どのようなSaaS銘柄が米国に上場しているか
最近、耳にする事が多くなったSaaSについて解説します。SaaSとは、software as a serviceの略語で、定額のサブスクリプション方式というビジネスモデルになります。
サブスクリプション:製品やサービスなどの一定期間の利用に対して、代金を支払う方式。(大辞林より)
つまり、利用者は物を買うのではなく、サービスの利用に応じて、その利用権に対して料金を支払う方式です。一般的なPCのように、端末にソフトウェアをインストールし、端末内にデータを保存するのではなく、インターネットを通じてクラウドにあるソフトウェアを利用し、データもクラウドに保存されます。
例えば、オンラインのファイル共有サービス(Dropboxなど)、オンラインのメモアプリ(Evernoteなど)のように、既に使っているサービスもあるのではないでしょうか。
では、どのような企業があるのか、米国に上場している企業を中心に紹介したいと思います。
セールスフォース(CRM)
アドビシステムズ(ADBE)
ドロップボックス(DBX)
アップフォリオ(APPF)
スプランク(SPLK)
ページャーデューティ(PD)
エバーブリッジ(EVBG)
ゼットスカラー(ZS)
クラウドストライク(CRWD)
ファストリー(FSLY)
ペロトンインタラクティブ(PTON)
クラウドフレア(NET)
SaaSの40%ルール?
最近、注目の「SAAS」(Software as a Service)企業には、ベンチャーキャピタルが投資するに値するかを見極めるためのルール(指標)があります。それが40%ルール(the rule of 40、R40)です。
SaaS企業のビジネスモデルは、定額型のサブスクリプションであるため、一定数の固定客が付くまでは、初期投資や広告宣伝費などで赤字となり、黒字化するまでに時間が掛かります。当然、企業は成長に注力していますが、成長性と収益性のバランスをとる必要があります。成長にはコストがかかるため、「効率的な成長」が最適化されているかを確認するためのアプローチが必要。
つまり、利益が出ていない成長企業に投資したい。毎年のように売上高は伸びるけど、中々、黒字化しないため、一般的な投資指標では見極めが難しい。でも何か投資に値すると説明や根拠が欲しい、というところでしょうか。
では、どのように計算するのか見てみましょう。計算式はシンプルです。
売上高の前年比(YoY)成長率 + FCFマージン > 40%
売上高の前年比成長率は月間定額収益の年度成長率を用いるケースやフリーキャッシュフロー・マージンは営業利益率を用いることもあるようです。ザックリいうと次のとおりです。
売上高の前年比成長率が100%であれば、FCFマージンがマイナス60%まではOK
売上高の前年比成長率が80%であれば、FCFマージンがマイナス40%まではOK
売上高の前年比成長率が60%であれば、FCFマージンがマイナス20%まではOK
売上高の前年比成長率が40%であれば、FCFマージンが0%以上はOK
売上高の前年比成長率が20%であれば、FCFマージンが20%以上はOK
売上高の前年比成長率が0%であれば、FCFマージンが40%以上はOK
X軸にR40のスコアを、Y軸に収益で割った企業価値(EV)をプロットしたチャートです。
Source: PJC Analysis and SAP Capital IQ as of 12/31/2018
直線の傾きは12であるため、R40スコアが10パーセント上昇する毎に、企業価値が1.2倍に増加することを意味します。R40スコアの高さと企業価値の高さには相関性がありそうです。
ただし、R40は業界の経験則にすぎません。
現金を燃やすことで成長率を嵩上げし40%を超えさせることも可能です。あくまでも、成長と収益性のバランスをとる方法をシンプルなルールに落とし込んだにすぎません。
個人投資家が株式投資をする際は、参考程度にするのが良いのではないかと思います。昨年まで一様に上昇基調であったSaaS銘柄の株価は、R40を達成していても足踏みし始めています。今後はさらに銘柄の選別が進む可能性もあります。