今年の7月はまだ寒くて

いやまさかチェコにまで勝つとは思わなかった。ギリシャ。これで、オリンピックスタジアムの工期は更に遅れることだろう。開会式には間に合わないな。閉会式の後に完成するんじゃないか。

今年の6月は去年に比べて気温が上がらなかったようで、7月になってもまだ夜は結構寒い。明け方にはセントラルヒーティングのサーモが働いて暖房が入っているくらいだ。5時にはもうすっかり朝日が昇っていて、明るさだけは夏の空なのに、その対比が何とも。
今日の天気も不安定で、快晴、豪雨、そして今また快晴。さっきまで東の空にきれいな虹が架かっていた。ここ15階のオフィスから見るとちょうど東の正面がCanary Whaftで、虹の向こうにCitibankHSBCのビルが、七色に着色されたように佇み、何ともいえない美しさ。そういえば、日本にいたときにはほとんど虹を見ることはなかったのに、ロンドンでは特にこの季節によく見ることが出来る。数年前、一日だけ泊まったサンノゼ(US)でも虹に遭遇した。空気が乾いていないと出ないのか、どうなのか。

 今年の4月はまだ寒くて 春が来てない
 なのに恋してるなんて もう若くないのに
 自分でも可笑しいから 少し笑った
 (「みんな笑った」ピチカートファイヴ

カレンダーは進んでいるのに、時に寒い日があると、この歌を思い出す。
4月に胸をときめかせることはもうなくなったけど、まだ夏が来ていない、ように思える7月のロンドン、ようやく暗くなった11時に庭に出ると、ちょうど日本の春先のそれのような乾いた、それでもどこかしっとりとしたほどよく冷たい夜風が、晩酌で火照った頭を冷やしてくれる。そして、切なくも明るいピチカートの歌で、物憂さを丁寧に払い落としていた20代前半のあの頃を、少し思い出す。 

売り手市場

のど自慢の予選会出場のためには休暇を取らなければならないので、上司のMさんに相談。思い切り脱力される。なんか恥ずかしがっているようだ。いや、貴方が恥ずかしがらなくても…。

土曜日に久しぶりにトテナムコートの電気街に足を運んだのだが、相変わらずというか何というか、内装や什器はそれなりに新しくなっているものの、陳列方法、広告宣伝、プライシング、何一つ進化していない。日本の進化し続ける家電小売りを知っている身には、20年くらいタイムスリップしたような錯覚を覚える。
我が社の商品を専門に置くショップに入ってみる。試しに、ラジカセのラインナップとそれぞれの特徴を訊ねてみたが、カタログを取り出してそれを読み聞かせ始める始末。購入意欲減退。向かいにある、ちょっと安売り系の店で結局購入。正価90ポンドのCDラジカセが85ポンド。値引きといってもその程度。この店はお客を非常に待たせる。店員は全員インド人。ジュエルケースに陳列されていたコンパクトラジオの在庫を尋ねたお客を、これは今はないよ、3週間後入荷だ、またそのときに来てね、とあっさり追い払う。売ってあげてもいいよ、というスタイル、なんだかとても懐かしい。小学生の頃までは、そういう風情もどこかに残っていたような、遠い記憶。

国が豊かになるほど、商品の供給過剰となり、結果売り手よりも買い手が強くなる。逆もまた然り。UKの小売りは日本のずっと後ろに留まったままだ。

のど自慢への挑戦

オランダ対スウェーデンもPKだった。今日はデンマークチェコに完敗。ノルディックは両方ダメだったか。それにしてもチェコは強すぎる。フランスが消えた今、間違いなく優勝候補ナンバーワンだ。準決勝の相手、ギリシアも不気味ではあるが。彼の国ではポルトガル、フランスを撃破して大盛り上がりだそうだ。オリンピックの準備がいっそうお留守になるに違いない。

さてここロンドンではEUROの熱はすっかり冷めてしまったようで。次の話題はのど自慢である。日本人だけだけど。それとも僕だけか。
で、それに応募してみたら、何と事前審査を通過してしまい、予選会に出場することになってしまった。一度のど自慢に出るのがかねてからの漠とした夢ではあったが、まさか本当に、しかもお国を遠く離れたここロンドンで実現するとは。いや、まだ実現はしていない、10倍の予選を突破しなければならないのである。
曲目は森山直太朗の「さくら」である。定番である。しかも、のど自慢的には、よほど自信のある人じゃないと歌えないもののようだ。(Googleで検索して、体験記などをチェックしてみたのである。さくらを歌う人はみんなうまいらしい。しかもどの予選会でも、何人もこれを歌うらしい。)ううう。ちょっと後悔。今年親父が引退するので、それにちなんだ歌を選んだりすれば、ネタ的に通りやすかったのかもしれない。(それってどんな歌だろう?)遠く離れたロンドンから、父に送るメッセージ、とかいって。でも、さくら、じゃなあ。こういうところに普段の親不孝が露呈するということか。
でも仕方がない、今からエントリーの曲目は変えられないのだ。早速練習開始だ。そのためにまずはと、昨日トテナムコートまで出てマイクを購入。ソニー製の24ポンド。コンデンサマイクではないので、マイクアンプがないとスピーカーを鳴らせないのが誤算であった。これだけ家にいろいろ機械類があれば、どこかにアンプくらいあると思ったのだが、結局見つけられず。中学生の頃自作したあれは、実家のどこかで唸っているのか…。スピーカーモニタリングは諦め、メモリスティックICレコーダーのマイク端子に接続し、最低限自分の声のチェックを出来るように。それにしても、大仰な金属ボディのマイクと、やたらと小さいレコーダーのアンマッチ具合が、何とも今の時代のコンスーマーエレクトロニクスメーカーの難しさを体現しているようだった(?)。

で、現時点での「仕上がり」具合は、まだまだ全然。こんなのではとても予選を突破できないだろう。「さくら」は歌い出しが勝負の曲であるが、「ぼーくらわぁー」なのか、「ぼーくぅらぁわぁ」なのか、といったところからして、まだ迷いがある。各音節の歌い出しも、たとえればヤスリをかける前のバリバリのトゲが残る状態で、そうなると各節の歌い終わりを綺麗に伸ばそうとすればするほど不格好にきこえてしまう。普段カラオケではこんなふうに自分の歌を反芻しないから、新鮮というか、恥ずかしいというか。でも自意識との戦いに勝たなければ、人前では歌えないのである。

予選会は7月22日。それまでに、まずは自意識を破壊し、歌の世界に即没入できる自分を作り上げることから始めるのである。(おもしろそうじゃないか。)

イングランド敗退:EURO2004

今朝のオフィスはお通夜のように静か。ジョークでも昨日の敗戦には触れられない雰囲気。

実際、いい試合だった。後半以降押されまくっていたけれど、イングランドらしく、相手をフラストレートさせるようなねばり強い守りを見せてくれた。後半終了間際のキャンベルのヘッドも、まあおそらく本当は決まっていた。ホームタウンでは、あそこまでもつれたら疑わしきファールは取る、ということなんだろう。

今朝のMetro(地下鉄駅で配っている無料新聞)にはやけくそ気味のルーニーネタ満載。
・30代ビジネスマンへの「キスしたい相手」調査で、ルーニーが1位になった。ちなみに彼のニックネームは「鮫」である。
・英国内で昨年生まれた赤ん坊のうち、ルーニー、と名付けられたのはわずか43人。調査機関によると今年はこれが500%増加する見込。
・モデルエージェントでルーニーのそっくりさんを公募し始めた。が、ベッカムのそっくりさんは「出たがり」タイプが多いが、ルーニーのそれの場合は地味で表に出たがるようなのは少ないと予想される。
ウェールズにある水族館で生まれたトドの赤ちゃんが、ウェイン・ルーニーと名付けられた。飼育係は「本人の訪問はもちろん歓迎さ」とのこと。
ルーニーは、プレーはカレイいや華麗だが、顔は地味で、18歳とは思えないほどオッサンじみている。どうやらそういうキャラクターとして定着しつつあるようだ。

それにしても、、次のワールドカップまでは英国にいられないだろうから、おそらくこれだけ盛り上がるのを見られるのはもう最後。そう思うとちょっと寂しい思いがする。ここにいる間にイングランドの優勝が見られたら天恵だと思っていたが…。

敗戦で終わる宴は、それが常とはいえ、切ない。日本人である僕は切なくなる必要はないのだけれど、そういう気分はじっとしみ渡るように伝染する。そして今日はとてもいい天気だ。