山形県遊佐町 鳥海山採石問題 鷲見のまとめ
はじめに 2019年12月6日速報
採石業者による遊佐町の採石訴訟(山形地裁)は、業者側の請求を退ける判決が2019年12月3日に出されました。控訴審があると思いますが、地域資源の保全のための町の条例と判断が司法で認められたという点で、現代としては当然ではあるものの、画期的で評価される判決です。これまでの経済上の利益が優先される傾向があった国の採石法について、県によるその認可の手続きのなかで町の判断や環境上の問題を起点に不認可とすることとなった原因としての、町の条例・運用を認めた判決です。控訴審があるとしてもこれを認めることと願いたいと思います。
採石訴訟、遊佐町の条例「適法」 山形地裁判決、業者側の請求退ける
4ページ目の末尾をご覧ください。
鷲見より
2013/12/03 山形県は、臂曲地区の岩石採取計画を認可しました。認可申請をしていた業者が県から提出を求められていた協定書について、11/29に町自ら協定を結び、その条件を整えたことによるものです。その前に、2013/10/31の町議会全員協議会では議員の多くが反対の意志を示し、2013/11/15の町民説明会では、町長は不在で、町民の反対を受けながらも、町は強行突破しました。
しかしこの問題の進行と並行して、この年9月に町が制定した条例の施行と、現在の採石区域付近も含め、水源の保護・保全の区域に指定しました。このエリアでの開発等については町に事前協議を申し出て、「規制対象事業」であるかの判断を得なければならなくなりました。
2016年9月に、業者は3年経過した計画期間の終了に伴い、新たな採石計画を県に提出するため、町に事前協議を申し出て、11月に町は同計画を規制対象事業と判断しました。しかし業者はその計画を県に提出しましたが、同月20日、県は計画を認可しないことと発表されました。
2017年2月に業者は、遊佐町に対して、不認可の原因となった、健全な水循環を保全するための条例に定める規制対象事業に該当すると認定する旨の処分を取り消すことを求めて訴訟を起こしていましたが、2019年12月に業者側はほぼ全面敗訴しました。原告側代理人は控訴することとしています。
=== ここからが まとめの内容です。 ===
時系列順ですので最新の部分は末尾からご覧ください
写真 2013年前後の様子
鳥海山 臂曲(ひじまがり)採石場
晴れると白い地面が目立つ。手前に張り出す吉出山の西側上流に位置する。手前の麓で湧水が多数ありこれを簡易水道水源などに利用。古くから「横堰」という水路が集める。
鳥海山 臂曲(ひじまがり)採石場
晴れると白い地面が目立つ。約9haの採掘計画。左手前が斜面上流。掘削深さは数十mに及ぶ。
鳥海山 臂曲(ひじまがり)採石場
採石場最深部ではすでに標高320m付近の地下水面に達していることが2008年に確認された。
39.053092,139.968203 - Google マップ
遊佐町 鳥海山麓 吉出山の一部 臂曲(ひじまがり)の採石場はここ ↑
山形県遊佐町は鳥海山の南麓にあり、その溶岩流によってできている尾根筋「吉出山」の採石の継続が問題になっています。
・水源地の問題:麓には藤井地区を始めとした集落があり、これの簡易水道水源は湧水にあり、採石場の下流部にあります。採石場は湧水の涵養域にあることがわかっています。
・景観上の問題:鳥海山は遊佐町のみならず庄内平野に美しい姿を見せますが、その一部が裸地の穴が空く形で歪めています。
ここでは、大同大学准教授鷲見哲也(このまとめ主)のブログ記事を中心に、この問題の経緯をまとめたいと思います。
それぞれのリンクを読むのは大変! という方は、このサイトの太字とテキストの字面をまずはひと通り読んでいただければ良いと思います。
2005年の採石認可申請 胴腹協が結んだ最後の協定
(2013年10月27日 修正追加)
鳥海山南麓、吉出山の一部、臂曲(ひじまがり)の採石の、2005年の認可申請は、当時、阿曽石材(にかほ市)という業者が行った。
業者から県に申請を更新するときには地元の協定書(同意書)が求められており、胴腹の滝や周辺の湧水への影響が懸念されること、ダンプなどの交通がもたらす安全への影響などから、地元の団体:胴腹滝周辺環境保全協議会(胴腹協)が業者と内容を協議して、結んでいた。
この採掘場について、胴腹協が業者と結んだ協定は、この2005年の申請が最後である。
2008年5月 環境自治体会議 ~全国のテーマの中で湧水、採石問題を扱う
第16回環境自治体会議 ゆざ会議 ゆざ宣言
遊佐で全国規模の会議が行われる。分科会では、水の問題、採石問題が取り上げられた。
2008年の許可申請時、町は県に「慎重に対処を」の意見
2008年9月の認可は、状況が複雑である。(2013/10/27修正)
当初、現在の業者(川越工業:秋田県にかほ市)が申請し、町(当時の小野寺町長)は、これについて県からの認可申請に対して「適当ではない」と回答した。(県はこれについて困惑したとのこと)
その後、2005年にも認可されていた業者(阿曽石材:秋田県にかほ市)が認可申請し、その計画が2005年の内容と同じであるとし、県は協定書の添付を求めなかった。(2005年の胴腹協との協定書が、当該の申請のみに限定する記述がなかったため、使い回しされたことになる。胴腹協はそのように同意したという事実は確認されておらず、県がそのように解釈したことになる。)
この申請についての県から町への意見照会では町は「慎重に対処されたい」旨の意見を提出。
町としては反対の意思を明確にしながらも、県は要件を満たしているとして、採石法の趣旨(これは規制の法律ではなく、健全な業の促進という法)と規定等にのっとり、阿曽石材による申請を認可した。
後に、川越工業は阿曽石材の認可事業を継承し、2009年3月に、当初の川越工業の申請は取り下げた。
(これが、現在の認可申請の構図・背景・起点となる)
2009年3月 新人の時田氏、現職の小野寺氏を破り町長当選
この時点で、時田氏の採石問題への姿勢は不明。
遊佐 2日目: sumisumi
鷲見ブログ:2009年3月29日 鷲見を講師として、湧水環境の学習会の実施。採石場や横堰の現地を見るとともに、屋内では湧水や採石問題のレクチャー。
2010年5月 吉出山周辺の水流動調査の依頼
2010年6月4日 企画課長村井氏(当時)、大同大学鷲見研来学、町の湧水関係の調査を依頼。
そのやりとりの中で、町の当面の方針として「環境保全面での配慮は、湧水(水道水源や農業用水の原水)をまもることが必要。現在の採取は湧水源の寸断につながる。計画の見直し、一時中止が必要。」という文言。 この時点では調査に協力の方針を伝える。
ほぼ同時に総合地球環境研究所 中野教授にも依頼。
2010年8月 町、自ら業者と協定締結。採石継続条件を整える。
2010年8月12日山形新聞 町は自らが主体的に業者と協定を結ぶ方針を固めた、と報道。
時田町長に代わって初めての更新で、町自らが協定を結び、採石継続の条件を自ら整えたことになる。
(仮に、許可を判断する県が、条件次第で許可しないことを意図したとしても、なすすべがない。町自らが。採石を継続しないための要件を放棄したことになる。)
協定では標高320mよりも下の掘削を認めない文言も。この320mは鷲見が提示した「地下水が320m付近にあるという」情報に基づいているのは明らかで、これを逆手にそこまで掘削しても良いと誤った情報として組み込んでいる。
鷲見はこのことに反発し、町の公式の調査には協力しない旨を町に伝えた。
(地球研 中野教授の調査は実施)
残念なニュース: sumisumi
鷲見ブログ。町自ら協定を結ぶ件につき。
2010年9月 県、町と業者の協定書を以て、採石を認可
2011年3月13日 震災直後の学習会、採石問題に焦点
遊佐2日目 3月13日: sumisumi
鷲見ブログ: 震災2日後の2011年3月13日 学習会。湧水環境、採石問題を扱う。水の動きのおよその解説、点と点をつなぐ証明の限界、法の問題、意思の問題、などを議論。
2011年8月24日 町長に面会 HP掲載申し入れ
遊佐にて調査: sumisumi
鷲見ブログ:2011年8月24日 個人のルーチン調査の記録。
このエントリでは内容を書いていないが、
町長に面会した時に、以下のことを依頼している。
一部の町職員が、採石に関して、標高320mまでは掘削してもよいと、鷲見が言っていた、と言っているというのを耳にした。このようなことは絶対に許されないので、町としてそのようなことはないとホームページで明示してほしいと依頼し、町長はそんなことを誰が言っているのかとそのようなことはならないことに同意し、掲載についても了解した。だが、2013年10月27日現在まで、実現していない。
このことは、引き続き、町の調査に協力しない理由の一つとなっている。
2011年11月 胴腹の滝上流域の一部、町が買収へ
遊佐からのニュース: sumisumi
鷲見ブログ: 採石場を抱える吉出山のうち、胴腹の滝上流に当たる土地=業者が採石を終えた土地を、町が1200万円で買収するとの記事についてコメント。
遊佐プチ調査: sumisumi
鷲見ブログ:2012年9月9日 プチ調査の記録
2012年12月 「鳥海山フォーラム」吉出山の水が山麓湧水とつながっている事が証明
遊佐、鳥海山フォーラム: sumisumi
鷲見ブログ:町から委託されていた吉出山周辺の水野調査で、総合地球環境研究所の中野教授は、吉出山の地表水はその麓の湧水とつながっていることを、水質情報から明らかにした。これは採石場での影響が麓の湧水に及ぶ可能性を否定出来ない情報。鷲見もこの説を水文学的に支持。 一方で、町長は会場からの質問に対して、採石反対を明言しなかった。後日、HPにて、反対であることを別文書の中で記述。
鳥海山フォーラム ~地下水脈調査でわかった多くのこと~ (平成24年12月24日開催) — 遊佐町
町のホームページにおける、「鳥海山フォーラム」のまとめ。
この中で、別文書(1月11日)にて、町として採石には反対を明言。
2013年1月 町長選候補者2名となり、現職町長は採石反対明示
1月8日に 無風と思われた町長選に、採石反対で対立候補、立つ。
1月9日に 鷲見ブログ。
1月11日に 町長は採石反対の明示。(12月24日に非明示との指摘に対応)
科学と意思と: sumisumi
鷲見ブログ: 町長選関係コメント。加えて、科学の証明の限界にこだわるより、意思決定は、町民の意志によればよい、という主張。
「町の取り組み経過と今後の方針等について」
鳥海山フォーラムの頁に1月11日に追加されたファイル。この中で、会場では明示しなかった「採石反対」を町が明言。
2013年1月 町、消費者団体・農業生産者団体と共同宣言で「自然資源の維持再生」を誓う
山形県遊佐町、JA庄内みどり、生活クラブ連合会が「共同宣言」|活動情報|生活クラブ連合会
遊佐町(時田町長)は、消費者団体である生活クラブ連合会と、生産者団体であるJA庄内みどりと、「共同宣言」。この中で、
「土壌・森林・河川・地下水・海などの自然資源の利用にあたっては、自然資源の地域内循環の維持再生を第一に心がけ、そのために継続的な活動を行う。」
との文言。後に町は協定継続という形で採石を続ける手続きを進め、2団体は裏切られることになる。
2013年3月 町長選 時田氏再選、齋藤氏1/3の票を獲得
2013年3月10日投開票の町長選挙は、現職が再選。
新人の齋藤氏は採石反対を全面に訴え、有効票の1/3を得た。
時田ひろき(現職) 5,798票
さいとう武(新人) 2,687票
2013年7月 「遊佐町の健全な水循環を保全するための条例」施行
平成24年7月から5回の会議で、案を固め、パブリックコメントを経て、議決、7月1日に施行。(施行規則も7月1日施行。) この条例が実質的に効力を持つのに必要な以下の物が未策定・未指定となっている。
・水循環保全計画は未策定。
・水源保護地域・水源涵養保全地域は未指定。
この水源保護地域・水源涵養保全地域において、採石を含む協議対象事業を行おうとするものは町に届け出て協議するだけでなく(第14条)、町民その他関係者への説明会を実施し計画への意見を聴かなければならないことになっている(第15条)。(説明会の周知方法については規則に定めることになっているが、同条例規則には盛り込まれていない。)
この14条、15条は来年(2014年)1月に施行されるので、地域が指定されていても、10月現在は発効していない。
指定いないということで、この協議をすることなく、協定書が整うだけで、県の認可はおり、事業は実施できることになる。
この条例のかなめの地域の指定をしないまま、無効のまま、町自ら業者と協定を結び、採石の条件を整えようとしている。 条例制定の意図と真逆の状況を作り出していることになる。
これを私は最悪のシナリオだと思ったが、もっとひどいシナリオがあるとのこと。
第27条は7月にすでに有効となっている条文で、要約すると、町長は、水源保護地域及び水源涵養保全地域内の土地について、土地所有者から買取りの申し出があったときは、取得することができる。必要に応じて水循環保全審議会を開き意見と聴くとあるが、判断は町長にのみゆだねられる。つまり、町長の判断で、土地の買い取りをできるということである。
今年のうちに上記「地域」の指定がなされれば、上の14、15条の町の協議対象からは外れたまま、27条の土地の買い取りはほいほいとできることになってしまう。
つまり、最悪のひどいシナリオはこうだ。
いま10月:
第14、15条は無効。27条は施行済みも、地域未指定で実質無効。
11~12月:
町が、当該事業地を含むように、保全地域を指定する。(これには事前通知が必要)
14、15条は無効のままなので、採石事業は協議対象外。
町が業者と協定結べば県認可で即時に採石できる。
もちろんここぞと、最後のひと堀りする業者。
一方で、27条は有効となり、業者=土地所有者が
買取りを申し入れ、町長決裁で買取り実行。
翌年1月:
14、15条が有効となるも、すでに土地買い取り完了の事態。
これを見計らったかのように、
今回の町と業者の協定書の中には、こういう文言が入っているのである。
「第8条 甲(業者)は、・・・採取場を含む甲の所有地について、採取場の代替地の確保等の条件が整った場合には、乙(町)による公有地化に協力するものとする」
これだけ読んでも、不自然極まりない内容なのであるが、
上記のシナリオとあわせてで読むと、すでにすべてはセットされている、ということになる。
これは本当に最悪のシナリオであり、採掘はできなくとも、
地域指定さえやれば、買い取り条件は整ってしまう。
遊佐町の健全な水循環を保全するための条例について — 遊佐町
遊佐町のページ。5回の検討会議で議論。うち4回の会議録は掲載されていない。パブリックコメントを経て、議決。
遊佐町:水循環保全条例とその効力: sumisumi
鷲見ブログ:上記コメントと同じ内容のブログ。これは10/29に書いたもの。
遊佐町:水循環保全条例とその効力(その2、最悪のシナリオ): sumisumi
上のテキストで書いたことの後半部分、27条の土地買い取り問題から見える「最悪のシナリオ」を取り上げています。
2013年7月 町内9000票の採石反対署名
鳥海山岩石採取阻止に向けた署名に取り組みました。|ニュース&トピックス|生活クラブ連合会
生活クラブはJA庄内みどりとともに、臂曲の採石阻止の署名活動を行い、全国で56,684筆(7月31日現在)を集め、9,730筆が町内からのものであったと報告しています。
2013年9月10日 遊佐町議会一般質問、採石問題について町長答弁、「協定を結ぶかどうかは決定していない」
遊佐町 議会中継
9月議会。採石問題に関する議会での質問は、伊藤マツ子議員のみ。
その22分頃にて町長答弁。 「協定を締結するしないについて、判断は決定していない」
県は、協定書が認可に必要、ということを認めている。
町長は「県は環境に影響が出る恐れがあるだけでは不許可にできない」としていると発言。が、しかし、このときは協定は成立しておらず、協定書が不備で、申請書作成要領の要件が満足されていない状況であり、状況が違うことも注意必要。
2013年9月12日 採石の許可が更新されず、現地での採石は停止。
2013年9月12日 採石の許可が更新されず、現地での採石は停止。
県への申請に必要な地元の協定書(同意書)が整わなかったため。
町もこの段階で、自ら協定書を準備せず。
2013年10月1日 新聞記事: 業者、遊佐町内の別の採石現場にて、自然公園法違反(2013年8月、2012年7月)。
当該業者について、遊佐町内の別の採石現場にて、国定公園内で自然公園法が定める地下2mの制限を越えて採掘している違反行為があったことを県が公表。公表は2013年10月30日。山形新聞、読売新聞の記事は10月1日。
2013年8月の調査で8m以下までの掘削を確認、口頭で厳重注意。
2012年7月も同様の違反をしており、県は処分も検討。
2013年10月1日 地元への非公開の説明会で、町の協定書案が提示。自ら協定を結ぶ意思があることを示すだけでなく、業者撤退後の土地を町が購入することを明示。
メディアの方々へ取材依頼: 遊佐町の将来は暗い、そうならないために: sumisumi
鷲見ブログ: タイトルの通り。それまでの簡単な経緯を示している。
10月1日に地元で非公開で開催された会合で、協定書の改定案について、説明・協議がされたとの情報。
この協定書の案の中に、業者が別の採石場を得た場合に、現在の土地を公有化することを示す文言が含まれていることが判明。 利用価値のない土地を町が税によって引き取る案の提示。 町財政のモラルが深刻な事態に。
遊佐鳥海山の採石問題(町が協定書締結の方向): sumisumi
鷲見ブログ: 再度地元・農業団体には説明会を開くことなく、議会の全員協議会を開くことになったとの情報を得てのエントリ。これは、町が議会に対しても説明したと言う事実のみを残して強行突破を図ろうとする疑い。町民・メディアへの呼びかけ。
遊佐町採石問題関係 追加情報20131025: sumisumi
鷲見ブログ: 前日の記事の追加情報。11月初めに開催との情報があった町民向け説明会は、2013/10/31の議会全員協議会(非公開)の結果を見て開催される、との情報。これらの案件は、2013/10/27現在、町・町議会のHP等には全く記載がない。
情報共有と民意と無視と: 遊佐鳥海山 採石問題: sumisumi
2013年は、町長選、署名活動など、この問題に対する民意(一般の方の意思表示)が明確になった。この事についてまとめてみた記事。
2013年10月30日 朝日新聞朝刊 山形版 報道「遊佐町、土地購入の方針」
遊佐町採石問題 新聞記事と焦点のズレとウソと: sumisumi
鷲見ブログ:朝日は土地購入をテーマにしたが、目の前の問題は、「なぜ町長は、自ら協定を業者と結び、採石認可の条件をわざわざ整えるのか」ということであり、そこに突っ込んでほしかったな、という不満。
2013年10月31日 山形新聞報道 町、採石土地購入方針
遊佐町、鳥海山麓岩石採取場の土地購入方針|山形新聞
朝日新聞と同様。
10/31の議会全員協議会で「了解を得たあと業者と協議する方針。交渉がまとまるまでは、今年4月に施行された県水資源保全条例、来年1月1日に施行する町の健全な水循環を保全するための条例で規制をかけ、監視体制を強めながら問題解決を目指す考え。新たな岩石採取事業は3年計画。前回事業は9月12日で認可が切れ、業者が県に再申請している。」とある。
問題は、土地購入のことに焦点が当たりすぎて、この採石事業の認可申請にかかる地元の協定を、町自らと業者が結んで、協定書が業者から提出されることで条件を満足させて、採石再開を許すのか、と言うことについて書かれていないことである。
2013年10月31日 町議会全員協議会終了 議員多数が町長方針に否を提示。町長は撤回を示さず。
2013年10/31日 夕方6時頃、遊佐町 議会全員協議会が終了。
議員さんの多数意見で町長方針に否が示されました。
しかし町長はそれを受けても撤回を示さなかったとのことです。
町民(農業団体関係者など)3名とメディア全員が傍聴できたとのこと。
また、開催直前の役場前では、農業団体関係者20-30名ほどが役場入口付近に集まり、議員とメディアにアピール活動等をされており、夕方の民放で放映されました。
ーーー
議会全員協議会の「非公開扱い」について:
「慣例により」議員控室で行っており、部屋が狭いため傍聴者を入れられないため、非公開となっているとのこと。(規程などが定めていない。)今回の協議会も「慣例により」非公開としていたら、急きょ上記のようになったとのこと。
ーーー 地元民放の放送。
山形放送のHP(http://www.ybc.co.jp/news/)からしばらくはその放映がみられます。
10/31 「岩石採取で遊佐町が土地買い上げ検討へ」から。
見る限り、協定締結=採石継続、という構図はわかってもらえる映像。そこは評価したい。
公有地化の方は、問題を理解してもらえるだけの情報にはなっていないようです。
===
(鷲見の感想として):町長の方針は変わっていませんが、メディアと町・議員の情報共有は進んでいるのではないかと思います。まだ状況は予断を許しませんが、2年前からは大きな変化であると思います。
(2013年10月31日 21時現在 追記の可能性あり)
<<コメント2013/10/31>>
10/31の山形新聞の記事において
10/31の議会全員協議会で「了解を得たあと業者と協議する方針。交渉がまとまるまでは、今年4月に施行された県水資源保全条例、来年1月1日に施行する町の健全な水循環を保全するための条例で規制をかけ、監視体制を強めながら問題解決を目指す考え。新たな岩石採取事業は3年計画。前回事業は9月12日で認可が切れ、業者が県に再申請している。」とある。
問題は、10/31朝日新聞も同様で、土地購入のことに焦点が当たりすぎて、この採石事業の認可申請にかかる地元の協議を、町自らと業者が結んで、採石再開を許すのか、と言うことについて書かれていないことである。
来年施行する条例がかかる前に、協議を成立=採石再開させてしまえば、この条例による規制はかからない。それに、この条例が有効となるための「保全地域」の指定がなされていないため、その決定も先に行う必要がある。
よって、この条例を有効に活かすためには、次のプロセスが考えられる。
・保全地域の指定(事業規制がかけられる前提)
・協定を結ばないで、1月1日まで待つ。<=ココ重要(14,15条が未施行のため)
(県はこれを待たずに不認可の判断とする可能性はある)
・本条例にかかる協議対象事業となるため、業者から町に協議の申し出をさせる。(14条)
この後、規制対象か否かの通知があるまでは事業着手できない。
・業者に当該事業計画の説明会を実施させる。(15条)
・業者は、町民、周辺住民、利害関係者等団体から意見を聴く。(15条)
・水循環保全審議会(29条)に諮り、町長に意見提出。
・町長:規制対象であるかどうかを判定(17条)。業者へ通知。
(もちろん、採掘させないためには規制対象判定としなくてはならない。)
<=判断権限町長のみ。委員会等は意見を述べるのみ。反対押し切ることもできる。
(仮に規制対象外の場合も事業監理委員会を設置「することができる」)
時間的なギャップで穴をあけてはならないということである。であるから、上記の網がかかるようになってから、ということにしなくてはならない。協定に関して決定は急いではならないのだ。
10/31遊佐町議会全員協議会 メディアのフォローアップ: sumisumi
山形新聞、朝日新聞山形版、読売新聞山形版+NHKの、翌日11/1の各紙・ニュースのフォローアップと、鷲見コメント。
遊佐採石問題 11/2 荘内日報朝刊: sumisumi
1日遅れでの荘内日報の記事。鷲見要約+町長発言のおかしいところを書いてみる。
<<参考情報>> (2013/10/27追記)
山形県岩石採取計画審査基準(下記リンク)には、次のような記述がある。
ーーー
1.採取場の位置
次に掲げる場合には認可をしてはならない。
イ 市街地の近郊、景勝地など特に環境に留意しなければならない地域に開設される採取
場で、適正な環境保全対策が講じられていない場合」
ーーー
これは、地域や町が鳥海山麓が「景勝地など特に環境に留意しなければならない地域」と認め、県にそれを認めさせるのであれば、認可しないことになる。
それを定義により認定すること、または、町や民意によりそれが該当すると認定すること、が必要だが、少なくとも県から町への意見照会の中に、この景観上の環境に留意されないことを理由に「適当ではない」との意見を出すことは可能であることを、ここに付記する。
これは、ブログに記載の水源涵養域の定義や森林法の観点だけではなく、景観の観点もありうることをここに加えておく。
11月15日(金) 18:30-20:00 採石問題 住民説明会開催との回覧周知
11月15日(金) 18:30-20:00 町役場議所
事前連絡無しで、どなたも参加可能。
11月7日付の「至急回覧」
ーーー この時点での鷲見の見解
(1)周知の問題
まず、この説明会の周知に問題が有ります。
・周知期間が、1週間というのはあまりにも短すぎる。月刊の広報に載せられるタイミングで周知すべき。
・11月7日20時現在、HPには掲載されていない。至急周知の徹底が図られていない。
・議所に入りきらないほど住民が参加する場合はどうするのか。
(2)同席者の要件
次に、説明会には以下の列席を得るべきだと思います。
・町長(はもちろん出席するでしょう。しなかったら、リコールものです。)
・業者
・県の担当者
・環境審議会のメンバ(町長の「一定の理解を得ている」との認識を直接確認するため。)
・町の議員(全員、今後の議会対応を質すため)
町の担当者だけの説明ということであれば、町民または議員は、説明会を再度開くよう、要求し、会場の意思(挙手)を確認するべきです。
少なくとも議員さんには、このような点を確認してほしいものです。
(3)議会と議員の事前の対応
前回の全員協議会では反対の意思を示した議員が多数居た。この説明会までの間に、もう一度全員協議会を開き、町民に対する説明としてどうするのか、事前に、確認する必要がある。
前回の全協のままの案ということであれば、反対多数の中で、どうしてそのようにするのかを追求しなくてはならないし、修正案を出すのならば、なぜ再度全協を開かないのか、と追求し無くてはならない。
全町議は、少なくともその点を事前に確認しなくてはならないだろう。
(4)当日、説明会で確認・質問すべき事項
多くありますが、少なくとも以下の点は確認が必要と思います。
★これだけは、絶対に確認が必要:
業者の採石の申請の認可には、県から求められている地元の協定書が必要であるはずだが、その点について何度も確認するべきだ。 協定書がなくても県は認可して、無法な採石が行われる、という以前の町長の説明について確認が必要。それがどうなのかで、話が全く異なる。
上の点が確認できないならば、あるいは、町だけの説明が納得出来ないならば、県の担当者が列席の上で、再度説明会を開くべきである。
その他
・認可申請において、地元の協定書を必要とするのは業者である。そのことを確認。地元で誰も協定を結ばなければ、県は認可しないはずではないか。どうして町自らが認可
・なぜ、一つもいいことがないのに、そして町民も町長自身も反対しているはずの採石計画に、町がわざわざ業者の都合を聞いて、町自らが対応しなくてはならないのか。
・協定書に覚書を書くのならば、覚書の内容も同時に説明すべきである。覚書を結ぶことだけを確定させるのはおかしい。なぜ、中身もわからない覚書を結ぶことをいま、協定書に盛り込んで、町が自ら危険な選択をするのか。
・土地を町が買うということを許すと、問題のある土地は町が買えばよい、と多くの人が考える事になってしまう。町が様々な節減を図ろうと努力している中で、そのようなことを許していいと考えるのか。
===
認可申請の手続きの概略です。
土地を町が購入するというのはこれと直接関係はないはずですが、協定書の中に、購入に関する覚書を別途締結する旨記載しようと(町長が)しているため、協定のことと土地購入のことがひとつの問題として扱われようとしています。
遊佐町採石問題 住民説明会は11月15日: sumisumi
上記をブログにした記事です。
遊佐町 採石問題の絵と構図: sumisumi
鷲見ブログ:上記のマンガを含めた解説。
2013年11月15日 採石問題 住民説明会は町長欠席、町民から反対意見・拍手も、強行突破で終了。
11月15日18:30から開かれた、採石問題に関する町民説明会は、町側から企画課長と同補佐が説明するのみで、町長は欠席。
議会に示した内容で、業者が県の認可申請に添付する協定書を町自ら結び、さらにその中に業者の土地を町が購入する旨の記述を入れており、採石継続と土地購入を両方を行う条件をを整える内容である。
説明会では、反対意見が出るも、説明の事実のみ残して終了。町は、議会・町民の意思に無関係に強行突破ですることが判明した。
町長は、議会と町民に説明したという事実のみ残し、業者とこの協定を結べば、業者がこの協定書を提出し、申請に必要な書類は整うことになる。 県はその先審査を行い、認可・不認可の通知を業者に行う。認可の場合、採石は再開される。
県が、協定により、安全・環境の面で地元との調整が行われていると認め、他の採石場で同業者が生じさせた国定公園での採掘違反を不認可の理由としない限り、認可される見込み。
現地からの情報によればメディアの取材は、以下のとおりとのこと。
新聞:朝日新聞(11/16掲載)、山形新聞、荘内日報
テレビ:YBC,YTS,TUY 。NHK不在
20131117鷲見メモ
下記説明会でのメモを拝見した。その上での鷲見の感想。次の1点を町に確認・要求すればいい。
『仮に、協定を結ばないまま、計画認可の審査を開始し、町への意見照会に対して町が「認可すべきではない(計画は適当ではない)」という回答をした場合、それでも県は、国定公園で違反を繰り返した業者に認可できると考えているのか』と、県に事前に確認してほしい、と。
その「わからないこと」を挟んで、両者が憶測で話をしている状態。
・認可されるから、無防備はダメ、と町は言い
・認可されないにきまっている、と反対側は言い
ということの繰り返しになるだけ。
なぜ、町と町民と議会は、県にこの点の確認をしないのか。
議会や県会議員経由でもよいのである。
県は、単に書類を審査するだけでなく、環境や安全の面で地元関係と協議を十分にすることが審査基準にも書かれている。
http://www.pref.yamagata.jp/ou/shokokanko/110001/publicfolder200606287938425071/saishukijun.pdf
基準1〔趣旨及び取扱い〕「(4)特に環境に留意しなければならない地域に開設される場合の環境保全対策の適否については、担当機関などの関係者と協議し判断すること。この場合、できる限り、申請者に地域との環境保全協定を締結させること。」
つまり、審査の経緯で町と十分に調整する必要があるが、県がどのように言ってきているのか、町は十分に説明していない。「もし認可されてしまったら」と仮定的に言っているにすぎない。
逆に言えば、その点を出席者は、質問していない様に思う。両側に都合の良い推測のまま、話を進めようとしていることが問題である。 本来は、議会全員協議会の時点で、県の担当者に出席を求めるべきであっただろう。「そこがわからないままに結論をだすのはどういうことか」と。
当然予想されることは、「審査の結果をどうするかは先に約束できないからそのようなことには回答できない」というだろう。だが、それは業者に対しての義務である。
町は、県に対しても取引できるはずだ。上記の調整を審査の段階で行うことが求められるからだ。
「この点の回答をいただかなければ、協定について結論を出すことはできない」と。
だが、町にその主体性はない。そのつもりは全くないからだ。
なぜか、それは業者に利するだけの簡単な結論が先にあるからである。
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説明会の中で、県は前回も認可したから、今回認可しなかったら訴訟リスクがある、と考える、だから今回協定書がなくても、認可するだろう、という見方が出た。
だが、同じ条件だから認可とはならない。地元の協定も成立せず、前回期間に、同業者が別採掘場で違反行為が連続して行っている。
同じではない条件であることを、県は理由にできる。
だが、町はその「同じ条件」自ら提供しようというのである。
県の認可条件に、せっせと協力しているということである。
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2013年11月16日 朝日新聞朝刊 山形版 記事
朝日新聞山形版 2013/11/16朝刊
遊佐町採石問題 土地購入の方針町が住民説明会
鳥海山麓での新たな岩石採取について、湧水保護や景観保全などの観点から地元住民らが反対している問題で、遊佐町は15日、町民説明会を開いた。秋岡県にかほ市の業者が所有する土地約50ヘクタールを購入する方針を示し、理解を求めた。
町側は、「公有地化への協力を(新たな採取のための)協定に感り込りことについて、事業者に約束を取り付けた。大筋、我々の考
え方を会社も認めている。実効性は担保している」とした。しかし、「まず協定蓄を結び、別途、覚書を締結し、購入時期や金額の交渉に入る」と説明した。
町民からは「順序が逆でないか」との声が上がったが、町側は「会社側に、覚書に条件や金額を入れることはのんでもらっていな
い」と答えた。さらに、採石業者が所有する約50ヘクタールについても、「現実的に全てを買えるとは思っていない。理想型だ」と述べた。
町民が「まず採石をやめてほしいという意思表示を県にすべきだ」と主張すると拍手が起きた。町側は「採石法にゆだねたら、町は関与できなくなる。今の状況を保てなくなると町長が判断した」と話した。説明会には、時田博機町長は出席せず、企画課長、同課長補佐が説明し、町民からは、町長抜きの説明会に不満の声が相次いだ。(岡田和彦)
何かできるか:遊佐町 採石問題: sumisumi
説明会の状況を受けての、コメント。
2013年11月29日 遊佐町、業者と協定締結
2013年12月3日 山形県、業者の岩石採取計画を認可
岩石採取等に係る環境保全に関する協定等の締結について(平成25年度) — 遊佐町
遊佐町のHPに関連情報掲載。
「遊佐町環境基本条例に基づく遊佐町内の岩石採取等に係る環境保全に関する協定書」(遊佐町HP)
附則には業者の所有する採石場の土地について、町による公有地化に向け別途覚書を締結する旨も記載。この時点で、覚書の内容は確定していない。
12月4日の新聞記事:朝日新聞、山形新聞、荘内日報、毎日新聞の各朝刊。
朝日新聞 町議会は同日、「大切な湧水群を保全できるように、許認可事務に関して適切な対応をすることを強く要望します」とした県知事への意見書を採択したが、届かぬ内に認可が決まった。
=>鷲見コメント:上でも書いたように、町民説明会前後に、臨時議会の招集条件を整え、間に合わせるように段取りするべきだっただろう。本議会では間に合うわけがない。そこまでするつもりはなかったのだ。その後の議会で町長とどう対峙するのか。
荘内新聞:この新聞は明らかにおかしい。
「鳥海山の環境保全の前進を歓迎」 =>おかしい。協定を結んで採石継続ということは後退である。
「県は認可の前提として、町と採石業者に寄る公有地化に向けた協定を結ぶことを求め」=>おかしい。公有地化まで求めてはいないだろう。
「事業継続、従業員の生活に係る問題だ。・・・業者側への配慮が町にも求められるのではないか。」=>では地元の安全・環境をないがしろにした業を認めよとでもいうのか。他所者の雇用のために地元の生活を脅かすことを町は配慮せよと、そう言っているようである。現場を見て言っているのだろうか。
2013年12月9日 遊佐町、土地公有地化で業者と覚書を締結
「公有地化に関する覚書」(遊佐町HP)
1 甲は、要望する諸条件が整った場合には、本協定書第1条に規定する採取場を含む甲の所有地について、乙による公有地化に協力するものとし、乙は、甲のために上記諸条件が整うように努める。この場合、認可期間にかかわらず、できるだけ早い時期の公有地化について、甲、乙最大限誠意をもってその実現に努めるものとする。
2 適切かつ円滑な交渉を行うため、契約条件及び価格交渉等に関する業務は、代理人をもって当たらせることができるものとする。
3 甲と乙は、1項の甲が要望する諸条件の内容については、正当な理由がない限り、第三者に口外しないことを互いに約する。
新聞報道:すべて12月10日朝刊。
朝日新聞山形版:
「遊佐町、業者と覚書 採石場など公有地化へ努力。(両者の写真付き)」
「町内の不動産業者を代理人とし、契約条件価格交渉について年明けから本格交渉に入ることを明らかにした。」「社長は、『他の場所で事業が継続できるならば全面的に協力していきたい』」「砕石事業については、年内にも再開を予定しているとした。」
毎日新聞山形版:
「土地公有地化で採石業者と覚書 遊佐町」
「時田町長は『代替地を町が手配することはできないが、情報を提供するので地権者と競技して欲しいと述べた」「売買価格は近隣の土地の実売価格を参考にする」
=>鷲見コメント:このような採石跡地を周辺の実売価格を参考にできるのか。条件による考慮をどの程度反映するのかということのほうが必要なコメントである。
山形新聞:
「遊佐町 事業者と覚書」(調印の写真付き)
読売新聞:
「遊佐町と採石業者 覚書」
「社長は『事業を継続できるのであれば、土地の売却は前向きに検討したい。代替地を求めるかどうかは決まっていない』と述べた」
荘内日報:
「公有地化に向け覚書締結 鳥海山南麓採石問題 湧水保護へ遊佐町と業者」(両者の写真付き)
「時田町長は『なるべく早く購入したい。遅れるほど環境に負荷が掛かる。すみやかに交渉のテーブルに付けたら」
鷲見コメント:
・問題のある土地を、町が購入して解決する、ということは、他の問題でもそれが成立することを認めるのかどうか。これは財政モラルの破綻を意味する。
・跡地の処理は、採石法に基づいて業者がきちんと負担することは当然のこととして両者+町民は了解しているのか。
・違反を繰り返している業者の新たな採石地の代替地を町の中に置くことを、住民や関係者はWelcomeとしているのか。
・この土地の売買の仲介を、まさかこの不動産業者がやるのでしょうか。自分に有利な高い値段を付けることを動機づけていることになりますが。。。
ここまでの展開を見て
1.決定プロセスがおかしい。
議会にも住民にも、これを止めたり大きく修正するための手段はここまでに用意されていない。町は意見を聞くだけで、反映された形跡は見られない。「説明しました」だけで終わっており、「決定」を行ったのは町長だけである。よって、署名しようがデモをやろうが、メディアに訴えようが、ここまでの決定プロセスには関係がない。
2.問題のある土地を、町が買って解決、という手段の危険性の認識欠如
この認識欠如は町だけではなく、町民にも言えることだが、
民間が作り出している問題の状況、これに町が乗り出して、税を投入して解決、というのは、その後に2つの大きなリスクを残す。
ひとつは、「土地は個人が所有していても、公の機能がある」ということを過小評価し、公の機能があるから町が買うべきだ、ということで今後も進めれば良い、と誤ったメッセージを後世に継承するリスクである。これはコモンズの概念・モラルの崩壊をもたらす。
もう一つは、こういう形で税の支出を安易に行うという財政上のモラル崩壊である。みんなの税をこのような形で支出することが、今後も許されるならば、明らかに財政上のリスクとなる。しかも今回は町長単独の決済であり、町民の同意を得ないまま実施されたことになる。
こうしたリスクを、どのように認識しているのか、である。
3.情報共有の不足・メディアの問題
この問題の構造について、メディアも、町民にも、あるいは他の関係者にも、共有されていなかった。このことをどう考えるか。ローカルメディアの不在の問題は、地方に共通の課題である。
また、多くのメディアは勉強不足のまま報道していたように見られる。
業者、別現場の原状回復命令
業者は、臂曲とは別の鳥海山麓の現場(国定公園内)において、「深さ2メートル以内の土石の採取」の許可条件に違反して採石したとして、2013年に原状回復命令を受けて整備を行っている。
鳥海山・飛島ジオバーク 日本ジオパークに認定
祝! 鳥海山・飛島ジオパーク誕生!! | 鳥海山・飛島ジオパーク
2016年9月9日 地域の取り組みが認められ、日本ジオパークに認定されました。
2016年10月~12月の、計画申請と不認可決定のまとめ
2016/10/03
業者は、新たな計画を県に申請するために、2013年に施行された遊佐町の「健全な水循環保全条例」に基づいて、9月9日に事前協議書を町に提出した。
この現場は水源の保護・保全を要する指定地域に指定されたこと、また新たな計画であることから、規制対象事業であるかどうかを事前協議を申請し、水循環保全審議会・環境審議会での審議に諮らなくてはならない。
また、新しい計画は掘削エリアを現在の約9万平米から約12万平米に拡大、これまでの申合せの標高320mよりも深い284mまで深堀り、約48万立米を搬出するとしている。
参考:毎日新聞
2016年11月8日、町は業者に規制対象事業に該当する旨の通知書を郵送した。町長は「訴訟のリスクを覚悟の上で条例を制定した。県と一体となって対処していく」(11月9日毎日)と述べている。
その間、2回の環境審議会と4回の水循環保全審議会、2回の町民意見交換会が開かれている。
2016/12/2
2013年に結んだ町と業者の覚書における、臂曲地区の土地買取交渉が不調となったと発表している。12月5日の毎日新聞によれば、3年間で28回の交渉があり、町側は営業補償も加えて購入価格を提示したが、代替地の希望があり、これが見つからなかったとの説明がなされている。
遊佐町臂曲地区における採石事業に係る岩石採取計画を認可しないこととした件について — 山形県ホームページ
2016/12/20 同計画を認可しないと、岩手県庄内総合支庁が発表したと、毎日新聞などが伝えました。
庄内総合支庁 地域産業経済課からのプレスリリース
http://www.pref.yamagata.jp/pickup/interview/pressrelease/2016/12/20175927/
によれば、認可しない理由として、
採石法第33条の3第2項に規定する申請書に添付しなければならない書類の不
備(採石法施行規則第8条の 15 第2項第8号に該当する「遊佐町の健全な水循
環を保全するための条例」に基づく規制対象事業に該当しない旨の認定結果通
知書)
としています。この施行規則の条文は、「八 岩石の採取に係る行為に関し、他の行政庁の許可、認可その他の処分を受けることを必要とするときは、その処分を受けていることを示す書面又は受ける見込みに関する書面」であり、つまり他の行政庁である遊佐町の認可を処分を要するのに、その見込みがないことが遊佐町から通知されていることを理由としています。
鷲見コメント:
これは、2013年は、県が業者に提出を求める書類の一つに地元の同意書があった。このときは、町自らが協定を結びその要件を満たしたことになった。(ただし、この同意書がないだけで認可しないことはできなかったという説がある。)
今回は、遊佐町が条例の網を張ったために、上記の施行規則にかかることとなった。形式的に認可しないことができるため、県の判断は実質的に不要であり、2013年とは大幅に条件は異なる。
言い換えれば、以前までは、同意書がある・ないで、県が判断させられる状況にあったのが、遊佐町が条例により、実質的に町が判断を行う(あるいは、せまられる)状況となった、ということになる。
2019年12月3日 採石訴訟、遊佐町の条例「適法」 山形地裁判決、業者側の請求退ける
採石訴訟、遊佐町の条例「適法」 山形地裁判決、業者側の請求退ける|山形新聞
20191204山形新聞
鳥海山麓での採石計画について水循環保全条例に基づき2メートル以上の掘削などを認めないとした遊佐町に対し、秋田県にかほ市の川越工業が処分の取り消しを求めた訴訟の判決が3日、山形地裁であった。貝原信之裁判長は「条例は適法」とし原告の請求を棄却した。「水を資源とする町にとって地下水脈の維持は重要」とし、採石事業を予防的に規制することは可能と判断した。原告側は控訴する考えを示した。
判決理由で貝原裁判長は町条例について「採石を全面的に禁止するものではない」などを理由に採石法や憲法に違反しないと指摘。遊佐町は水が農業や漁業、観光業などの資源となっており「安全できれいな水そのものが産業資源で地下水脈の保全が必要」とした。
その上で、採石によって地下水脈を傷つける恐れについて、採石場近くでは毎分2.5リットルの湧水があるため、地下水脈が流れているとみられると説明。2メートル以上掘削をすると水源機能を阻害する可能性があるとし、「地下水脈は一度損傷すると修復は不可能」なため予防的な規制は許容できると結論付けた。一方で、原告側が予備的に請求した、掘削できなかった分の損失として、町に約335万円を補償するよう命じた。
原告側弁護士は「環境保護に寄りすぎた不当な判決」と話し、控訴するとした。
この採石計画を巡っては昨年7月、県が不認可を決定。川越工業側が不服として、国の公害等調整委員会(公調委)に申し立てている。
◇遊佐町の採石問題 鳥海山麓は古くから採石の適地とされ、30年ほど前の最盛期には5社が公共事業に石材を供給していた。現在は川越工業1社のみ。採石場近くには名水として知られる胴腹滝などがあり、地元住民は採石の反対運動を展開してきた。町は同社が所有する採石場を町有地にする交渉なども進めたが決裂。2017年に同社が提訴した。
時田町長「ほぼ全面勝訴」
遊佐町は3日に開催された町議会鳥海山の岩石採取問題に関する調査特別委員会に、今回の判決を「ほぼ全面勝訴といえる」と報告した。山形新聞の取材に対し、時田博機町長は「『鳥海山を守りたい』という町民の願いを実現するため、最大限の努力を重ねてきた。(控訴審を考えると)まだ途中だが、確実に環境保護ができるよう、しっかりと取り組みを続ける」と答えた。