束縛力は分子間力の合力: 糸の張力と面の抗力を未知数で表すわけって…?
力とは何なのか?せめてミクロな視点から何が由来になっているのか?
高校物理を学ぶ時、物を変形させたり物の速さを変えたりする力には「接触力」と「遠隔力」があると習うーー。特に前者については、垂直抗力だの摩擦力だの張力だの……が紹介されるが、ここまでの説明ではまとまりが悪く、その点を『新・物理入門』を参考に学ぶ。
物質を構成する素粒子の間には、万有引力、電磁力(クーロン力+ローレンツ力)、強い力、弱い力の4つの相互作用がある。それぞれ、重力子(2023年現在未確認)、光子、グルーオン、ウィークボソンが力を伝達する。
分子間力は内部の荷電粒子(電子、原子核)同士のクーロン力の合力であって、巨視的な物体間の力としては、万有引力と電磁力しかない。
つまり、接触力に含まれる力は、摩擦力(後述する)以外全てクーロン力が由来の分子間力の合力である。
分子間力は、接近し合うと斥力、離れれば引力を及ぼし合う。ただし、離し過ぎると力は0になる。そのため、多くの物体は、引き伸ばせば縮もうとし、圧縮すれば膨張しようとする弾性をもつ。音波を伝える役割である。*1
ばねの場合、ある変位までは変位に比例した復元力が働くということから、復元力を求められるが、糸の張力、面の抗力(束縛力)は求められない。糸は、引っ張ったとき正確には少し伸びていて、その結果分子間に引力が生じ、面は、何か置かれたとき少しへこんでいて、その結果分子間に斥力が生じる。これら微小な変位の変化による引力・斥力の合力を求めるのは困難であり、力の図示や運動方程式を立てる際、未知数のまま表す。
他の教科書には、ここまでの説明は載っていない。他方、摩擦力には説明が割かれていない。摩擦力は4つの相互作用の合力ではなく、物体表面の状態が由来であり実験結果に基づいた式を扱う。結局のところ、糸の張力と面の抗力は力の向きが逆なので別物と紹介され扱うのだと思う。
『新・物理入門』は決して背伸びするための本ではなく、このように物理を根本から説明してくれる本である。
【追記】
高校時代は、変に頭が良く(自分の感覚をあまり信用しておらず、自分の感覚器官や距離感覚から離れ、自然そのものを捉えようとしていた)、分子レベルで起きていることをまとめ過ぎている高校の物理に違和感を抱き続いてきたと思う。もし、これが、1つのポリシーに過ぎないなら、自分は元々還元主義者だと思う。やはり「張力」や「垂直抗力」は、人間の生活の中に、糸や地面があってこそ初めて名付けられ考えている(私からすると、クーロン力の方が自然界に迫っている)という点から、高校物理は自然そのものを捉えようとはしていないと思う(つまり工学的)。だから、高校物理が得意な人は、工学部に適しており、高校物理で躓くような人こそ、むしろ理学部の理論的な物理学、あるいは、数学や哲学に適しているのではないか、と思う。いずれにせよ、工学的な方が成績は良い(わかる、より、できる)ので、私はそれが嫌だった。
課題点
・ゲージ粒子による相互作用の伝達の具体的理解
*1:小学校の理科では、空気鉄砲と水鉄砲を別個にして扱う。水にも弾性があるために音波が伝わるのであり、水に弾性がないかのように誘導しやすいので戸惑いを感じやすい。
オイラーの多面体定理はいつ使うの?Part1
【オイラーの多面体定理】
凸多面体*1で,辺(edge)の数を, 頂点(vertex)の数を, 面(face)の数をとすると,が成立する。
「線は帳面に引け」で覚えるこの定理は,コラム的に事実だけ紹介されるという印象が強く,証明法の他,使いどきはあるのか?と気になります。
当然,正多面体の頂点や辺の数を求める際に使えそうですが,結局どちらかを求める際に使うやり方(面を切り離す)でどちらも求められるので,使いようがありません。なお,面の数は,正二十面体なら20個とすぐに求まりますよね。
【正多面体の頂点・辺の数え方】
面を全て切り離す。
⇒その状態で,頂点や辺の数がいくつあるか数える。
12個の正五角形から構成される正十二面体なら,頂点も辺も,正五角形1つあたり5個で正五角形が12個あるから,60個。
⇒面をまた接着させたとき,頂点や辺がいくつダブるか,その数で割る。
正十二面体なら,頂点に関して,切り離されていた正五角形同士の3つの頂点が1つに合体されるので,先程求めた60を3で割り,20個。辺に関して,正五角形の2つの辺が1つに合体されるので,先程求めた60を2で割り,30個。
正十二面体は,面が12個,頂点が20個,辺が30個であると数えられました。オイラーの多面体定理を満たしています。
さて,ここで本題に戻って,オイラーの多面体定理の使い道ですが,正多面体に関して,仲間はずれとも言えた面の数を数える際に武器になります。オイラーの多面体定理が証明された後,正多面体が5種類しかないことを示す高校数学の教科書の証明で,使うのです。
*1:多面体のうち,どの2頂点を結んだ線分も多面体内に含まれるもの
金星の満ち欠け問題の解き方🫰
金星は、惑星であり、自ら光っているわけではなく、太陽の光を反射して、地球から見えます。そのため、月同様、地球との位置関係によって、見える部分が刻一刻変化していきます。
まず、太陽の周りを回る惑星を内側から順に覚えることがスタートになります。そこで、太陽の周りを回るのは惑星だけではありませんから、惑星の定義が気になるところですが、重要なのが、その軌道上に同じサイズの天体がないことです。冥王星はこの定義を満たせず、準惑星になりました。
太陽系の惑星(内側から)
水、金、地、火、木、土、天、海
これが頭に入っていると、金星は地球の内側を回っている、という位置関係がまず分かります。
①形
金星の公転軌道(円と見る)に対して、地球を通る接線を引くのを手筋としています。ちなみに、このとき火星と太陽も結ぶと、直角二等辺三角形(『数Ⅰ』の教科書に書いてあったのですが,本当は44°, 46°, 90°の三角形です。リアルを知るため知識は何でもかんでも活用します。)ができます。この接点の部分にある金星が、ちょうど太陽側の半分だけ見えます。あとは、それより近ければ半分より広く見え、遠ければ半分より狭く見えます。
②大きさ
単純に近ければ近いほど大きく、遠ければ遠いほど小さく見えます。
③時刻(明けの明星なのか、宵の明星なのか)と空の向き
太陽系の惑星は同じ向きに公転しており、なおかつ、地球の自転もそれと同じ向きに自転しています。そのことを把握した上で、太陽の光が当たっている方が昼なわけですが、昼に入る方向が、東の空で明けの明星、夜に入る方向が、西の空で宵の明星であると分かります。
図形のアイデア集
平面編
星型多角形の角度
星型多角形の角度の求め方を、三角形の内角の和が180°であることの証明から体系的にまとめました。
センターラインの公式
「センターラインの公式」を、(幅一定の図形一般に対しては無理なので、)中心に穴が空いた円に対して証明しました。
立体編
円柱の体積
1立方メートルの定義から出発して、円柱を区切って組み合わせて直方体に変えて、円柱の体積の公式を導きました。円の面積の公式の証明法の汎用性には感心します。
円錐の表面積
円の面積の公式の証明を応用させ、中心角が分からないおうぎ形の面積・円錐の側面積(そして表面積)が求められました。
円錐の表面積.pdf
日影曲線
日影曲線: 棒を地面に垂直に立て、真上から見たとき、時刻の経過に伴って動く影の先端部分が作る曲線のこと。太陽の通り道と「太陽の向きと影の伸びる方向は逆ということ」が重要となる。太陽の見え方は天球図により明瞭化されており、ここでは天球図を出発点にする。
地球が西から東に自転し、地軸に垂直に太陽に光が当たり、太陽が真東から昇り、真西に沈むように見えるため右のような直線を描く。
(B)夏至
地球が西から東に自転し、北半球が太陽の方向に傾いているので太陽が北寄りの東から昇り、北寄りの西に沈むように見えるため右のような曲線を描く。全体的に太陽高度が大きいため日影が短い。(南中時が最短)
(C)冬至
地球が西から東に自転し、北半球が太陽と反対の方向に傾いているので太陽が南寄りの東から昇り、南寄りの西に沈むように見えるため右のような曲線を描く。全体的に太陽高度が小さいため日影が長い。(南中時が最長)
各導体が導体たる理由を結晶構造から
「導体」と「金属」は同じまとまりではなく、鉛筆の芯である黒鉛などは非金属であっても導体であり、それぞれどの電子が動くのか?は結晶構造から捉える意義がある。
①金属
原子のイオン化エネルギーが小さいため、価電子が原子から離れやすく、各原子の最外電子殻が重なり合って繋がり、価電子が自由に移動できる。金属の性質である、金属光沢と展性・延性すらもこの電子(自由電子)の存在から説明することができる。
金属の3性質
・金属がもつ自由電子は可視光線のほとんどを反射するので光っている。
・自由電子が熱や電気を運ぶ。
熱伝導性と電気伝導性のランキングは同じ!
・自由電子が動きながら原子を結び付けているため、結合がすべての方向に一様に働き、たたいたら広がり、引っ張ると延びる。
なお、金属結晶の単位格子の形状は3種類ある。(体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造)
②黒鉛(グラファイト)
正六角形を基本とする網目上の構造がファンデルワールス力により結ばれて積み重なっている。炭素原子の価電子4個のうち1個は結合に使われず、このため電気を通す。光沢ももつ。
学習点
・金属原子のイオン化エネルギーは何故小さいのか。
参考
外嶋直樹, 瀬川浩司(2012)『理解しやすい化学』, 文英堂
ジュールの法則の導出⇒電力⇒電力量
断面積, 長さの導線の両端にの電圧をかける。自由電子が平均の速さで移動したとすれば,間の電子の平均移動距離はである。導体内の電場の強さは
であるから,離れた2点間の電位差は
電子の電荷をとすると,間に電子が電場から得られるエネルギーは,
導体中の自由電子の密度をとすると,導線中の自由電子の総数はである。このすべての自由電子が上式のエネルギーを電場から得る。それをとすると
これがすべて導線中のイオンの熱振動に変換されるからジュール熱*1に等しい。
ジュールの法則から,単位時間に電気器具によって消費される電気エネルギー・電力=電流×電圧が導かれ,その総量という意味で電力量=電力×時間が導かれるという体系になっている。
参考
近角聰信, 三浦登(2013)『理解しやすい物理』, 文英堂
*1:導体に電流が流れると発生する熱