生きていかなければ!チェーホフ著・神西清訳『かもめ・ワーニャ伯父さん』(新潮社・1967年)

この戯曲を読み終えたのは2020年より前だったかもしれない。映画『ドライブ・マイ・カー』の記事を書くことになり、その参考資料としてこの本を購入した。 きちんと目を通すのは初めてだったが、大学生時代お芝居をやっていたこともあり、「かもめ」は知って…

人生訓だと思った。森毅『数学受験術指南 一生を通じて役に立つ勉強法』(中央公論新社・2012年)

著者・森毅の激烈な言葉が心に気持ちよく(それは同時に痛みでもある!)響く本だった。印象に残った言葉をあげてみる。 「解き方」を知っていて解く、なんて癖は、受験本番にはむしろ有害だ。 量にたよるというのは「勤勉」という名の知的怠惰にすぎない。 …

ようやく光源氏の心境を理解できた。富井健二監修他『マンガで味わう源氏物語』(Gakken・2023年)

2024年の大河ドラマ「光る君へ」を鑑賞する中で、主人公・紫式部と本作についてもっと知りたいと思い、源氏物語に触れることにした。 源氏物語をマンガ化した作品は多々あるが、今回選んだ富井健二監修他『マンガで味わう源氏物語』(Gakken・2023年)は、平…

化学って身近だ!齊藤幸一『身のまわりの元素を調べよう 目で見る元素の世界』(誠文堂新光社・2009年)

化学自体は好きである。しかし好きであっても得意ではない。苦手意識が強く、なかなか理解を深められないまま、受験シーズンが到来し、残念ながら受験科目から切り離した教科である。 あまりにも理解できていないことが長年コンプレックスだった。どうにかし…

東京と地方、男と女、厚い壁。山内マリコ『あのこは貴族』(集英社・2019年)

原作より先に映画を鑑賞していた。映画がとても好きで、文章であの世界を体感したいと思った。原作は映画以上に生々しく、ものすごく楽しめた。登場する女たちは自分たちのやり方でたくましく生き抜く。清々しいラストは映画も原作も同様で、それに救われた…

大人になった今だからこそ読みたい。児玉幸多監修『少年少女 日本の歴史』(小学館・1982年)

小学校〜高校を卒業するまで、社会科が一番の苦手科目だった。というか、社会科の授業にあまりにも興味がなさすぎた。当時を振り返ると、他者の過去や経験を学ぶ社会科より、目の前でワクワクとした変化が起こる理科の方がよっぽど楽しかったのだ。 そんな私…

悪用禁止な「人たらし」の手口。佐藤優『悪の処世術』(宝島社・2023年)

恥を忍んで言うと、歴史の教科書や近代史で度々目にする各国の権力者、独裁者のことを、私はよく知らない。覚えているのは名前ばかりで、どこの誰か、何をしたのか、なぜ「悪」とされるのか、それを知らなかった。だから、それを知るために読んだ。 加えて、…

ノウハウ本ではないことに注意。森博嗣『小説家という職業』(集英社・2010年)

まず読書前にすべきだった反省点を述べる。 私は実は、森博嗣作品をまだ読んだことがない。 代表作として名高い『すべてがFになる』のタイトルやドラマ化したことなどは知っていたが、未読である。『スカイ・クロラ』が押井守監督によってアニメ映画化された…

私の反論は反論ではなかった。紀藤正樹『議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則』(SBクリエイティブ・2023年)

この本を購入したきっかけは、夫の存在である。 夫は人と議論するのが好きだ。時折、議論というより火種を生むのを楽しんでいる時もあるが、基本的に夫は理性的に話す。一方の私は、彼と話している時にどうしても感情的になってしまうことがある。だから私は…

人類学、地政学好きに勧めたい小説。上橋菜穂子『鹿の王 1』(KADOKAWA・2017年)

友人がおすすめしてくれた小説で、私が読み終えたのは文庫版全5巻のうちの1巻のみだが、物語序盤でもう面白い。 人類学や文化人類学、地政学といった学問への興味関心が高い人、あるいは知識がある人ならば確実に楽しめる小説だと考える。 私はこの本を読む…