トロピカル墓場

好きなものは好きだからしょうがない!!

mental health sketch modified

ブルーアイズ私が病院に行くまでどうか手を握ってくれドラゴン

utanohi.everyday.jp

 

今度の仕事はいわゆるホワイトカラー労働ではなくなりそうです。仕事を辞めてから、というか在職中も休職したりしていたのですけど、メンタルヘルスがいっこうによろしくなく、ぐちゃぐちゃで、最低限の規則正しい生活や最低限の自信を身につけるためにハードルを下げて働こうということになりました。ディストリビューション・センター(@THREE THE HARDWARE)(ではない)。

ものすごく自信がなくて、今は思うだけで無理だ……っていう悲しい気持ちと自分の本音に胸が詰まって涙が出るけどやりたい仕事もあるし、仕事で自己実現したい気持ちがないわけではないので、どうせ死ねない人生ゆっくり頑張ります。

田島ハルコさんの新曲のプレスで「30代からの初期衝動」っていうワードがあり、最近のお気に入りです。

avyss-magazine.com

 

最近は、朝ドラ『虎に翼』を見ています。

natalie.mu

人間って状態の連続だと思うんです。人間性やその自認って未来永劫固定された自明の事実ではない気がするんですよね。別にたゆたっていて当たり前だと思うし。今日私はこういうふうに生きているけど、明日になってもまた同じとは限らない。そういう気分はすごく理解できるんですよね。もちろんそれと同時に変えようがないものもあると思うんですけど、やっぱり基本的には状態の連続で、アポトーシスを繰り返して細胞が入れ替わっているのと同じように、ずっと死んでは生まれてを繰り返している感じがあるんです。

──なるほど。

だから、自分の歴史を振り返ってみたときに、なんだか今の自分とは全然違うなと思ったりもするんですよね。昔の自分と連続しているものもあるけれども、自分が今どういうふうに生きていて、何を考えていて、身の周りがどういう環境なのかという、複合的な要因によってどんどん自分は作り変わっていく。

ここ、いいな〜と思って読みました。高島鈴さんのエッセイを思い出した。

 

今年中に寄稿した文章がいくつか出るはずで、こういう機会は初めてだったのでとてもどきどきしています!仕事以外のところで自分がやりたいことを苦しいけどちょっとずつできていて、いい気持ちです。しかし通院がかなりストレスなんですけど、メンタルクリニック心療内科・精神科転院の経験がある方がいれば知見を教えていただきたいです……。

あと最近はマルチネの昔のリリースを聴き返したり、というか第n次tofubeatsブームみたいなのが来ています。女の子のブームが知りたいよ!マルチネvsブルシのイベント、OctBassなので行くしかないっと思っています。元気だったら会いましょ〜✌️

おはようまだやろう

元気?わたしは眠れなくてこのブログを書いています。

最近『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』のアプリ「Link! Like! ラブライブ!」で、「活動記録」(いわゆるストーリー的な、ライブや配信で見られるスクールアイドルとしての彼女たちの裏側の部分)を移動中などにボイスドラマみたいな感覚で聴きながら、少しずつ知っていっています。

蓮ノ空はリアルタイムなコンテンツなので、早く過去の活動記録を知って追いつかなければならず、そのボリュームに途方もなさを感じていたけど、移動中に聴くのは自分にものすごく合っていて、最近は1日1話のペースで読めている。

村野さやかさんが好き!でも、同じくらい日野下花帆さんも好き。アイドルもので主人公タイプを好きになることってあまりなかったから、日野下花帆さんはすごく特別に感じる。

活動記録を読んでいて、「何かを頑張る人」にすぐ涙してしまうんだけど、それって推し活的オートメーションでは?と思ってもっと何が自分の琴線に触れているのか理解しようとしている。(自分でも感覚的すぎて理解しきれないまま言っているが、推しが頑張ってると泣ける〜😭🙏的なことのアンチをやりたいんだと思う)

あと、萌えが発生した。

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萌え萌えだろ……。

この2人の組み合わせで萌えてるというようなカップリングへの萌えでは(まだ)ないのですが、日野下花帆さんが聖書のたとえを引用したり、テキスト全体のテンションにあった萌えがここで大爆発してる感じがすごい。

早く104期生(「百生吟子さんが日野下花帆さんに対して素直になれない」という情報でメチャ萌えています)に追いつきたい!活動記録以外にもいっぱいコンテンツがあって大変ですが頑張ってついていきたいです。

あと同人誌出してー!って思った。同人オタクの(というか、わたしなりに同人でやりたいことである)「これ!っていう瞬間のきらめきを本にしたい感覚」がかき立てられる。

全然作品の一部にしか触れていないのにナメたこと言っててアレですが、わたしの同人誌出してー!は楽しい!とかおいしい!みたいなものなので、安心してほしいです(?)

今日(もう今日になりました)も活動記録読むし、スクールアイドルコネクトのアーカイブも見たいです。でもその前に眠りたい。

体中が緊張でくたくたになるのを感じながら、結局眠れずに諦めて起きて、ソワソワした心地のまま紛らわそうと早朝のニュースを見ている時間は何も楽しくないです。

今、めっちゃ「死にたい季節」(@神聖かまってちゃん)の時期すぎてヤバいですが、ほどほどに生きられたらよいですね。

3月の音楽

 3月によく聴いた音楽です。

 

 

シオ(土田玲央)&リュウ(石橋陽彩)「おいで☆ATAMI」


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 音楽プロジェクト『おんせんし』の楽曲です。フロクロさんが企画協力している、温泉の泉質を擬人化したアイドルものです。

 2番はほぼ台詞のかけ合いで構成されているなど、かなり規範的ではない曲なのですが、サビがめちゃくちゃキャッチーで、コーレス要素+お風呂っぽいSEが癖になるしそれらのすべてのタイミングがバチっとハマっていてめちゃくちゃ気持ちいいです。ポストKING OF PRISM的な決め台詞が好きすぎます。

 マジで男性声優楽曲大賞2023に入れたかった……。

 石橋陽彩さんの歌への感情の乗せ方が好きです。

 

シオ(土田玲央)・テツ(置鮎龍太郎)・ラドン羽多野渉)・タンソ(増田俊樹)「有馬でアリガト♪」


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 『おんせんし』の楽曲です。

 「おいで☆ATAMI」同様台詞が多く、突然バニラになるところとかかなり電波なのですが、ちゃんと計算された電波っぽさ(「めちゃめちゃカリスマ」的な)がうまいな~と思います。耳に残っている頃にはちゃんと有馬温泉の泉質について学べているという、擬人化もので知識が捗るキャラソンは『ヘタリア』とかっぽいです。ポストマツケンサンバはこれだ!(適当)

 サビ(?)の「有馬でありがとう!」部分のタンソさんの声、小さいな……と思っていたら「声が小さい」というキャラ設定でした。

 

もふもふえん「からふる・とれじゃ~わ~るど!」

からふる・とれじゃ~わ~るど!

からふる・とれじゃ~わ~るど!

  • もふもふえん
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 『アイドルマスターSideM』の楽曲です。

 CDと合わせて展開されているストーリーでは、室内型遊園地で披露されるという設定の曲で、ピコピコ系のサウンドアミューズメント的というか、ゲーセン的な雰囲気を感じます。音の上下やサビ終わりのテンポが変わるところがかなりテクニカルです。

 ピコピコ系と表現したけど、チップチューン的なサウンドとはまた異なっていて、レーザーっぽいというか、特に間奏(「ごー!ごー!」部分)がすごいことになっています。ライブの音響で聴いたらどんなことになるのか楽しみです。

 橘志狼さんの歌い方が、ソロ曲「リトルマイシューズ」を経てより表現力が増している感じがして好きです。

 

悪漢奴等「BAD BOYZ -悪漢奴等 Underground-」

BAD BOYZ -悪漢奴等 Underground-

BAD BOYZ -悪漢奴等 Underground-

  • 悪漢奴等
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 『Paradox Live』の楽曲です。

 悪漢奴等は作品内でメンバー数が最多のグループで、個性豊かなメンバー由来のお祭り騒ぎ感を特徴としていますが、最初期のこの曲はあまりアッパーではなく、「ビートを乗りこなしている」感じが最高にかっこいいです。特に「考えてないで感じて飛びな」「I'm a 俄然 準備万全だぜ」あたりの、小節からちょっとはみ出てるフロウが好きです。

 浦島坂田船の志麻さんが声優として参加していらっしゃいますが、好きな声質で嬉しい……。

 

田島ハルコ「GAL NINJA feat.初音ミク


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 田島ハルコさんと初音ミクさんの曲です。

 田島ハルコさんの一貫したヒップホップのフレーズとリアルY2K的なフレーズを組み合わせたリリックが好きで、

ヤー!I'm たじはる Lil びっちぃ
の黄色い看板のおみせっち

とか、すご……と思っています。耳に残る。

 

サ柄直生・uami『おぼろのうた』

苞

  • サ柄直生 & uami
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 2021年にリリースされた「まねごと」が本当に好きで、2022年くらいにキャラソンからクラブミュージックまで横断してその時の自分をつくっていると思っている曲をプレイリストにしたことがあるのですが、それに選曲していたくらい「まねごと」には影響を受けています。それに続いたコラボということで、リリースを本当に楽しみにしていたEPでした。

 君島大空さんが参加している「よあけ」などどの曲も素晴らしかったのですが、特にラストの「苞」がすごく胸にきて、EPの輪郭が決定づけられたような気がします。「苞」を聴いて、EPを聴き終えた時の気持ちは、なぜだかわからないけど、「郷愁」に近かった。ジャケットの雰囲気に引っ張られているかもしれないけど、なんとなく東山魁夷みたいな、深い緑と霧と灰色の空みたいなイメージが想起させられました。

 

 3月によく聴いた音楽でした。

ラメステその後

tropical-haka.hatenablog.com

 ↑の感想ではラメステの劇中歌では「その瞳に」が好きと書いたけど、公演終了後に配信された劇中歌インスト集を聴いていたら、ライとコノエの「目醒め」「絆、呼応す」がどちらも変拍子(3/4・4/4・2/4拍子、5拍子)でかっこよくて好きになった。「その瞳に」は歌唱シーンというよりインストが流れていたシーン(ライがぐずぐずになっているところ)が好きだった。でも今「その瞳に」インスト聴いていたら泣けてきたからやっぱりこの曲のやさしさが好きだ。

 原作を進めていて、ラメステでGOODENDを観たからBADENDを優先的に回収している。今はライルートでリークスとの最終決戦が始まったところである。

 あらましを知っているとはいえ、指輪を取りに火楼に戻り、その姿にもう自分の故郷はなくなったのだとコノエが涙するシーンで本当に辛くなってしまい、少しプレイのペースが落ちていた。

 ネット上の自分と、この自分とはレイヤーが別の場所にあって、それをわざわざ重ねることは本当はしなくていいとわかっているし、ためらいもあるんだけど、ラメステを観た時からずっと自分を作品に重ねてしまってるところがあって、それはわたしが故郷喪失という感覚におぼえがあることだ。

 わたしは2011年の東日本大震災で避難生活を経験している。今は地元にも立ち入ることは可能になっていて家族も元気に生活しているし、避難生活も最初こそ転々としていたものの血縁者を頼ることができたし、文字通りの故郷喪失者というわけではまったくなくて、幸運なわたしがそれを自認することはおこがましくて、それによって見えなくされてしまう人がいることもわかっているけど、でもコノエにエンパシーをおぼえずにはいられなかった。

 もしかしたらこの苦しさは根本的には「帰ることができる場所がなくなった」という感覚とは関係ないもので、災害に対する長期的なストレスかもしれない。でもわたしにとっての観劇とはそのものが(人間のむきだしの感情をぶつけられるという)ストレス体験と(カタルシスなどによる)ケア行為だとドマステの時思ったし、共感がそもそも防衛機制かもしれないし……とりあえず自分をまだ蝕んでいる巨大なストレス要因とは関係がありそうだ。今年は1月1日から能登半島地震が起きて、そんな中でのラメステ上演。

 だからコノエにとってのライが・アサトが・バルドがコノエの居場所になるというストーリーに、わたしとコノエは違うことを突きつけられるような気持ちになる。どこまでも勝手だが……。

 好きな台詞発表ドラゴンが 好きな台詞を発表します

「どこだろうか。知らないところって言ったら、怖いかい? まるで、死後の世界について考える時のように」

春日武彦著『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』で「死を擬人化してみるならば、それは妙にフレンドリーで弁舌爽やかな詐欺師みたいな人物のような気がする。」*1と言われていたけど、それはまさにフラウドなのではないかと思う。

死はわたしたちの日常に遍在している。でも日々の生活でそれは壁紙の幾何学模様程度の意味しか備えていない。それなのに死はある日突然不可解さと臆面の無さの双方を携えて目の前に立ちはだかるのだ。*2

死後の世界について考える時、誰もがその永遠の前に立ち尽くしてしまう。死は唐突だ。そして誰もがいつか到達するのに絶対に手が届かないさまは翻って神秘的で、聖なる、 畏るもののようでもある。このたとえがぶっこまれる急さと詩的さが死のまとうイメージと重なって、フラウドの台詞はまさに死の擬人化みたいでときめいた。

 さっきまで災害のグリーフみたいなことを言っていたのにアレだけど、わたしはフィクションにおいて死が「あるもの」として描写される作品が好きだ。いくつか挙げると、

とかである。

 

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 ステンドグラスがLamentoっぽい店に行った。君沢ユウキさんがゲストのイベントに行ったのでラゼル。

*1:春日武彦『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』p.234、中央公論新社、2023年

*2:春日武彦『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』p.215、中央公論新社、2023年

絶望、その先の……

絶望、その先の楽園

絶望、その先の楽園

  • 最高に幸せな私たちの世界。
  • J-Pop
  • ¥204

無職も2ヶ月目になるとそれなりにのんのんとした生活ではいられなくなって、今日はかなり志望度が高かった企業からお祈りメールが来たのでダークサイドに陥りそうになるのを堪えて爆音で音楽を聴きながら高島鈴『布団の中から蜂起せよ』を開いた。

そして私は、あなたにマジで死んでほしくないと思っている。
(「序章」高島鈴『布団の中から蜂起せよ――アナーカ・フェミニズムのための断章』人文書院、2022年)

聴いているのは最近ブックオフで購入した「ミラクル☆トレイン大江戸線へようこそ~」のキャラクターソングで、「線路は走るよ6の字に」という曲が各キャラクターによってアレンジされているものだった。こういう定型があるものを繰り返し身体に馴染ませていると落ち着いてくる。

線路は走るよ6の字に~大江戸線へようこそ・新宿ver.~

線路は走るよ6の字に~大江戸線へようこそ・新宿ver.~

  • provided courtesy of iTunes

これは新宿バージョン。なんかダフト・パンクみたいである。

これは月島バージョン。和楽器にベースミュージックがプラスされていてめちゃくちゃかっこいい。

『みんな水の中』での記述を思い出して、それもまた開いてみる。

それと矛盾するようだが、私は爆音によっても癒される。〔…〕爆音で音楽を聴き、自分の感覚を飽和させることで、地獄行きのタイムマシンを食いとめるのだ。
(横道誠『みんな水の中――「発達障害自助グループの文学研究者はどんな世界に住んでいるか』医学書院、2021年)

地獄行きのタイムマシンとはこの本の中ではフラッシュバックのことで、それはわたしにも心当たりのあるシチュエーションであるが、今のわたしにとっての地獄行きのタイムマシンは、希死念慮にまつわるもろもろだ。

最近は衝動的な、まさしく地獄行きのタイムマシン(わたしは下り道を進むトロッコがイメージされる)さながらの気持ちは少なくなっていて、静かな悲しみをもってもろもろの気持ちになることが多かった。けれど今は違う。

「爆音で自分の感覚を飽和させて、コントロール不可能な働きを曖昧にする」……大丈夫になるまで音楽を聴き続ける。

今は「冬の日のエトランゼ」を聴いている。

そういえば『みんな水の中』では、こんな記述もある。

地獄行きのタイムマシンは、私に関わらない、また陰惨すぎることがない、しばしばユーモアあるいは上質な雰囲気を感じられるトラウマ的表現に触れたときに、すぐれて発動しにくくなる。

横道はエドガー・アラン・ポー怪奇小説を引いて、トラウマ的な描写に心がすっと軽くなるという。

これはもしかすると、わたしが鬱状態にあった時に「sweet pool」をプレイして生理的嫌悪を感じる血や内臓にフィーチャーしたテキストに救われた気持ちと同じような働きなのではないかと思った。

大丈夫になってきたのでこの日記も終わります。

獣愛ブースト音楽劇「Lamento -BEYOND THE VOID-」 #ラメステ 感想

猫耳ハプニングが起きてる
この世のどこかで
猫耳ハプニングが起きてる
あの世のどこかで

HAPPENING

HAPPENING

※舞台本編とは関係ありません

 

 原作ファンだったりプレイしたりして臨んだキラルステージ過去作とは異なり原作・俳優・スタッフのいずれにもファンや目当てとして該当しない状態で公演に行きました。スプステでキラステにBLと演劇の臨界的な想像力を見てしまったから、こうして品川ステラボールに来ている。

 キャスティングが今までのキラステからすると新鮮に感じて、というのも、雰囲気わかるー!というのもある一方、わかるかつ意外性を感じる、というのもあった。制作由来だったりするのだろうか……(キラステ、毎回制作が変わっている件)。個人的には自分が末満健一さんのファンをしているため、末満健一さんと仕事をしたことのある俳優さんたちがメインキャラを占めていることが嬉しかった。

 観る前からそういった信頼を感じて期待していた俳優さんたちは、演技の粒が揃っている感じがして観ていてストーリーにすごく没入することができた!自分は原作未プレイのため原作っぽいという反応はできないのだが、その上でなお「台詞を言っている」というより「そこにいる」を感じさせてすごかった。

 OPとEDが原作OPのアレンジというのがアツい!

 賛牙としての才能が目覚めた歌唱シーンによって、一人で生きていたコノエが作中世界(賛牙と闘牙という攻めとの最小で最大の関係、戦いによってリークスに挑んでいくというストーリー)および音楽劇というラメステの構造そのものと関係していき、作品が動き出していくのを、肌で、リアルタイムで感じていくという経験は何物にも代えがたいです。

 キラステ作品は、自分の心と身体を持ちながらも他者や自分の意思が介在しない現象によってコントロールされてしまう主人公が、「普通」から外れることで加害を受けながらも自己の「生」の在り方を選びとる話だと思っているのですが、ラメステにおいては攻め3人もそれをなぞりつつ、コノエと攻めキャラで自分を乗り越えて不自由かもしれなくても未来・光の方へ手を伸ばす、という不動で永遠なるテーマ性が強いと思いました。ここらへんの感想はED曲「光満つ祝福の歌」がすべて歌っているのですが……。(そういう意味でわかりやすい舞台だったとも思います)

 各ルートと各キャラクター・俳優さんの感想を続けます。

 

 各ルートの初日をそれぞれ観て、瀬戸祐介さん演じるバルドがすごい、ということをしみじみと感じていた。コノエというか、前嶋曜さんを受け止める力がすごい。

 初日を観劇して一番印象に残り、かつぐっときて、今でもずっと心に残っているのが最終決戦へ向かおうとしているコノエをバルドが抱きしめて引き留めようとするシーンだった。色々なことを諦めたふりをして、特に未練や執着というものから目を逸らして生きているバルドが、初めて何かを諦めたくない、コノエを離したくないという姿を見せるのがどうしようもなく人間くさくて大好きになった。抱きしめられながら「死にに行くんじゃない。乗り越えたいんだ」「死ぬためじゃないだろ。生きるためだろ」という、淡々とした中に固く強く響く決意を滲ませるコノエのトーンも胸にくる。出会ったばかりの頃(しっぽを梳かすシーン)の「ひねくれ者」を再び、キス、そして「俺はまだ……生きてる」から戦闘BGMと悪魔たちの台詞で緊張感が続き、戦闘服を着たバルドが登場するまで腰を抜かすくらいかっこいい。

 3ルート全体を通して思ったことは、途中で攻めと受けの権力勾配がめちゃくちゃになるのが好きということで、バルドルートでは、距離の縮め方が激しくておせっかいなオヤジのバルドのペースにコノエが巻き込まれていたのに、いつの間にかバルドがコノエを追いかけるようになっていたという構図がそれだと思った。

 色々なことを諦めているのらりくらりとしたさまを隠さないバルドにコノエが日々の生活の尊さを説くシーン、

「きっと、あんたと出会えてよかったって、思えるやつもいるだろうし」
「あんたもそう思うか」

この食い気味な「あんたもそう思うか」の真剣さに、「えっ」と顔を上げるコノエと同じくらい、ハッとさせられます。

 攻め3人は全員自分自身の闇を嫌っていますが、バルドの「嫌い」が一番ぐさりと刺さりました。瀬戸祐介さんの演技には「キャラクターの台詞」以上にこちらを刺してくる、人間の言葉の重みがある。その嫌っていた自分が求めて悪魔にもすがった「強さ」を唾棄する、力強さ。

 発情期シーンの「いいんだな?」とか「困ったガキだな」の言い方が、日によって吐息っぽく、色っぽくてよかった。あの片手間感というか、本気の気持ちを隠しつつ気怠いような大人っぽいセックスの匂いたつような表現力。

 これらの真摯な演技に加え、瀬戸祐介さんのアドリブ力によって毎公演日替わり要素が楽しみになっていました。本当に瀬戸祐介さんにかんしては舌を巻きっぱなしな日々でした……。応援していてすごく楽しそうな俳優さんだな~と思った!

 

  • アサトルート

 一番リップ音立ってた。

 アサトルートの攻めと受けの権力勾配がめちゃくちゃになる好きシーンは、「俺は、お前のものになりたい」です。

 突然だが、アサトルートを観て思い出したてらまっと氏のインタビュー記事を引用する。

てらまっと 近代人はみんな多かれ少なかれ故郷から追放されている故郷喪失者であり、終わりのないエグザイルの途上にあるんだ、みたいな話がよくあるわけですが、〔…〕自分が故郷を失っても、遠く離れた場所にいても誰も知っている人がいなくても、何度も聴いた音楽はいつだって口ずさむことができるんです。そうやって孤独な人間に最後まで寄り添い得るっていうのが、やっぱり音楽の良いところなんですよ。
(「インタビュー 日常系アニメ批評愛好家が聴くキャラソン」私的音楽同好会『声色 Vol.01 特集:キャラクターソング』2023年、p.45)

わたしは故郷喪失者としてのアサトとコノエにエンパシーを感じてしまった。リークスに言わせれば「傷の舐め合い」かもしれない、故郷を追われ、自分として生きる時間も、拠り所にしてきた父への憎しみも失われ、どうすればいいかわからなくなったアサトに、母からの愛が残されていることをコノエが伝え、そしてアサトが愛を返すこと。そんな彼らを繋ぐものが、アサトが母から聞かされた歌(作中に登場する「音楽」)とそれをアレンジした劇中歌「歩む道」(キャラクターの自己表現としての「音楽」)であるのが、音楽劇であるこの作品をメタ的に横断しながら音楽の意味を体現していて、とても好きだと思いました。

 

  • ライルート

 加藤将さんがCV森川智之のキャラを!?と思い、実際力んだ感じには少し慣れが必要だったのですが、激情型ライはとても癖になりました。

「お前、本当に馬鹿な猫だな。おまけに愚鈍だ」

 フラウドに付け込まれるのもそうですが、攻め3人の持つ闇の中で一番「病み」感があるのが好きで、悪夢に魘されたり狂気を引きずり出されそうになったりして荒い息をつくシーンでは笑顔に……。外見も態度も色々な意味での力も大きく、かつ、大きく見せているのがうまいのに、隙がある感じが(もしかしたら原作とは違う印象なのかもしれませんが)よい。

 2幕でコノエに忠告するバルドの「そのままの意味だー↑よ」とか、「気をつけろよ(ん)」みたいなゆる~い言い方が好きでした。

 アサトルートで初めて同士か確かめ合うのもそうでしたが、娼館で何もしていないことを強調して攻めの処女性?(童貞性?)を確認するのがあの頃のBL典型だ~と思いました。セックスシーンなどコノエと触れ合う時に手が大きくて体格差を感じてウオ~となった。

 ライルートでの攻めと受けの権力勾配がめちゃくちゃになる好きシーンは、コノエの手を左胸に導いて「ここを貫け」と伝えるシーン。弱さを見せるライと隣で踏ん張ろうとするコノエの感情が溢れまくった叫びのやり取り。リークスがコノエを乗っ取った状態でライにキスするシーンも大好きです!

 劇中歌では「その瞳に」が好きです。「歌……歌おうか?」のシークェンスが、ずるいけど好き……。ぐずぐずになりながら自分の強さの理由とその裏にある自己嫌悪を吐露するライを小さな身体で包み込むコノエ、ライの本当に弱弱しい「嫌じゃないのか?」、お互いが嫌っている身体へ優しく自分を残そうとする行為という怒涛の流れが美しい。

 狂気に囚われたライを呼ぶコノエの「ライ!」が本当に痛切で好きです……。

 

  • 各キャラクター・俳優さんについて

 カガリは本当にかっこよかった!BL表象における女性が好きなので、吉良らしい頑なさと鋭さと強さを言葉の端々から滲ませる発声が大好きです。淺場万矢さんが兼ね役で演じるマナも、勝気なトーンと「あらぁ~ん?♡」な、しなを作った感じがめちゃくちゃよかったです。

 トキノはコノエと額を合わせたりお尻で小突きあう仕草がいちいちかわいくて登場するとシリアスな展開の中の癒しになっていました。また、大千秋楽の深澤大河さんの「コノエの旅が無事に終わり、幸せになりました」という挨拶がすごく好きでした。気持ちは終わってほしくないけど、舞台は終わりがあるから美しい。

 キルとウルは、特にウルの不気味さが好き!!!でした。キルの戦闘準備中に見せるガラの悪そうな雰囲気と、ねっとりとした品のある(?)ウルの同じなようで違う表情も見せるコントラストが好き。また、戦闘シーンでこの曲がかかるタイミングがめちゃめちゃ気持ちよかった。

賛牙と闘牙

賛牙と闘牙

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 悪魔、マジで最高!!!元々原作のビジュアルが別ベクトルで最高なんですけど、あのビジュアルが三次元化して、芝居がかった身振りをつけて低音で歌うOPから虜でした。

 ラゼルは声がいい……!低音でよく通る声をしているので誘惑する「感じるか?」も、コノエが提案を受け入れた後の「よっしゃあ」もデカく、他の悪魔たちが各ルートで見せた活躍に相当するものがなくともラゼルの存在は常に強く感じていました。そして稽古場生配信や他の俳優さんたちのお話から出てくる君沢ユウキさんの(いいエピソードによる)存在感がすごく、君沢ユウキさん、いや、君沢ユウキおにいさまと呼びたくなるような気持ちに。(萌え妹しか許されない呼び方のため、NO)

毎回いい声で「アップロードしてくれよな!」と言っていて、そういう(官公庁とかの)キャラみたいで面白かった。

 カルツも声がいい……!わたしがフィクションで最も好きなシチュエーション、"「生きろ」と託す"もしてくれた。そしてラメステで一番ぞくぞくしてたまらなくなるシーンが、カルツの台詞にあります。

「雪か」
「確かに、そろそろ降りそうだ」

二つの月の歌の歌詞を解くシーンで、この台詞に次いでMが入ってくるのが、糸を張ったような、光線がパァーッと進んでいくような、そんな心地よい推進力を感じてたまらなくなります。

 フラウドは、一番人間っぽくなくてパキパキでかっこいい。村松洸希さんの体格、すごすぎ……!?あのビジュアルで「猫ちゃん♡」「つれないなァ♡」という語尾に♡な感じのトーンなのがたまらなく胡散臭くて最高だし、ライとの関係に萌えてしまった。フラウドENDがめちゃめちゃ気になっている……。

 ヴェルグはまずビジュアルへの寄せ方は一番すごい!ご本人も身体づくりをしたというお話を色々なところでされていて( #悪魔筋トレ部)、都度本当にありがとうございましたとなる。普段のチャラついた喋り方とバルドを誘惑するモノローグ「苦しいだろ?疲れただろ?こっちへ来い。楽になるぞ……」の落ち着いた色っぽいトーンのギャップがすごく好き。また、岩田知樹さんが振り返りラジオでお話されていたことが、自分が原作のある舞台に面白さを感じて観劇をしている理由とまったく重なってドデカ感情になってしまった。

 舞台を観て最初にすごい!と思った演技はフィリだった。くるくる変わる道化の表情と声のトーンとするりとした身のこなしをスムースにこなすきたつとむさんの演技、歌うシーンで仰け反りながらする絶叫がものすごくてずっと感心していた。キラステはサブキャラの演技がしっかりと演劇のにおいをまとっているところが好きで、きたつとむさんは今回その筆頭でした。個人的に少しガサッとした声がものすごく好みです……!

 リークスを演じる松井勇歩さんは、わたしが演劇作品で一番と言っていいほど好きな「羽生蓮太郎」の主演を務めていらして、「羽生蓮太郎」ないし劇団Patch作品での泥くささを今でも見ようとしてしまうんですけど、翻って2.5次元作品ではロイヤルな役も演じていらっしゃって、未だそのギャップに悶えているという個人的な思い入れを持った方です。今回も「またロイヤルの系譜……!」と悶えることになったのですが、一言ひとことの重み、フードを脱いで「虚ろな器」を歌う堂々たる姿、そして思いを吐露するラストのカタルシス、本当によかった。リークスは登場や攻撃の映像演出との噛み合いが見ていて気持ちよかった。

 歌うたい・シュイは、ずっとコノエの旅を見守っていることと狂言回しの役が合致していてよかった。ていうか、キラル作品(キラステになった作品)って傍観者ポジのキャラがいがち……?コノエが賛牙の才能に目覚めたシーンなど、説明台詞ながらそのイヤさをあまり感じさせない絶妙な感情を込めた節回しでよかった。クライマックス、客席まで光が届いて、コノエを導くシュイのシーンはいつも鳥肌が立ちます。

「目を閉じて、光を感じなさい。光を見失ってはいけない!」

 そしてコノエは、キラステ主人公然としていてかっこよくてかわいくて強かった。キラステ恒例ですが、ステージの上で転がされまくりながら台詞を言うのがすごい。正直毎公演安定感を感じたかというとそうではないのですが、そのフレッシュさでキラル作品へ果敢に挑んでいく感じが世界の主人公っぽい。リークスと相対した時の「嘘だ!」の絶望や攻めへの戸惑いのニュアンスと、コノエなりの正義を貫く時のコントラストはすごく鮮烈で心に焼き付いて離れない。

 

 スペシャルカテコは、最初詳細が出た時「Lamentoをファンサ舞台に…!?💢」みたいな気持ちがあったのですが、シリアスな本編から怒涛のハッピーエンドへ、からのいい息抜きになっていてよかったと思いました。加藤将さんの冷やかしの声がデカすぎる。

 原作のテキスト(地の文)をそのまま台詞とするのではなく、演劇の力と観客を信じて取捨選択・表現してほしいという気持ちは、正直、相変わらずでしたが、音楽という要素が加わってキラステの集大成的にアップデートが重ねられたよい舞台作品だったと思っています!演劇LOVE!

2月の音楽

 2月によく聴いた音楽です。同じ曲(ほぼ猫を堕ろすといとうかなこ)を繰り返し聴いてるだけの月でしたが一応……。

 

 

Fling Posse & 麻天狼「FIGHTER'S ROAD」

FIGHTER'S ROAD

FIGHTER'S ROAD

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 アニメ「ヒプノシスマイク Rhyme Anima+」の劇中歌です。

 西遊記をモチーフにした回に登場する、チャイナ風味+ラップの曲。オリエンタルな楽器がふんだんに使われている中スクラッチ音が入ってくるイントロと寂雷先生の「ハッ」に掴まれます。

 サビのメロディへの言葉の乗せ方が、フレーズの区切り通りにハマっている時とずらされている時があって、聴いていてくせになります。

  • くらえ/Flow/苦悩と/修行/東/西/そしてまた/東へ/FIGHTER'S ROAD
  • ことだ/まに/宿るたま/しいのた/び/切り/開く道/の先へ/FIGHTER'S ROAD

「戦うほど光る道」という歌詞が好きです。

 楽曲提供をしているのは同じくヒプノシスマイクの「Nausa de Zuiqu」や「drops」、カリスマの「めちゃめちゃカリスマ」などを手がけているCHI-MEYさんです。多才……。

 

土岐隼一「Treasure」

Treasure

Treasure

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 声優の土岐隼一さんの曲です。

 オケヒが連発するのですがなぜかダサくならずフューチャーな雰囲気があります。たっぷりとしたリズムの中にちょっとJersey clubっぽい音が入っていたりして、こういうサウンド土岐隼一さんがご自身の名義で歌うのって新感覚な感じがします。

 

いとうかなこ「Lamento」

Lamento

Lamento

 ゲーム「Lamento -BEYOND THE VOID」のOP曲です。観劇していた舞台『獣愛ブースト音楽劇「Lamento -BEYOND THE VOID」』の劇中歌がこの曲をアレンジしたものになっていたのでよく聴いていました。

 ケルティックなVGMという感じなのですが、静謐なイントロに入ってくるドラムの音が割れてるのがかっこいいです。

 舞台バージョンでは悪魔が歌唱するパートが好きです。舞台ではこの曲が流れている間だけ撮影とSNS投稿が可能な時間が設けられていて俳優さんたちが割と好き勝手にしていておもしろかったです。

 

ASTROPHYSICS「Little Dimises」


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 リオデジャネイロ拠点のアーティスト・ASTROPHYSICSの曲です。

 浮遊感のあるリバーブがかけられたシューゲイザー的なギターサウンドとボーカル、ドラムンベースのビート。ブラジルのストリートを映すモノクロの実写映像のMVが素晴らしいです。Spotify CanvasSpotifyの再生画面のバックに流れるショート動画)でこの映像の上にキャラクターっぽい線が乗るのが更に好きです。

 ASTROPHYSICSは2022年にアルバムと合わせてビジュアルノベルゲームを発表していたりと、音楽以外の表現で包括的に音楽を発信しているところが好きです。

 

猫を堕ろす『ポップの神髄』

コミュニス (feat. 鮭とばSKTB)

コミュニス (feat. 鮭とばSKTB)

  • provided courtesy of iTunes

 バンド・猫を堕ろすのアルバムです。

 本当に全部が好きなのですが……、ex.鮭とばSKTB(Yurei Landscape)さんとの「コミュニス」は本当にウオ~~~!!!となりました。BPMの速さと鋭いリズムに期待が高まってドキドキしている中アーメンが入ってきてもう身体全体が叫んでる!暴れてる!って感じになります。

 アルバムアレンジされた「漫画の世界で」も好きです。本当に全部が好き……。

 

 2月によく聴いた音楽でした。