2017年 お気に入りのアルバム25枚

25.徳永憲『信じるに値しない男』


24. Moonchild『Voyager』


23. キセル『The Blue Hour』


22. Courtney Barnett & Kurt Vile『Lotta Sea Lice』


21.Cornelius『Mellow Waves


20. Okada Takuroノスタルジア


19. ものんくる『世界はここにしかないって上手に言って』


18. The Seams『Meet The seams』


17. Thundercat『Drunk』


16. Tyler, The Creator 『Flower Boy』


15. Kevin Morby 『City Music』


14. SZA『CTRL』


13. 小田朋美『グッバイブルー』


12. JANE BIRKIN『BIRKIN/GAINSBOURG:LE SYMPHONIQUE』


11. 柴田聡子『愛の休日』


10. Wolf Alice『Visions Of A Life』


9. The Big Moon『Love In The 4th Dimension』


8. Alvvays『Antisocialites』


7. Nai Palm『Needle Paw』


6. Kamasi Washington『Harmony of Difference』


5. Bjork『Utopia』


4. LCD Soundsystem『American Dream』


3. Cigarettes After Sex『Cigarettes After Sex』


2. Perfume Genius『No Shape』


1. Father John Misty『Pure Comedy』


世のたくさんの人の声が可視化されると、自分の都合ばかりを押し付けているものや、ポリティカル・コレクトネスを盾にした当事者以外の怒りが目について、いつもギスギスしていたし、なんとなく心もささくれだっているような気がしたので、触れる表現はなるべく寛容で、ロマンティックで、すこしユーモアがあるものにしたかった。
すこしレトロなファーザー・ジョン・ミスティの音楽にはそれらがうまく描かれていると思った。

また年末に滑り込んできた徳永憲の新作に収められた「やさしき人」の歌詞にも、それに近いものを感じた。


誰もいなくなった公園で噴水が上がる 夕日を浴びて

君は横切り立ち止まる
噴水をすこし見てあげる


収拾のつかなくなるやさしさを どうしても捨てられないんだ
悩む時も 迷う時も 塞ぐ時も 病める時も 痛む時も 辛い時も
それだけが
自分の証だから


では皆様、良いお年を。

2016年 好きな映画BEST10

今年はそんなに本数を見れませんでしたが、そんな中で見れてよかったなと思う、10本です。


1. イット・フォローズ

セックスをすると「それ」が追ってくる、という興味の引き方がすごいB級っぽいなと思って見てみると、もちろんホラー的な恐怖演出もよく練られてると思いますが、最終的には愛すること、生きることという根源的な問いにたどり着く語り口が見事。生きることは死に近づくことだし、それは生まれながらに背負った十字架であるけれども、だからこそ今の生を全うしようと思いました。撮影も美しい。あと明らかにふつうの劇伴で当てないようなジャンル分けしずらい音楽も、わからないながらもばっちり「不穏」というのが、なんかセンスの塊だね、と思いました。


2. この世界の片隅に

戦争の怖さを、その最中を生きる市井の人物の強さを描くのに、ユーモアが有効であるという気づき。今後も折を見て語られ続けるであろうアニメーションの傑作だと思います。


3. エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に

野球の奨学制度で入ってきた、いわゆる’学校の勝ち組’の、学校生活がはじまる前の3日間を描く。青春映画ではバカで粗野な人物として描かれることの多い、ジョックスたちを、繊細でちゃんと血が通った人物として見せるのが良かった。個人的には所謂ジンクスをばっさり切り捨てるセリフがあるところにシビれました。物事は必然でできている。


4. 死霊館 エンフィールド事件

ジャパニーズホラー的な恐怖表現も吸収しつつ、アメリカ的なパワースタイルも見せつける緩急自在な演出力に、怖がりながらもすごいなと唸りました。ジャンルはホラーですけど、ハリウッドアクション映画を見た後のようなダイナミズムがあり、広く見られるといいなと思います。


5. ヘイトフル・エイト

「黒人がリンカーンから受け取った手紙」など意外性のあるものでの興味の引っ張り方がタランティーノ監督はやはり上手いなと感じます。個人的にはどんどん好きになっていく監督です。


6. シン・ゴジラ

庵野&樋口コンビの『巨神兵東京に現わる』がすこしギャグの入った特撮破壊表現をしていたこともあり、公開前は斜に構えたゴジラのオマージュをやるのかと思っていたら、まさかの(?)正統派ゴジラで良い意味で面を喰らったことは否めませんが、でもこちらの予想を超える仕上がりで嬉しく見ました。


7. ちはやふる 上の句

「繋がれ!」と謳う主人公のちはやが仲間を召喚する媒介でしかなくなってくる下の句より、太一の成長物語を丁寧に描く上の句が良かったです。都内のライバル校の主将である、須藤のシャープな感じも良くて、映画のいいスパイスになっていると感じました。


8. ゴーストバスターズ

84年『ゴーストバスターズ』の女性版リメイク。CGの進歩は、ありえない現象であっても、なるべく実写に近い、リアリティを持った表現を目指すということを前提として進んできたように思いますが、今作でのバトルシーンは、80年代のケレン味のある極彩色にあふれた「当時のSFX表現」をCGでやる、という通常とは真逆の方法論で用いられており、見た目にも新鮮だったし、何より楽しく見れました。悪魔のようなものに取り憑かれた人物が宙を舞う姿に、『デビル・スピーク』を思ったりしましたが、取り憑かれても陽気、というところにバカの強さをみました。


9. シング・ストリート

少年たちがバンドを組んで成長する物語。ラストは賛否両論ありましたが、わたしはあれでいいんじゃないかと思います。たぶん良識のある大人ほど「非」に見えるんじゃないかと思うのですが、多くの人から見たら正解ではない、バカで間違えた選択であっても、君が思う道を歩むことそのものが大事なのだという監督の主張にそうだよねとなったりしました。ちなみにテーマが類似していて同時期に公開された、『グッバイ、サマー』も好きです。


10.ドント・ブリーズ

盗みに入った家に住む盲目の老人に返り討ちにあう話、と書くと自業自得じゃんと思うけど、とにかく老人が本気で殺しにくるのでやっぱシャレにならん!『パニックルーム』とは真逆で、盗みに入った方に肩入れしてしまう視点が新鮮だし、詰め込まれたシチュエーションアイデアの豊富さと練られ具合も面白かった。


その他、「ライト/オフ」「ブレアウイッチ」なども素晴らしく、新しい作家のつくるホラーが充実していたと思いました。それはつまり新しい才能がきちんといるということで、今後の活躍も楽しみです。また良質な邦画も見受けられたのも嬉しい収穫でした。「アイアムアヒーロー」「ヒメアノ〜ル」なんかは良かったです。映画はたくさんのスタッフが携わるもので、スタッフが各々の目の前の仕事を一生懸命やっていても、全体を見る監督、プロデューサーの力量がないとやはりいい作品にはならないわけで、ちゃんと見通せる人もいるということがわかって嬉しかったです。

来年は映画をもっと作品を見たいと思います。
では、みなさま良いお年を。

2016年 お世話になったアルバム(1位〜25位)


ジョン・キューザックです。

これから僕が今年好きだったアルバムを、カウントダウン形式で紹介するよ。ベストな25枚さ。
音楽配信サービスでアルバムを聞けるのはありがたいけど、レコードショップに行くとそこでは拾えなかったような音楽との出会いがあったりして、アナログな行為も大事だよ。よかったら僕のお店、『チャンピオンシップ・ヴァイナル』にもみんな来てくれ。」

…という『ハイ・フィディリティ』ごっこを40過ぎてもまだやっているのはどうかと思いつつ、書いてみます。今年はいいアルバムがたくさんあって充実した1年でした。


25. 南波志帆『meets sparkjoy』

自らがタワレコード内に立てたレーベルからの初アルバム。曲はバラエティに富んでいるけれど、生楽器によるバンドサウンドの統一感が出て、曲ではなくアルバムとして最高作になっていると思う。頭の回転が速すぎるMCも最高だけど、やはり声の響きの良さが宝物。
南波志帆 『meets sparkjoy』トレーラー - YouTube


24. AmiinAAvalon

アーケイドファイアの高揚感や、シガーロスみたいなスケールの大きな曲を持つアイドル2人組のファーストアルバム。俗っぽいアイドルポップではないけれど、難しくなく、素直にいいアルバム。エレピの刻みと、クリーントーンのギターの響きだけで宇宙の広がりを感じさせた静かな「Cosmos」みたいな曲があるところが信頼できる。
amiina 『Drop』MV - YouTube
amiinA『Canvas』Album ver. - YouTube


23. The Divine Comedy『Foreverland』

ニール・ハノンのバンド、6年ぶりのアルバム。なんでもラップトップ上で音楽が作れてしまう昨今において、UK産チェンバーポップは後継者不足で消えゆく芸術にあるのかもしれないけれど、でもわたしにとって「ブリティッシュポップ」と言えば、こういったサウンドなんよ。大仰なサウンドに、ユーモアとシニカルをまぶす相性の良さ。
The Divine Comedy - Catherine The Great - YouTube
The Divine Comedy - How Can You Leave Me On My Own - YouTube


22. NAO 『For All We Know』

ディスクロージャーの曲でもフィーチャーされていたロンドン出身のシンガーソングライターのファースト。アリーヤっぽいところもあるけれど、シルキーなヴォーカルと、エレクトリックなファンクネスの絡みがとにかくかっこいい。
Nao - Get To Know Ya - YouTube
NAO - Girlfriend (Official Video) - YouTube


21.Babaganouj『Pillar of Light』

オーストラリアのガレージポップバンド。バブガニューシュと読むよう。2016年において、90年代的なザラザラしたインディーギターポップが新鮮に響いたし、シンガロングスタイルの楽曲の気恥ずかしさもどこかまぶしい。初めてバンドを組んだ時のような、音を出すのが楽しくて仕方がないという感じの若くてポジティブなフィーリングに溢れてるのがいい。格好つけたり斜に構えたりする必要がないのは愛されるよね。
Babaganouj / Pillar of Light - Trailer - YouTube
Babaganouj - Do Rite With Me Tonite (Official Video) - YouTube


20. Brad Mehldau Trio『Blues And Ballads』

最初に聞いたメルドーは、『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』のサントラで、ロマチンティックなソナチネやスロージャズが収録されていてとても気に入っていたのだけど、それを思い起こさせるような久々にゆったりとした雰囲気のアルバムでよく聞いた。終盤のポール・マッカートニー曲の解釈もオーソドックスだけど、ちょっとブルーなフィーリングがしんみんりといい。
Brad Mehldau Trio - Little Person [Official Audio] - YouTube


19. 原田知世『恋愛小説2 - 若葉のころ』

伊藤ゴローとのカバー企画第二弾は、邦楽集。瑞々しくも深みをたたえた知世さんのヴォーカルが素晴らしい。誰もが知っている名曲を腰の座ったアレンジでゆったり聞かせる。「やさしさに包まれたなら」の名曲ぷりに改めて気づいたり、曲に新しい息を吹き込むカヴァーの醍醐味がありました。
原田知世 - 『恋愛小説2~若葉のころ』ダイジェスト・ムービー - YouTube
原田知世 - September - YouTube


18. スカート『CALL』

スカートこと澤部渡が、夜中にtwitterのタイムラインにポツリと残す、「ちんぽ」の文字。なぜ真夜中にわざわざ「ちんぽ」と言わなければいけないのか。彼は「ちんぽ」と書き記す使命を感じているのだと思うし、また同じように良いポップミュージックを書き残さないといけないという、衝動と使命を自分の中に宿しているのだと思う。今作は彼が書き残さなければならないと思った、美しい「ちんぽ」ミュージックが見事に鳴っている。
スカート 3rd Album''CALL'' ダイジェスト・トレーラー - YouTube
スカート / CALL 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】 - YouTube


17. Teenage Fanclub 『Here』

もう何にも似ない、いつものティーンエイジ・ファンクラブらしい音楽を奏でるだけでエヴァーグリーンになってしまう。ずるい。そしてリヴァース・クオモ君も近々この域に到達するのだろう。
Teenage Fanclub - I'm In Love - YouTube
Teenage Fanclub - Thin Air - YouTube


16. Beyonce『Lemonade』

ソウルフルというより、ほぼ激情というべきエモーショナルなヴォーカルが、ジャニス・ジョップリンを彷彿させ本当に素晴らしい。そんな声が練り上げられまくったバラエティに富んだバックトラックに乗って、何度も鳥肌が立つような瞬間がある。アッコさんもこちらの方向に進んでいればちょうカッコよくなれたのではと思う。
Beyoncé - Sorry (Video) - YouTube


15. Michael Kiwanuka『Love &Hate』

ロンドンで育ったウガンダ人アーティストのセカンド。ビル・ウィザースやオーティス・レディングのようないにしえのソウル、ブルース。でもそこにノスタルジックな思いがあるわけではなく、彼の表現の必要性に迫られて鳴っている感じがいい。美しいメロディと味のあるヴォーカルが素晴らしいです。
Michael Kiwanuka - Love & Hate (Official Music Video) - YouTube


14. Directorsound『Into the Night Blue』

ニック・パーマーのソロユニットの6thアルバム。40年代の映画音楽、ジャズのエッセンスに絡んでくるラップスティールやマリンバなどの南国テイストのリラックス感がとても心地いい。ノスタルジックな暖かい演奏。海の近くにあるホテルの夜のプールサイドで、こんなジャズバンドが演奏してたらほんとに最高でしょうね。
Directorsound - Umbrellas Of Beckholmen by Tona Serenad Records | Free Listening on SoundCloud
Directorsound – Into The Night Blue by Tona Serenad Records | Free Listening on SoundCloud


13. Negiccoティー・フォー・スリー』

「曲がいいアイドル」という枠を超え、本気で「名曲」のレベルを掴み取ろうとしてきた心意気だけでも胸が熱くなってしまう。「ねぎ、ねぎ、ねぎっこ!」と歌ってデビューした自分たちがここまで来るとは本人たちも予想してなかっただろう。もちろんおじさんもです。アイドルポップスのひとつの到達点だと思う。
Negicco 3rd Album 「ティー・フォー・スリー」全曲試聴トレイラー映像 - YouTube


12. Chance the Rapper『Coloring Book』

まず名前とルックスがいい。あといつも笑顔を絶やさないようなラップとビートもいい。能天気ではない絶妙なポジティブなフィーリング。うじうじしたオタクは全く彼に勝てないよね。
Chance The Rapper - No Problem ( Coloring Book) - YouTube


11. Solange『A Seat at the Table』

リズムとベースとほんの少しの上物、そして極上のゆらぎを持った声。The weekendもそうですけど、少ない音数でもそれだけで音楽をひっぱることができるし、少ないからこそ豊かに響く。エモーショナルで熱量の多い姉の盤よりついついこちらをリピートしていました。おじさんなので。
Solange - Don't Touch My Hair ft. Sampha (Official Music Video) - YouTube


10. 蓮沼執太『メロディーズ』

クセがなく、軽やかで耳馴染みのいいポップミュージック。でも奥底には軽やかに気持良くサウンドを奏でることへ執着と実践がある。タペストリーのように美しく編み上げられたメロディとアレンジに耳をそばだてているだけで嬉しい気持ちになる。
蓮沼執太『メロディーズ』MV「RAW TOWN」 - YouTube


9. Andy Shauf『The Party』

カナダのシンガソングライターのサード。ある晩のパーティに集まった様々な人物を描いたアルバムだそう。一聴70年代ポップスをベースにした耳障りのいいポップスのように聞こえるけれど、エリオット・スミスのようには美しく昇華されない、めんどくさそうな自意識と沈殿した孤独がへばりつき、軽く流せない妙なフックがあって何度もリピートした。
Andy Shauf - "The Magician" - YouTube
Andy Shauf - "Quite Like You" - YouTube


8. Anderson .Paak『Malibu』

Dr.Dre絡みで注目された才人。一見穏やかなトーンの中に、内に込められた衝動がストレートに伝わってくるような展開があったり、とてもスリリング。今年いちばん聞いたHIP HOP、R&Bのアルバム。
Anderson .Paak - The Bird - YouTube


7. Whitney 『Light Upon The Lake』

2014年に解散したスミス・ウェスタンズ(好きでしたよ)のギタリストとドラマーが結成したバンドのファースト。2016年、ギターポップの最良の形。今後も何年も残っていくアルバムだと思う。歌っているドラマーのジュリアンは、スミス・ウェスタンズでは曲を書いてなかったそうで、まさに隠れていた才能。
Whitney - Golden Days (Official Video) - YouTube
Whitney - No Matter Where We Go (Official Video) - YouTube


6. Radiohead『A Moon Shaped Pool』

新機軸のないいつものレディオヘッド。かといってもちろんそこに怠惰があるわけではなく、ついにレディオヘッドのフォーマットを完成させたような彼岸がある。不安と癒しが同居するオーラに背筋を正される思い。
Radiohead - Daydreaming - YouTube
Radiohead - Burn The Witch - YouTube


5. The Lemon Twigs『Do Hollywood』

ロングアイランド出身の10代の兄弟デュオ。父親の膨大な名盤コレクションを聞いて育ったそうだけど、聞いてるだけではそれらをものにした音楽は作れないわけで、気が遠くなるほどの実践があったはず。ビートルズ、クイーン、ボウイ、ビーチボーイズザ・フー、70年代プログレなんかのオマージュを無邪気に横断するとっ散らかった楽しさと、絶妙にチープな感じが見事にマッチングしてる。ライブビデオを見るとビッグスターの一節を挟みこんできたり、ジェリーフィッシュのようなポップマニアぷりと先人達へのリスペクトがありつつ同時に、昔のブラーのようなそれらを喰ってやるという振る舞いがほんと最高です。
The Lemon Twigs - These Words - YouTube
The Lemon Twigs - Live at Amoeba - YouTube


4. David Bowie『Blackstar』

野心的なジャズサウンドに若返ったような張りのあるヴォイスを乗せて、最後のアルバムに「Blackstar」と名付けて去っていくなんて、こんな様になる去り方、彼にしかできない。
David Bowie - Blackstar (Video) - YouTube


3. コトリンゴ『「この世界の片隅に」 オリジナルサウンドトラック』

コトリンゴさんの映画劇伴は3回目だけど、過去の音楽フォーマットに則った過去作に比べ、今回はコトリンゴ色が全開のつくり。「控えめさ」が却って強い個性になるコトリンゴの作風だけど、邪魔せず印象に残る映画とのマッチングも素晴らしかった。『みぎてのうた』で、「貴方などこの世界の切れっ端にすぎないのだから〜だからいつでも用意さるる貴方の居場所 どこにでも宿る愛」なんて歌詞をコトリンゴさんに囁くように歌われるだけでクるよね。映画の補正がかかってるかもしれないけど、音楽単体として聞いても素晴らしいと思う。サントラをかけながら休みの日に簡単なごはんをつくるのも楽しくできます。
映画『この世界の片隅に』予告編 - YouTube


2. KIRINJI『ネオ』

イントロが開けて最初に聞こえてくるのが、シネマンディアス宇多丸のラップだし、曲によって変わるヴォーカルやバラエティに富んだ曲を聴いてると、キリンジらしさを刻印してるのは今や兄の歌詞と、ちょっとしたコード進行だけって気もするけど、新しい自由を手にしたフレッシュさも漲っていて、いまバンドが乗っている感じがよく伝わってくる。多幸感に溢れたコトリンゴ作曲の「日々是観光」(今年のベストトラックです)、70年代ポップの「ネンネコ」、祝いの言葉に呪いをかける「あの娘のバースデイ」の流れが好きすぎる。
KIRINJI『ネオ』ダイジェスト・ムービー - YouTube
KIRINJI - The Great Journey feat. RHYMESTER - YouTube


1. John Cunningham『Fell』

リバプール出身のシンガーソングライター、14年ぶりのアルバム。ビートルズから寂しさだけを抽出して作ったような黄昏たポップスだけど、本家を超えるようなその純度に震えてしまう。これが2016年を代表する「音」かというと決してそんなことはないけど、こんなに完成されたポップスも年単位でめったに出会えないサウンドであることも間違いないわけで、本当に素晴らしいです。クラウドファンディングで作られたそうだけど、形に残せてよかった。
John Cunningham - We Get So We Don't Know - YouTube
John Cunningham - "Frozen In Time" (From the 2016 album Fell) - YouTube

2015年 好きな映画BEST10

ここ数年はアイドルさん現場に時間を割くことも多く、映画を見る本数も減りがちだったのですが、今年はさすがに映画を見る時間をもう少し取りたいと思い、意識的に時間の使い方を映画の方にシフトしたりしました。それでも見たいものはまだまだたくさんあるのですけど。

以下はそんな中で見れてよかったなと思う、10本です。

1. マッドマックス 怒りのデス・ロード

映画史に残るかっこいいヒロイン、人を思いやることで人間性を取り戻す青年、少ないセリフでも端的に心情を伝える演出、撮影の素晴らしさ、活劇の面白さ。どこを取ってもよく出来すぎていました。


2. インサイド・ヘッド

人間を司る頭脳の仕組みをわかりやすく解いてみせる面白さに感心しつつ、幼き頃のイマジナリーフレンドや、「カナシミ」の役割についてなんとも言えぬ感謝の気持ちが湧いたりしました。そして主人公である女の子は、今年、乃木坂46の松村沙有理の次に助けたい!と思わせるキャラクターでした。子供にとっては理解が難しい作品かもしれないけれど、わたしは何者なんだろうと思える時には一度は見てもよい映画だと思います。


3. I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE

ウェス・アンダーソンのようにキャラクターを正対で捉えるカットや、3Dと2Dをミックスしたような不思議な絵の質感は、原作である4コマの世界観を崩さないように最大限に気を遣われているし、映画版であってもお話のスケールがちいさいこともPEANUTSらしい。小気味好いギャグがたくさん入ってるところもいい。小さいことで思い悩み、うまくいかないことばかりのチャーリー・ブラウンはわたしたちそのものであって、だからこそ彼が迎えるエンディングは心に届いてしまう。


4. ミッション:インポシブル ローグ・ネイション

今年公開されたスパイ映画の中では、キュートさは他の作品に譲るとしても、アクションとストーリーのバランス、キャラクターの魅力(レベッカ・ファーガソン!)や配牌もサスガであるし、あの顔面の下にある映画人としてのトム・クルーズのセンスと頭の良さにつくづく感服してしまう。


5. 君が生きた証

邦題タイトルの印象から受ける、「君が残した歌を後世に残していく」、というような先入観を超えていく内容は、その意味に重さと衝撃を加えていくもので、よく考えられたものだと思う。と言いつつ、あまり内容に触れずに見た方がいい映画なので、なんとも歯がゆいですけど、なるべく見る機会を作る方がいい傑作であることは間違いないように思います。


6. クーデター

異国の地でいきなり絶望的な状況に追い込まれた家族の一夜もの。そのおそろしさと臨場感がただごとではなく、鼓動が早まり、瞳孔が開きっぱなしでした。


7. ヴィジット

祖父母にはじめて会いに行く姉と弟の顛末。シャマランはサーヴィス精神が旺盛な人だと思う。しっかり怖く、不気味ながら、なぜか同時にニヤニヤ笑ってしまう盛り付け。そして弟のタイラー少年は最高のキャラクターである。怖い目にあうとなぜか女性アーティストの名前を叫び(自身の恐怖を和らげる防衛反応か)、苦笑となかなかやるなという微妙な線にあるラップを自信たっぷりに披露する愛おしさ。タイラー君にまた会いてえよ。


8. サンドラの週末

解雇を免れるために、面倒臭いことを遂行していくサンドラの週末。わたしなら余裕で心が折れていますが、生きるためには面倒臭いことを乗り越えていかないといけないのだ。小さな身の丈サイズのお話を、身の丈サイズで演出しながら、きちんと興味を持続させるタルデンヌ兄弟の仕事。


9. アントマン

DVDスルーコメディの常連である、ポール・ラッド君が劇場公開映画、しかもマーヴェルムービーで主役を張る、という晴れ舞台で思わず応援の気持ちも入ってしまいますが、見た目も楽しい陽性なヒーロー映画であって良かった。アベンジャーズに比べて、アントマンは目的がはっきりしていてもやもやしない。最初はおせっかいで面倒臭そうなマイケル・ペーニャが徐々にキュートに見えてきて、かわいいんです。


10. ピッチ・パーフェクト

クラシカルなアカペラグループになりゆきで入ってくる、新しい音楽センスを持った女の子のお話。自意識とチームプレイ。個性的なキャラクターたちと、くだらないジョーク。バイブルとしての「ブレックファストクラブ」。部活ものとしてきちんと盛り上がる決勝大会。ポップコーンを頬張りながら軽く見るには最適。ちゃんと楽しいことは、素晴らしいことです。

「海にかかる霧」、「私の少女」、「ストレイト・アウタ・コンプトン」、「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」、「22ジャンプストリート」、「ラン・オールナイト」、「はじまりのうた」、「ベイマックス」、「ワイルドスピード スカイミッション」、「ビリギャル」、「カプチーノはお熱いうちに」、「ラブ&マーシー 終わらないメロディー 」、「マイ・インターン」、「チャッピー」、「Re:LIFE〜リライフ〜」、「EDEN」、「ハッピーエンドが書けるまで」、 「ゾンビーバー」なんかも興味深く見ました。

では、みなさま良いお年を。

2015年 お世話になったアルバム(1位〜25位)

たとえばストーン・ローゼズのライブが唯一神として世界を覆ってしまうことは叶わないけれど、自分だけのアルバムをヘッドフォンで聴いていたのに、ふと顔を上げてみると、みなそれぞれにそのアルバムを聴いている。内省的ゆえにいつの間にか世界の誰かとアクセスしているテン年代の風景。

2015年、わたしが気に入ってよく聴いていた25枚です。お世話になってます。

25. Homecomings 「Somehow, Somewhere」

つたなく一本調子のところが愛らしいです。


24. Bill Ryder–Jones 「West Kirby County Primary」

来年はコーラルと、元コーラルのBeefを期待しています。


23. LUCKY TAPES「The Show」

高性能シティ・ポップスでも、敷居の低い親しみやすさで聴きやすい。


22. Wolf Alice「My Love Is Cool」

サマソニが呼ぶ新人さん(ハイプの匂いがする)とタカを括っていたら、想像を超えてよかった。


21. 花澤 香菜「Blue Avenue

2015年でいちばんブチ上がった記憶は、日本武道館での「恋愛サーキュレーション」です。


20. G.Rina「Lotta Love」

東京女子流もはやくエッチくなってほしい。


19. チャットモンチー「共鳴」

「ドライブ」に背中を押されながら出勤。


18. Toro Y Moi 「What For?」

軽やかな「Run Baby Run」に泣いてしまう。


17. Vessels 「Dilate」

ミニマルの構築とふくよかな解放。


16. Deerhunter 「Fading Frontier」

達観したサイケデリアを聴いて、人生どうでもいいスラッカー気分になるのはいい息抜き。


15. Cero 「Obscure Ride」

新しい「空中キャンプ」になるといい。


14. Squeeze 「Cradle to the Grave」

久しぶりに会った友人と飲んだら思いの外楽しくて、ずっと話してた夜のような。グレン&クリスのヴォーカルを聞くと妙に安心する。調子はいいよお。


13. Jamie xx「In Color」

The xx本体よりすき。


12. Mark Ronson 「Uptown Special」

先人たちの世界観を引き継ぐだけで楽しくやれるのは、「フォースの覚醒」も「クリード」も見習ってほしい。


11. Negicco 「Rice&Snow」

好きな子が歌えば、そこは楽園。

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パッセン1年生が考えた『PASSPO☆ FES.』

パッセン(PASSPO☆のファン)1年生の者です。
PASSPO☆の存在は今までも知っていましたが、改めて聞いてみたら楽しくて、今年は足繁く現場に通うグループになりました。PASSPO☆はアイドルらしく踊って歌うスタイルが基本フォーマットなのですが、メンバーが楽器を演奏するBAND PASSPO☆というフォーマットもあって、アメリカンガールズロックがやりたいと宣言しているPASSPO☆がキュレーターになって、こんなメンツのフェスをやったら楽しいんじゃないかと、ぼんやり考えてみました。

Lillix - What I Like About You

マドンナが手がけていたレーベル、マーヴェリックに所属していたカナダのグループ。マーヴェリックからはアラニス・モリセットデフトーンズプロディジーなんかがリリースをしていて、マドンナの目利きぶりはすごいですね。リリックスはとにかく曲がかけるグループで、あっけらかんとした雰囲気もPASSPO☆と相性がいいように思います。この曲は、映画「フォーチュンクッキー」でも使われていて、リンジー・ローハンの後の音楽活動にも強く影響を与えたように思います。


Josie and The Pussycats - Pretend To Be Nice

コミック「ジョシーとプッシーキャッツ」を映画化した、『プッシーキャット』のサントラ曲。このパワーポップ具合と、わちゃわちゃした感じはすごくPASSPO☆的だと思う。映画では、 レイチェル・リー・クックがメインの主役でしたが、この映画ではサブだったタラ・リードとロザリオ・ドーソンの方が今ではすっかり売れてしまって、いとおかしを感じます。この曲は、ファウンテンズ・オブ・ウェインのアダム・シュレジンジャーの書き下ろしですが、プッシーキャットはどの曲も絶妙なB級パワーポップ感があって、『プッシーキャット』のサントラと、『フォーチュン・クッキー』のサントラは、「アメリカンガールズロック」というぼんやりしたジャンルの雰囲気を知るには、よいテキストだと思います。


Miley Cyrus - Start All Over

twitterのお友達であるかーどさんが、ことあるごとに「もりし(PASSPO☆森詩織)は日本のマイリー・サイラス」と呟いていたら、最近はPASSPO☆の振付師さんまで、「もりしは日本のマイリー・サイラス」と言うようになってしまいましたけど、なるほど似てますね。PASSPO☆フェスに出てきたら、もりしと並んで歌って欲しいと思います。



The Muffs - Kids In America


ザ・マフスはとがったパンクバンドの雰囲気もありつつ、どこかキュートで親しみやすさもあるところがいいですね。この曲はキム・ワイルドのカヴァーで『クルーレス』のサントラに収録されています。MVの彼女たちは、メンバーではないですが、学校でいきがっている女の子の感じがおもしろいです。


Letters To Cleo - I Want You To Want Me

レターズ・トゥ・クリオはカレッジチャートで人気がありました。この曲は言わずと知れたチープトリックの名曲のカヴァーですが、映画『恋のからさわぎ』のエンディングで使われていて、映画に爽やかさと甘酸っぱさな余韻を残しています。


That Dog - He's Kissing Christian

このバンドは実は90年代のバンドの中では5本の指に入るくらい好きです。おもしろく、かっこうよい。アルバム「Retreat from the sun」は永遠の一枚です。椎名林檎さんが彼女たちをフェイバリットに挙げていたこともあって、なるほどと思ったりもしました。活動当時は、BECKとも、REDD KROSSとも繋がりがあり、バイオリンのペトゥラ・ヘイデンはフーファイターズなどともセッションで参加するような重宝がられるセッションミュージシャンでもあります。


Juliana Hatfield - What A Life

ジュリアナ・ハットフィールドのインディーズらしいロックに載せて歌われる歌声がとにかくキュートで、そのミスマッチ感が新鮮で、当時学校でもよく話題になっていました。今も活動していて、相変わらずの声なんですが、ルックスは必要以上に疲れたおばさんみたいになっていて、あぁ…という気持ちにはなりました。


Veruca Salt - Volcano Girls

凡庸なガールズロックですけど、フロントの2人のルックスが良くて、ルックスは大事だな思います。今も元気に活動中です。


Michelle Branch - Breathe

アヴリル・ラヴィーンが出てくる少し前にヒットしていたミシェル・ブランチさんですけど、曲はよくかけていて、メジャーなガールズロックのお手本のようです。


Ashlee Simpson - Pieces Of Me

アシュリーシンプソンのデビュー・アルバム「Autobiography」はアヴリル・ラヴィーンと共にガールズロックが売れる時代にマッチしてめちゃめちゃ売れてました。がらっぱちに振る舞う美形という様はPASSPO☆に通じるところがあると思います。


Joan Jett - Love is All Around

ガールズロックのゴッドマザー、ジョーン・ジェットさん。PASSPO☆増井みおさんもたまにジョーン・ジェットのTシャツを着ていますね。


The Donnas - Who Invited You

ザ・ドナズはランナウェイズ直径のオールドマナーなガールズロックバンドですけど、演奏もバッチリでかっこういいですね。


PASSPO☆ - Candy Room / Shiny Road

このフェスの最後にPASSPO☆が出てきたらメンバーのプレッシャーが半端ないと思うんですけど、PASSPO☆にはアメリカのガールズバンドが持っているような、わちゃわちゃした楽しさと、ばかばかしいカジュアルな親しみやすさと、それゆえに青春の刹那的な雰囲気があって、不思議とこのメンツにもマッチする気がするんです。
2015年の元旦にはじめて見たPASSPO☆ワンマン。全曲披露する6時間を超えるライブでしたが、その量だけでなく、内容の熱さも、楽しさも、涙もあり、今年いちばんの現場でした。PASSPO☆を見れて良かったです。
多くの女の子がギターを手に取ってガールズロックを奏でてきたように、PASSPO☆を見た若い女の子が、鬱屈した生活の中で楽器を取ることを選び取り、やがてガールズロックを歌い出すこともあるかも知れない。わたしたちには玉井杏奈がいる。玉井杏奈がいるということは、わたしたちにはジョー・ストラマーがいることと同じことで、世の中には信じられる者がいるということです。

「音楽映画」ベストテン

今年の『男の魂に火をつけろ』の映画ベストテンは、「音楽映画」ベストテンということで参加したいと思います。

ジャンルとして、好きなSF映画や、好きなホラー映画などについて考えたことはあっても、好きな「音楽映画」という括りを今まで考えたことがなかったし、映画を観終わったあとに、「これは、いい音楽映画だ」みたいな感想を持ったりしたことがなかったので、これはちょっと困ったなと思いました。ストーリーがいいことがいいのか、歌がいいことがいいのか、曲がいいことがいいのか、「音楽映画」の規範ってなんなんでしょうね。よくわからない。
わたしは小学校の頃からテレビで放映される「映画」や、MTVで見る「音楽」に夢中になって、大きな影響を受けて育ったので、「音楽映画」として映画の完成度よりも、自分にとって大きなトピックになった映画を挙げたいと思います。

ハード・デイズ・ナイト [DVD]ハイ・フィデリティ 特別版 [DVD]アメリカン・グラフィティ [DVD]ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD]スクール・オブ・ロック (字幕版)
オズの魔法使(初回限定生産) [DVD]メリーポピンズ スペシャル・エディション [DVD]ポスター アクリルフォトスタンド入り A4 ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール 光沢プリントジャージー・ボーイズ [DVD]ブルース・ブラザース [DVD]

1. ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!(監督:リチャード・レスター/1964年)
2. ハイ・フィデリティ(監督:スティーヴン・フリアーズ/2000年)
3. アメリカン・グラフィティ(監督:ジョージ・ルーカス/1973年)
4. ヘドヴィグ・アンド・アングリーインチ(監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル/2001年)
5. スクール・オブ・ロック(監督:リチャード・リンクレイター/2003年)
6. オズの魔法使(監督:ヴィクター・フレミング/1939年)
7. メリー・ポピンズ(監督:ロバート・スティーヴンソン、ハミルトン・S・ラスク/1964年)
8. ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール(監督:スチュアート・マードック/2014年)
9. ジャージー・ボーイズ(監督:クリント・イーストウッド/2014年)
10. ブルース・ブラザース(監督:ジョン・ランディス/1980年)

1位は、『ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!』。ビートルズは学生時代から聞いていましたが、映画は社会人になってから『ハード・デイズ・ナイト』としてリバイバル公開されてるのを見に行って、異常に興奮した思い出があります。ビートルズという世界最高のポップバンドが、映画でも素晴らしいものを残しているというところがすごいと思います。熱狂するファンをやりすごして、忙しなくステージにやってくると、バチっと演奏を決めてしまう恰好良さに痺れてしまう。それでいて展開されるのはひたすらゆるいコント。シリアスにもなれるバンドなのに、映画がコメディっていうのがなんともいいのです。グラフィカルに処理されるエンディングもセンスがよい。映画として特にメッセージがあるわけでもない。でも見るのが楽しくて、アルバムを聴くように、何度も見てしまう。「ポップアルバム」みたいな映画です。

2位は『ハイフィデリティ』。『スパイラルタップ』がバンドあるある映画なら、これは「リスナーあるある映画」としての金字塔だと思う。身の回りのことでもなんでも「ベスト」を作って順位つけしたり、音楽を聴きすぎるとなぜか自意識も大きくなってしまう。彼らを見てると自分を見ているようで苦笑いしてしまいます。

アメリカングラフティ』は、50年代のアメリカのカルチャーの憧れが詰まっています。映画を見た翌日にはサントラを買いに行き、ボウリングシャツとかいいよねと、日本の田舎の中学生をもかぶれさせてしまうマジックがある。当時はMTVで同時代の音楽ばかりを聞いていたわたしにポップスの歴史を遡る楽しみを促した映画で、これはたぶん大人になってはじめて見たのではそうならなかったはずで、若い時に見る映画の影響力を考えさせられます。

『メリーポピンズ』は、この映画の製作の裏側を描いた『ウォルトディズニーの約束』(これもいい映画)を見た後に、見直すとまた味わい深く見ることができて良かったです。

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』は今年公開された、ベル&セバスチャンのスチュアート・マードックの監督作品。映画ファンからの評価はまぁまぁといったところで、ポップスファンからは大きく支持されているような気がします。ここに出てくる主人公たちは「3分間のポップス」というものをある種、神聖なものとして、それに救われようとしたり、手を伸ばそうとしているように見える。「3分間のポップス」が自分にとっていかに大事なものか一度でも感じた事がある人なら、彼らの眩しさ、儚さを見て、胸が締め付けられたりするんじゃないかと思ったりします。

また映画の中で、登場人物が音楽の意味を見つけたり、音楽に救われたりするとなんだか嬉しい気持ちになるし、そういう映画を見るたびに、音楽への向かい方、折り合い方を見直させられるのです。そういう意味では、『君が生きた証』『はじまりのうた』『FRANK』『SRサイタマノラッパー』なんかも大事な音楽映画です。