MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Foetus "Male"

Male

Male

  • アーティスト:Foetus
  • Big Cat
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 オーストラリア出身のJG Thirlwellによるアヴァンギャルド/インダストリアルプロジェクトのライブアルバム(1992年)。

 

 "Foetus In Excelsis Corruptus Deluxe" 名義(長いな)でリリースされた、ライブ盤としては4年ぶりの2作目。なんだか見覚えがあるようなないような絵柄のジャケが目を引き、裏ジャケには「全米で空前の大ヒット!! 筋肉、パワーのつき方がケタ違い!!」と日本語で書いてあるという謎。内容はパンク/ニューウェイブの聖地であるニューヨークのクラブ・CBGBにおける1990年の公演を収めたもの。前ライブ盤「Rife」と一部共通するNorman WestbergらSwansのメンバーや、NY産ノイズロックバンド・Cop Shoot Copなどで活動するDavid Ouimetもサンプラー/トロンボーン奏者としてバックバンドに名を連ねています。で、まぁ流石に筋肉のつき方がどうかは分からないけど音の方はもう文句なしに凄まじく、しゃがれ声で吼えたり吐き出すようなボーカルと濁り混じりの金属質なサウンドで、ただでさえポテンシャルの高い原曲の持つ破壊力を完膚なきまでに塗り替えていく様が圧巻。特にトロンボーンの音色が加わった成果は著しく、上質な雰囲気を醸す部分以外にも楽曲の混迷とした入り組み方を高めたりとノイズ的表現に一段階奥深さを付与。多くの楽曲は原曲より長く演奏され、じっくりと激しく、時に挑発的に唯一無二の世界観を描いていきます。その分2枚組15曲98分にまで広がった収録曲はアルバム初収録のEP曲やここでしか聴けないカバー曲、Wiseblood名義からも多めに選出されるなど、決して過去作からバランス良く~みたいな選曲ではないのだけど、それが逆に本作を一介のライブ盤以上の、90年代までのFoetusの到達点や真価を刻み込む作品として機能している印象すら抱きます。14分超に渡るラスト「Your Salvation」なんかもうただただ茫然。Foetus沼の深いところへ一歩も二歩も踏み込める逸品かと。

 

 

 FoetusとWisebloodの過去作品の紹介記事はこちらから。よろしければ合わせてご覧ください。

 

TVアニメ 「けいおん!」 15周年記念 【放課後ティータイム&キャラソンCDカタログ】

出典:けいおん!! - 作品情報 | 京都アニメーションホームページ

 

 なんと今年でTVアニメ「けいおん!」の放映開始から15年が経つようです。ええー!せいぜい10年前くらいかと思ってた…時が経つのは早い。

 そんなわけで、それをひとり勝手に記念し、放課後ティータイムとしてリリースされた主題歌と劇中歌、各登場キャラクターのイメージソングなど主要~関連楽曲が収録されたCD作品をカタログ的に一挙プチ紹介しようと思います。もの凄く長くなってしまったので、ティータイムのお供などに少しずつ読んでいただけると幸いです。前置きは手短にこんなところで。では、どうぞ!

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自分語りとFANTASTIC◇CIRCUS "TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】"

【Amazon.co.jp限定】TENSEISM BEST SINGLES [2001-2004] (通常盤) (メガジャケ付 ※別絵柄)

 

 90年代から00年代前半にかけて活動していた5人組ヴィジュアル系ロックバンド・FANATIC◇CRISISの結成30周年に合わせた "転生" の復活劇から約1年。音楽活動を続けていたメンバー3名による【FANTASTIC◇CIRCUS】としての本格的な活動が再び実現し、後期のシングル再録ベスト盤のリリースやライブイベントなどが実施されています。

 前期ベスト盤の感想ついでに、普段のブログの番外編みたいな感じで「とにかく思い入れが強いバンドで昔はこんなにも聴いていました」と鼻息を荒くしながらFANATIC◇CRISIS愛を炸裂させた身としては、今回の再録ベスト盤に触れた感想もまたつらつらと自己満足的に書き記しておこうと思います。よろしければお付き合い下さい。

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Devin Townsend Project "Epicloud"

Epicloud

Epicloud

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 カナダ出身のヘヴィメタルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算15作目、Devin Townsend Project名義での5作目(2012年)。

 

 4部作構想とそれを実現するためのバンドとして新たに立ち上げられた本プロジェクトも、4部作の完成とその再現ライブをもって完走。しかしその後も同じ名義での活動継続を宣言し、僅か1年というインターバルでリリースされたのが本作。いやほんと創作意欲凄すぎやしませんか。そして内容も、過去4作のどれにも似ていない…というよりも、それらの要素を掬い上げ、新たなテーマで束ねることでまた一味違う世界観を完成させたような趣。ゴスペルクワイアの幕開けが示すように、今作では11人からなる合唱隊をフィーチャー。ここぞという部分以外ではそこまで大目立ちはしないけど、多重のコーラスワークとキーボードによって分厚く固められたヘヴィサウンドを全体の肝としています。メタリックな攻撃性や刺々しさはやや抑え気味なミキシングだけど、決してバンド感が希薄なわけではなく、Devin Townsendの十八番的な──ちょっと初期の頃を彷彿とさせるような──メロディックなヘヴィナンバーや軽快なロックナンバーも存在し、その中には09年作「Addicted」ぶりに参加した元The GatheringのAnneke van Giersbergenとともに男女ダブルボーカルを披露するパートも。逆にアコギやシンセを重用したアンビエント的な静寂曲、00年作「Physicist」収録の「Kingdom」の再録を始めとしたプログレッシブ風の楽曲などもあり起伏豊かで、曲間をシームレスに繋ぎ流れるように展開していきます。大仰でありながらキャッチーさに意識が配られ、特段長い楽曲もなく聴きやすくまとまっており、その完成度は流石の一言。壮大な "Epic" 、宇宙スケールの "Cloud" 、ヘヴィな "Loud" といった意味を重ねた造語タイトルも実に的を射た充実の一作。

 

 

 今回の記事に合わせ、Devin Townsendが結成し2007年まで活動していたエクストリームメタルバンド・Strapping Young Ladの3作目の紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

Stone Sour "Audio Secrecy"

Audio Secrecy + DVD

Audio Secrecy + DVD

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 SlipknotのCorey TaylorとJim Rootを擁するオルタナティブメタル/ハードロックバンドの3rdアルバム(2010年)。

 

 Slipknotの休止と入れ替わり活動再開、前作と同じメンバー・同じプロデューサー、約4年ぶり…と、条件で言えば前作と全く同じ形。しかしそれでも各人がしっかりと音楽活動を通じた成長を続け、前作の成功やその後の精力的なツアー/フェスの開催・参加など、Stone Sourとしても着実に階段を駆け上がっており、その成果が注がれた一作として非常に良質な出来かなと。Slipknotでのマスクを外した端正なCorey Taylorの素顔のように(えっ)端正なポストグランジ/ハードロックを今作でも貫いており、決して目新しいことはしていないとはいえ、彼らの中での表現として、新たな扉をいくつも開いて、より広く聴き手に浸透する楽曲やサウンドを達成しています。クリーンギターが活躍する「Say You'll Haunt Me」とか夕日が反射する水平線を思わせるようなスケールのアメリカンロックバラード「Hesitate」なんかは「うおお!」って思ったし、Slipknotをチラ見せするような激しめの曲も、ご愛敬というか余裕の中でやっている感じで、アコースティックバラードも大曲的な展開を見せつけるラスト曲もしっかり手の内、確信に満ち溢れていますね。Corey Taylorの歌とサウンドが乖離せず溶け合うように手を取り、一体感を増して(激しさとか速さという意味ではない)勢いにも乗っているのがありありと伝わるというか。流石でした。なお、本作は2010年初めに急逝したSlipknotのベーシスト・Paul Grayに捧げたアルバムでもあるとのこと。

 

 

 というわけで、聴いてみました彼らの3作目。恐らく初聴きだったと思うけど、いやー、とても良かった。今さらながらStone Sourに目覚めちゃったというか。これ以降の彼らの作品もゆっくりと追いかけてみようと思います。

 今回の更新に合わせ、Slipknotの4作目の紹介記事の文章を少し見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。なんかStone Sourと交互に聴いたりすると印象も変わるというか、より楽しめる気も?