海藻の分布
ヒロハ~の分布情報について収集中。
標本情報では千葉と神奈川がほとんどであり、北は茨城(宮城?)、南は静岡まで。またネット上の情報によれば愛知でも見つかっているようだ。対馬で記録はあるが不確定。韓国済州島からも本種の報告がある。紀伊半島や四国太平洋側・九州太平洋側の記録は今のところ見当たず、全体として大きな空白域ができている。
西日本での情報が極めて少ないのだが、今年地元の海でも見つけることができた。分子で見たら別種という可能性もあるが、形態ではほぼ一緒。ただ関東のものよりも若干体が薄い気がする。四分胞子体もやや異なる。(タイプ産地は江ノ島)
※脱線するけど、関東の人達はどうやってヒロハとヤツデガタの四分胞子体の区別をつけているんだろう?ヤツデガタは地元でも一回だけ記録がある。多分違う種(と思いたい)。
海藻類は分布情報に乏しい場合が多い。やはり興味を持つ人が少ないからだろうか。分類が混乱しているものばかりだからこそ、情報量の多さが重要だと思うんだが。種名の羅列ばかりの目録だけじゃなく、図版を伴ったものが増えて欲しいところ。
追記:日本海藻誌では産地に志摩菅島・相模・安房・上総・常陸・磐城・松島とある。しかし、ネット上では三重県からの情報は見つからない。やはり、三重県は謎だらけだ。
最近読んだ本
岡西政典(2016)深海生物テヅルモヅルの謎を追え!: 系統分類から進化を探る (フィールドの生物学).東海大学出版部.
本書から著者はいかにも分類屋さんといった印象を受けた。
テヅルモヅルの仲間は珍しいものが多いようで(それ以前に生息水深が深すぎて普通はアプローチすらできない)、野外で採集することよりも博物館に収蔵されている標本を使って研究を行うことが多いらしい。世界中の博物館を巡って標本を観察して回るのは、生き物屋なら多くの人が憧れることだと思う(多分)。
標本調査で、特に由緒ある標本(有名な研究者による同定ラベルが付いているとか、論文の図版に使われたとか)に出会った時に興奮してしまうのは共通の心理だと思う。また、新たに役立つ分類形質(種を分ける際の指標となるもの)を発見した時のくだりなどには思わず共感して胸が熱くなった。
他の方が書いた本書の書評にも似たようなことが書いてあったけど、わざわざ「系統分類」とする意味とは何だろうか?
気に入った言葉:「博物館調査こそが野外に次ぐ第二のフィールドワーク」