レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「デトロイト」デトロイト暴動を描いたキャスリン・ビグロー監督の力作…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「デトロイト」(2017)です。

      

1967年7月23日、デトロイト市警が摘発した違法酒場にいた人達が、警官達に投石を始めた事に端を発した暴動が手が付けられない位に大きく発展した。そんな時、アルジェ・モーテルで黒人達の一人がスターター・ピストルで近くに集結していた州兵達目掛けて引き金を引いてしまった。州兵達は狙撃されたと勘違いして、彼らはアルジェ・モーテルを取り囲んでしまう。俗に言うアルジェ・モーテル事件はここに始まるのだった…

いや、凄い映画です。67年のデトロイト暴動は日本でも大きく報道されました。そこにこんな事件があったとは知りませんでした。

監督はあの「ゼロ・ダーク・サティー」のキャスリン・ビグロー、とても良く出来た社会派サスペンススリラー映画になっています。パートタイム警備員役ジョン・ボイエガ、サディスト且つレイシストのチンピラ警官役クラウスを演じるウィル・ポールターが素晴らしい。実際こんな奴、クラウスとは道端で会いたくありませんが、凄い演技力で観客を引き込みます。怖いくらいです。

特に、容疑者を容赦なく壁に向かって並べて小突き回す、殴る、蹴る時の臨場感と言ったら、怖いというより背過ぎが凍るほどの迫力で驚きます。米国って凄い国ですね、こんなレイシストが警官をやっているのですから、日本では考えられません。ラストの裁判も中々凄くて。米国には住みたくありませんね。米国には仕事で数回行っていますが、私は何か居心地が悪くて…

映画としては、あの「ゼロ・ダーク・サティー」より良く出来ている感じですが、私はサスペンスたっぷりの「ゼロ・ダーク…」の方が好きです。いや、とても驚きました。映画が投げかけている視点がしっかりしているので、興味を持たれたのであればぜひ鑑賞して頂きたいと思います。優れた映画なので。

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。             八点鐘

 

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「さらば荒野」オリバー・リード、ジーン・ハックマン、キャンディス・バーゲン共演の異色西部劇…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「さらば荒野」(1971)です。

テキサス州ルーガー郡の有力者ブラント(ジーン・ハックマン)はサディストだった。朝、妻メリッサ(キャンデイス・バーゲン)を玩び、その後機関車に乗って仲間と共に狩猟に出かけた。彼はハーフマイル(800m)先の獲物を狙うことが出来る特殊なスコープを装着したライフル銃を購入しご満悦だった。そんな時、妻メリッサが無法者コールダー(オリバー・リード)らに拉致されたと連絡が入った。ブラント達は新型ライフル銃の試し撃ちにちょうど良いと考え、仲間達とコールダー達を追跡するのだった…

マカロニタッチの復讐西部劇です。このプロットだとドロドロの復讐劇で面白そうに感じますが、如何せん監督ドン・メドフォードの演出がいま一つなので気合が掛からない映画になっています。ホンも単調で良くないし、私から見ると妻メリッサを演じるキンディス・バーゲンもこの手の作品としてミスキャストの様に思います。更に西部劇なのでもっとカラカラに乾いたユーモアーも欲しいところです。

同様の作品、例えば「真昼の死闘」「悪党に粛清を」「女ガンマン 皆殺しのメロディ」等と比較すると失望の一編です。サディストのジーン・ハックマンはイケますが、文盲の無法者コールダーは見ていて辛いですね。ジーン・ハックマンに負けないぐらいのワル振りを発揮してくれないとね。

この映画で、一番好きなシーンは、ハックマンの新型ライフルで狙撃された仲間の死体を利用して、ハックマン達を誘き出して隠れていたオリバー・リードが飛び出して二丁拳銃でハックマンの仲間を二人ほど血祭りにするシーンが中々パンチが効いてよかったぐらいで、後はお粗末の限りで…

 

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番外編「第一容疑者 姿なき犯人」テニスン警視を演じるヘレン・ミレンの素晴らしさ…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する作品は「第一容疑者 シリーズ6 姿なき殺人」(2004)です。

                               

ロンドン、高級アパート工事中の地下室で女性の変死体が発見される。それは外国女性で、サディスティックな拷問跡、首を絞められて殺された後運び込まれたようだった。その事件は、若手のやり手警部サイモンが当たるが、テニスン警視(ヘレン・ミレン)が横取りするような形で担当する人になった。死体を丹念に調査することで10年程前のボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争の影を感じ取るテニスン警視だった…

ヘレン・ミレンが素晴らしい、彼女の作品を始めて見たのはリンゼイ・アンダーソン監督「オー!ラッキーマン」だった。特に取り立てて言うほどではなかったが、何か光るものがあったように感じた。その後「カリギュラ」「エクスカリバー」「2010年」等癖のある準主役のような役が多かった彼女が、当てたテニスン警視役は役者冥利に尽きますね。今回も50代なかばで、上司からは有能だが扱いにくいテニスンをとても良く演じています。いや、とても巧みで表情豊かなミレンの顔を眺めているだけでもう満足。

その昔、映画は監督だとずっと信じていましたが、今では監督だけではなく、演技力のある役者、この場合は女優も監督以上に重要だと思うようになりました。そう感じさせてくれたのは彼女だった。

今回も、無残に殺害されたボスニア女性の為に上司の命令に逆らい、容疑者の妻からは罵倒されても、顔色変えずに淡々と捜査を進めるテニスン警視、うーん、美しいです。

監督は、あの話題のミュージカル大作「キャッツ」で大コケしたトム・フーバー、前半少し冗長ですが手堅く纏めています。又、サスペンススリラーでカムバックして下さい。待っています。

 

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「大本命」あのトニー・リチャードソン監督がディック・フランシス著「本命」を映画化…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「大本命」(1974)です。

騎手アラン(スコット・アンソニー)は、親友騎手ビルが愛馬アドミナルに乗り障害レースに出場するが、失踪中に落馬して死亡する。アランは事故なのかどうか調べ始める。そんな時、あの日本人から同様な事故が日本でも起こったことを聞く。彼はその日本人から日本での事故フィルムを見せてもらい、事故でないことを確信する。それは、馬を一時的に盲目状態にし血液中に痕跡を残さない薬物だった。そんな中アランも出場中に盲目状態になり、落馬して病院に担ぎ込まれるのだった…

あの"怒れる若者たち"グループに所属するトニー・リチャードソン監督作品です。当ブログでも紹介した「太陽の果てに青春を」の次の作品になります。この映画は重くなく、普通のサスペンススリラーです。リチャードソン監督なのでしっかりと纏めていますが、若干緩い作品になっています。一番の欠点は上映時間99分と短く、ラストの障害物レースが盛り上がらないこと、この辺りもう少し丁寧に描写してもらうと盛り上がるのですが。

例えば、クリミア戦争バラクラヴァの戦いを描いた「遥かなる戦場」では軽騎兵旅団突撃前の丁寧な描写が素晴らしかったのに。とは言うものの、私は結構楽しめました。と言うのは、若い頃のジュディ・デンチが登場し、主人公アランとベッドを共にするシーンもありますしね。うーん、美しいです。

このキャスティング、リチャードソン監督はやはり凄いの一言です。

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 申し訳ありませんが、スチール写真が殆どありません。上記サイトで見て下さい

 

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追記 いや、スチールが少なくて大変でした。どこかで見かけたら鑑賞して下さい。本当に楽しめます。日本競馬シーンも少し登場しますから。      八点鐘

 

 

「ローマに散る」社会派フランチェスコ・ロージ監督の渋い渋いポリティカルスリラー…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ローマに散る」(1976)です。

ローマで三名の司法官が狙撃されるという事件が起こった。ローマ警察ロガス警部(リノ・ヴァンチュラ)が捜査を担当することになった。彼はまず司法官らが担当した妻殺しの冤罪事件からクレスに目を付ける。が、彼は行方不明で写真も残されていない。そんな中更に二人の司法官が狙撃され、彼は捜査から外されてしまう。ロガスは、クレス事件最後の判事リケス最高裁長官に会いに行くのだが…

「シシリーの黒い霧」「総進撃」「黒い砂漠」「コーザ・ノストラ」等で名を上げたフランチェスコ・ロージ監督作です。私は呼んだことありませんが、レオナルド・シャーシャ原作「権力の朝」を映画化したものです。

まず、キャストが凄い作品です。ヴァンチュラのほかにジャルル・ヴァネル、アラン・キュニー、フェルナンド・レイ、マックス・フォン・シドー、ティナ・オーモン、レナート・サルヴァトーリ、マルセル・ボズフィと涙物のキャスティング、しっとりと演じる渋いリノ・ヴァンチュラ。ロージー監督は得意のドキュメンタリースタイルで、クーデター一歩手前の息苦しいほどの政治的停滞を巧く表現していると思います。

俗にいう"鉛の時代"、70年代のイタリアってこんなんだったんでしょう。私はイタリア史に詳しくないので知りませんが。

少し前に見た「ラ・カリファ」よりより生々しく、より重々しく描かれているのが良いと思います。やはり、スクリーンからこんな感じで訴えられないと、映画としては成功作とは言えませんね。

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「ゴジラXコング 新たなる帝国」トレーラーを見た時からある種の不安が…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ゴジラXコング 新たなる帝国」(2024)です。

ゴジラは強敵メカゴジラを粉砕し地上の怪獣王として君臨、キングコングも地下空洞に君臨していた。そんな中同族の幼獣スーコを見つけ、彼の後を追うと同族が新たな怪獣スカーキングが支配されているのを知る。地上でも怪獣スキュラ、ティアマットが暴れ始める。特務機関モナークに所属するアイリーン(レベッカ・ホール)も謎の電波信号を確認し、仲間たちと探査機ヒーヴで地下空洞へ向かうのだが…

ビッグバジェットの怪獣映画、大ヒットしているそうのなので敢えて言うことはありませんが、前作に比較してファンタジー色が強くなり、加えてキングコング種の幼獣が登場してきたことで、私はあの作品「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(1967)を思い出しました。この作品から、私は急速にゴジラに対して興味を失いました。

何だか人間に近くなり、あのオドロオドロシイ恐怖の塊、破壊神ゴジラは消滅してしまったと。まあ、他人様がやっている事なので、とやかく言っても始まりません。

映画はそう考えない人にとってはまあ良く出来ていると思います。迫力もあります。そして、変な愛嬌もあり払った入場料はペイできると思います。楽しめると思います。

私が考えるゴジラは前述した様に破壊神なので、それ以外はあまり興味が無くなり、私は、その後冒険サスペンススリラーの世界へ移ることになり、いまでもその世界にどっぷりと浸かっているのですが。

幸いにして、本家東宝映画「ゴジラ-1.0」は破壊神ゴジラに舞い戻っていますので、暫くはこちらを応援したいと思います。               八点鐘

 

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レベッカ・ホール 好い女優です このシリーズから外れる潮時かも

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番外編 先人たちの底力 知恵泉 早川雪洲(後編)を見て…

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日は本日放映されたNHK 先人たちの先人たちの底力 知恵泉 雪洲(後編)について思いつくことを書き連ねたいと思います。

 

 

TVでは、先の大戦前、早川雪洲と言う男優が聖林(ハリウッド)で大活躍したこと、特にセシル・Bデミル・デミル監督作品「チート」で評判になったこと、その後日系人排斥で欧州に渡り、そこでも評判となるが第二次世界大戦後日本に戻り、その後、デビッド・リーン監督「戦場にかける橋」で再び有名になったこと、妻鶴子との出会い、その後を巧く纏めていました。個人的にとても勉強になりました。

 

私は戦後生まれなので、早川雪洲主演作品を鑑賞したのはあの「戦場にかける橋」が最初で最後でした。映画評論家淀川長治とか双葉十三郎の映画評を時々読んでいたので「東京ジョー」とか「東京暗黒街 竹の家」と言う作品があることは知っていました。ただ、プリントの状態が良くないと思われるので鑑賞して見たいとは思いませんでした。

「戦場にかける橋」もそうですが、あくまでも私の思う処ですが、色々な演技が出来る方、例えば三國連太郎のようにどんな役でも出来るような方ではなく、一本調子の演技ですがそれが個性となって味のある演技が出来る方で三船敏郎もそうなんですが、それが癖になると、何か堪らなく良いんですね。

番組では「東京ジョー」のすこぶるプリントの状態が良い映像が映し出されたので、おっとこれは手に入れて見てみたいなと感じ入った次第です。最近は、レストア技術が進歩しており素晴らしい画質のクラシック映画が鑑賞できます。早川雪洲とハンフリー・ボガートが共演しており、先の大戦後の日本を舞台にしたノワールスリラー、こりゃ、堪りません。見逃す手のありませんね。

探して見ようかな…と感じ入った次第です。    八点鐘

 

 

 

追記 guch63先輩、有難うございます。色々と教えて頂いて。そうそう、トニー・リチャードソン監督作品「大本命」も手に入れましたので、暫くしたらアップします。

 

         B級テイストたっぷりのポスターで何か嬉しい…