日本人は仕事の効率が悪いから働き方改革をしなければならない!について思うこと。(ほぼ反論)

日本人は仕事の効率が悪い!労働生産性が低い!という声を聞くことがあります。ネット著名人だと落合陽一さんとかが「日本人は労働生産性が低いのに働きすぎ!」って話していた気がします。(https://newspicks.com/news/3866391/body/

 

自分は統計が好きで、統計の出てこない意見は基本的に無視する傾向があります。もちろん自分が信じていた統計が間違うこともあるので過信してはいけないのですが、統計を用いて議論を進めないと結局好き嫌いだったり、各々の当たるも八卦当たらぬも八卦の未来予想だったり、ただの感情論になることが多いと思うからです。ひろゆき先生から「あなたの感想ですよね」って突っ込まれてしまいます。(https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AE%E6%84%9F%E6%83%B3%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%88%E3%81%AD)

 

今回はこの「日本人は労働生産性が低いのに働きすぎ!」「だから働き方改革が必要だ!」に関して反論したいことがあるので記事を書いてみようと思いました。ちなみに普段は落合陽一さん好きですし、働き方改革自体は必要だと思っており、自身が経営している会社でも行っています。今回の記事はあくまで日本人悲観論者・無能論者に対する反論だと思ってもらえればと思います。

 

まず、日本人は仕事の効率が悪いの根拠ですが、ほとんどの人の根拠としているのが「労働生産性」だと思います。(https://news.yahoo.co.jp/byline/yatsuzukaeri/20191220-00155674/

 

この「労働生産性」、みなさん定義知ってますか?

答えはGDP国内総生産)/ 就業者数 です。

https://bowgl.com/labor-productivity/#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9A%E3%80%8C%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%80%A7%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%82%8A%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%80%A7%E3%81%A8,%E7%94%9F%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%99%E6%88%90%E6%9E%9C%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%8C%87%E6%A8%99%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 

今回はアメリカと日本の比較から「労働生産性」についての皆さんの認識と違う事実が提供出来ればと思います。今回の計算結果とその根拠は記事の最後にまとめて掲載しますので計算結果に対する間違いや反論も頂ければ幸いです。また、今回の分析では為替レートや物価については説明をシンプルにするために考慮せず、すべてドル建てで行いますのでご了承ください。(1ドル=107円で計算)

 

まず、労働生産性の計算を手元ですると、アメリカが131,870ドル、日本が74,194ドルでなんと労働生産性で約1.8倍差がついていることになります。

ちょっと差がつきすぎですね。。。なぜこんなに差がついてしまったのか?

日本にはGAFAみたいなIT企業が少ないから?イノベーションで後れを取っているから?アメリカの陰謀で日本政府がパペットだから?いろんな意見が聞こえてきそうですが自分の結論は単純です。

 

・1人当たりGDPが1.6倍だから。(アメリカ62,584ドル, 日本39,296ドル)

アメリカの就業者数が人口比で少ないから。(アメリカの就業者1.56億人/3.28億人=47%、日本の就業者0.67億人/1.26億人=53%) 

 

とどのつまりGDPなんです結局は。

そして一人当たりGDPで何でこんなに差がついているか?ですがこれもまた単純です。

 

一人当たりの消費支出が1.89倍だからです。(アメリカ40,524ドル、日本21,824ドル)(https://www.globalnote.jp/post-1787.html

 

先進国のGDPの6,7割は個人消費で成り立ってますのでここで大きな差がつくことが多いです。(残りは政府支出と民間企業の設備投資と輸出入、だが人口比で考えると言うほど差がない。)

 

つまり「日本がアメリカ並の労働生産性」になるためには、「日本がアメリカ並の消費支出」になればいいということになり、この時点で働き方改革GAFAイノベーションの話は何が関係があるんだろうという感じになってしまいます。それも当然でシリコンバレーがいかに凄くても人口が300万程度の都市です。そして全員がエンジニアや高給取りだということはまずありえません。アメリカの人口は3,3億人ですから1%未満の人たちがいかに凄くても他の地域の数字の方が統計的寄与度が高いのは言うまでもありません。

 

とはいえ次のような反論が聞こえてきそうです。「アメリカはイノベーションが進んでいるから労働付加価値も大きいし収入も多い! IT企業が進んでいるから消費も活発なんだ!」

 

 

実際にテレビのニュースでも「アメリカの消費が底堅い」ってフレーズよく聞きますし、折角なので消費支出の両国比較から見えてくる別の風景をお見せ出来ればと思います。

自分が個人的に面白い順に比較を出していきますが、最終的に全部出しますので、その後、総論をまとめたいと思います。今後の比較の数値は特別な言及がない限り「一人当たり」になります。

 

まずは車の購入の比較です。アメリカが2,631ドル、日本が1,091ドル。日米で2.4倍、差額が1,539ドルついています。これはなぜかというと新車販売台数の差が原因になります。アメリカ1,704万台、日本328万台です。それではなぜアメリカの新車販売台数が日本人より多いか?これも答えは単純で、

 

アメリカ人の車の年間平均走行距離は日本人の8倍」だからです。

 

https://www.ancar.jp/channel/1675/#:~:text=%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E5%B9%B4%E9%96%93%E8%B5%B0%E8%A1%8C%E8%B7%9D%E9%9B%A2%E3%81%AF,%E5%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

つまり計算上、アメリカ人の車の耐用年数が日本の8分の1ということになります。なるほど欧米人が日本に来ると日本は車がきれいだの新車好きだの言われますが、その割に新車販売台数が逆転しちゃってるのはこういう事なんですねぇ。こりゃトヨタアメリカに工場作るわって感じです。アメリカの走行距離が8倍なのは国土が大きいのと公共の交通機関が未発達だからだと思います。

 

ちなみに車の購入以外の交通費(レンタルや電車、タクシー利用、修理メンテなど) でもアメリカが2,433ドル、日本が1,179ドルで2倍以上になりますがこれもアメリカが国土が大きいからでしょうね。

 

つぎに水道光熱費及び通信費です。アメリカが4,075ドル、日本が2,924ドルで日米で1.4倍、差額が1,151ドルです。原因はやっぱり「車の年間走行距離が8倍」だからです。ちなみにガソリン以外の光熱費はほとんど差がないみたいですが、アメリカは州が多いので単純比較が正直難しいところです。

 

つぎが医療関連支出です。アメリカが8,119ドル、日本が1,113ドルで日米で7.2倍、差額が7,006ドルです。とんでもない差ですがこれには統計のカラクリがありまして、

 

医療保険2,253ドル+年金4,521ドル+民間商品・サービス1,345ドル=8,119ドル

 

アメリカの個人消費には日本で言う「社会保険料」が足されています。それだけです。ですので日米での個人消費を比較する場合は日本サイドは年金と健康保険を足して比較しなくてはいけません。ちなみに日本の年金は2,844ドル、健康保険が1,470ドル、民間商品・サービスを足すと合計で5,428ドルで日米で1.5倍、差額2,691ドル。

ですが、日本は年金の総給付の7割負担、健康保険は総給付の5割負担で残りは税金を取っていますし、アメリカは上記の医療保険と年金以外に州の税も絡んでくるので単純比較はこちらも難しかったというのが本音です。ちなみにWHO調べの2014年の一人当たり医療費が下記サイトの13ページに書いてあります。(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_comparison_basicdate_JUE.pdf

アメリカが9,403ドル、日本が3,703ドルでやっぱり2.5倍ぐらい差がついてますね。病人が多いんですよアメリカ。統計数字が見つかりませんでしたが単純な病人数でも10倍位いたと思います。

 

つぎに住宅関連支出(家+家具+その他)です。アメリカが10,617ドルで日本が2,051ドルで日米で5.2倍、差額がなんと8,565ドルです。ちなみに家のみだとアメリカ7,774ドル、日本1200ドルで6,574ドルの差になります。アメリカの住宅支出のほとんどが中古の家の転売なのに対して日本は新築によって成り立ってる数値なので比較説明が難しいのですが乱暴に言うと、「アメリカは住宅価格が過去20年間で価格が2倍になっているのに対し、日本は0.89倍と価格が下がっている」のが原因です。

https://www.jhf.go.jp/files/300249967.pdf

https://www.businessinsider.jp/post-192108

 

 

価格の原因はアメリカの人口増加、日本の人口の減少による需給の問題と、アメリカの住宅の投機熱が依然強いのが原因です。実はアメリカの住宅価格水準はサブプライムショックの時の価格水準をもうかなり上回っています。要するにアメリカではバブルが起こっていて日本ではそうでもないって話です。そして住宅バブルが起きるか起きないかは金融政策(量的緩和と金融規制緩和)によるところが大きいです。

 

つぎに食費支出ですがアメリカが5,246ドル、日本が6,722ドル。お、日本の方が高い。ちなみにアメリカは内食が2,956ドル、外食が2.289ドル。日本は内食が5.521ドル、外食が1.200ドルになります。まあアメリカの食卓と日本の食卓をイメージしてもらえれば何となくこの差は分かるのではないでしょうか。ピザ!ドーナツ!肉!マック!って感じです。みんな安いですよねアメリカ。ほぼ小麦粉。(https://minna-no-kurashi.jp/article/detail/57

 

最後にその他支出(エンタメ、レジャー、教育、アパレルetc)ですが、アメリカが7,402ドル、日本が5,849ドルですが、アメリカのその他支出には「Cash Contributions」という項目が1,250ドル積まれてます。和訳すると現物出資、要するに投資です。日本では投資は消費者庁個人消費には該当しないのでこちらも年金と同じ、計上方法の差、統計誤差の範囲というのが正直なところです。以下はその他支出詳細です。

 

アメリカ(アパレル:1,235ドル、エンタメ:2,135ドル、 自己ケア:508ドル、教育:931ドル、その他:1,243ドル)

・日本(アパレル:917ドル、教育:938ドル、教養娯楽・旅行:1,571ドル、その他サービス:1,528ドル、その他商品:895ドル)

 

 

以上が日米比較になりますが、アメリカの個人消費底堅いのも分かりますね。。正体がリビングコストと病人の数ですからね。後はアメリカの住宅バブルのふるまい次第って感じですね。

 

あれこれって何の記事でしたっけ?そうそう労働生産性の話でしたね!労働生産性アメリカ人並みにするには個人消費アメリカ人並みにすればいいわけですから結論は単純です!

 

「日本人が今の8倍車を走って、病人の数を2.5倍に増やして、住宅バブルを起こせばいい!」

 

これが働き方改革になります!(んなアホな。)

 

労働生産性や国際競争力、一人当たりGDPを考えるときはこの辺を考慮に入れたほうが冷静な判断が出来ると思います。上記の結果アメリカで起こっていることは、「異常な貯蓄率の低さ」、「反対に企業の好業績」、まあつまり資本家が消費の奴隷を量産している姿が見えます。そしてリビングコストが高いだけなので一般のサラリーマンは投資にお金を振り向けることが中々できないのが殆どです。これが労働生産性の本当の姿です。

 

まあ「どの国の経済も、ほとんど国内でお金が回っています」し、「誰かの支出は誰かの収入」なので消費を増やすために様々な取り組みをすること自体はいいことだと思いますが、アメリカの真似をせずにアメリカの数字を過度に気にせずに日本の消費モデルが作れればいいですね!

それこそ教育、スマートシティ構想、宇宙産業辺りでGDPが増えたらいい感じですね。とくにスマートシティ構想は上記の支出の住宅関連、車、今回言及しなかった公共事業にも絡んでくる話なので規模のポテンシャルがあります。

 

最後に上記分析の参考ページを載せて終わりたいと思います。

 

アメリカ(1世帯当たりのため割合を算出して1人当たりを作りました)

https://howmuch.net/articles/breakdown-average-american-spending

日本(個人消費の内訳を人口で割って作りました)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2018/white_paper_119.html

 

 

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