No. 35 Alone / Marshmello

Alone / Marshmello (2016)
https://www.youtube.com/watch?v=YnwsMEabmSo

最近のEDMの流れを追っていると、従来の「みんなで一緒にPartyしようぜ」的なノリが、
徐々に「個々の感情を刺激する」といった方向に、変わりつつあるように感じます。

元々、EDMにはPLUR(Positive, Love, Unite, Respect)という重要な概念があるのですが、
「多様性」という言葉に現実味が無くなってきた昨今では、あまりリアリティを感じられなくなってきているのかもしれません。

昨年、Top 100 DJsで最大の上げ幅でチャートインしたMarshmelloも、
そんな時代を象徴するDJ/プロデューサーの一人です。

Skrillexの流れを引き継ぐ、強靭なBass系サウンドと、キャンディのようなカラフルでポップな音色、
そしてマシュマロの格好をした本人の可愛らしいキャラクターが彼の魅力です。
しかし、彼の本当の魅力は、どこか寂しさを感じさせるエモーショナルなメロディにあります。

彼が昨年生み出したアンセムの一つ、"Alone"ではこんなフレーズが断片的な歌声と共に繰り返されます。

"I'm so alone. Nothing feel like home.
I'm so alone. Trying to find my way back home to you."
(ひどく寂しい気分だ。自宅に篭っていたいよ。凄く寂しいよ。どうにか君のところに戻れないか考えてる。)

パリピの代名詞とも言えたEDMもまた、変化の中にあるのではないでしょうか。

No.34 勝手にしやがれ / 沢田研二

勝手にしやがれ / 沢田研二 (2007年)
https://www.youtube.com/watch?v=VZbADPnLklI

先週金曜日、8月度のカラオケ同好会が開催されました。
前回は新卒の中でただ一人参加ということで、激しく緊張していましたが、
二回目となる今回はそういった緊張感も薄れ、ある程度はチャレンジングな選曲にも挑めるようになりました。

一曲目こそ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ループ&ループ」という、
これ以上ないほど置きに行った選曲でしたが、
途中で思い切って、憧れの存在であるジュリーこと沢田研二の超大ヒット曲である「勝手にしやがれ」を投入。

先輩方からは「気をつかわなくていい」と言われてしまいましたが、
「気をつかったからジュリー」なのではなく、「歌いたいからジュリー」なのです。

何百回聴いても一切の無駄なく、最大限のインパクトを放つイントロ。
最初から最後までキラーフレーズしか出てこない歌詞。
そして何より、声色から手のポジション、そして帽子の角度と目線に至るまで寸分の狂いもなく放たれる色気。

今の音楽シーンも大好きですが、
「別にふざけて困らせたわけじゃない 愛というのに照れてただけだよ 」なんてフレーズを歌って様になる人が
一体何人いるだろうかとは思ったりしてしまいます。

今でも現役で活動を続ける彼に敬意を払い、全力で丁寧に歌い上げました。
ふと先輩の姿に目を向けると、先輩方が腕をヒラヒラと動かしており、
とても嬉しい気持ちになったのでした。

終了後、先輩からは「来年の運動会でのパフォーマンスは沢田研二Suchmosで行こう」と伝えられたので、
来年のステージではジュリーが出て来るかもしれません。

No.33 Atlantis to Interzone / Klaxons

Atlantis to Interzone / Klaxons (2007年)
https://www.youtube.com/watch?v=XX3w_PlGReU

クラブ・カルチャーというのは、基本的にはDJが60分なり90分なり180分なりのロングセットを組んでプレイして、
その長時間の起伏が生み出すグルーヴを楽しむことが核です。
グルーヴを生み出すために、曲と曲をシームレスに繋げるわけです。

昔、テクノの大御所であるDerrick Mayのセットを見たことがあるのですが、
そこで披露されたのは4時間にも及ぶロングセット。それでも一切ダレることなく、3時間が経過した頃には
観客が奇声を出す程度にはフロアが最高潮になっておりました。

とはいえ、そういったテクノのロングセットに対して、
「もういい加減に似たような曲のロングセットは飽きた!!もっと刺激が欲しい!!!」
と考える人がいても不思議ではありません。

ダンス・ミュージックの歴史を辿ると、定期的にそういったムーブメントが発生しています。
(レイヴ、ビッグ・ビート、グライム、ダブステップ、EDM、...)
刺激を求める→飽きる→新たな刺激を求める→また飽きるのループで今に至るわけです。

2000年代後半にイギリスで生まれた「ニューレイヴ」というムーブメントもその一つです。
この時期の音楽は評論家からはほぼ抹殺されていますが、個人的には深く思い入れのあるムーブメントです。

「ニューレイヴ」を一言で言うと、
「もういっそロックでもいい。演奏が下手でもいいし、ブツ切りでもいい。もっとブッ飛びたい!!!!」
というヤケクソ感です。

旧来のダンス・ミュージックにかなり無理やりロックの凶暴性をブチ込んだそのサウンドには、
実はパンクに通ずるものがあるような気がしています。やはりSex PistolsThe Clashの国なので。

当時のUKのクラブでは、DJがひたすらニューレイヴ系の曲を流し倒し、
蛍光カラーの衣装を身に纏った人々が踊り倒すという最高にクレイジーな光景が広がっていたそうです。
そんな時代を象徴するロックバンドがKlaxons
彼らの代表曲である"Atlantis to Interzone"のPVを見れば、「ニューレイヴ」が一発で分かります。

ちなみにKlaxonsは当然のように10年代前半に解散しております。

No.32 Fade / Kanye West

Fade / Kanye West (2016年)
https://www.youtube.com/watch?v=IxGvm6btP1A

何かモノをつくり、人々に提供する際、必ず立ちはだかるのが、
「発表したものを直すことが出来ない」という壁です。

どんなに作り込んでも、いざ作品を発表してみると訪れる、
「あそこはああしておけば良かった」という後悔。

「あの作品は出さなければ良かった」と語るアーティストも少なくありません。

しかし、それは音楽や映画や小説といった芸術が、
CDやフィルムや本になるからこそ生まれる疑問であるとも言えます。

インターネットが普及し、あらゆる芸術がクラウド上のデータとして扱われる時代にとって、
そういった悩みは薄れつつあるとも言えるでしょう。

2016年に発表された、ヒップホップ界最大のスターの一人であるKanye Westの"The Life of Pablo"は、
まさにそんな「芸術がクラウド上にある時代」を象徴する作品でした。

本作品は、発表から1年以上が経過した今でも、ストリーミング・サービス上でしか聴くことが出来ません。
そして、この作品が発表されてからの間に数回、この作品は"変化"しています。

まずミックス/マスタリングが変わり、次に楽曲の構成が変わり、終いには新曲が追加されました。
いわば、アルバムがソフトウェアのようにアップデートされていったのです。

実はこの作品が発表された当時、少しの間だけダウンロード販売が行われていており、僕はその音源を購入しました。
今ではその音源はver.1.0と言えるでしょう。事実、現在配信されている作品の方がクオリティは高いのです。

ダウンロード音源を買った僕は素直にがっかりしましたが、
これもまたストリーミング時代の音楽の在り方ではないでしょうか。

No. 31 ラブリー / 小沢健二

ラブリー / 小沢健二 (1994年)
https://www.youtube.com/watch?v=HDKCaTaJkB4

僕くらいの世代の音楽好きにとって、「小沢健二」というのは非常に難しい存在です。

小沢健二」には2つの側面があります。

1. 「オリーブ少女」的な、90年代を代表するポップ・スターとしての「小沢健二
2. "Eclectic"などが象徴する、ブラック・ミュージックに正面から挑む、生粋の音楽職人としての「小沢健二

彼が終了直前の「笑っていいとも!」に出演するまで一切メディア露出が無かったこともあり、
僕にとっての「小沢健二」は後者のイメージでした。
FNS歌謡祭の過去の映像で、小沢健二小泉今日子が「ラブリー」をデュエットしている様子を見た時は、
「え、こんなことしてたの!?」と驚いたものです。

一方で、倖田來未が「ラブリー」を現代仕様にアレンジしてカバーした際には大炎上となり、
カバーされるほどの普遍性と、往年のファンの愛情を目の当たりにして、やはり驚きました。

そんな状況の裏で、数年ほど前から小沢健二はひっそりと復活していました。
ライブを行い、その内容と新曲の素晴らしさがSNS上で飛び交っていました。

このような、「過去形」と「現在進行系」のハイブリッドの中で、
ほとんど「過去形」を知らない僕はとても困惑します。

小沢健二コーネリアスがそれぞれ発表した久しぶりの新譜はとても素晴らしいものでした。
しかし、それら以上に話題を集めるのは、彼らが揃って出演する明日のフジロックだったりします。

どれほど新譜に喜んでも、過去の彼らを味わっていない自分はどこか遠くにいる気がする。
そんな事をふと思いながら、カラオケで「LIFE IS COMIN' BACK!」と歌うのです。

同期とのカラオケでは毎回「今夜はブギー・バック」が歌われます。
誰もリアルタイムで経験していないのに、この曲がアンセムになっている。
それもまた彼の凄さを表しているのかもしれません。

No. 30 Slide / Calvin Harris

Slide / Calvin Harris (2017年)
https://www.youtube.com/watch?v=8Ee4QjCEHHc

先日の運動会の冬組打ち上げにて、僕は2位の喜びに浸りながら先輩方と約1時間に渡ってEDMの話をしていました。

「チャラ箱は好きな音楽が流れているし、異性と仲良くなれるから良い」という話で盛り上がりながら、
先週末に同期とクラブに足を運んだ時の自分の姿を思い出し切なくなりました。

僕の話はさておき、その中で話題に上がったのが今年のSUMMER SONIC
Axwell IngrossoやAbove & Beyondといった大物も見逃せませんが、
何と言っても注目なのは初日のヘッドライナーを務めるCalvin Harrisです。

EDMのポップ侵攻のきっかけとなった"We Found Love"や、夏になると毎日クラブで鳴り響く"Summer"など、
彼の生み出す楽曲は常にEDMシーンを更新してきたといっても過言ではありません。

時代の先を読むプロデューサーとしての感性と、純粋なDTMオタクとしての作曲能力を併せ持つ彼は、
移ろいやすいシーンの中で常にトップを走り続けてきました。

彼が発表した最新作「Funk Wav Bounces Vol. 1」は、所謂EDMのイメージを正面から裏切る、
海辺のドライブなどで聴くのが最高にフィットする、穏やかなダンス・ポップを楽しめる一枚です。

その中でも特に格別なのが一曲目を飾る"Slide"。
今や時代の声となったFrank Oceanと、トラップ全盛のヒップホップ・シーンの先頭に立つMigosの客演が光ります。
SuchmosやAwesome City Clubといったお洒落なポップスが好きな方にも是非聴いてほしい一曲です。

No. 29 修正主義者 / アーバンギャルド

修正主義者 / アーバンギャルド (2009年)
https://www.youtube.com/watch?v=suK7u5F3IqA

昨晩、TBS系列「水曜日のダウンタウン」を見ていた時に
バックに流れているBGMに猛烈な聞き覚えを感じ、記憶を遡ったところ、
アーバンギャルドの「スカート革命」であることに気づきました。
あの番組は、過去にもエレファントカシマシバージョンの「翳りゆく部屋」を流したりと、
自分に近い音楽の趣味を感じます。(オープニングもPUNPEEですね!)

アーバンギャルドは、80年代にアンダーグラウンドを席巻していた「ナゴムレコード」やニューウェーブのカルチャーに
多大なる影響を受けた、ゼロ年代のポップ・バンドです。

当時流行していた「ナゴムギャル」といった人々の様子を見ていると、今で言うメンヘラ/ゴシックといった文化に
通ずるものを感じるのですが、アーバンギャルドもまさにそんな世界観を描くミュージシャンの一組です。

今でこそミオヤマザキやさめざめ、大森靖子など「メンヘラ」を大きな軸としているミュージシャンは数多く存在しますが、
当時はアーバンギャルドくらいしか「メンヘラの世界観」を描いていなかったように思います。

8ビットサウンド×ヘビメタ風ギターリフ×超ガーリーな女性ボーカル×落ち着きのない男性ボーカルと、
彼らのサウンドはあまりにも濃いのですが、だからこそ強烈な中毒性を誇っています。

彼らの初期の代表曲が「修正主義者」です。
耳を突き刺す8-BITの不穏なシンセリフと、踊れるギリギリの支離滅裂なダンスビート。
そしてサビで繰り返される「自己批判しろ」という言葉。
1mmも踊らせる気のないダンス・チューンですが、不思議とクセになります。