じられずに終わってしまうと申し訳ないので、次章へのヒキも兼ねて次の脅威をチラ見せすることにした。

物語の連続性を感じるのでこの手のブリッジ演出はけっこう好きなのだが、プレイヤー側から見るとリプレイ単体で完結するように書いてほしいものかもしれない。

あまり多用するべきではないかもと思う。これも反応があるなら知りたい部分。

 

 

実は第一章はプレイングがもうひとりぶん来ていたのだが、提出期限が二人とまったく同じタイミングで執筆が間に合わなかったため、泣く泣く却下申請することになってしまった。

八時半の締め切りで自動却下になると第二章の導入を書くまえにプレイングが来てしまうかもしれないので、手動で却下申請を行わざるを得なくなってしまった。

でもそのプレイングにまったく疵瑕はなく、完全に自分の力量不足による問題だった。せっかくプレイングを頂いたのに申し訳ない。

 

 

 

閑話

 

第六猟兵のガイドを見ていると、どうもプレイングが採用された参加者からマスターに向けてお手紙(という名の感想メッセージとかお礼の言葉)が届くことがしばしばあるらしかった。

たぶん連綿と続くPBWの歴史のどこかでマナーとして定着したのだろうと思う。

 

最初に自分がそれを知ったときは「お礼の手紙が不文律化しちゃうと、送る側は無理にでも感想をひねり出さないといけなくなるから大変だな~」ぐらいにしか考えていなかった。

むしろお礼の慣習化については否定的に考えていたくらいだ(義務的なお礼は送る側も送られる側も不幸せになるだけだろう)。

が、実際にマスターとして第一章を終え、PLからの手紙を初めて受けとって分かったことがある。

 

f:id:tenkoTCG:20190812095839j:plain   お手紙だいじ。

 

シナリオ中でもマジだいじ。

そして送る側にとっても送られる側にとっても大事だと心の底から思った。

 

 

というのも手紙を送ることでマスターに自PCをより魅力的に動かしてもらえるようになるから。

 

マスター側からすると、預かったPCの描写に対して「その書き方でOKですよ」というある種の「お墨付き」をPLから受けとることで、そのキャラクターの動かし方の指針が正しく定まる感があった。

それがこのシナリオを進めていく一週間ほどで、身に沁みて分かった。

 

リプレイに対して参加者からのフィードバックがないと、マスター側は明確な手がかりを持たないまま次章以降も「えーっとこのキャラは一章の方向性で書いてもいいんですか? 継続参加してるってことは大丈夫ってことですよね……?」といまいち確信を持てない中でフワフワとキャラクター描写を重ねていくことなる。

 

結局のところ他人のキャラクターはどう書いたとしても不確実性の迷いが残る。

その中でPLからのお礼の手紙というのは、PCを動かしていく上で「この方向で書いていいんだ」という確実性の拠りどころになった。

ゴールの見えない森の中で方位磁石を与えてもらえる感じ。

なので手紙を貰った参加者のPCの描写は、それ以前と比べると地に足が着いて生き生きとした表現になっているだろうと思う。

 

 

要するに無料で自PCの描写のクオリティアップに繋がるので、シナリオ進行中でも手紙は送り得というのが自分の結論になった。

(もちろんこれはマスター側がPCの設定をきちんと読みこみ、解釈を正しくリプレイ上に表現しているという前提に基づく)

 

自PCについて間違った理解をマスターがしていた場合でも、把握ミスによる人称間違いなどの指摘なら(あまりにも攻撃的な口調じゃなければ)個人的にはとてもありがたいと感じる。

 

個人的には、

「楽しく読みました。次参加する時もこの方向性でお願いします。ただ年下に対する二人称は『おまえ』ではなく『アンタ』です」

こういうの内容だけのお手紙でも大変ありがたいと思う。

 

感謝の言葉を尽くしたり語彙に凝る必要はまったくなくて、「この方向性でOKですよ」という誘導灯がもらえるだけでPLからのメッセージとしては個人的には十分以上のありがたさだった。

 

というわけで参加したシナリオが気に入った時(そしてそのマスターのシナリオに継続参加したいと思った時)は、シナリオ進行中だろうと言葉数少なかろうとドコドコお手紙を送ってあげるとwin-winになれるんじゃないかなと思いました。

 

 

 

第二章以降は、次の記事に続きます。

(⇒ もうちょっとお待ちを……)

 

【TCGデザイン論】シャドウバースのゲームシステムの特徴というか問題点について

 

関連記事:

 

 

リリース初日から今日にいたるまでいまだにシャドバをシコシコやっている。

 

 

 (ポエム)

このゲームはもう楽しいとか楽しくないとかいうレベルではなくなっている。なぜ自分はいまだにこのゲームをプレイしているのか? だ。日常に数滴の空虚を注ぐためにプレイしている。ゲームについて思考するための余白だ。自分にとってシャドバはゲームではなくであり、だからそこに楽しいとか楽しくないとかいう評価軸はない。あるのは禅をするか、禅をしないかという己の意思のみである。

しかし世に蔓延るほとんどのソシャゲがそうではなかろうか。ルーティーン化した空虚。重要なのは虚ろの海を掻き泳ぎながらそこに何を見いだせるか、何を自分の手元にたぐりよせられるかだ。眼前の世界を見よ、そこは君を生かす酸素に満ちている。しかしそれは探さねば見つからぬ。

(ポエム・315文字)

 

 

ひとつのゲームを長くプレイしていると、そのシステムについてつらつらと自分なりの考えのようなものが浮かんでくる。

 

なおこの記事では開発の個別のカードデザインについての強弱は一切語らない。全体かつ根幹のゲームシステム設計についてだけ見ている。

 

 

進化が事故のストレスを増幅する

 

シャドバでは進化すればどんな雑魚でも恒久的にクロックを強化できる。その値は初期ライフ20に対して+2/+2、MTGなら2~3マナオーラ相当の修整になる。

 

これが非常に強烈で、盤面展開で負けてる側は撃ち漏らしへのプレッシャーが極端に高まる。相手のボードを完全にスイープできない展開に対して、ライフレース上でのペナルティが大きい。

 

普通ならライフ20点のゲームにおける1/1は20ターンクロックであり、戦略的あるいは不運な配牌(手札事故)による放置が許容されやすい。

 

一方シャドバでは進化権を切るだけで7ターンクロックに育つので、ライフレースで負けている側はただの1/1ですら撃ち漏らしに強いペナルティがかかる。

 

そのせいでシャドバはハースストーン・クローンの中でも特に殲滅戦へのプレイ誘導が強烈な、超極端なテンポゲームになっている。盤面構築に猶予がない。

進化が0コストアクションのためクロック展開と両立できてしまうことがよりテンポゲーム性を拡大させてる面がある。

 

 

そもそもHSクローン共通の要素として、攻撃側が攻撃先(狩る相手)を選べる召喚酔い+ハント型の戦闘システムというのがある。

 

この戦闘システム下では、ボード展開で出遅れた側は先に着地させた相手によって一方的にこちらのクロックを狩られつづける=展開で一度出遅れると「負けっぱなし/Lose More」になる、というようなことを上述の記事で書いた。

 

だがこれに加えてシャドバでは、

 

・ヒーローパワーやテンション溜めのようなマナカーブから外れた展開への受け皿がない

・「どんな弱小クロックでも」「0コストアクションで」「恒常的に」クロックを強化できる進化システム


この二つが加わることで、結果としてマナカーブ通りにプレイできないこと=事故が他のゲームと比べて格段に死に直結しやすい、非常にストレスフルなゲームになったと感じる。

 

システム上事故が致命的になりやすく、しかもその事故をプレイヤーが直接的に体感しやすいゲーム設計になっている。

 

 

 

進化は攻め手も使えるのが問題

 

自分は以前、「HS型の戦闘システムでは受け手側がボードスイングしやすいorボードにかかわらず盤面構築できるようにゲームを設計しないとダメ」(要約)みたいな記事を書き、そのなかでシャドバの進化を受け手側のスイング・メカニズムの一つとして挙げた。

しかしそれは間違っていた。物事の一面だけしか捉えていなかった。

 

進化は受け手(盤面展開で遅れている側)のスイングだけでなく攻め手側のクロック増強にも使えるのが非常に問題で、これだとハント型戦闘の問題、すなわち受け手のLose More性の問題解決としては片手落ちになってしまう。

 

 

すでに設計され二年運用されているゲームに対してIFを言ってもしょうがないのだが、進化はデフォルトの+2/+2のサイズアップが不要だったのだろうと思う。

デフォルトは突進(HSでいうところの急襲)付与だけでよかった。そしてカード個別の能力によってサイズアップしたり、進化時能力がはたらいたりする。

 

こうすることである程度受け手側のスイング性は保たれつつも、撃ち漏らしに対する理不尽なまでのライフレースペナルティはなくなる。現状たびたび起こるワンサイドゲームへのストレスも多少は軽減されていたのではないかと思う。

 

 

さらにIFを重ねるが、デフォルトのサイズアップがなかったら、1ゲーム中の進化権をプレイヤーにもっとたくさん与えられただろうと思う。

HSクローンの中でも、進化はこのゲーム独自の差別化要素なので(広告でもしばしば強調される)、1ゲーム中に2回3回と言わず5回10回と行えたほうがゲーム性の特徴が際立つ。

 

これは単に進化権の初期値を5pとか10pにするということを意味するのではなく、たとえばターン経過で進化権が回復するとか、DQライバルズの「テンション溜め」のようにマナを支払うことで進化権の断片をすこしづつ蓄積させられるとか、いろんな設計がありえただろうと思う。

特にテンション溜めのような余剰マナの受け皿となるデフォルトアクションの実装は、前述した手札事故のストレスを軽減するうえでも役立つ。

 

現在の「限られた進化権の使い所を悩ませる」というリソースコントロール的なプレイ感も理解できるが、それよりはバンバン進化してバンバンスイングしていくようなプレイ感の方がこのゲームに求められるものにフィットするように思う。

よりスピーディで直感的、爽快感とスイング性の高いゲーム性(あとせっかく全カードにイラスト二種類用意しているわけだし)。

 

 

しかしこのどれも二年間運用されたゲームに付き合ったからこそ言える意地汚い後出しに過ぎない。

本職たるゲームデザイナーの産みの苦労は推して知るべしといったところ(でも国産TCGはデザイナーズノートがぜんぜん公開されないものだから思考過程が見られないのです……)。

 

 

いつかどこかの記事につづく。

  

 

 

 

Twitter

でもTCGデザイン論について語ってます。

 

関連記事

【MTG】Great Designer Search 3の設問を解く Part.2 デザイン編

前回の記事: 

 

 

公式が行うユーザー参加型のカードデザイナー募集企画、GDS3の各問題が公開されているので解いてみた(二回目)。

 

Great Designer Search 3 | MAGIC: THE GATHERING

 

 

 

前回のブログではエントリーシート代わりになるエッセイ問題を解いたので、今回はその続き。

 

ただ、トライアルの第二問はマークシート問題なので飛ばす。

公式の記事は以下のとおりで、マローによる回答も記載されている。

 

 

 

 

 

なのでこの記事ではトライアルの第三問に回答。 

 

 

以下の条件下で、10枚の二色カードをデザインするという問題。

 

  • カードは全て2色で、(以下に記されている)各2色の組み合わせそれぞれが存在すること。
  • 5種類のカード・タイプ(クリーチャー、エンチャント、インスタント、プレインズウォーカー、ソーサリー)それぞれが2回ずつ、異なる色で存在すること
  • 各レアリティ(コモン、アンコモン、レア、神話レア)がそれぞれ少なくとも2枚存在すること。
  • 提出するカードは、自分が最も優れているデザインだと思うものから最も劣っているデザインだと思うものの順に並べること。

 

 

ちなみに決勝進出者の回答はトライアルから本戦にいたるまですべて公式HPにて公開されている(西海岸バンザイ!)

 

MtG wikiの該当ページには各参加者の回答ページへのリンクが記載されているので、興味のある方はぜひ目を通してみることを勧める(全編英語だがカードだけなら簡単なMtG語が分かれば判読できる)。

 

熱量あるアマチュアたちが繰り出す創造的な試作品の山々もたいへん刺激的だが、それら1枚1枚に対する熟練のデザイナー&デベロッパーたちによる真剣な評論も同じくらいすごくて目眩がする。

いやそんなとこ突くか普通? みたいなデザイン上のすごい急所を的確に貫いてくるのだ。

正直自分がデザイナーだったら泣いちゃうコメントとかあった。

 

なんというか、「カードデザイン」という行為に対して開発はこれほど真摯に向き合ってるんだということが理解できる内容になっている。熱盛です。

 

 

 

さておき、自分はこの問題、最初は10色の組み合わせにそれぞれキーワード能力を1個ずつ、合計10種類のキーワードをデザインするという個人的な縛りでやっていたのだが、条件を見るとこの設問では新規キーワードを作っちゃ駄目らしいので全部やり直し。

プレーンなデザインのみでやることにした。

 

問題文にある通り、自分視点でデザインが優れていると思う順番に並べてある。

 

 

 

1.

未知数を呼ぶ者、キュリル

(3)(U)(R)
伝説のクリーチャー ― ドラゴン・ウィザード  (Mythic)
4/4

飛行
あなたがマナ・コストに(X)を含む呪文を唱えるたび、占術1を行う。その後あなたのライブラリーの一番上のカードを追放してもよい。そうした場合、その呪文のXは、これにより追放されたカードの点数で見たマナ・コストに等しくなる。

 

Curil, Caller for the unknown

{3}{U}{R}
Legendary Creature - Dragon Wizard  (Mythic)
4/4

Flying

Whenever you cast a spell with {X} in its mana cost, scry 1. Then you may exile top card from your library. If you do, that spell's {X} is equal to the exiled card's converted mana cost.

 

 

 

2.

英雄たちのプリズム

(W)(U)
エンチャント (Rare)

あなたは英雄たちのプリズムを、それがクリーチャーではないエンチャントのままであることを除いて、戦場にあるいずれかのクリーチャーのコピーとして戦場に出してもよい。

 

Prism of Heroes

{W}{U}
Enchantment  (Rare)

You may have CARDNAME enter the battlefield as a copy of any creature on the battlefield except it's still a noncreature enchantment. 

 

 

 

3.

乱動の代弁者
(1)(G)(W)

クリーチャー ― エルフ・ドルイド・同盟者
3/4

あなたが自身のライブラリーから土地カード1枚を探す場合、代わりに点数で見たマナ・コストが1以下のクリーチャー・カード1枚を探してもよい。

 

Voice of the roil
{1}{G}{W}
Creature - Elf Druid Ally  (Rare)
3/4 

If you search your library for a land card, you may search a creature card with converted mana cost 1 or less instead.

 

 

4.

猪狩り 
(1)(R)(G)
インスタント  (Common)

クリーチャー1体を対象とする。このターン、それは可能ならば攻撃する。
緑の3/3の猪・クリーチャー・トークン1体を生成する。

 

Boar Hunting
{1}{R}{G}
Instant  (Common)

Create a 3/3 green Boar creature token.
Target creature attacks this turn if able.

 

 

5.

生術士の領域
(2)(G)(U)
エンチャント (Uncommon)

クリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、それの上に+1/+1カウンターをX個置く。Xはそれのパワーとタフネスの値の差に等しい。(例えば、それが0/3や4/1ならば3個のカウンターを置く。)

 

Biomancer's Zone
{2}{G}{U}
Enchantment  (Uncommon)

Whenever a creature enters the battlefield under you control, put X +1/+1 counter on it, where X is the difference between the values ​​of It's power and toughness. (For example, if it's 0/3 or 4/1, put three counter on it.)

 

 

6.

冷酷な処罰者、ヴラスカ
(3)(B)(G)
伝説のプレインズウォーカー ― ヴラスカ  (Mythic)
[5]

[+0]:クリーチャー1体を対象とする。冷酷な処罰者、ヴラスカが戦場を離れるまで、それは無色の石像・アーティファクトになり、他のカードタイプを失う。

[-2]:アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とし、それを破壊する。

[+0]:接死を持つ黒の1/1の暗殺者・クリーチャー・トークン1体を生成する。あなたが3体以上のクリーチャーをコントロールしているなら、あなたがクリーチャーを1体もコントロールしなくなるまで、ヴラスカを追放する。

 

Vraska, Stonecold Punisher
{3}{B}{G}
Legendary Plainswalker - Vraska
[5]

[+0]: Target creature becomes a colorless Stone-Statue artifact, and it loses all other cardtypes until CARDNAME leaves the battlefield.

[-2]: Destroy target artifact or enchantment.

[+0]: Create a 1/1 black Assasin creature token with deathtouch. If you control three or more creatures, exile CARDNAME until you control no creatures.

 

 

7.

雪崩から逃げろ
(3)(W)(R)
ソーサリー (Uncommon)

クリーチャー最大1体までを対象とし、それを追放する。雪崩から逃げろは各クリーチャーにそれぞれ3点のダメージを与える。次の終了ステップの開始時に、その追放されたカードをオーナーのコントロール下で戦場に戻す。

 

Escape from Avalanche
{3}{W}{R}
Sorcery  (Uncommon)

Exile up to one target creature. Escape from Avalanche deals 3 damege to each creature. At the beginning of next end step, return the exiled card to the battlefield under it's owner control.

 

 

8.

転生の炎
(B)(R)
ソーサリー (Uncommon)

転生の炎を唱えるための追加のコストとして、あなたの墓地からクリーチャー・カード1枚を追放する。
クリーチャー1体を対象とし、転生の炎はそれに追放したクリーチャー・カードのパワーに等しい点数のダメージを与える。このターン、あなたはその追放したカードを唱えてもよい。

  

Flame of Reincarnation
{B}{R}
Sorcery  (Uncommon)

As an additional cost to cast CARDNAME, exile a creature card from your graveyard.
CARDNAME deals equal to the exiled creature card's power to target creature. You may cast the exiled card this turn.

 

 

9.

思考盗み
(U)(B)
インスタント  (Common)

プレイヤー1人を対象とし、そのプレイヤーは自分のライブラリーの上から4枚のカードを自分の墓地に置く。このターン、あなたはその墓地からカードを1枚、プレイしてもよい。

 

Pick Thought

{U}{B}
Instant  (Common)

Target player puts the top four cards of their library into their graveyard. You may cast a card from that graveyard this turn.

 

 

10.

堕落した鋼打ち、ゾルシャ
(2)(W)(B)
伝説のプレインズウォーカー ― ゾルシャ  (Mythic)
忠誠値[4]

[+1]:装備品最大1つを対象とする。黒の0/0の細菌・クリーチャー・トークンを生成し、その装備品をそれにつける。(装備品のコントローラーは変わらない。)

[-X]:あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストがX以下の装備品・カード1枚を探して戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

[-4]:あなたは「あなたがコントロールするクリーチャー・トークンは+1/+1の修整を受けるとともに威迫を持つ」を持つ紋章を1つ得る。

 

 

Zolsha, Corrupted Steelshaper
{2}{W}{B}

Legendary Plainswalker - Zolsha  (Mythic)
[4]

[+1]: Create 0/0 black Germ creature token. Attatch up to one target equipment to it. 

[-X]: Search your library for a equipment card with converted mana cost X or less and put it onto the battlefield. Then, suffule your library.

[-3]: You get an emblem with "Creature tokens you control get +1/+1 and Menace".

 

 

 

単に自信作を上から10枚見せろというだけなら簡単なのだが、レアリティと色の組み合わせ、さらにカードタイプ制限という三重の縛りが実にキツい。

 

 

特に低レアリティのデザインがひっじょーに難しかった。コモンの二色カードのデザイン空間は極小だということが実感できる。

というよりシンプルなデザインは開拓されきっているので、その上で審査員の目を惹くようなテクニカルなカードをデザインするのが難しい、というべきか。

 

コモン、鬼門

 

 

 

 

 

 

トライアルはこのデザイン問題で終了となり、以下から本戦がスタートする。

もちろん解いてみた。

 

 

 

 

 

本戦一回戦目は、「部族を作れ」。

 

文字通り部族カードのデザインを行う。

 

  • これまでにMtGに登場した部族の中から好きなものを一つ選ぶこと。希望は早いもの勝ち。これまでのマジックに登場したデザインは避けること。

  • スタンダードリーガルな単一のセットに収録されるつもりでデザインすること。

 

  • 単にそのクリーチャー・タイプを持つというだけでなく、きちんと部族をメカニズムとしてサポートすること。
  • コモン、アンコモン、レア、神話レアでそれぞれ2枚ずつデザインすること。

 

  • 最低でも二つの色に渡ってデザインすること。多色カードも可だが、部族がカラー・パイに適合していること。
  • アーティファクト、クリーチャー、エンチャント、インスタント、ソーサリー、土地をそれぞれ少なくとも1枚ずつデザインすること。残りの1枠は自由。

  • キーワードメカニズムについては、常盤木でないものに関しては最大でも2つまでとする。新しいキーワード能力を作らないこと。

 

 

 

決勝進出者はそれぞれホラー昆虫ウーズシャーマンならず者霊基体インプをチョイスしていた。

(この中だとならず者のデザイン群が最も評価を受けていて、総評で「この設問の勝者はあなただ」とまで言われていた。実際、ダントツに出来がいい)

 

 

自分もこれらに被らない部族を1つ選んでデザインしてみた。

射手、デーモンあたりと迷ったが、射手はフレイバーの幅がやや狭く、デーモンは単色での完結性が強かったために没る。

 

というわけでフレイバーに富み、未開拓領域も多く、また日本人としてなけなしの知識を活用できる忍者をデザインすることにした。

 

以下がその8枚(レアリティ低順)。

 

 

 

C1.
影針の術
(3)(B)(B)
ソーサリー  (Common)
あなたはこの呪文のマナ・コストを支払うのではなく、(1)(B)を支払うとともにあなたがコントロールするタップ状態の忍者1体をオーナーの手札に戻してもよい。
クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。


Shadow Needle Jutsu
{3}{B}{B}
Sorcery (Common)
You may return a tapped Ninja you control to its owner's hand and pay {1}{B} rather than pay this spell's mana cost.
Destroy target creature.

 

 

C2.

屋根裏を歩く
(1)(U)
エンチャント ― オーラ  (Common)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに、それ単独で攻撃している限りブロックされない。
(2)(U):攻撃している忍者1体を対象とする。屋根裏を歩くをあなたの墓地からそれにつけられた状態で戦場に戻す。

 

Walk in Attic
{1}{U}
Enchantment - Aura {Common}
Enchant Creature
Enchanted creature gets +1/+1 and can't be blocked as long as it attacks alone.
{2}{U}: Return CARDNAME from your graveyard to the battlefield attatched to target attaking Ninja.

 

 

U1.

逆嶋の分身の術
(1)(U)
インスタント  (Uncommon)
クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーの手札に戻す。それがあなたがコントロールする忍者なら、それのコピーであるトークン1体を生成する。

 

Sakashima's Duplication Jutsu
{1}{U}
Instant {Uncommon}
Return target creature to it's owner's hand. If its a Ninja You control, create a token that's a copy of that creature.

 

 

U2.

無惨の下僕
(3)(B)
クリーチャー ― ネズミ・忍者 (アンコモン
3/3

忍術(1)(B)
(1)(B), あなたがコントロールする攻撃してブロックされなかったクリーチャー1体を生け贄に捧げる:あなたの墓地から忍者・クリーチャー・カード1枚を対象とし、それをタップして攻撃している状態で戦場に戻す。(それはブロックされていない)

 

Muzan's Servant
{3}{B}
Creature - Rat Ninja  (Uncommon)
3/3

Ninjutu(1)(B)
(1)(B), Sacrifice an unblocked attacking creature you control: Return target Ninja creature card from your graveyard to the battlefield tapped and attacking. (and unblocked.)

 

 

R1.
静刃の隠れ里
(3)
土地  (レア)

(Tap):あなたのマナ・プールに(◇)を加える。
(3), (Tap):あなたのライブラリーの一番上のカードを見て裏向きに追放する。それが忍者・カードであるならば、あなたはそれを唱えたり、それが手札にあるかのようにそれの忍術能力を起動してもよい。

Hidden Village of stillblade
Land  (Rare)

{Tap}: Add {C}.
{3}, {Tap}: Exile the top card of your library face down and look it. If its a Ninja card, you may cast it or activate it's Ninjutsu abillity as though it were in your hand.

 

 

R2.

空蝉人形
(2)
アーティファクト

空蝉人形が戦場に出たとき、カードを1枚引く。
あなたがコントロールする忍者・クリーチャー1体がオーナーの手札に戻る場合、代わりにあなたは空蝉人形をオーナーの手札に戻してもよい。

 

Misdirection Dummy
{2}
Artifact (Rare)

When CARDNAME enters the battlefield, draw a card.
If a Ninja creature you control returns it's owner's hand, you may return CARDNAME to it's owner's hand instead.

  

 

M1.

静刃の支配者、シヨウ
(2)(U)(B)
伝説のクリーチャー ― ムーンフォーク・忍者
3/3
忍術(U)(B)
各ターン、あなたはあなたの墓地にある忍者・クリーチャー・カード1枚の忍術能力を、それがあなたの手札にあるかのように起動してもよい。
攻撃してブロックされなかったクリーチャー3体を生け贄に捧げる:対戦相手がコントロールするクリーチャー1体を対象とし、それのコントロールを得る。それをタップする。それは攻撃してブロックされなかった状態になる。

 

Siyo, Stillblade Dominator
{2}{U}{B}
Legendary Creature - Rat Ninja (Mythic)
3/3

Ninjutsu{U}{B}
During each of your turn, you may activate a Ninja card in your graveyard's Ninjutsu abillity as though it were in your hand.
Sacrifice three unblocked attacking creature you control: Gain control of target creature an opponent control and tap it. It becomes attacking and unblocked.

 

 

M2.
百面相の逆嶋
(3)(U)(U)
伝説のプレインズウォーカー ― 逆嶋  (Mythic)
[4]
[+1]:クリーチャー1体を対象とする。あなたの次のターンまで、逆嶋はそのクリーチャーのコピーになる。(プレインズウォーカーでない間は、逆嶋は忠誠度を失わない。)
[-2]:クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーの手札に戻す。それがあなたがコントロールする忍者であるなら、それのコピーであるトークン1体を生成する。
[-3]:あなたは「あなたがコントロールする呪文や能力によっていずれかのパーマネント1つがコピーされるたび、あなたはカードを1枚引く」を持つ紋章を得る。

 


Sakashima, Hundred Faces
{3}{U}{U}
Legendary Plainswalker - Sakashima (Mythic)
[4]
[+1]:CARDNAME becomes a copy of target creature until your next turn. (He doesn't lose loyalty while he's not a planeswalker.)
[-2]:Return target creature to it's owner's hand. If it is Ninja you control, create a token that's a copy of that creature.
[-3]:You get an emblem with "A parmanent is copied by spell or abillity you control, you draw a card."

 

 

 

「呪文版忍術」を思いついたのでデザインしてみた。

レア1、神話レア1の手札以外から忍術起動できるカードは完全にMtG Salvationのこれにインスパイア。

土地とアーティファクトのデザインが非常に難しかった。

「部族メカニズムとして機能すること」という条件が実に曲者で、デザインをかなり悩ませる。この条件下だと、プレーンなカードをなかなか作らせてもらえないのだ。

結果として似たようなメカニズムのカードばかりになってしまった。

 

 

 

 

 

本戦第二問がこちら:

 

 

お題は、「サーカスのトップダウン」。

 

 

  • 「曲芸/Acrobat」「一輪車/Monocycle」「綱渡り/Tightrope」「人間大砲/Human Cannonball」「空中ブランコ師/Trapeze Artist」など、事前に決められた25個のサーカスっぽいカード名の中から8個を選んでカードを作ること。
    この名前は一切変えてはならない。

  • カード名のフレイバーに合致した動きのカードを作ること。

  • 各レアリティで2枚ずつのカードを作ること。同じカードタイプを3つ以上使わないこと。

  • すべての色を少なくとも1回は使うこと。

  • 少なくとも1つは伝説のカードを作ること。伝説のカードに限り、伝説っぽい固有名をカード名に足してもよい。

  • 常盤木でないキーワード能力は多くても一回しか使わないこと。新規キーワード能力は作らないこと。

 

 

え? まさかのサーカス次元をデザイン???

 

この問題への回答については(思いついたら)また次回の記事で。

【MTG】カードデザイナー公募企画、Great Designers Search 3の設問を解く

 

2017年12月4日、マジック;ザ・ギャザリングのカードデザイナーをweb上で公募する公式企画、Great Desiner searchの第三回目がM:TG公式ホームページで告知された。

 

 

(記事中の画像はすべて、M:TG 公式ホームページより引用)

 


GDSでは、エントリーシート代わりとなる論述問題(この記事で解説)、

予選ラウンドでの選択問題およびデザイン問題をクリアしたうえで、

本戦では5つの異なる条件下で複数カードのデザインを行い、現役デザイナーやディベロッパーたちの審査をパスしなければならない。

(なお、応募にはアメリカ合衆国での長期就業資格を持っている必要がある)

 

 

「カードを作るのは君だ!/You Make the Card!」と並び公式によるオリカデザイン企画ということで、試験内容公開後に自分も嬉々として全設問に回答してみた。

 

 

今回はその第一問目、エントリー時に行われる10の論述(エッセイ)問題について。

質問内容は以下の通り。

 

  1. 自己紹介をして、なぜ自分がこのインターンシップにふさわしいか説明せよ。

  2. 常磐木メカニズムとは、(ほとんど)すべてのセットで登場するキーワード・メカニズムのことである。既存のキーワード・メカニズムを常磐木にする必要があるとしたら、どれを選ぶか。またその理由は。

  3. 現在常磐木メカニズムであるキーワード・メカニズムを1つ常磐木でなくさなければならないとしたら、どれを選ぶか。またその理由は。

  4. あなたはマジックを見知らぬ人に教えることになった。最良の結果を得るための戦略は何か。

  5. マジックの最大の長所は何か。またその理由は。

  6. マジックの最大の欠点は何か。またその理由は。

  7. マジックのメカニズムの中で、最ももう一度機会を得るべきものは何か(つまり、それの潜在能力に比べて最初の導入が最悪だったものは何か)。

  8. あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、お気に入りのものを選び、それの最大の問題について述べよ。

  9. あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、一番気に入らないものを選び、それの最高の部分について述べよ。

  10. マジックについて何か1つ変更することができるとしたら、何を変更するか。

 

 

 

このうち、自己紹介とかを除いたクリエイティブ・デザインにまつわる部分にだけ回答してみた。

回答は以下:

 

 

 

Q1:自己紹介をして、なぜ自分がこのインターンシップにふさわしいか説明せよ。

 

A1:(省略)

 

 

 

Q2:すでに存在しているキーワードを常盤木にするならどれを選ぶ? その理由は?

 

A2:過去にLatest Developmentで多用途性の面から否定されていたが、サイクリング

 

マナスクリューとマナフラッドはMtGの土地システムが持つ避けえぬ構造的問題だが、サイクリングはその両方の土地事故をケアしてくれる。

単体では存在しえないニッチな対象やニッチな機能のカードも、サイクリングを与えることでデザイン成立の可能性を与えられる。

 

たとえば《骨組み溶かし/Molten Frame》のようなカードはサイクリングがデザインを成立させた好例だ。

 

骨組み溶かし

サイクリングの常盤木化は各セットの、特に低レアリティのデザイン空間を広げる。
土地事故問題のパッチだけでなく、デザイン空間拡張の観点から見てもサイクリングの常盤木化は有用だと考える。

 

 

Q3:常盤木からキーワードを1つ外すならどれ? その理由は?

 

A3:到達

 

MtGの戦闘システムはブロック側優位で硬直性が強いため、ゲームが冗長化しやすい。盤面の停滞を防ぎ、ゲームを終了へと誘導するためには回避能力といった個別カードレベルでのパッチが必要になる。

 

到達はそのパッチを妨害するだけのディフェンシブに偏りすぎた能力であり、盤面の動性に対してネガティブな機能しかない。
また注釈文に他のキーワード能力を参照するのも常盤木として醜い。


到達を廃する場合、蜘蛛や射手の対飛行性は、飛行のみを凍結(タップしてアンタップさせない)や飛行のみをレンジストライク、飛行のみを《忘却の輪》などで表現したら良いと考える。

 

 

Q4:あなたはマジックを見知らぬ人に教えることになった。最良の結果を得るための戦略は何か。

 

A4:常に同程度のカードプールで対戦をすること。

 

もし新規プレイヤーが3パック買って始めるなら、自分も3パックを買い、同じ卓上でカードを広げ、一緒に構築をしながら対戦する。PWデッキを買って始めるなら、自分もPWデッキを同様に買って対戦する。そのプレイヤーがパックを買い足したいと言ったなら、自分も同じだけ買い足す。

 

デジタルのMTG対戦ツールは勧めない。最初からデジタル専用として設計された競合他社のプロダクトと比較して、デジタル上の動作が煩雑なMTGを勧める理由が強くない。

 

なのでデジタルツールは機能を対戦エミュレータだけに振り切るのではなく、これまでのストーリーや世界設定、各キャラクターを未見のプレイヤーへと伝えるインタラクティブなワールドガイド的要素をもっと色濃くしたほうが良いように思う。

 

 

Q5:マジックの最大の長所は何か。またその理由は。

 

A5: TCGというゲームジャンルのオリジンであること。

 

TCGはジャンル的にゲーム性での差別化の幅がそう広くない(一番大きいのが元ネタのあるキャラクターゲームかオリジナルの戦略ゲームかの二勢力で、特に後者では「事前の構築要素があるカードを用いた対人ゲーム」という大元のプレイフィールにそこまで幅がない)。

 

なのでゲーム性以外の要素での差別化が重要になるが、MtGTCGタイトルとして唯一無二の要素、すなわち「オリジナルであること」を確立している。

 

どの分野に置き換えてもそうだが、あるジャンルに対して新規に参加する初心者にとって、「そのジャンルの起源であること」は常にもっとも単純で、もっとも分かりやすい選択理由の一つになる。

TCGジャンルのオリジンであること」、それ自体が新規プレイヤーの選択負担を和らげ、参入障壁を軽減するメダリオンのような役割を持っている。

 

歴史は後発がどれだけ努力し望んだとしても決して獲得できない。オリジナルであること、その不変的なブランドこそがMtG最大の、唯一無二の長所であると考える。

 

 

(正直いってこの項目は何を書いたらいいかぜんぜん思いつかなかったのでポエムになっちゃった……) 

 

 


Q6:マジックの最大の欠点は何か。またその理由は。

 

A6:土地事故という最悪のプレイ体験をもたらす、土地リソースシステム。

 

リソーストラブルの存在それ自体については、必ずしも全否定されるべきものではない(ゲーム展開に揺らぎを与え、同程度の習熟度のプレイヤー同士の勝敗が究極的にはマッチアップの相性差だけに収束してしまう単純化を防ぐ)が、それは最低限ゲームの体裁が保証されている場合に限る。

 

 

「プレイヤーの選択が勝敗を決定する」というのがゲームの大前提とするなら、最悪の土地事故はその前提にさえアクセスできなくする。カードをプレイする、その有為的な選択の機会を一方だけが受け取れず、サンドバッグとなってゲームを終える。はっきり言って、それはもはやゲームではない。

 

カーレースに参加し、対戦相手と競いゴールを目指す。だがスタート時にあなたの車にガソリンが入っているかは運否天賦である。そのようなものをゲームとは呼ばないのと同じである(それはクジだ)。

 

前述したようにリソーストラブルはあってもよいが、それには最低限の選択肢へのアクセスがプレイヤーに与えられたあとに発生するように設計されていなければならない。

現状の配牌に依存するランダムな土地カードにすべてのプレイリソースを依託するシステムは、残念ながらそう設計されているとは言いがたい。リソース部分は変更可能であれば真っ先に変更されるべき構造的問題であると考える。

 

なお細かな部分でいえば、土地のような重要度の低いファクターが盤面の半分を占めることは、現代のような動画配信サービスとの連携が必然的な時代において観戦者の注視を拡散させるデメリットも(わずかではあるが)ある。これはデジタルの対戦ツールでも同じ。

 

 

 

Q7:再録すべき(もっとも過小評価されている)メカニズムは何か?

 

A7:明滅/Flickering

 

明滅は赤の新しい、普遍的なカラーパイになりうると考える。
たとえば「タップ状態で戦場に戻す/Return it tapped」の一語を足すだけでブロック阻害の機能が加わり、このメカニズムは非常に「赤く」なる。

 

《解放(INV)》のような時間差の復帰は白に、《雲隠れ(AVR)》にタップ状態を加えたような即時的な復帰は赤へと分譲できると思う。

前者には救出や旅路のフレーバーがあり、後者には地割れなどの地理的な撹乱や混沌のフレーバーを読み取れる。

 

Liberate

雲隠れ

 

現在の明滅は二つの異なる復帰タイミングが併存しており、特に初心者に混乱を与えている。

ブリンクを《解放》と《雲隠れ》で色別に分配することは、こういった初心者の混乱を取り除くことにも役立つと考える。

 

 

 

Q8:あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、お気に入りのものを選び、それの最大の問題について述べよ。

 

A8:テーロス。

 

神や授与クリーチャーはその特別性を強調するため(他の雑多なクリーチャー・エンチャントと挙動の違いを明確化するため)、機体のようにP/T欄のテキストスタイルやレイアウトを変化させてもよかったように思う。

 

テーロスに限らず言えることだが、テキストボックス欄を含めた書式/レイアウトデザインの領域は、プレイアビリティおよびUI向上のために変更できる余地がまだ大量に残されている空間のように思える。

ゲーム内でのテキスト挙動を鑑みてボックスの枠線や書式を変えたり、ボックスのレイアウトや個数を変えたりなど。

 

 


Q9:あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、一番気に入らないものを選び、それの最高の部分について述べよ。

 

A9:戦乱のゼンディカー。

 

無色・ランプ以外にこれといった個性を持たなかったエルドラージ部族に、暴食性から嚥下および昇華というメカニズムを見出し、ウラモグの特性に設定したこと。

その異色さ、メカニズム的な収まりの悪さが、逆にエルドラージという異質でグロテスクな部族に美学的にフィットしているように思う。

 

 

 

Q10:マジックからなんでも一つ変えられるとしたら何を変える?

 

A10:リソースシステムを土地からDMのマナチャージ型にする。それ以外なら、「他のカードの上にカードを重ねる」ことを基本システムレベルでデザイン可能にする。

 

サイコロが「振る」ことをアフォードするように、薄い紙は「重ねる」ことをアフォードする媒体だと考える。

これはカードというメディアが必ず持つ物理的な特性であり、この性質は活用すべき資源だと考える(サイコロを用いておいて「振らせない」ゲームはない)。

 

 

 

 

 

以上。

 

GDSの設問はエントリーテスト問題があと2つ、実際にカードをデザインしていく本試験の問題が5つあるので、これも記事にしてぜんぶ答えていこうかなと思います。

 

 

続く:

 

【MTG】バトルボンドのプレビューイベント行ってきた。双頭巨人シールド戦

 

2018年6月2日(土)に行われたバトルボンド(BBD)のプレビュー・イベントに参加してきました。

フォーマットは双頭巨人戦シールド。

 

今回はプレリじゃなくあくまでプレビューイベントなので特別なキットやプロモの配布はなし。

シンプルに配られた6パックだけを使って40枚デッキを2つ組んでの一本勝負を三回戦やる。

 

いままで通っていたお店が悲しくも閉じてしまったために新規店を開拓することに。

事前に電話で確認したところ、ソロ参加して店内で同じくソロの相方を見つけてOKよということだったので気兼ねなく一人で参加することに。

 

以下、この記事中に登場する各カード画像はすべて公式カードイメージギャラリーからの引用となる。

 

 

環境の印象

  

事前の印象としては……

 

双頭巨人戦特有のルール(共有のライフ30点、第一ターンの後手ドローが二倍、盤面に並ぶ肉も二倍、リソースも二倍)によって、睨み合いが続くロングゲームになるだろうなというのが第一印象。

 

基本的にMTGでは、複数ブロックを選べる防御側がクリーチャー量増加の恩恵をいちばん受けられる。

というわけで地上はクリーチャーが並び合ってガチガチに固まり、30点のライフを単純なビートダウンで削り切るのは容易ではないだろうなと考えていた。

 

飛行もまた防御プレイヤーのどちらかが抑止手段を持っていれば止まってしまうので、回避能力としての信頼度はそこまで高くならない。

 

なので飛行以外の回避能力が有用だと捉えていた。

具体的にはこのへん。

 

 

 

だとしても普段の1.5倍あるライフを削り取るのは容易じゃないだろう。

睨み合いのすえアドバンテージカードをたっぷり撃ち合い、ボムを引き込んで叩きつける大振りなゲームになるだろうなという雑な印象を持っていた。

 

 

……のわりに、収録されているコモンは地味~~~なコンバット要員が多かったりするのが謎ではあった。

 

フツーに考えれば増加したリソースのぶんこの手のバニラの価値は通常のリミテよりも下がってるはず。

 

だから通常セットのそれよりも一回りカードパワーが高いコモン生物を収録しないとゲームレンジのバランスとれなくないか? と思っていた。

 

それこそカードパワーの平均値としてはコンスピラシー程度を想像していたのだが、実態はむしろ基本セットに近かった。

(コンスピラシーはフォーマットの性質上、生物はソコソコだがコモン除去がべらぼうに強い。その逆バージョンになるんじゃないかと予想していた)

 

2vs2対戦という形式上、コモンでさえある程度インパクトが大きい乱闘戦、みたいなプレイフィールを想像していたのだが、実態はむしろ通常セットよりこじんまりしているコモンが多いというか、1点の修整を取りあうような小技が多い。

 

 

たとえば過去にはコモン収録だった地味なバットリが、今弾では謎にアンコモンに格上げされて収録されていたりする。

 

うーん? この手の地味なトレードの巧拙で勝敗が決まるようなシブいフォーマットには思えないんだが……(後の伏線)

 

 

 

というわけで、フォーマットの性質とカードプールのミスマッチに若干戸惑いを覚えていたのものの、基本的にはやっぱりアドバンテージ、ロングレンジのボムゲーになるだろう、というのがやっぱり事前の環境印象だった。 

 

 

まあそんなことありつつ受付開始。

相方プレイヤーも見つかり、分配でモメないようにカード全部こっち持ちで参加することに。

いざ開封の儀。

 

カードプール

 

当たったレアは以下。

 

 

《活力》とかいうゲボイカサマカードを引く。

こうなると緑がどれだけゴミでも使わざるを得ない。

緑白が組めたらイイナと思いつつ、開封プールを色ごとに並べてチェックしていく。

 

 

 

まずは白。

f:id:tenkoTCG:20180606155130j:plain

タッパーやフライヤーを含む高水準なクリーチャー群と、確実な除去スペルが2枚。

単色だと平均値前後だが、マルチカラーまで含めると一貫したコンセプトが光っている。

採用内定と見てよさそう。

 

 

 

つづいて青。

f:id:tenkoTCG:20180606155148j:plain

クリーチャーが物足りないが、そのなかで回避能力はソコソコ揃っている。

生物が整っているメインカラー、あるいはメインデッキの捕色的な役割のプール。

 

 

つづいて黒。

f:id:tenkoTCG:20180606155707j:plain

青とは対照的にスペルが物足りないが、肉の量は十分。

とはいえ飛び抜けた内容というわけでもなく、まあ堅実な数合わせという感じ。

青とは多色カードを含めてマナ域が綺麗な補完関係にある。青黒はまっさきに検討して良さそうな内容。

 

 

お次は赤。

f:id:tenkoTCG:20180606160032j:plain

低マナ域が厚く、マルチカラーも含めてやはり黒と補完関係にあるラインナップ。

組み合わせるなら黒との一択だろう。

ただ内容が全体的に前のめり気味で、回避能力も青と比較すると薄い。

30点ライフかつ重層の盤面を絡め手のない愚直なアグロで押し切れるとは信じがたく、構築にはネガティブな色眼鏡で見ていた。

 

 

 

 そして緑。

f:id:tenkoTCG:20180606163453j:plain

4~5マナ域はどこ?

なんとも歯抜け感のある並び。

しかしよくよく見てみると高スペックな除去スペルがしっかり2枚あり、相打ち用の低マナ域もアドバンテージ生物が揃っている。ランプカードも3枚引けているので多色化もたやすい。

白と組ませるなら高マナ域はかなり箔がつくため、ビッグマナ構築はかなり堅実な選択肢に思える。

 

 

最後に多色&無色。

f:id:tenkoTCG:20180606164034j:plain

 

ロングゲーム必至の環境と見るならば、《暴君の機械》と《予見者のランタン》はどんなデッキだろうと採用は確実。

 

 

構築にもよるが《歩哨の塔》と《黄金作りの歩哨》(6マナ4/4飛行バニラ)もだいだいデッキに入りうる。

問題はどちらのデッキにどのように分配して入れるかというところ。

どちらのデッキでも使える無色をどう取り分けるか、というのは双頭巨人ならではの構築問題で新鮮だった。

 

 

ぱっと見、緑白はメイン確定で相方を青黒or黒赤のどっちにするかなという感じ。

 

とはいえ事前の環境印象で言っていたように、地上はガチガチの横並びでまず攻撃が通らないだろうから、回避能力を優先して拾う意識で構築に臨んでいた。

 

 

となると地上クロックを刻む以外に動きがない赤は置き去りにされ……

 

構築

で、組んだデッキ2つがこちら。

f:id:tenkoTCG:20180605120353j:plain

その1(自分が使用)、緑白ミッドレンジ。

ゲームエンダー、除去、そしてアドバンテージ取れる序盤のブロッカーを上から順番に突っ込んだだけ。

タッチ青の部分が迷うところだけど、緑白2色で組んでも入るカードが《巨大化》とか2マナ2/1とかで微妙なのでこちらに。

むしろ《アミーシャの口づけ》(6マナ7点回復2ドローの白青多色ソーサリー)まで入れてしまっても良かったなと思う。《歩哨の塔》もあるし。

 

豊富なランプカードによりフラッド気味になりそうなので無色カード(4マナ起動のアーティファクトタッパーとか)をこっちに採用。

 

 

f:id:tenkoTCG:20180605120408j:plain

その2 (パートナーが使用)、青黒フライヤー。

フライヤーとブロッカー、除去、アドバンテージスペルの詰め合わせ。

普通のシールドだと動きがもっさりしすぎてクソ! となりそうなところだが双頭巨人ならこんぐらいブッ込んでしまってもええんやろと思っての構築。

 

 

ただ対戦後に思ったけど《悪運尽きた造反者》(2マナ1/1、死亡時に2/2のゾンビトークンを出す)と《貧民街を刈り取るもの》(4マナ4/2、登場時に各プレイヤー1体ずつクリーチャー生け贄)はいらんかったな。

 

このスロットは土地のバランスや戦士カウント的にも《命運語り》(2マナ1/3、登場時に占術2)と《プラタカクラブの用心棒》(4マナ3/4バニラ)で良かった。

 

事前の環境印象どおり、とことんアドバンテージカードを突っ込むことしか頭になかったのであった。

 

 

そんなこんなありつついざ対戦へ。

今回、対戦はすべて一本勝負である!

 

戦績

 

一回戦目:青黒&赤緑

 

ダイスロールで負けて後手。

この環境は絶対後手(後手の初手ドローだけで2枚アド)だと思っていたので落ちこむが、初手を開いてみると一転。

先手2ターン目に2マナ生物二体を展開し、3ターン目に《戮力協心》でパワー3が二体でパンチするというロケットスタート

 

  双頭巨人ならではの動き!

 

ただこんだけブンブンに攻めてもライフ30が遠い! 遠い…

双頭巨人戦は肉壁の厚みもあるが、相手が撃ってくる除去の数も二倍で厚かったのだった。

こちらの手札が切れかけ、次ターンボードが逆転するギリギリのところで相手のフライヤーにすべての除去を叩きこみ、最後の数点のライフを航空戦力で削り取って勝利。

 

 

こんだけロケットスタートしてて逆転されかけるという冷や汗体験。

やっぱりこの環境は後手だな…という思いを強くする(後の伏線)。

 

 

 

二回戦目:青黒&緑白

 

地上と地上、飛行と飛行が睨み合い、めちゃくちゃ煮詰まったゲームに。

そこにバトルボンドいちの美人ペアこと紡ぎ手ツインズが現れてもうめちゃくちゃに。

 

 

しかも×2! 2体ずつ現れたのでさすがに暴力やろともう心ほとんど折れかけ。

膠着した盤面を恨めしく見ている我々チームを尻目にどんどんドローされていく。

もうデッキ畳もうか…というところでトップしたのがまさかの《活力》。


ダメージは栄養ドリンク。何回見ても書いてあることがおかしい

 

 

しかし相手のハンドが潤沢、すなわち除去スペルが獲物を待ち伏せしてるだろうこの状況で叩きつけるほど愚かではなし。

活力は無謀なバンザイ特攻をその能力によって許容してしまうので、そこに合わせて活力に除去を撃ち込まれたら憤死即投了ものの恥辱を味わうハメになる。

 

なのでまずは《武勇の場の執政官》を降ろしてインスタントを宣言、アタックに合わせての除去だけはケアできるようにして次のターンに《活力》を着地。

 

こちらのライフもそれなりに危うかったので無理に攻めきることなく、《造り手》の起動ですり減った相手のライブラリー切れを睨みながらクロックを刻んでいく。

最終的にはじっくり育てさせた相手の《空想の友人、トゥーシー》をバウンスし、デッキを切らして勝利!

 

なんとこの試合、この1ゲームだけで1時間30分くらいかかっていた……

グダるときは本当に無限にグダるなこのフォーマット。

やっぱり後手環境だな……重量構築間違ってなかったな……という思いをますます強くし、いよいよ優勝をかけた最後の試合に。

 

 

三回戦目:青黒&緑白

 ダイスロールで勝利し、ゆうゆうと後手を選択。

全チーム1回ずつのフリーマリガン後、こちらは序盤に動けるが、パートナーの青黒が重めのスペルばかりで身のない手札をキープ。

 

すると相手の2ターン目2マナ生物を1体ずつプレイ、3ターン目に《気前のいい贔屓筋》とかいう畜生ムーブでもうメチャクチャ。

 

 

3ターン目に3/1と4/1が殴ってきてさらに1ドローされてる。

このカード正直トップクラスのボムやと思いました。緑だと《活力》の次くらい?

パートナーが2体クリーチャー置いてたらこいつ出しただけでなぜか手札が増えるとかいう有様。

 

さすがにヌルハンドキープでは捌けない。

《閉所恐怖症》(3マナオーラ、エンチャントされているクリーチャーを永久にタップする)を支援で太った2マナクリーチャーに貼っつけないといけないみたいな悲しい展開。

 

 

というわけで、2-1で2位となりました……。 

 

対戦後の印象

 

  • 今回はアーキタイプ、というかマルチカラーが友好色の5つ分しか用意されていないせいか、意外と構築の組みあわせが少なかった。
    具体的には3回戦とも青黒+緑の組み合わせだった。自分も入れたら4グループがこの組み合わせ。

  • やっぱり直線的な攻めしかできない赤は逆風だろうと思う。二倍のリソース、さらに共闘で無限に横並びする地上は固く、突破するにはワンアイディア必要。

  • ただ地上の突破能力として先制攻撃はそれなりに信頼度があるように感じた。
    というのも今回はコンバットトリックが豊富なので、パートナーの手札と合わせて突っ込めば相手のトリックを潰したうえでさらにドシャクリできたりする。


    たとえばこいつなんかは赤の地上クロックのなかでは信頼度が高いんじゃないかと思う。

  • 地上も膠着するが、やっぱり飛行でさえもそれなりに膠着する。
    後手を取ってボムを叩きつけるゲームという事前の環境印象は当たらずとも遠からず。


  • 遠からず、というのが今回の発見で、支援が絡むと意外とゲームテンポが早いということ。

    先手側が2マナ生物を2体プレイして、3ターン目にそれらに支援が乗るとそのまま持って行かれる展開もある。

    逆に言えば先手側が勝つにはこういう3ターン目支援しか目がなさそうな気がする。グダると相当グダる。

 

 

 

意外と地上戦が狙えなくもないというのが判断できたので、緑白の相方はこういう構築もありえた。

f:id:tenkoTCG:20180607160328j:plain

赤黒地上ビートダウン。

単体で見たデッキコンセプトとしては青黒よりも遥かに一貫性がある。

パートナー視点で考えても《飾られた英雄》のための戦士カウントが増えて、《誇らしい師匠》の共闘先が手に入る。

もし本戦がサイドあり二本先取なら、第三試合はこの手の色変えが非常に重要になっただろう。

 

 

 

どっとはらい