NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「オクス駅お化け」(65点/オカルト:結構オススメ)

■■■「オクス駅お化け」■■■
(65点/オカルト:結構オススメ)


 ゴシップ誌であるデイリーモートの新人記者であるキム・ナヨンは、アクセス数の伸びる『バズる記事』を書くためにネタを探していたところ、誰も近づかない筈の地下鉄の廃駅『オクス駅』で、奇妙な事故や自殺者が多発している事を知る。


 駅で不気味な『子供の姿』を目撃したという駅職員の友人の証言を元に、事件の関係者に取材や聞き込みを続けていったところ、かつて地下鉄の工事の際に埋められた『井戸』に何か秘密があるのではないかと突き止める事に成功するが、事件の調査を契機に彼女の周りでは次々と不気味な現象が起こるようになっていき…

 


 とあるゴシップ誌の記者が『廃駅になった地下鉄の駅での奇妙な死亡事件』に関して調査していたところ、思いがけない恐るべき事実が判明していく…というサスペンス風味の韓国製オカルトホラー映画。


 韓国製のホラー映画って割とJホラーの影響を受けてる作品が多い印象ですが、本作はいかにも「リング」っぽい演出やら設定やらが多くて、『オマージュにしても流石に影響を受けすぎやろ』と思いきや…


 なんでも本作は、日韓協力体制で「リング」シリーズの脚本家や「貞子vs伽椰子」の監督である白石晃士が制作に関わって作られた作品だという事で、異常に共通点が多いのも納得という感じです。


 お話としては『とあるゴシップ誌の新人記者が、アクセス数を稼ぐために廃駅である「オクス駅」で続発する奇妙な死亡事故や自殺を調査して記事を書く事になるんだけど、調査が進むうちに駅で正体不明の「子供の霊」やら不気味な現象が相次いで起こるようになっていき、やがてかつてのオクス駅の建設にまつわる恐ろしい秘密が明らかになっていく…』みたいな感じの展開。


 前述のとおり「リング」シリーズにかなり影響を受けていることが感じられるような内容で、プロットやらビジュアルやらで「リング」を想起させるようなシーンが結構多めの印象。


 ただ、テイスト的には「リング」に似ている部分が多いものの、ストーリーやらギミックに関してはかなりの独自性を持った内容になっており、キチンと別のベクトルで楽しめる作品になっているのは良い感じです。


 特にお話のメインである『謎解きパート』が非常に秀逸で、不自然な『相次ぐ自殺と事故』の謎を追ううちに、事件のカギとなる『子供たちの霊』やら『隠された謎の施設』やらにお話が派生していくという展開は、オカルトならずともサスペンスとして普通に面白いです。


 終盤の、ちょっとしたドンデン返し的な展開も良くできていますし、ラストまでひたすらハイテンションで貫き通すという構成も好感触。


 また『子供たちの霊の集団』というのも、今までのJホラーとかではあまり観なかったビジュアルですし、子供らしい『何を考えているのか分からない不気味さ』が上手く作用しており、なかなか怖くて良い感じ。


 ただ、前述のとおりJホラー(特に「リング」)をリスペクトしている要素や、影響を受けている部分が強すぎて、テイスト的に『どこかで見たようなシーン』がやたらと出てくるため、既視感が強すぎて目新しさに欠けるのは残念なところ…


 あと、犠牲者の数も意外と少ないうえに残虐シーンも控え目なので、本作のテイストとしてはもう少しグロいシーンやらエグいシーンが多くても良かったんじゃないかな…という気はしますよ。


 オチに関しても、いかにも白石晃士監督が関わってるらしい、無駄にスタイリッシュでカッコ良いオチですし、個人的にはなかなか良い作品に仕上がっているんじゃないかと思いますよ。

 


 総評としましては、なかなか良くできた『普通に楽しめるレベルの韓国製のオカルトホラー映画』って感じですね。


 「リング」とかのJホラー系の作品が好きな人であれば、『新機軸のJホラーテイスト作品』として楽しめる内容となっていると思いますので、そういう作品が好きであれば十分にオススメ出来るレベルではないかと…


 そこまでの目新しさとかは無いものの、本作ならではのキャラや個性はしっかりと出されており『安定して観れる内容のオカルト映画』という感じですので、『予告とかを観て気になっているようであればどうぞ』という感じの一本ではないでしょうか?

映画感想:「聖夜の惨劇 ニッセやりすぎる」(55点/モンスター)

■■■「聖夜の惨劇 ニッセやりすぎる」■■■
(55点/モンスター)


 アメリカ人のビルは、亡くなった叔父の遺産を相続するために、妻のキャロルや子供たちと共に一家四人でノルウェーに移住する事となる。


 家の隣にある大きな納屋をロッジに改装するつもりで計画を進めるビルだったが、息子のルーカスが納屋を散策していたところ、納屋の中に地元の民話に登場する『ニッセ』と呼ばれるいたずら好きな妖精(エルフ)が棲みついている事を知る。


 地元民から『ニッセ』を刺激してはならないという伝承を聞いていたルーカスは、その言いつけを守って彼らと共存するための『ルール』を作り友好的な関係を築くが、ルーカスの話を信じない家族たちが、彼の警告を無視し『ルール』を破って納屋で馬鹿騒ぎのパーティを始めてしまった事からニッセは怒り心頭。


 森の中から大勢の仲間を呼んで、彼らの住居に襲撃をかけてくるのだった…

 


 ノルウェーに引っ越してきたアメリカ人の一家が、納屋に棲む『妖精』の怒りを買ってしまったことから凶暴な妖精の群れの襲撃を受ける…という、モンスターホラー映画。


 タイトルを見れば分かるようにクリスマスを舞台にした作品なのですが、向こうでの公開時期もあるのでしょうが『なんでこの時期に?』とツッコミを入れたくなるような、ちょっと季節外れ感のある作品ですね。


 お話としては『とある一家が、亡くなった叔父の遺産を相続するためにノルウェーに引っ越して来るんだけど、一家の息子が納屋で「ニッセ」と呼ばれる妖精を発見。彼は妖精と友好な関係を築こうとするんだけど、彼の話を信じない両親が納屋に近所の住人を読んでパーティを開いてしまったせいで妖精が大激怒。その後、ひと悶着を経て妖精の大群が一家の命を狙って攻め込んでくる…』みたいな感じの展開。


 本作に登場する妖精の『ニッセ』は、作中では『エルフ』と表現されているのですが、どちらかというか『ノーム』のような『ひげ面の小人』といった外見で、いわゆる「白雪姫」の『七人の小人』が凶暴化して襲ってくる話だと思っておけば、イメージとしてはほぼ間違いありません。


 テイスト的には『ダークファンタジー』やら『コメディホラー』といった雰囲気のただよう内容で、登場するのが見た目が『ほのぼの系の小人妖精』なので、なんとなくコミカルな印象を受けるのですが、妖精たちの『殺意』がかなり高すぎるので割とホラーテイストが強めの印象。


 妖精たちの襲撃シーンや一家との乱闘シーンもかなり長めの尺が取られており、執拗なまでの襲撃と激しいバトルを繰り広げてくれるのは、予想以上に楽しませてくれます。


 ただ妖精とのバトルシーンが長い割には、犠牲者や被害者の数は意外と少なくて、妖精の襲撃方法もそこまで面白味のあるものでも無いことから、ちょっと物足りなさを感じる内容になってしまっているのは残念なところ。


 もっと近所の住人とかも巻き込んで、派手に殺戮を繰り広げて欲しかったです。


 あと、コメディホラーとしての『ホラー要素』は悪くないのですが、コメディ要素がやや滑りがちで、コメディ要素として描かれる『ヘタレな父親』やら『妙にギスギスした家族』やらが、普通に『ヘタレ』だったり『ギスギスしてる』だけに見えてで、殆どストレスの溜まる要素にしかなっていないのも困りもの。


 もうちょっとほのぼのするなりブラックにするなりして、どっちかに振り切る感じで笑える雰囲気にして欲しかったかなぁ?(個人的には、父親が日替わりで着てる『クリスマスモチーフのクソダサセーター』には、ちょっと笑いましたが…)


 あと、妙に『ハートフルなテイストのオチ』に関しては、悪くない落としどころではあると思うのですが物足りなさを感じる部分でもあるので、この辺は人によってちょっと好みの分かれる部分かもしれません…

 


 総評としましては、『そこそこ楽しめるレベルのダークファンタジー風味のモンスターホラー映画』って感じですね。


 『「七人の小人」が殺意をむき出しにして襲撃してくる』というシチュエーションだけでも十分に個性的な内容ですし、全体的なクオリティも低くは無いので、設定とかに興味が湧いた人であれば、観ておいても損は無いかもしれません。


 全体的にちょっと物足りない部分もあるので、強く推すにはやや弱い内容ではありますが、気になるようであれば『お好みで』って感じの一本だと思いますよ。

 

映画感想:「ファミリー・ディナー」(55点/サスペンス)

■■■「ファミリー・ディナー」■■■
(55点/サスペンス)


 自分の太った体型にコンプレックスを抱える10代の少女シモーヌは、復活祭の休暇を利用してダイエットの指導を受けるために、管理栄養士で著名な健康食の研究家である叔母のクラウディアの元を訪れる。


 叔母の指導に従いダイエットを開始する彼女だったが、指導は予想以上に非常に厳しいもののうえに、彼女に対して敵愾心をむき出しにする従兄弟のフィリップ、叔母の再婚相手でどこか得体のしれないところのある夫のシュテファンと過ごすうちに、徐々に不安な気持ちを募らせていく。


 そして復活祭の当日が迫るなか、彼女は叔母一家に隠された恐ろしい秘密を知ることとなるが…

 


 ダイエットのために栄養士である叔母の一家を訪れた少女が、その一家に秘められた恐ろしい『秘密』を知ることとなる…という、オーストリア製のサスペンススリラー映画。


 歪んだ形の『家族』の関係を題材としたサイコサスペンス系のスリラー映画なのですが、いかにも欧州系サスペンスという感じの雰囲気映画的なテイストの強い作品です。


 お話としては、スリラーというよりは家族ドラマを中心にストーリーが進んでいくような構成で、『ダイエットのために、栄養士である叔母の家族と共に復活祭の前の一週間を過ごす事となった少女が、家族と交流するうちに一家の「歪んだ関係」が明らかになっていき、徐々に不安を募らせていく』みたいな感じのストーリー。


 ジワジワと、どこかいびつな『家族』の姿が明らかになっていくという構成はなかなか良くできており、観続けているうちにチリチリと首の後ろを逆なでされているような、何とも言えない不快な気分になっていきます。


 不安を描く要素が直球的な緊張感とかではなくて『家族の関係のいびつさ』を少しづつ遠まわしに描いていく感じは、いかにも欧州映画らしいテイストですね。


 家族の面々のキャラクターの掘り下げやら、『違和感』の正体へのミスリードも良くできており、サスペンスの構成としては悪くない印象です。


 ただ雰囲気は悪くないのですが、欧州映画らしく非常にテンポが遅くて冗長な部分が多いのは気になるところ。


 ラストはそこそこ盛り上がるものの、中盤での見せ場となるような部分もあまり無いですし、淡々とした作りのため途中でちょっとダレてしまいます。


 オチの落としどころなんかは悪くないものの、終盤の展開もちょっと先が読めてしまうため、あまりドンデン返し感も無いですし、全体的にいま一つ盛り上がりに欠けるんですよね…


 もうちょっと緊張感があるなり、盛り上がる部分があるなり、といった構成ならなあ…という感じでしたよ。


 あと、途中で狩猟したウサギを解体するシーンがあるので、そういうのが苦手な人はちょっと要注意かも?

 


 総評としましては、雰囲気は悪くないものの『いま一つ盛り上がりに欠けるサイコサスペンス映画』って感じです。


 欧州系の雰囲気映画とかが好きならば、そこそこ楽しめる内容ではあると思いますが、強く推すような部分もあまりないですしオススメするには弱い内容かなぁ…


 気になっているようであれば観るのを止める程ではないですが、慌てて観るような内容でもないので、急がないのであればどこかのサブスク系のサービスに入るのを待っても良い程度の一本かもしれませんよ…

 

映画感想:「SISU/シス 不死身の男」(65点/アクション)

■■■「SISU/シス 不死身の男」■■■
(65点/アクション)


 1944年、第二次世界大戦末期のフィンランド
 ナチス焦土作戦により荒廃しきった荒野で、愛犬のウッコと共に砂金を掘る元特殊部隊員の老兵士のアアタミは、首尾よく金鉱脈を発見して金塊を掘り当てるも、掘り当てた金塊を持ち帰る途中でナチスの機甲部隊と遭遇。


 金塊を奪おうとした歩兵たちと戦闘になり、兵巣数名を殺して脱出するも、ナチスの機甲部隊から追われる身となってしまう。


 アアタミは金塊を狙うナチスの執拗な追跡に対し、唯一持っていた一本のツルハシを手に、敵から武器を奪いながら戦闘を続けるが…

 


 ナチス侵攻下のフィンランドで、元特殊部隊の不死身の最強老兵士がナチスの戦車部隊とバトルを繰り広げる…という、戦争ものバトル系アクション映画。


 昨年頃に公開されて気になっていた新作ですが、いきなりAmazonプライムに入って観れるようになったので、せっかくだから鑑賞してみましたよ。


 お話としては『荒野で金塊を掘り当てて故郷に帰ろうとする老兵士が、撤退中のナチスの機甲部隊と遭遇して執拗に命を狙われる事となる…』という感じで、ぶっちゃけストーリーらしいストーリーは無いようなレベル。


 いわゆる、最近流行りの『舐めてた相手が殺人マシーンでした』というタイプの作品で、金塊を狙ってジジイを殺そうとしたところ、ジジイが思いがけずに最強の戦闘マシーンで返り討ちにあってボコボコにされる…みたいな展開。


 というか、ナチス側も焦土作戦から撤収中のナチスの戦車部隊が居るのに、平然と横を素通りしようとするジジイがマトモなジジイの訳ないだろ』とか色々とツッコミどころはありますが、途中でジジイの正体が『一人でロシア兵を300人殺した伝説の兵士』みたいな情報が判明するものの、ナチス将校が『金塊欲しさに執拗にジジイを狙う』という展開は、まあまあ説得力があって悪くない印象。


 本作で特筆すべき部分は、とにかく『異常なまでのジジイのタフさ』で、銃弾の雨を浴びようが地雷原に突っ込もうが火だるまになろうが首を吊られようが、何をされても生きてて地味に反撃してくるという無茶苦茶っぷりは、『不死身の男』というタイトルに相応しいハチャメチャ具合で、最早ちょっと笑えるレベルになってて良い感じです。(もし、自分が相手にすることになったとしたら、メチャクチャ面倒なタイプ。(笑))


 ナチスの兵士も、こういう『不死身の化物』を確実に殺したい場合は『首と胴体を切り離す』か『爆破してバラバラにする』というホラー映画の常識を知っていれば、無事に勝てたかもしれないのに…(笑)


 ただ、主人公が『不死身の男』なのは良いのですが、戦闘力に関しては『戦闘が得意でタフなジジイ』ぐらいの常識的な能力しかなくて、ランボーやらジョン・ウィックみたいな無敵超人ではないため、アクションシーンが全体的に地味なのは残念なところ。


 常識の範囲内での『不死身っぷり』を描きたかったのかもしれませんが、ここまでハチャメチャな設定ならもうちょっと派手な演出があっても良かった気はしますよ。


 とはいえ、終盤は割と爽快感やカタルシスのある展開もありますし、ラストなんかは結構盛り上がったりもするので、アクションに関しても十分に及第点は満たしている印象。


 あまり続編とかは作られなさそうな終わり方の作品ではありましたが、もし続編を作るならナチスの残党とかを相手にもっと大立ち回りとかを繰り広げて欲しいところですよ。

 


 総評としましては、そこまでの派手さは無いものの『普通に楽しめるレベルの戦争系アクション映画』って感じですね。


 過剰な期待をしてるとちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、主人公の『無茶苦茶な不死身っぷり』は一見の価値がありますし、この手のジャンルが好きであれば十分にオススメできるレベル。


 とまれAmazonプライムの会員であれば無料で観ることが出来ますし、設定を含めて気になるようであればとりあえず観ておいても損は無い一本ではないでしょうか?

 

映画感想:「真・鮫島事件」(50点/オカルト)

■■■「真・鮫島事件」■■■
(50点/オカルト)


 コロナ禍で外出の規制されていた時期、菜奈は高校の頃の部活仲間と6人で毎年恒例の『リモート飲み会』を行う事となる。


 しかし予定の時間になっても、メンバーの一人であるあゆみが参加して来ないことから不審に思っていると、あゆみのアカウントで彼女の恋人らしい男性が会議へと参加。


 彼は『お前たちと一緒に行ったこんな事になってしまった』と『あゆみの死体』と思われる映像を見せた後に、画面の向こう側で何者かに襲われて姿を消してしまう。


 映像を見た彼らは急いで警察に連絡しようとするが、電話が一切繋がらないうえに、部屋からも出られない状態になっている事に気付く。


 パニックに陥った彼らは、『あゆみに何があったのか?』とメンバーを問い詰めたところ、裕貴と鈴とあゆみの3人で『鮫島事件』という『真相に触れたものは必ず死ぬ』と言われるネット怪談の発祥の地とウワサされる廃ホテルに肝試しに訪れた事と、肝試しから帰って来て以降、あゆみの様子がどこかおかしかった事を知らされるが…

 


 『関わったもの全てが死ぬ』とネットで噂される『鮫島事件』という謎の事件を題材とした、シチュエーションホラー系のオカルトサスペンス映画。


 以前にうちのブログでも感想を書いた「きさらぎ駅」「リゾートバイト」の監督である永江二朗監督によるネット怪談シリーズ(?)の新作なのですが、「きさらぎ駅」や「リゾートバイト」がかなり変化球だったので、本作もどんな奇抜な変化球が飛んでくるのかと期待していたのですが…


 『えっ、この監督ってこんな普通のホラー映画も撮るんだ』と逆にビックリしてしまうぐらいに、オーソドックスな感じのオカルトホラー映画になっています。(笑)


 お話としては『学生時代の友達同士で「ネット飲み会」を行っていたところ、仲間の3人が前日に「肝試し」と称して「鮫島事件」に関わる心霊スポットを訪れていた事が判明。その呪いによってネット飲み会の参加メンバーが次々と恐怖に見舞われる事となっていく…』みたいな感じの展開。


 構成的には、「アンフレンデッド」「ズーム/見えない参加者」といった作品と同様に複数人での『ネット通話の画面』を表示しながらリアルタイムにホラーストーリーが展開していくという感じなのですが、前述の2作ほど『ネット通話の画面』に限定してお話が作られている感じでも無くて、どちらかと言えば『マンションの一室を舞台としたシチュエーションホラー』的なテイストの強い作品という印象。


 本作の題材となる『鮫島事件』に関しては、ネット怪談が好きな人であれば知っていると思いますが、『牛の首』と並んで『実体のない都市伝説』と言われており、『とてつもなく恐ろしい』とか『口にしてはならない』とかって言うウワサのみが広がっていて、『実体となる事件や怪異が存在しない』タイプの怪談なんですよね。


 この『実体のない都市伝説』をベースにどのように話を作るんだろうと思っていたのですが、作中では『鮫島事件』の正体は『ネット民によるリンチ殺人事件(とその実況配信)』とされており、月並みな設定ながらも『ネットで口外してはならない事件』となった理由付けを上手く取り入れているのは、なかなかに上手い設定だなという印象。


 他にも山の牧場』やらといった幽霊屋敷探検系のネット怪談っぽいネタも取り入れられた『色んな都市伝説のハイブリッド』的な設定となっており、他のシリーズと同様にその手の怪談が好きな人を色々と楽しませるような作りになっているのは、いつものこの監督の手法という感じです。


 『ネット通話の画面越しに他のメンバーが次々と危機に晒されていく』という展開は、他のネット通話系ホラー作品と同様といった感じですが、小さい画面のため迫力不足な部分はあるものの、助ける事も手出しする事も出来ないもどかしさと、徐々に『自分の番』が迫ってくる恐怖といった感じの盛り上げ方としては悪くありません。


 また、中盤以降の『謎解きパート』的な展開は、なかなかに予想外の演出という感じで、『ホラー系アドベンチャーゲームの謎解き』の実況配信を観ているようなテイストで面白かったです。


 ただ、「鮫島事件」という『全てが謎につつまれた事件』を題材としている割には、いかんせん設定が割と月並みな印象なのと全体的に『いかにも低予算ホラー』って感じで、やや盛り上がりに欠けること、あと最後も『定番の投げっぱなし展開』という感じで面白味に欠けるのは残念なところかなぁ…


 せっかく永江監督の作品なんだから、もっと『トンデモないオチ』を見せて欲しかったですよ。(笑)

 


 総評としましては、低予算で『いま一つ盛り上がりに欠けるネット怪談ものオカルトホラー映画』って感じですね。


 シチュエーションホラー的なオカルト作品としては平均点を付けれるレベルの出来なのですが、「きさらぎ駅」や「リゾートバイト」ほどブッ飛んだ内容でもないですし、「アンフレンデッド」みたいにネット通話にこだわった尖った演出の作品でもないので、やや中途半端な感がある印象です。


 とはいえ、都市伝説系のオカルト作品としては普通に楽しめる内容ではあるので、題材とかが気になるようであればチェックしておいても悪くない一本かもしれませんよ。

 

映画感想:「リゾートバイト」(55点/オカルト:一部のファンにはオススメ)

■■■「リゾートバイト」■■■
(55点/オカルト:一部のファンにはオススメ)


 女子大生の桜は、引っ込み思案な性格のせいで春から通い始めた大学にもあまり上手く溶け込めないで、ストレスを貯める日々を送っていた。


 そんな桜の様子を心配した幼馴染の聡は、同じく幼馴染の希美と共に、3人で気分転換を兼ねて離島の旅館で短期のアルバイトを申し込む事となる。


 中年夫婦の経営する旅館で働き始めた彼らは、オフシーズンという事もありリ休暇を兼ねてリゾート地を楽しむが、そんなある日、桜は旅館の女将である真樹子が、毎晩の深夜の2時頃に行き止まりとなっている2階の廊下の奥に、ひっそりと食べ物を持って行っている事に気付く。


 女将の不審な態度に不気味なものを感じた彼らは、好奇心から女将が深夜にその場所で何を行っているのかを探ろうとするが…

 


 リゾート地の旅館の『開かずの間』に踏み入ったバイト学生が、禁断の場所に踏み入ったせいで恐るべき恐怖に晒されることとなる…という、オカルトホラー映画。


 いわゆるネットの都市伝説や実録怪談として有名な、「リゾートバイト」というエピソードを題材としたオカルトホラー映画ですね。


 同じ監督によって同じような題材で作られた「きさらぎ駅」異世界ものホラーと思わせて、主人公が異世界から脱出するRTAに挑戦する』というトンデモ系の作品になっていたのですが、本作も期待を裏切らないレベルの負けず劣らずにトンデモな感じの作品に仕上がっています。


 最近は、実録怪談とか都市伝説を映画化する際には、なんかトンデモ系の展開にするのが流行っているのでしょうか?
 (正直、面白いのでもっとやっていただきたい。(笑))


 お話としては『とある学生バイトの面々が、旅館に隠された「開かずの間」的な秘密の場所を発見するんだけど、その場所に足を踏み入れた事が原因でとんでもない恐怖に巻き込まれていく…』みたいな感じの展開で、ストーリーの『ベースとなる設定』はほぼ原典と同じような感じ。


 ただ映画の中では主人公が女子大生になっていたり、幽霊に追いかけまわされるようなチェイスっぽいシーンが追加されていたり、絵的に見栄えするようにアレンジされているのは悪くない印象です。


 しかし、元々のベースとなっているエピソードは、かなりドロドロとしたグロ系の『気持ちの悪い内容』なのですが、旅館とかも妙に新しい建物でですし、恐怖シーンも湿っぽさやグロっぽさが無くて、全体的に映像が小ギレイすぎて不気味さが薄くなってしまっているのは残念なところかも?


 終盤までは、主人公たちが取り憑かれてしまった『何者か』の存在の謎を追う形でお話が進んでいく感じで、緊迫感を盛り上げる展開としては悪くないのですが、原典と同様の展開すぎるせいで『開かずの間』にまつわる因習とかの解説がやたらと唐突な感があるので、この辺はもうちょっと上手くストーリーに盛り込んで欲しかったです。(まあ、原作が『実録怪談』なので仕方ない部分はありますが…)


 ただ、『開かずの間』にまつわる謎解きまではほぼ原作と同じ展開なのですが、終盤の展開がかなり予想外のとんでもない事に…


 ここからはネタバレになってしまうものの、ネタバレされても本作の面白さが損なわれるようなものではないと思われるので語ってしまいますと、『因習やらに関連する謎の儀式』を題材とした本格的なオカルトストーリーが進んでいたかと思いきや、終盤で『子供たちの魂を奪っていたのは実は八尺様だった(海で溺れたとか関係なかった)』という、原作には全くない驚愕の事実が判明!!


 唐突に登場した『謎の法力坊主と八尺様の法力バトル』みたいなトンデモ展開に突入していきます。(この坊主もどことなく『寺産まれのTさん』とかっぽい…)


 正直、この超展開の前までの部分は『ちょっとテンポが悪くて原作の雰囲気の再現度もイマイチだな…』と思いながら観ていたのですが、『八尺様バトル』に突入してからのテンポの良さとテンションの高さ、バカ映画っぷりはかなりハイレベルなので、お馬鹿系のオカルトホラーが好きな人には、この超展開だけのためにも是非とも観てみて欲しいところ。(笑)


 ただ個人的には、こういうお馬鹿ノリは好きですし原作にはないオチの落としどころなんかも悪くないのでオススメしたい気持ちもあるのですが、原作となる元のストーリーが結構ガチ目のオカルト的なストーリーなので、原作のガチの再現を期待してるようであればちょっと期待外れになるかも…ってのは気になるところかなぁ?

 


 総評としましては、全体的に見ると『やや微妙な出来のオカルトサスペンス映画』というのが正直なところかな?


 普通に『オカルト作品』として観ると、ちょっと盛り上がりに欠ける内容ですし、ホラーとして怖いかと言われると悩ましい部分もありますし、やや冗長さを感じる作品かも…


 ただ、微妙ながらも個人的にはかなり好きな部分もありますし、馬鹿映画やネタ映画としては一見の価値がある作品だと思いますので、そういう方面に興味がある人はチェックしておいても損は無い作品かもしれませんよ。

 

映画感想:「バトル・オブ・ザ・キラーズ」(35点/サスペンス)

■■■「バトル・オブ・ザ・キラーズ」■■■
(35点/サスペンス)


 狂ったように犯罪を繰り返す連続殺人強盗犯のジョニーとクライドは、ある日、犯罪組織のボスであるアラナが所有する巨大カジノの莫大な裏金が隠された金庫の存在を知る。


 裏金の強奪を目論む彼らは、かつての仲間である巨漢の殺し屋の『ブッチャー』や爆発物の専門家の『ベイカー』、薬物の売人でガンマニアの『キャンドルスティック』といった面々に声をかけ、金庫への襲撃計画を立てる。


 しかし、時を同じくしてジョニーたちの帰還を知った元保安官のロックは、彼らに娘を殺された復讐のために行動を開始。


 またジョニーらの襲撃計画を察知したアラナは、通常の警備を強化すると共に、伝説的な殺人カルトの教祖である『バクワス』の霊を召喚して金庫を守らせようと画策するが…

 


 無計画で無慈悲な強盗殺人鬼のカップルが、凶悪な犯罪組織のカジノの裏金の金庫の襲撃を企ててバトルを繰り広げる…という、アクション風味のクライムサスペンス映画。


 主人公の名前やら原題(ジョニー&クライド)からして、俺たちに明日はない」のオマージュ作品かと思いきや、それほど元ネタを意識している訳でも無いという、なんというか微妙な出来のクライムサスペンス作品です。


 本作の最大の特徴としては、とにかく『主要登場人物の全員がサイコパスだという事。


 連続強盗殺人犯の主人公たちは言わずもがな、主人公の仲間の殺し屋たちも、犯罪組織のボスやその部下も、主人公たちに復讐しようとする元保安官も、もれなく全員がサイコパスで頭のおかしい連中という徹底ぶり。


 あまりにも全員がキ●ガイなので、誰が酷い目に会おうが殺されようが全く心が痛まずに作品を楽しめるのは、ある意味で本作の最大の利点と言えるかも?(ちなみにサイコパスどもがどれだけ暴れまわっても警察とかは一切出動しないので、好きなように暴れ放題です。)


 とまあここまで聞くと、サイコパス強盗の主人公たちや巨漢の殺人鬼、爆破のプロ、犯罪組織のヒットマンやらガードマンたちの激しいバトルが繰り広げられる面白い作品なのかと思うのですが…


 まあ、コレがビックリするほどストーリーがツマらないのが困りもの。


 『中学生が脚本を書いたのかよ?』とツッコミを入れたくなるような安易な脚本に、『僕の考えた最強の殺し屋たち』みたいな中二病的なキャラの集団がビックリするほど中身のないドラマを進行していくのですが、これがもうあまりに空虚な内容に軽くめまいを覚えるレベル。


 そうは言っても、アクション映画ですし脚本が『分かりやすい』のは悪い事では無いのですが、あまりにキャラクターに中身が無くて登場人物の誰一人にすら人間らしい個性が感じられないのは辛いところ。


 ただ、キャラの個性が希薄でも『最強の殺し屋たちがバトルを繰り広げる』という展開だけでも楽しめそうなものなのですが、困ったことに殺し屋たちが戦い始めるまでの前振りが妙に長くてテンポもあまり良くないうえに、肝心のバトルも意外と地味でアクションシーンも少なくて盛り上がりに欠ける内容なのは流石に厳しいです。(爆破のエキスパートとか何もしないうちに勝手に死ぬし…)


 さらに、いわゆるキル・ビル」みたいな超人殺し屋バトル的なノリなのかと期待していたら、犯罪組織のボスは不死身の『殺人カルトの教祖の霊』を召喚して金庫の警備をさせてみたりと、唐突にオカルト設定が出てきてもう何が何やら意味が分かりません。


 ラストのオチも矢鱈とアッサリしてて盛り上がりに欠けますし、割と本気でいま一つどこを楽しんだら良いのか釈然としない映画でしたよ…


 まあサイコパス展覧会』みたいな登場人物のキャラクターは意外とと面白かったので、その部分だけはちょっと評価できるかも?

 


 総評としましては、正直なところ『なんじゃコリャ?』って感じの『微妙な出来のアクション系クライムサスペンス映画』ですね。


 「バトル・オブ・ザ・キラーズ」というタイトルに釣られて、『殺し屋たちの激しいバトル』に期待しているようであれば、肩透かしを食らわされる可能性があるのでちょっと注意が必要かも?(というか、このタイトルから他にどういうノリを期待しろと言うのか…)


 まあ微妙な出来ながらも壊滅的にツマんないってほど酷くは無いですし、サイコパスの展覧会』的な内容に興味があるようであれば、暇つぶし程度にチェックしてみても良い作品かもしれませんよ。