ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

銀の一文字

 

          【虫回】でーす。


 かねてから狙っていた河原がありました。あ、メノウ拾いの方でね。少し水面を渡らねばなりませんが、あそこなら真っ赤なメノウががっぽがっぽ拾えるに違いない、信徒の皆さまを驚かせ悔しがらせようじゃないかぐへへへ。


 はいもちろん、こんなヨコシマな発想を久慈川の神さまがお許しになるはずはありません。そっと、葦の切り杭で私の長靴に穴を開けておいででした。気付かずに入った久慈川本流で、右足がどぼぼぼーっと水に浸かるハメに。長靴の中が水面と同じ高さまで清らかな久慈川の聖水で満たされました。川の中でひぎいいいと叫ぶ教祖の姿をご想像ください。神罰でございます。

 


 それでも歯を食いしばって手にしたのはこれだけ。大して拾える場所でもなかったんです。ああいいオチを付けてくださいました。もうここには来ません。

 


 車は離れた場所に停めてあります。ガボガボ言う右長靴を踏みしめながら、なんてひでえ一日なのかと愚痴りながら、とぼとぼと帰る道すがら。堤防の道はどこまでも悲しく遠く、まるでいいことが何一つなかった我が人生のようです。うううう。

 


 と、視界の端を何かがちろちろと動きました。え、と見返すとまたちろちろと、今度ははっきり見えました。チョウです。芽生えたばかりのチガヤが広がる草地の上を、こげ茶色の小さなチョウが飛んで、すぐ草間に消えます。あの色あの大きさ、もしや。


 昨年の春から夏にかけて、おさんぽの帰り道に那珂川沿いを通る時は必ず探しているものがありました。40 年前には間違いなくいたものです。小さな小さなセセリチョウです。ススキやチガヤといったありふれた草を食草として、どこにでもいる普通種でした。それがこの数十年の間に県指定の絶滅危惧Ⅱ類に成りあがってやがったんです。馴染みの者として一度とっちめてやらねば、なんて感覚でした。でも水戸ではとうとう見つけられなかった。少し寂しく感じました。それがこんな久慈川の河原で。どこだどこだ。

 


 いたあ。間違いありません、あいつです。大急ぎで車に取って帰り、長靴をサンダルに履き替え、最近いつでも積んである 90 ミリマクロ付きミラーレスを手に現場に戻ります。

 


 ギンイチモンジセセリ。本当に 40 年ぶりの再会です。環境省の分類でも準絶滅危惧。

 


 名の由来はもちろんこの白線。何だか目立つデザインに見えますが

 


 トラの模様と同様、草むらではこれが良い擬態なんです。2頭いるのわかりますか。

 


 小さくて不活発なこともあり、足元にいても気づかなかったりします。堤防のごく狭い範囲にそれなりの数が群れてました。こんな所で生き残ってたんだ。

 

      
 ここは特異な場所なのでしょうか、もう一つ珍しいものも。これはキバネツノトンボ。ウスバカゲロウに近いものです。

 


 生息地では群生するのでレッドデータにはなっていませんが、どこにでもいる虫ではありません。

 


 同じ環境が続く堤防の中でただ一か所、珍種がひっそりと息づく特異点がありました。何がどう作用するのかわかりませんが、こういう気難しい生き物ってあるんです。

 

 珍しいものを写真に収めて、さっきまでの悲しい気持ちを忘れました。うん、久慈川の神さまありがとう。しゃがみこんで撮っていたので、通りすがりのご婦人と連れの柴犬にすごく警戒されたけど。

 


 こんな奴に挨拶されて、そりゃあ嫌だったろうなあ。うひひひ、今日はいい日だ。

 


 帰宅したら老父 96 歳が転んでケガしていて、慌てて病院に連れて行きました。左の肋骨1本にヒビが入ってましたがそれよりも顔の左半分が腫れあがっていたのが見た目重症で、さらにお医者さんや受付のお姉さんが妙によそよそしかったのが気になりました。あとで気づきました、私が暴力を振るったと思われたのではないかと。…… ああ、手放しで何もない日ってないものでしょうか。

 

 

 

 

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道尽きてマンネンスギ

 

 「あの山にはマンネンスギがある」
 「マンネングサというコケのことか」
 「マンネンスギというシダのことだ」


……という、カタギの人には何が面白いんだかわからないやりとりがあったことをまず申し上げておきます。春なんです。


峠の向こうの


 有り余る時間が有難い。無沙汰にしたフィールドを再確認のため巡る、贅沢な春の務めに任じております。今回は県北の太平洋側、阿武隈高地の茨城側を特に多賀山地なんて言ったりする山の中。平地となだらかな山地の県で、道路総延長北海道に続き全国二位、ドライブが楽しいのはともかくこんなとこまで道が整備されているのが良いことなんだろうかとふと思う、そんな山中です。まず向かうのは道路から峠を一つ越えて至る温帯林、緩やかな谷を囲む静かな森です。最後に行ったのは 2008 年の春、一面にニリンソウが咲き、香ってました。歳月はあの森をどうしてしまったか、気になっていたんです。

 


 まずその峠道が荒れていました。登り口には外来のヒメリュウキンカが咲き、道に入れば伸び放題のモミジイチゴやコゴメウツギといったトゲ草に行く手を阻まれて痛い目を見ました。通る人がいないのが明白です。山菜取りの季節ですが、既に忘れ去られた土地になっているようです。登り続けて峠を越えても道は途切れがちでしたが

 


 タチツボスミレ、エイザンスミレ、マルバスミレ、アケボノスミレ。スミレ類が昔と変わらず浅い春をことほいでいました。

 


 木の幹がオレンジ色になるのは、流れ出た樹液に微生物が繁殖しているから。これも春になり木の活動が始まった証拠。ちなみに色の元はフサリウムというカビです。

 


 ゼンマイコシアブラが生え放題です。人気の山菜がなぜ。…… 実を言うとコシアブラは今でも県内大部分で採取・出荷禁止です。放射性セシウムを吸着するんです。同じ山菜のタラの芽も今年になって禁止された所があって、全然安全じゃない。加えて山に入る人は高齢化し、さらに最近の傾向で車から降りて短時間で行ける場所ばかりを探す安直化もあります。山菜取りの人は減り、深山で本当に人に会わなくなりました。ああ、昔は山中で出会うジジイどもは挨拶も返さず、オレの山菜盗るんじゃねえなんて目つきで睨んできたものですがそれももう懐かしい。

 


 でも、おかげで森の静謐さは増したような気がします。ニリンソウは地を覆い

 


 誰に見られずとも彼らなりの営みを繰り返していくのでしょう、これからも。

 


 ちなみによく見ると、ニリンソウあるところ必ずトリカブトがあります。この写真で見分けがつきますか。食用と猛毒が一緒に生える、悪意ですねうふふ。

 


 イノシシの「ぬた場」。こういうものは増えてるはずなので気を付けよう。

 


 ともあれ人界から隔てられて、春の森は清明の気に満ちておりました。


廃村から湿原へ


 次の場所は山中の集落から林道を遡ります。廃村を抜けて片道4キロ、道の尽きるところに湿原があるんです。ここは最後に訪れたのが 2013 年。その時点でもはや来る人もなく、荒廃が始まっていました。何を見ることになるのか、少し覚悟を決めて参ります。

 


 出発点の人里に色鮮やかなカキドオシ

 


 クヌギの古木に地衣類のアカサルオガセ。希少になりました。

 


 湿地にヒメザゼンソウ。低地の東海村にもありますが本来はこんな冷温帯の植物です。6月頃が花期なので、今年はぜひ再訪しようかと思います。

 


 同じ湿地に、これはキク科のオタカラコウ

 


 川沿いにトリカブト

 


 八重の水仙。園芸種です。そうここはかつて何軒かの農家がありました。建物は取り壊されましたが、それでも十数年前までは人家の跡がはっきりとわかりました。道があり、敷地があり、礎石があり、何より園芸種の樹々や草花が人を懐かしむように咲き、茂っておりました。今はもうやぶに埋もれ、この土地は自然の手に戻されつつあります。人の世が終わったのちの姿です。こういうものに心惹かれてしまうのが悪い癖だとは思います。

 


 廃村跡を過ぎると、徐々に道沿いの様相が変わってきます。これはミヤマエンレイソウ。もっと深山のものかと思っていたので驚かされました。…… 実はこの道、その四分の三くらいまでは車で行けるんです。でも入り口の集落に置いてきました。車で行っては出合いがありません。生き物だけでなく、途中山菜取りや渓流釣りの人をお見かけしました。みな昔と違って挨拶はしてくれるし標準語で会話できるまともな方々でした。歩けばそんな出合いがある。それにご存じのように、歩くのが苦ではありません。進めジャングルブーツ。

 


 ここでもスミレ類が花盛りでした。これはエイザンスミレ。このほんのり頬を赤らめるさまが美しい深窓の令嬢です。

 


 いわくありげな石に手を合わせると

 

    
 道がチェーンで塞がれて、ここからは営林署のエリアです。たぶんその営林署の人も今は滅多に来ないのでしょう、スギの葉が散り敷いてます。…… その昔、この先の湿原まで車で行けました。湿原の入り口には地元団体と営林署が連名で立てた案内看板があり、湿原には木道が整備されていました。しかし 2004 年に私が訪れたときには林道に支柱とチェーンが設置され、入ったらコワいぞという警告文が。入ってみると(ごめんなさい)、重機が置かれ林道の拡幅工事が中途で休止していました。少し事情が飲み込めました。営林署が決して環境保護に前向きではないことを知ってます。営林署の職員に暴言を吐かれた人がおりますし、かつては八溝山の貴重なダケカンバをナタで傷つけて枯らそうとした職員もおりました。所詮は国のお役人です。その 2004 年のときには湿原の看板も打ち壊されておりました。まあ、昔の話です。

 


 追憶を辿りつつも歩を進め、登り切ったあの峠の先、道は尽きます。

 


 湿原へのアプローチもわからなくなっていました。五感を働かせ、気を読んで、でも結局は散々歩き回った末にようやく木道の始まりを見つけました。

 


 荒れ放題、いや自然の手に委ねられつつあります。わかってます、自己責任で慎重に進みます。

 


 ちなみに 2013 年の様子。まだ木道はしっかりしていた。

 


 湿原そのものに大きな変化はないようです。茨城には珍しい高層湿原です。まだ冬の風景ですけど

 


 ノコギリソウが芽吹いていました。

 


 レンゲツツジの実がそちこちに。やはりこれは再訪して花を見なければ。

 

       
 この廃墟感がたまらん、なんてね。奥へ奥へと進み、木道が途絶えた林床に

 


 何か生えている。冒頭のやり取りを覚えてますか。あれがなければ目に留まらなかったところでした。

 

  
 マンネンスギです。県のレッドデータブック(2012)の「絶滅危惧Ⅱ類」。これでもヒカゲノカズラ類というれっきとしたシダ植物。古生代に大森林を作ったリンボクに連なる一族です。胞子葉がなければスギの実生と見分けがつかなかったんじゃないかな。

 


 胞子は出し切ってました。これもまた、人知れず世代を重ね生を紡いでいきます。3億年前の祖先からそうしてきたように。

 


 日本の人口が減ることに危惧を覚える人もいるようです。でも私にはヒトが介在しない自然が増えることが喜ばしい。これって悪いことなんだろうか。人の気が薄れつつある山中を往き、そんなことを考えていました。

 

 

 

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ぐるぐるらせんに宇宙が宿る / 高鳥達明テンペラ画展in常陽史料館

 


 常陽史料館です。地元芸術家を推して止まないこの美術館の今期の展示は

 

    
     高鳥達明 テンペラ画展 ~螺旋の導き~


   たかとりたつあき、とお読みします。「高」は正しくは「はしごだか」です。

 日立市在住の画家さんで、主に茨城県内で活動しておられます。はてしかし「テンペラ画」とは。


 テンペラ画は油彩画より古い絵画技法です。本来水や油に溶けない顔料を、乳化作用のあるタンパク質を用いて絵の具にします。具体的には卵を溶いたりニカワを煮込んだりして顔料を混ぜ込むという何だか画面がニオいそうなカビそうな技法ですが、もちろん防腐処理をします。特徴は何と言っても経年劣化に強いこと、変色しづらいこと。中世に描かれた有名作品、例えばアンジェリコ「受胎告知」、ボッティチェリ「春」「ヴィーナスの誕生」はみなテンペラ画。500 年経っても色褪せていません。そして現代でもテンペラ画が描かれるのは、油絵に勝り日本画とも違うその落ち着いた質感が好まれるからです。


 いかんまたウンチクが始まった。とにかく作品をご覧ください。

 


               「ふりそそぐ想い」


 

               「演奏会(部分)」

 

              「やさしい原野」


                「緑渡る調べ」

 

                「君に咲く夢」

  

 ここでひとつお断りを。じつは今回の写真、作品の色が正しく表現されていません。暖色系の照明で肉眼では黄みがかって見えて、それをカメラ任せで撮ると自動補正がかかって逆に白っぽく写るんです。本来の色がわからないままに、ホワイトバランスを調整しながら撮りました。テンペラ画の特性もあるのかもしれません。絵を写真にする難しさよ。ぜひとも現場で実物を見ていただきたいと思います。

 


              「幸せなひととき」


 で、皆さまもうお気づきのことと思います。高鳥先生の一貫したモチーフが「螺旋らせん」であることに。展覧会のタイトルにもありますね。もうほとんどの絵のどこかしらにぐるぐるがあるんです。そりゃあもうしつこいくらいに。


               「奏でる想い」         ブロンズ彫刻


 先生ったら二刀流で、立体も作ってしまいます。会場に4点置いてあります。さあ螺旋はどこ。…… はい楽器に渦巻き模様があるし、服のそでが絵の人物と同じ螺旋そで。


 「七重奏~自由なテンポで」


               「月夜の出会い」

 

             「奏でる音の その向こう」

 じつは半立体。腕とギターが画面から飛び出しています。


              「時の花(部分)」

 

 

 


 ユニバソロジ、という言葉があります。宇宙も地球も生物も共通の概念で考察しようとする学問、ぐらいに私は理解しています。そのひとつの表れとして、全宇宙を通じて類似の造形を持つものが存在すると言います。そう、高鳥先生のテーマ「螺旋」がまさにそれです。

 


 宇宙の構成要素である銀河はぐるぐると渦を巻く螺旋の一形態です。銀河衝突で楕円銀河になるまでその形を保ちます。そして我々の太陽はその銀河内を秒速 600 ㎞で公転し、地球はその太陽の周りを公転していて、もしその軌跡を描いたならまさに螺旋の形を描きながら銀河系内をぶっ飛んでいるんです。宇宙は螺旋に満ちている。そしてご存じのように我々地球生物の遺伝子も二重螺旋のDNA。さらに言うとそのDNAから作られるタンパク質もアミノ酸が螺旋を描いて並んでいきます。間違いなく宇宙と地球には共通した意匠があるんです。芸術家がそこにインスピレーションを得たとしても不思議ではありません。

 

 

    


 本当は会場の全作品をご紹介し詳説したかったけど、最近どうも長話が過ぎると反省しておりますのでこのあたりで。作品の半分しかお見せしてません。もちろんその魅力は十分にお伝えしたつもりです。それでもという読者さま、水戸くんだりまでお越しいただけるなら、会場で螺旋ぐるぐる鑑賞をしてみませんか。 5/25(土) まで開催してます。休館は日曜月曜と 5/3~6。ぜひこのぐるぐる体験を、あなたにも。

 

 

 

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春の慈雨に動く

 

     

 4月の第2週火曜日、茨城には珍しく大雨が降りました。特に県北部。おかげで久慈川水系が大増水。さあメノウが動きましたよ。その週末はまだ水が引かず何とも言えない状況でしたが、取りあえず現地報告をさせていただきます。いつも通り、信徒の皆さまと被る場所では極力採取は控えましたからご安心を。

 


玉川

 大増水したままでした。というか最近そちこちで水が滞留することが多くなって、拾える場所が限られます。ネットで場所を詳説する人もいてどの地点でも人と被ってしまいそう、ということで私はひたすらメノウ含有層探索です。これはまず人とカチ合うことはないので。基本的には採取しないはずが

 


 新しい場所を見つけちゃったんだよなあ。こりゃあサンプルを持ち帰らねば

 


 こんなのとか

 


 こんなのとか

 


 これはこむずかしく言うと「凝灰岩に熱水が貫入して玉髄に固化したそのままの姿」という…… まあ要するに生まれたままのメノウです。形ぐずぐず。でもこの白い晶洞は蛍光させると面白そうで

 


 ね。とにかく薄くてもろくて、川流れしたらすぐバラバラでしょう。聖地の河原に置くつもりですが、わかる人に拾ってほしいなあ。

 


 まさかメノウ拾いでアミガサタケを見つけるとは。

 


久慈川本流
 キツネしか通わぬ人跡未踏の河原に大ナタ一本で道をつけたのが去年の話。ここなら他の方と被らぬ、と安心していましたがどうやら誰かに見つかってしまったようです。

 


 同じ蛇の道を往く者どうし、恨みっこなしです。

 


 こちらも増水したままでしたが、今回は私が機先を制したようです。ざっと見ただけでこれだけ。うふふのふ。久慈川メノウ来てます、動いています。信徒の皆さま出番ですよ。タイミングは微妙、早まれば水位高く、遅れれば後の祭り。人気の場所は競争率高く、不人気の場所は採れる保証なし。先行されてもおこぼれあり。聖地の河原には何回かに分けてお供物を供給いたします。

 



 最後に沢歩き。雨の影響がだいぶ収まってました。ただ沢に転がっているメノウはぐだぐだのクラスター状のがほとんど。赤縞のメノウはまずありません。

 


 それでも私が沢に入るのは、大きな晶洞や仏頭状構造のがあるから。

 


 とはいえ複数の方が出入りする場所で、たいていは先を越されるのですけど…… 今回は私が早かったようです。この週末においでになった方、先行者の長靴の跡が不愉快だったでしょう、ごめんなさいね。様子を見るだけのつもりだったので、赤くて晶洞のあるこの1個と

 


 もう1個赤いの、この2個だけいただきました。


 さてどうしよう。確かに様子見だけの予定ではありましたが、いまひとつぱっとしません。期待値低いけど、初めての沢に入ってみよう。場所的にあまり他の方の目に留まらない所だと思ったので。


 …… なんて油断して入ったらオジさんびっくり。10 センチオーバーの仏頭状やら、たぶん沢では初めて見る赤縞メノウやら入れ食いになりました、そりゃあもう不安になるほどに。地球最後の日の前触れなんじゃなかろか。ああ前に玉川でもこんなことあったっけなあ。

 


 これがその赤縞メノウ。上の写真で手前右から2番目。これまでこんなのは玉川でしか見たことありませんでした。まるで「お口に合いますか」的に、このぱかっと開いた口を泥の中から見せつけてきました。

 


 透過光きれいだし

 


 これまで赤縞メノウは蛍光しないと思ってましたがこの通り。

 


 こちらは巨大晶洞付き。いつぞやの「羅生門」と名付けたものを思い出しました。

 


 微結晶で覆われたやつ。

 


 その微結晶がキラキラ光るやつ。

 


 カラフルなの。

 


 手のひら大のぶつぶつぶつ。

 


 室内撮影に応じてくれたものたち。オールスターズやらカラッパやら乗せてみました。

 

 お写真第2弾も準備中、請うご期待。

 

 

 

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天地あまねく

 

 空で紡がれた金と銀の糸が幾重にも大地を覆い、春の衣を織りあげます。なんてね。


さんぽの路上で見たもの

 


 園芸種の椿。爛熟し、落花し、妖艶に朽ちていきます。

 


 コスミレ

 


 ヒメスミレ

 


 ウィオラ・ソロリア/アメリカスミレサイシン 冷涼地を好む者なので、水戸の路傍では越夏できないんじゃないかな。

 


 見たこともない華やかなカタバミ。調べたらフヨウカタバミだって。

 


水戸市植物公園にて 「守衛」さんごめんなさいまた被りました。

 


 池のほとりでカメが並んで日向ぼっこ。見えます?

 


 2月に咲いたセツブンソウは果実になってました。どうやって授粉したんだろう。

 


 ネモフィラがへえもう咲くんだ、と見てたら春の毛玉ビロウドツリアブがついと現れて。

 

      
 今日の第一目標は温室にあり。入ってすぐ熱帯版のウマノスズクサに驚かされつつ

 


 ヒスイカズラ 家族がこれを見たいと言い出したのが来園目的でした。昨年はわざわざつくばまで見に行ったよなあ。この季節には良い客寄せになるのか、最近はどこの植物園でも導入しています。

 


 どこで見ても鮮烈な色彩と異形の造形に変わりはありません。

 


 ウツボカズラのケツ並び。

 


 赤いやつ。何だかわからないので聞かないでください。

 


 熱帯果樹温室に移動して、これはバナナの花。

 


 あの花がどこをどうしたらこの実になるんだろう。

 


 パイナップルはこんなナリでもう発酵とも腐敗ともつかない香りを強烈に放ってました。

 


 ユリノキの切り株。

 


 レストランの窓からカンアオイ

 


 ランチの食後にハーブティーが出されて、カップが良い趣味でした。

 


 湖畔のハナノキ

 


 ベンチの上に雄花びっしり。

 


 オキナグサ もう県内に野生はないのかなあ。

 


 ムスカリの栽培種の白いやつ。まあさすが植物園、お花いろいろでした。

 


里山ホットスポット 仮にそう呼んでます。今だこの地を表わす適切な言葉が浮かびません。昨年出会った不思議の空間、里山の路傍なのにルイヨウボタンやらピンクのイチリンソウやらカザグルマが生を紡いでおりました。無事かな。

 


 アマナ 昨年は花期に合わず気付きませんでした。ごく狭い範囲に群れてます。

 


 ジロボウエンゴサク 遠目にそちこちをピンクに染める者があり、てっきりホトケノザかと思ったら。

 


 他をはばかるように林縁にちょぼちょぼ生える印象の儚い草ですけど、この地ではごく短い一瞬だけ、輝く時を与えられているようです。

 


 エゾスナゴケ これも新緑って言うのでしょうか。鮮やかでした。

 


 ルイヨウボタン 草刈りにめげてません。ここは勤勉な農夫が念入りに仕事をする場所で、トリカブトなどは開花まで成長することを許されません。開花の早いこの種はまだ幸せです。貴重な分布だし、このまま世代を繋いでくれると嬉しいな。

 


 クサノオウ もうすぐ開花します。

 


 ハナニラ やぶの中から紫の光を放ってきました。

 


 ウグイスカグラ 花期が長いなあ。早いものは1月から咲いてました。

 


 モミジイチゴ 関東でキイチゴと言えばこれ。実が楽しみです。

 


 マルバコンロンソウ これも本来は森の者です。

 


 ヒカゲスミレ 本当に物陰が好きなんだなあ。まあ本人がいいなら。

 


 カタクリ 他の株はもう実を付けてます。でもこういう外れた奴がいることも多様性です。

 


水の森 スプリング・エフェメラルならここ。

 


 タチツボスミレ どっちを向いても咲いていて、つい雑な扱いをしてしまいます。

 


 ニリンソウ これも最近は湿潤な森ならどこにでも咲いてます。良い傾向です。

 


 饗宴。これが水の森の春。

 


 ニッコウネコノメ 林床を黄色く埋めてました。

 


 「接写映え」するのでつい。

 


 ミヤマキケマン エンゴサクの同類で、色はともかく形がそっくり。

 


 ミヤマカタバミ 森のカタバミ

 


 花の構造。道端の普通のカタバミとはだいぶ趣が違います。

 


 ヒイラギソウ 昨年見つけました。花はまだ見てません。

 


 フタバアオイ 葵の御紋、花はこれから。

 


 キクザキイチゲ 茨城のはほとんどが白。新潟で見た多彩な花色が懐かしく思えます。2年前の春、忘れ得ぬ旅になりました。

 


 トウゴクサバノオ 小さな小さなキンポウゲ科。心ある人にしか見えません。

 


 こーんな小さいんです。この仲間は地域ごとに種分化していて、全国それぞれの土地にご当地サバノオがあります。皆さんのご在所にはどんなサバノオがひそやかに咲いているのでしょう。

 


 花の精緻さにはため息が出ます。

 


 花神が振り撒いた春の精は漂い広がり浸透し、あまねく天地に行き渡りました。花芽を持つものたちがそれぞれの一族に定められた作法で応えていきます。日をずらしつつ、次々と、性急に。私はただ慌てふためくばかりです。

 

 

 

 

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廃墟になっても美しい

 

 不動産屋のTVCM、そうあの、あそこらの邪魔な木を伐って商業施設作って儲けましょうぜひっひっひと明治神宮に持ちかけたあの大手デベロッパーのCMですけど、広瀬すずがその不動産屋の社名を言って友達とキャハハハと笑い合うのが余りに非現実すぎてシュールですらあります。あのですね、そんなもんで若い娘さんが笑ってくれるんならこちとら苦労はしないんでございますよ。広瀬すずも高校を出たあたりから人相が悪くなった風に見えて、このCMでもう興味が無くなりました。


 いえ広瀬すずが問題なのではなく、この手のデベロッパーが次々とブチあげる東京の「再開発」が不愉快なのです。天災やら火災やら戦災やらでスクラップ&ビルドを繰り返してきたこの町は、過去を切り捨てることに抵抗がないのでしょう。ヨーロッパの古都ではいかに昔の景観を保持するかで知恵を絞るのに、東京ではまるで古いものが悪であるかのようです。おかげで東京駅や渋谷駅はいつも工事中で迷惑したし、毛利家の庭園を潰して六本木ヒルズが建つことになんの意味があったのだろう。個人的には神田神保町救世軍本営がありきたりなビルに建て替えられたのが残念でした。

 


 さて水戸で再開発と言えば水戸駅前のデパート跡地。長らく更地のままで、溜まった水にカルガモが遊ぶのんきな風景だったのが

 


 重機とダンプが次々と出入りして工事が始まりました。北口ど真ん前の一等地、傾斜地なこともあって、さあどんな個性的なビルが建つのかなー。事業主体は民間ですが、何と十億円も税金から補助が出ているそうです。県都の正面玄関を飾る建物ですよ、当然意匠を凝らした水戸の顔になるはずの……

 


 カステラマンション。意匠という概念をきっぱりと切り捨てた、市内の他のマンションと比べても群を抜く直線デザイン。後方に昔からあるホテルや周囲の商業ビルや、あらゆる方向からの視界を遮る20階建て、まるで衝立ついたてのように。で、思いました。これは廃墟になっても美しいだろうか。


 まことに皮肉なことですが、デベロッパーが東京の再開発で建てたビルは、廃墟になっても美しい。我こそは東京の顔という自負があるのでしょう、意匠を凝らしたデザインは、それを作ったひとの夢を時を越えて伝え続けます。……「東京幻想」というペンネームで廃墟化した東京の風景を描き続けているイラストレーターさんがいて、なかなかの人気です。都庁、スカイツリー、国立競技場、秋葉原。人とモノが日本中から集まる首都の、いつも賑わう建物や街区が朽ち果て、水に浸かり、植物に覆われる。これが美しい。東京は廃墟になっても美しいのです。どこからか怒られそうな画業ですが、何とそんな作品を自社の広告に使うデベロッパーまで現れました。まこと、シャレや美を理解する知性と余裕のある人がおられるものです。 ぜひ検索してみてください


 ナチスドイツで軍需相まで務めたヒトラーお抱えの建築家 アルベルト・シュペーア。この人が提唱したのが「廃墟になっても美しい建築」。廃墟価値理論と言いますが、ギリシャやローマのようにナチスの建築は何千年後に廃墟になっても往時の価値を伝えるものであるべきなのだと。ベルリンが廃墟に、なんて短絡的なお馬鹿さんなら激怒しそうなものですが、芸術家気質のヒトラーに大感激されて首都改造計画まで任されちゃいました。実現する前にドイツ終わっちゃいましたけど。


 で、私の嫌いな東京の再開発ですけれども、そこでデベロッパーが作った建物は、悔しいけどみな「壊れ映え」する美しさというか豪華さがあります。そう、建物は凝って豪華であるほど廃墟になった時に映えるんです。こんな所はさすが日本の首都ですねえ。ちなみに神話の豪華な建築は、たいてい神が人間の傲慢を罰する伏線です。

 


 そのころ水戸では、ということでおなじみ旧県庁舎。前世紀前半に流行した意匠です。神奈川県などは現在でも使ってます。茨城県庁が移転・新築されたのは、時の知事さんがデベロッパーからお金をたんまりいただいちゃったから。この知事さん、裁判の決着を見る前に病気で亡くなりました。まあそんな経緯もあって、この旧庁舎のだだっ広い敷地は再開発の標的になることもなく県民の憩いの場となり、庁舎は時に映画のロケに使われます。

 


 1月にも、早朝から窓にライトを当てて撮影してました。どんな映画かは小道具の名札を見てわかってしまいましたが、ご迷惑になるので黙っておきます。

 

            


 往時のままのレトロな内装はとても魅力的。

 


 そばにある水道塔。たしか東京郊外にも似たものがありましたね。水戸のこれは、私の子供時代は間違いなく廃墟でした。その価値が再評価されて本当に良かった。

 


 市が必死で整備した駅前の景観をぶち壊す赤ビル。どうなるんだろう。

 


 これも駅前のビル。私が高校生の頃は商業施設で、右の張り出しの部分は各階ごとに飲食店でした。ああ、あの賑わいはいずこへ。

 

  
 じつはひそかに、駅前で一番壊れ映えのする建て物だと狙いを付けてます、うふふ。

 

 
 水戸で千年後にも残っているものがあるとすればこれかなあ。

 

  
 チタニウム製の外壁は破壊するのも大変そうです。よくぞ造りました。

 


 駅前カッパーくん3連発。大好きなんだけどさすがに残らんだろう。銅像できないかな。銅だけに。

 


 こんな記事に取り上げてごめんなさい、水戸の私立高校の校舎です。壮麗な建て物ということで。ボロい公立校しか知らない私には夢のお城に見えます。

 


 さて大通りとバイパスが交わるこの一等地に、かつて三階建ての真っ黒の、いかにも威圧的なビルがあって駐車場には何台もの黒塗りアルファードが停まっておりました。そうです反社会さんの事務所です。でもお気の毒なことに、襲撃にあって幹部さんが命を落とし、警察から睨まれ、市民から退去運動を起こされ、建物ごと姿を消しました。土地は市の管理下です。不運というのは職業を選ばないんだなあ。

 


 おさんぽ道で見たもの。これは最近もご紹介した享楽街の料亭っぽいの。この「時の経過」的なのが良い風情です。

 


 同じ享楽街の裏手。昭和の文化、なんて言っても若い人にはわからないだろうなあ。

 


 これもピンク文化の名残り。美人は…… の宣伝文句が泣かせてくれます。

 

     
 閉店したソープ。これこそ廃墟。右下の入り口付近がドクロに見えたりして。それは置いても、青い部分のてっぺんには何の部屋があったんだろうとか、小さな張り出し窓から覗いたらどんな光景が繰り広げられていたんだろうとか、鑑賞のネタは尽きません。ちなみに私、この手のお店をただの一度も利用したことがないので想像するのみです。本当だよ。

 


 これはここでのご紹介は失礼になります。現役バリバリのお店です。ご覧くださいこの優美かつ豪華なお城を。水戸の大工町で一番有名なお店かも知れません。でも私は知ってます、ここが一時廃墟だったことを。バブル後に経営が悪化して閉店してしまったんです。そこを廃墟マニアに目を付けられて不法侵入を繰り返されました。当時の「廃墟探訪」なんて写真本に掲載されてました。そんなケチの付いた建て物を整備し、復活させた人がいるんです。すごい。偉い。きっと「プロジェクトX」なみのドラマがあったに違いありません。取材してお話を聞きたいところですが、まずこちらの意図が正しく伝わるとは思えないので自粛します。

 

           


 水戸の街を歩くとまあ様々に。

 


 ごく普通の家族が暮らす家でした。でもいつしか建設会社の保有になり、作業員を住まわせるために増築を繰り返して迷宮化し、やがてバブルとともに人が去り…… なんて来歴が読めちゃいました。

 


 廃墟ではありません。笠間の筑波海軍航空隊。軍隊の建物ならではのシンプルさがかえって新鮮です。並んで建てられた新棟が寸分違わぬデザインなのも好感です。わかってるひとがおられるんですね。

 


 号令台も

 


 質実剛健な内装も昔のまま。数々の映画やドラマの撮影に使われ続けてます。

 


 じっさいに今の日本で、千年後に残るものなんてあるんだろうか。そもそも人の世が続いているんだろうか。まあ、どうでも良いことではありますけど。

 


 更新が滞りがちでごめんなさい。4月は深夜アニメの新番組チェックで忙しくて。次回は花回の予定です。ご期待ください。

 

 

 

 

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鷲の巣山とイワウチワ

 


 さてこの写真、常陸太田市・鍋足山山頂にて。私と一緒に写っているのは県自然博物館の学芸員の息子さん。例によって調査のお手伝いをさせていただいておりますが、春休みとて小1の息子を同行させたいと。おお生物学英才教育。それもあってどこか面白い山はないか、できれば滝があって渓谷があって北向きの谷やら杉林やら露岩地やら石灰岩地や社寺林を含む、というご注文です。はいはいありますよ、最後の二つ以外を網羅した、私の薬籠中とっておきの場所が。それが読者の皆さまにはおなじみ鍋足山でございます。


 当初は沢を詰めて「静かの谷」まで行ければいいかな、ぐらいに思っておりましたがこの子、大人二人そっちのけで急峻な山道を駆け上がり天狗が積み上げたような大岩に登り水量の増した沢を飛び越え、持たせたサンプルびんにコケを詰めるわスケッチを始めるわ携帯顕微鏡を持ち出すわ、初めて訪れた人外魔境に大喜び。私も嬉しくなって先へ先へと案内するうちに、奥久慈独特の集塊岩が切り立った稜線に出てしまいました。さあ大冒険です。岩場に貼り付いてロープを伝うカニの横這いを越え、ナイフエッジの岩峰を進み、集塊岩の崖を這い上り、結局は鍋足山Ⅱ峰の難ルートを小1の身でこなして本峰の山頂に立ってしまいました。いやあびっくり。バンザイしてグーパンして称えてあげました。帰宅してからも興奮が収まらず、こんな山を制覇したんだと家人に誇っていたそうです。ああ嬉しい。できれば今日のことを一生覚えておいてくれたらいいなあ。


 もちろん小さな子を連れて行くには危険すぎる場所だったことを反省しています。でも子供好きなもので、喜んでもらえたことで私にもとても楽しい経験になりました。そして思ったのが、これからこういうことを仕事にしてもいいかなと。あ、お金は要りません。


 浪人というか遊び人生活も三年目に入りました。職無し肩書無し組織無しという身分が気楽でもう手放す気はありませんが、何か新しいことに取り組んでもいい頃かな、できれば自分が楽しいやつ。そうだ自然観察指導員の資格を取って、子供相手のボランティアなんて素敵じゃないか、なんて。


 前置きが長引きました。今日の記事は、そのためにはもっと県内を歩き修行を積まねばと、そう考えた上での新たな場所への挑戦記です。

 


                     トレイル案内の看板より 左方向が北

 JR水郡線上小川と袋田の間に、まるで「ト」の字の横棒のように川と道路と線路をさえぎる山稜があります。それが鷲の巣山わしのすやまの東稜。この垂直に切り立つ壁のおかげで久慈川と国道118号はU字型に大きく曲がり、水郡線に至ってはトンネルを掘ってこれを貫く羽目になってます。この稜線が茨城最恐の登山道です。茨城県が制定した奥久慈トレイルの一部で、道の両側が南北に切り落ちたナイフエッジ、途中にあるピークはトンネルの真上に当たっていて、北にも南にも久慈川が流れ列車は股の下をくぐって行くという超絶景が見られるのですがさてここは人をお連れしていい場所なのか。それを確かめに参ります。

 


 東稜への登山口は国道沿いの山造やまつくりという集落にありますが…… 困った。途中の道路には案内標識がありますが、肝心の登山口を示すそれが無く、しばし迷うことになりました。県が設置したものがあったはずですが、ひょっとして地元とモメ…… いや憶測でモノ言うのはやめよう。とにかく、何とか登山道に取りつきました。

 


 いきなりの急登、まあ地形を考えれば当然か。

 


 おおおマキノスミレ。標高は 160 メートルほどの場所で、この山地性スミレのすみかとしてはかなり低い。まだ葉の展開も済んでない若い姿です。

 


 10分も登れば稜線に出て傾斜は楽になります。でも両側が切れ落ちる道です。樹林があっても怖いです。

 


 高所恐怖的に怖いだけではなく、何と言うか、人通りが少ない山道特有の空気感があります。そもそも登山道が付けられたのがここ十数年ほどのことで、それ以前は地元の林業家か本当に経験値の高い人だけが自分の判断で歩く場所でした。

 

      
 前方にピークが見えてきましたがまあ目的は達しました。この道は人に紹介すべきではない。今日は別ルートでも登りたいのでここで引き返します。

 


 次の登り口は久慈川沿いを少し遡った下津原という集落、こちらは鷲の巣山の北稜を登るルートです。

 


 カウンターがありました。トレイルの利用者を集計するために県が設置したもので、やはりこちらがメインルートのようです。本日二度目の山登り、バカなのか私は。さあ行くぞ。

 

   
 先程のルートと違って、空気感がとても良い道です。これはイケるかな。

 


 標識がよく整備されてるのも大きな違いです。

 

         


 傾斜はみるみる増していきますが何とも心地良い登りです。その場の「気」でこれほど山の感触が変わるものかと驚きます。同じ山を別ルートで往くことで知り得ました。

 

     
 しかしここは奥久慈の岩峰、たちまち岩登りになりました。いえいえ短時間で次々と状況が変わるのはこの地域の山の魅力と言いきれます。岩登りも先日の鍋足山で鍛錬済み。ここも高所恐怖症の人でも何とかなるレベルかと思います。何より人を招くような気に満ちて、背を押し足を支えてくれる感があるのです。

 


 そして見上げる前方の露岩地が、一面に光り輝く場所に出ました。

 


 風に震えるさまや薄いピンクの色合いが、さながら地上に舞い降りた桜の花です。

 


 イワウチワ

 


 これまでも奥久慈男体山や御岩神社のものをご紹介してきましたが、こんな大群落を見るのは初めてです。中ほどまで進めばもう 360 度イワウチワ。登山道の中にまで咲いているのは通る人が少ないことと、盗掘者が来れない高みだから。取りあえずタイムを計っているので撮影は帰路にしましょう。あ、無事にここまで戻れるかな。

 

    
 さて折々に現れるイワウチワをやり過ごして、出ました本日最大の難所、切り落ちた断崖の中ほどに幅 10 センチほどの道があって、いやそれも途切れがちで、とにかくロープや木の根や岩カドを伝って斜面を渡っていく仕様です。単純な危険度で言うとさっきの東稜の比ではなく、お好きな人にはたまらないスリルを味わえる現場ですがこりゃダメだ、子供連れで来れる場所じゃなかった。しかし進もう。とにかく一度は山頂に立たねば。

 


 ぜーはーぜーはー、難所を越えて東稜との合流に出ました。

 

        
 山頂まであと 100 メートル。さぞやすさまじき岩峰で、壮大な絶景が拝めるであろう、うふふふふ。

 


 え。

 


 これが山頂でした。思ってたんとだいぶちゃうけど、鷲の巣山制覇です。まだ呼吸が乱れてますが、さっきのイワウチワが気になって仕方がないのですぐ下山にかかりました。

 


 イワウチワを踏まぬように気を付けながら一旦岩場の下まで降りて荷を置き、カメラ片手に這い登りながら夢中でシャッター切り始めます。

 

          
 今日という日はきっとこのためにあったんだろうなあ。前日も翌日も雨だったことを想うと、神の配剤という言葉が浮かびます。久慈川の神さま、ありがとうございます。

 

  
 イワウチワでおなか一杯になって下山しました。出会ったほかの花々もご紹介します。

 


 春の定番タチツボスミレ

 


 トウゴクミツバツツジは花芽を膨らませ

 


 ヤマエンゴサクの奇天烈な花

 


 沢に降りたらワサビがあった。天然なのか逸出なのかわかりません。花を見ればアブラナ科なのがよくわかります。葉を少しいただいてその辛みを楽しみました。

 


 鷲の巣山遠景。さっきはあのとんがったところにいたんだよなあ。

 


 大子の道の駅で昼食をとり、せっかくここまで来たので雨で増水した袋田の滝も見てきました。おおこりゃ入場料のモトが取れたぞ。

 


 恋人たちの聖地でおっさん自撮り。ううん寂しくなんかないの

 

 

 

 

↓ よろしければ。ページ右上のカテゴリー「御岩神社」もご覧くださいませ。

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