渋治の書庫

渋治の書庫

メンテ中

絆創膏

そのささくれを唇に刺してなんとか生きています。



可哀想だとか、悲しいだとか思わなくてよいのです。



あなたがそんな顔をすればするほど、ああ、やっぱり絆創膏を貼っていれば良かったと思ってしまうのですから。



ああ、またそうやって頭のてっぺんで私をみようとしている。



私は大丈夫なのですから、まっすぐにみてください。



そして、なんにも考えちゃいない顔で口笛を吹いて下さい。



こんな人騒がせな私でも、きっとあなたの好きな人になりますから。

繊維


赤と灰色の繊維の隙間に人差し指を突っ込むと見える景色を見たくて今日も私はここにきた。

けれど、間もなく音をたてて飯を食らう奴が母のコートに腕を通す時間だろうから。

私と一滴とも交わらぬ血の持ち主がなぜそこにいるのかが未だわからないのだが、毛むくじゃらな四本足が良いなら良いのかなと。

壁にぶら下がった私の体はやがて夏の風にさらわれてしまうのだから、何を言っても始まらないし終わらない。

けれど、これだけは伝えて欲しい。

干し柿を食べたのは私ではないと。

雨の日の歌


 
  

 あ~めのひ
 あ~めのひ
 うれし~いね~
 あ~めのひ
 あ~めのひ
 た~のしいね~
 
 
赤い
長靴
履きたいね
みずたまり
ぱちゃ ぱちゃ
やりたいね
お気に入りの
赤い傘
さしたいね
雨粒
くるくる
飛ばしたいね



 あ~めのひ
 あ~めのひ
 うれし~いね~
 あ~めのひ
 あ~めのひ
 た~のしいね~
 
 
赤い傘
回して楽しいね
くるくる
回って
嬉しいね
てるてる坊主
作ったね
軒下に
二つつるしたね
雨の日に
笑ってるね
くるくる
くるくる
笑ってるね



 こどもには
 なりたくない
 けど
 こどもみたく
 なりたいね




雨の日
嫌いじゃない
みんなが
おうちにいるよで
うれしいね
晴れたら
みんな
おそとだね
みいちゃん
ひとりに
なっちゃうね



雨の日
雨の日
うれしいね
雨の日
雨の日
楽しいね



 あ~めのひ
 あ~めのひ
 うれし~いね~
 あ~めのひ
 あ~めのひ
 た~のしいね~
 
 
 あ~めのひ
 あ~めのひ
 あ~めのひ
 あ~めのひ
 
 
 らんらら~ら
 
 ら~らら~ら
 
 らんらら~らら~ 
 
 みいちゃん
 あしたも
 あそぼうね
 

キレイナモノ

せせらぐ川も

空の透ける青葉も

少し冷たい風も

くるくる回る花びらも

やわらかな笑みも

あたたかいベッドも

また明日の白い掌も

いつかも

そのうちも

大丈夫も

健康も

よくおやすみも

希望の扉も

期待のリボンも

夢のつゆも

あれも

これも

なにもかもいりません

そんなものがあるから

ここから出ていけないのです

そんな

あるようなないようなものがあるから

私という人間は

鉄格子に囲われた

錆び付いた窓の

あの小鳥を

見殺しにするしかなかったのですから

神様

神様

本当のことを教えてください

私はあの星の一つに

願いをかけてもよいのでしょうか

あの

キレイナモノに

手を伸ばしてもよいのでしょうか

ふつと

消えてなくなるのではないですか

そんなもの

あるわけないだろうと

また

羽をもぎ取られるのではないでしょうか

いつになったら

私はここから出られるのでしょうか

あの小鳥のように

見殺しにされてしまうのではないでしょうか

はたして

私に羽はあるのでしょうか

橙のなる頃には


橙のなる頃には

さとこは男勝りだから仕方ないですね。

そういって私の体をひとくくりにしてしまう人のことは小指の隙間に落とし込むようにしてきました。

ただ、あのキラキラしたものがあなたの好むものなら、あのキラキラしたものの反対側にいってやれという気持ちが沸くのは自然なことで、それはとやかく言われたくはないと思いました。

もう少し、あっち側の愛しい者たちになりたかったのですが、どうにも難しかったのです。

だから、どうか、もうこれ以上、あっちの者たちの側から物をいわないで下さい。

それでいて、たまには声などかけて下されば、少しだけみんなと馴染みますから。

橙のなる頃には、もう少し大人になっていますから。