わっきいさんの頭の中

140字に収まらない言葉と雑創作の掃き溜め。

いつもの~4~

休み明けの学校、バイト、会社ほど億劫になるものはないと自負している。その休みが長くなれば余計に行動力が落ちていく。まぁ会社勤めでない一介の学生なのでお勤めしている人は素直に尊敬する。

もぞもぞと布団から体を起こしスマホを付けた。9時。数えきれない通知。

「......やっべ」

新年明けて初日の授業は見事に遅刻が確定した。

****

教室の前に着き勢いよく扉を開けてはかえって目立つからそうっと開けたのだがわざとなのか無情にもきぃっと音を立て結局目立った。

友人の後ろの席に座り急いで授業の準備していると僕に声をかけてきた。

「新年早々寝坊か?家近くてよかったな」

ほんと近くてよかった。だが思いのほか目立ってしまったことを友達は堪えながら笑っている。あまりに笑い過ぎてるので軽くはたいたら先生に少し怒られた。

しばらく授業という子守歌を聞き、友が寝たところで携帯にメッセージが届いた。

「寝坊したようだねぇ笑 新年からいじるネタが豊富だな」

同じ授業を取ってないはずの別の友達にからかわれた。さては誰か言ったな。...犯人探しはすぐに終わる。気持ちよさそうに寝息をかく友をもう一度はたいた。

「ところで今日一緒に学食行かない?期間限定メニュー食べたいんだよねー」

茶番をしてる所にまたメッセージが来た。普段は弁当か購買で買って食べるので学食に行く文化がない。『めんどくさいから行かない』とメッセージを返そうして気がついた。

「今日昼飯買ってないじゃん…」

さては飯買ってないのを見越してたな。これはまたからかれる。その予想は裏切ることなく想像の二割増しで笑われた。

妄想

人は想う 大切な人のことを

 

人は想う 何をしているかを

 

人は想う 体が交わることを

 

人は想う 叶わぬ先の未来を

 

人は想う 見たくない現実を

 

人は想う 憎たらしい盗人を

 

人は想う 揺るがない真実を

 

人は想う 消えない虚しさを

 

人は想う 唐突で新たな事を

 

人は想う やるせない後悔を

 


人は想う 大切な人のことを

人は想う 亡くした女のことを

「いつもの」~3~

    窓を見たら雨が降った。急な雨。内容の入ってこない一般教養の科目を横目にぼうっとした。

洗濯物がなぁ。

ただそれだけ。それだけだが十二分に僕を憂鬱にさせた。しかし授業は憂鬱な気持ちを晴らすことも無く進んでいく。仕方なくノートを開くがペンを持つ気にはならなかった。

    授業が終わり、ぞろぞろと人の波は廊下へ流れていく。取り残された砂粒のようにぽつんと教室に居残った僕は遅めの昼食を取っていた。今日はあと1コマ。先程の波は食堂へと流れ着く訳だが僕は静かにその場で漂う。至福の時間だ。するともうひとつ粒が流れてきた。

「やっ!今日も1人かい?」

騒がしいのが来た。彼女もまた僕と同じ側の人間だ。しかし僕とは正反対に底抜けに明るい。知り合いも多い彼女がこちら側の人間だとは傍から見たら分からないだろう。

「やれやれ、相変わらず貧相な食事だねぇ」

「お前に言われたくはない」

「今日はもう終わりかな?」

「いや、あとひとつ」

途端に彼女の顔が悪い顔になった。

「そうかそうか、私はもう帰るぞ」

予想的中。嫌味だ。この週は毎回のようにやられるが彼女も僕もこのやり取りを飽きずにしている物好きだ。

「…ねえ。聞いてる?」

「ん?あぁごめん意識飛んでた」

「おい〜」

ぼうっとするのは今日で何回目だろう。いつもか。

「この後の授業は蹴ってもいいやつなの?」

「は?…いやまぁ今のところは」

「じゃあ一緒に帰ろうぜ。ご飯食べよ」

誘い方が男勝りなんだよなぁ。いやそもそも僕は今食べたばかりなんだが。

とか思いつつも僕はノートと筆箱を鞄に入れた。

「いつもの」~2~

   受験するための勉強をしてきた高校とは違い自ら学びたいことを学ぶために行くのが大学だ。なんて偉そうな理由もなく描く将来像が何も無いためとりあえず進学するかと何となく大学に通っている。正直高校もだ。こういう事を言うと不真面目だの何だの言われるけれど大学はともかく高校は様々な考えがまだ成熟してないのに大勢の同期、先輩後輩と出会い多感な時期を過ごすという何とも過酷な3年間にも関わらず「何となく」は通用しない。それこそ色々な考え方があるのに定まってない考え方は否定される。そんなことを考えながら大学生になった今の僕は過去の僕をひねくれ者と嗤うだろう。

   そんなことを考えている内に最寄り駅に着いた。今時のポップスな明るい曲ではなく歌詞のないサウンドトラックの方が静かにテンションが上がってく。曲の最後の盛り上がりに差し掛かってふと肩を叩かれた。

「よう」

チャラついたアクセサリーはゴテゴテと飾ることなく綺麗にその人に似合っている。如何にもな大学生だ。他にも似たような友達が数人集まり大学までの道のりから授業が始まるまで会話が続く。基本的にくだらない下ネタで盛り上がり、偶に真面目な話でちょっとしたディベートが起こる。偶に。

「そういやお前2限の英語の課題やった?あれめっちゃめんどかったわぁ」

 

……あ。

菊の花


月が湖畔に映り、ゆらゆらと動いている。

刀を捨てた男が1人空を仰ぎ、ただ映る月をぼうっと眺めていた。

「お菊…今行くぞ」

脇差を抜き、腹に力を込めて、いざ斬ろうとしたその時、白く眩い光が辺りを包んだ。

─────

男は目を覚まし、厠で用を足したら顔を洗う。朝日を浴びてふと思った。

「ここはどこだ?」

急に冷や汗が出てきた。確かに富士の樹海に行き、たどり着いた湖で腹を切ったはずだった。しかし目覚めたと思えば何故か寝間着に着替えており普段通りに朝を過ごしている。何が起きたか分からないが死に損なったのは確かのようだ。

「と、兎に角ここは何処なのかを確かめねば」

慌てて外に出てみたら更に慌てることとなった。何とここは私の家ではないか。先程は慌てて分かっていなかったがよくよく考えれば当然のように厠も水汲み場も使っていた。

「どういう訳だが腹を切った傷がない。そして自宅に戻ってきている。不思議なこともあるもんだ。まるで仏に諭された気分だ。」

だが男はどこか引っかかっていた。どうやら街が若返っているような気がしているのだ。ともあれ色々考えているうちに腹が減ったので自分が贔屓にしていた蕎麦屋に向かった。

「御免──」

「きゃっ」

引き戸を明けた時出てきた女性とぶつかってしまった。

「か、かたじけない!怪我はされてないか?」

と、手を差し出し向こうの顔を見た時、度肝を抜かれた。

「────お菊?」

「えっ?」

「お菊!!」

咄嗟に抱きついてしまった。それは男にとってどうしようもない衝動だった。それもそのはず。それは生涯をかけて護ると誓い、自らの刀で斬ってしまった最愛の妻だったからだ。

「あ、あのう…」

はっとして身を離した。

「す、すまぬ」

「いえ、それよりもどうして私の名前を?」

「!?」

その男は一瞬で悟った。先程の違和感はこれだった。街が若返ったのではない時間自体が前に戻っているのだ。そして男は思い出した。確かにこの時期にお菊と知り合い仲良くなって妻になり1年後に刺客と戦った時に割って入った妻を斬ってしまうことを。

「お…お菊…」

思わず涙が出てしまった。それを見た若かりしお菊は

「とりあえず中に入りませんか?美味しいお蕎麦用意しますよ」

と優しい声で呼びかけた。その声に男はまたさらに涙が出てきた。

蕎麦を食べ、一服ついた時にお菊に一連の出来事を話した。お菊は元々の真ん丸な目を更に丸くして話を聞いていた。

「……とても辛かったのですね。」

お菊は何かを考えるようにし、そして男に話した。

「私はその話を聞いてとても嘘だとは思えませんでした。そしてなんだか分かったような気がします。今こうして貴方の話を聞いて私は貴方にとても愛されていたのだなとよく分かりました。とても、嬉しいです。」

男は少し理解出来なかった。会ったばかりの男に時間を遡ってきたなどというような話をし、況してやその男に将来斬られるなんて話を普通信じるだろうか。

そうこう考えているうちにまた目を疑う光景になった。今目の前で笑顔を浮かべていたお菊の顔に血が染みて、気付けば男の腕の中に居た。これもまた男にとって忘れもしない惨劇の光景だった。

「……お、お菊…私は…」

男は信じられなかった。2度も愛する妻を看取らなければいけないなど考えたくもなかった。

「……泣かないでくださいませ。貴方の男前な顔が台無しです。」

斬られても尚、笑顔のお菊は男の頬に手を添えた。

「貴方は何度も刺客に狙われてきました。その度に貴方は狂剣を振りかざしてきました。もう、そんなことをしなくていいのです。どうか、人を斬るのは私で最後にしてくださいませ。」

「俺は…俺はお菊を護りたかった。護ると誓ったのだ。血に濡れようとも、この身を挺してでもお菊を護りたかった…しかし…しかし私は…!」

「その気持ちは…私にはもったいのうございます。……どうか、生きてくださいませ。私はとても…とても……」

お菊の手が地に落ちた。男は激昴した。

「……仏よ。何故このような仕打ちをするのですか。俺が、人斬りだった罰ですか。そうだとしたら、あんまりです。…いや、罰だとしても最期に妻に会えたのだ。ちゃんと言葉にして伝えればよかった。愛していると。言葉で然と伝えたかった。俺は…とんだ愚か者だ。この罪を地獄の底まで背負わねば、俺はお菊を弔うことができんだろう。」

そしてまた、眩い光が辺りを包んだ。

─────

どれほど眠っていただろうか。目を覚ますとそこは月ではなくひょっこり顔を出した朝日が湖をきらきらと照らしていた。あれは夢なのか。確かに死のうとしたはずだが…

『どうか、生きてくださいませ』

はっと頭によぎった。そうか。これは仏からのお告げなのか。もう一度、生きてもいいのか。男は足元に転がっていた脇差を手に取った。そしてふと気がついた。湖畔の近くの木の根元に菊が一輪咲いていた。傍に居たのだろうか。死に際に黄泉から止めに来たのだろうか。途方もないことを考えて刀を納めた。

「いやしかし、この樹海をどう抜けようか。」

ぽつりと呟き、歩き始めた。朝日を頼りに。

 

 

 

「いつもの」 ~1~

 

  早朝。何重にも仕掛けたスマートフォンの爆音が律儀に順番通り爆ぜて容赦なく僕を起こしてくる。幼少期に聞いた母の「早く起きなさい!」という怒号も今や機械が代わりをしている。そんなこんなで叩き起された僕は寝ぼけまなこで洗面所に行き顔を洗い歯を磨いた。

あれ、まだ飯食ってないじゃん。

そんなドジもかましていまいち目も覚めずに誰もいない食卓へ向かった。もそもそと白米を食べ今日のカレンダーを見る。今日は1限か。あぁ間に合わないや、まぁいいか、と思いながら友達にメッセージを送る。どうせ間に合わないなら二度寝してもいいが流石に目が覚めたのでやめた。

さて、と。

腰を上げて昨日の夜に準備しておいたリュックを背負いドアを開けた。

いつもの日常が始まる。

 

「...帰りにもやし買うか」

仕事男

僕を知る人、もとい僕を見たことがある人は恐らく僕に対して仕事できるだの社畜だのとにかく忙しい人で暇を作るのがド下手くそな人間だというイメージだと思う。

何一つ間違ってない()

だが、勘違いしてほしくないのは余暇がなくても生きていけるタフネスな人間ではないってことよ。

 

いや、普通に無理だよ余暇がないとか。無理無理。遊びたいし趣味にも時間を割きたいしだらごろしたい。

確かにずうっとごろごろしてるのは生理的に無理だ。動いてないと死ぬ。マグロです。

でも仕事仕事って動いてるわけじゃなくて頭の中の考えがというか情報量が人よりも多少多いってだけなのよ。故に常に動いてる。あ、これやんなきゃあれやんなきゃ、これもしたいあれもしたい。だから忙しく見えるだけで実際のところ常に仕事というわけではない。...そんな時期もあったけど()

一見キャパが大きくてせかせか動ける人のように見える。だがこれ1つのことにかける集中がものすごく短いんですね。短くならざるを得ないしそもそもそんなに集中できない。しかも過集中が頻繁に起きて別のことに支障をきたすこともあり非常に厄介。

さらっとぶちまけると僕は医者から「多動性と衝動性の複合型のADHDの可能性があります」と言われている。医者はこのような診断のしかたをする。決して断言はしてくれないのだ。まぁそりゃそうなんだけど。

放送委員長を請け負って一時期本気で悩んだ。こんなに仕事引き受けるのはおかしい、でも仕事を引き受けないと自分を保っていられない気がした。そん時に医者に言ったら上記のことを言われたのだ。

そうと分かった途端にだいぶ気持ちは楽だった。ただ当時はそれを打ち明ける人は殆どいなかった。そこだけ辛かったな。

今でこそオープンにできているのは明らかに大学生になって考え方が変わったからだ。むしろこれを個性にしてやろうじゃないか、と。

そう考えると今まで出会った心から信頼する友と考え方を教えてくれた高校の恩師には頭が上がらない。この場を借りて改めて感謝を。

 

と、まぁ長々と話したが今でもテンプレートな仕事人間に変わりはないし大学生になってもせかせか動いてる。

それでも今こうして色々考えながらのびのびと過ごせているのは自分でもいい傾向だと思う。

 

あぁ遊びに行きたいなぁ。Switchも欲しいなぁ。