私の百合歴書

 この前の百合挟男騒動の際に「百合史(百合ジャンル史)というものがあまり語られていない」という指摘をして自らの体験を基に百合史を語ってる方が居ました。言われてみれば確かにその通りですし、触発されてその方が語られていないことを中心に自分もいくつかの百合史ツイートを投下してみました。

 今回はそのツイート群を基にもう少し自分に寄せて自分の百合史的な話を書いてみたいと思います。

原初の百合の記憶

 私が何故百合というジャンルを好きになったのか。

 正直な話、私自身何が切っ掛けなのかとんと覚えておりません。実際には何かしらの作品や出来事の影響があったんでしょうが、私の記憶には全くないまま気付いたときには女性同士の関係性というものに惹かれている自分があったのです。

 今思い出せる最古の百合的な記憶は幼い頃戦隊物のピンクと女性が仲良くしたりどちらかが敵に捕まったらもう一方が助けに行くというような空想をしていたこと。

 Twitterで何回か言及した覚えがあるこれ、今よく考えてみると戦隊物のピンクそのものではなく戦隊物のピンクのような強さを持った女性という脳内オリジナルキャラだった可能性が高いです。具体的な戦隊の名前もキャラ名もどうしても思い出せないですし。*1

百合の揺籃期

 おそらく子供時代に色んな作品で同じような空想をしていたと思われますが、具体的なキャラの名前を思い出せるのは叶和貴子(正確に書くならば『宇宙刑事ギャバン』のミミーなのだけれども何故かこう書きたくなる)と『天空戦記シュラト』の那羅王レンゲの二人。

 前者はともかくレンゲに関してはアニメでの扱いに納得出来ずに彼女を幸せにする為に脳内オリジナル女性キャラと絡ませて仲良くさせていた記憶がうっすらあるんですよね……*2

 今思うにこれが間違いなく私の百合観の一つの原点ではあるんですけど、当時子供で当然『セーラー服 百合族*3の存在を知ることもなくオタクですらなかった私は百合的なものを好きでいる自分というものを認識することすらありませんでした。

百合の夜明け前

 とはいえ私が生まれ育った地域は割りとアニメの放送が多いところでしたし、それに当時はまだ普通にゴールデンタイムにアニメが放映されていた時代でしたから、家にいる方が好きな性格もあって子供時代はかなりの数のアニメを見て過ごしていた記憶はあるんですよ。この辺はオタクになる下地だったと言えると思うんですけど、そういう状況でしかも『美少女戦士セーラームーン』ほぼ直撃世代にもかかわらずセラムンアニメを見た記憶が全くないんですよねえ。*4 今思うと物凄くもったいないことしてるなあと。子供時代ほとんど男性向け作品ばかり消費していた中でアニメに関しては『きんぎょ注意報!』『姫ちゃんのリボン』『赤ずきんチャチャ』『ナースエンジェルりりかSOS』辺りはしっかり見てた記憶があるからなおさらねえ……

 そういう状況でしたから私が百合というジャンルを認識して自分の好きなものを自覚する様になるのはもう少し後、子供を止めて一人暮らしを始めるようになってからになります。

 ちなみにその間にアニメ『Xメン』から小学館プロダクション(現 小学館集英社プロダクション)の邦訳本を経て原書に手を出すようになる程アメコミにずっぽりはまってオタクとしての第一歩を歩み出していたり……あ、同時期にファンタジー・伝奇系の面白い小説を書く作家ということで追いかけようとしていた栗本薫の作品だからとただの時代小説と思って予備知識なしで『元禄無頼』を読んで打ちのめされた挙句ちゃんと理解した上で『終わりのないラブソング』を購入した事もあったわ……つまり私は百合ジャンルを認識する前に所謂BLジャンルを認識して作品まで購入していたということに……

百合の目覚め

 そんなこんなで始めた一人暮らし、基本オタク活動資金はアメコミに投入していたのでオタク活動といっても暇あればTVアニメを見るくらいという実家に居たときとあまり変わらない感じでした。が。

 そんな中で出会ったのがTVアニメ版『バトルアスリーテス 大運動会』。頂点を目指し切磋琢磨競い合う女性アスリート達の姿が描かれたスポ根スペースオペラのこの作品で私は女性が女性に恋愛的な好意を向けるということを知り、それに加えて女性間の友情や嫉妬の感情もまた恋愛的なものと同じくらい心を揺さぶるものだということを知りました。言うなればこの作品でようやく私は「百合」に目覚めることが出来た、「百合的なもの」が好きだと自覚することが出来たのです。

百合(と)ネットワーク

 最も私が「百合」という言葉を知るのはもう少しあとだったりするんですけどね。

 「大運動会」放映後数年の間はリアルで「女性同士の恋愛・関係性」の情報にリーチ出来る媒体って一般的になかったですし、自分の周りにもそう言う情報を持ってる人はいませんでしたから、自分の好きなものが何かというのは自覚出来たけれどもそこからさらに広げて深めていくことが出来なかったんです。当然「百合」という言葉自体知る機会もありませんでした。

 そこからどうやって「百合」という言葉に辿り着いて百合ジャンルへと身を投じることになったのか。

 切っ掛けはインターネットでした。

 丁度「大運動会」が放映されたすぐあとくらいに初めてのパソコンを買ってネットに接続は接続はしてたんです。ただ基本的にアメコミの情報入手やアメコミファン同士の交流に使っていて、 「百合」関係の情報にはリーチ出来ていなかった。

 アメコミの場合当時ネット上にポータル的な場所があり、*5 そこから派生する形で色んな人が掲示板や自前のアメコミサイトを作っていましたから*6、ネット上でアメコミ情報やアメコミファンコミュニティにかなりリーチしやすい状況がありました。一方で百合の場合はネット上のポータル的なものすらなかった。*7

 そうした状況が変わるのが2000年のこと。

RISE OF NAMAMONO

 2000年。それはとある出来事によって2ちゃんねる知名度が飛躍的に上がった年です。例に漏れず私もその年に2ちゃんねるに初めて足を踏み入れました。辿り着いた先は当時絶頂期にあったこんにちわ計画の朝ガールの掲示板。*8 時期的には先日あった国家的大イベントに参加して見事討ち死にした人の卒業の余韻がまだそこかしこにあった頃でしょうか。

 とあるTV番組のオーディション企画から立ち上がった朝ガールはこの頃までその番組内で継続して彼女たちの活動する姿が放映されていたこともあり、彼女たちの性格やメンバー間の関係性といったものが他のグループに比べるとより広く知られていた所があり(それこそネガティブな要素まで含めて)、受け取り方もどちらかというと二次元キャラに近い感じがありました。その影響もあってか、私が朝ガール板に辿り着いたときには既に朝ガールメンバーのキャラ的消費、つまるところ朝ガールのナマモノSS投稿が普通に行われていた状態があったんです。

 中にはヘテロ夢小説的なものもありましたが、女性だけのグループのメンバー間の話がメインなのもあり、所謂「ナマモノ百合」的なものの方が目に付くような状態だった記憶があります。時期的にマリみての勢いが増す中で教育係というスール的な制度での関係性があった前述の討ち死にした人と金髪のちょっと生意気入ってる感じに見える後輩のカップリングに卒業による別れという大イベントが発生した直後だったというのも大きかったのかな。さらに後を引き継ぐような形で当時加入したばかりの新メンバーの中にボーイッシュとガーリッシュのコンビという百合的に分りやすいカップリングが生まれつつあったのも大きかったでしょうか。勿論朝ガールナマモノ百合の代表的なカップリングであるこの2つの他にも本当に様々なカプの話がありました(SSに昇華する前のカプ雑談みたいなものも含めて)。2ちゃんねるという巨大掲示板の中でもトップクラスの問題児で荒れやすくスレの数も多く消費スピードも格段に速かった朝ガール板の中で「ナマモノ百合」的なものはささやかで密やかでありましたが確実に根付いていたと言えると思います。

 百合的なものを好きな自覚は生まれたものの供給不足でその気持ちを眠らせていた私がそういうのに触れて嵌らないわけがなかった。特にone thousand four hundred forty-fourの文字で表わされる前述のボーイッシュ&ガーリッシュカプなんか無茶苦茶どハマりしました。*9 SS投稿は結局しませんでしたが、カプ雑談的なものは割りと参加した気がしますし、そうやってこの界隈をうろちょろしている内におそらく私は「百合」という言葉を知り、「マリみて」の存在を知ったのだと思います。*10

  そんな感じで朝ガールナマモノ百合と「マリみて」の両輪で百合オタへの道に突き進み2003年の百合元年を迎えるわけですが……*11

そして百合元年へ…

 『コミック百合姫』の前身である『百合姉妹』が創刊されたり、百合漫画アンソロジーがいくつか発売されたり、「マリみて」のアニメ化が発表されたり、割りと盛りだくさんだった気がする2003年を経て漫画やアニメ・ゲーム方面の百合へと比重が移っていったくらいしか語ることないからなあ……あとなんかこの辺からの記憶が結構薄いし、とりあえず今回はここまで、あと適当に思い出せたら続きでも書きます。

 一応最後に念のため書いておきますけど、あくまでも自分の記憶を元に書いているので間違ってる所とかあると思いますので書いてあることを鵜呑みにしないで下さいね。一応資料と照らし合わせて修正はしてありますが仕切れてない所もあると思うので。

 あと個人の記憶頼りの百合史も数が集まればそれなりに見えてくる物もあると思うので、是非みんな自分の百合史を振り返って軽率にネットに書き残しておきましょう!

*1:さらに言うとこの後私が百合的な空想妄想するときずっと相棒にしているオリジナル女性キャラがほぼそのマイ戦隊物ピンクだったりするんですが、流石にそのキャラの詳細を話すのは恥ずかしいのでまあそのうん……

*2:ミミーに関してもWikipediaの記述を見るとそういう方向性でやっていてもおかしくない感じはある。

*3:「百合」を女性同士の関係性を現す言葉として世の中に知らしめた作品。日活ロマンポルノ。ちなみにこれを撮った監督は実写版映画『デビルマン』と同じ人で、シリーズ続編の監督には平成ガメラシリーズを撮った監督もいたりする。

*4:ただ何故か『コードネームはセーラーV』の単行本は購入している。

*5:ちなみにアニメ化もされた『がっこうぐらし!』の原作者である海法紀光氏が当時開設していたアメコミ系サイトの掲示板のこと。

*6:私も作りましたよええ……

*7:少なくともただの一般人である私が認識出来る程度の規模のものは。

*8:なぜそこに辿り着いたのか、理由は覚えていません。

*9:ルックス・キャラ的な組み合わせに惚れたというのもあるけれども、特殊な相性を発揮して突き抜けた個性のコンビとして認知されつつあった同期二人から取り残されてしまった者同士という側面が私を惹き付けた所はあったかも知れません。

*10:うっすら記憶にあるので「マリみて」の存在は朝ガール板経由で知ったのは確かなはず。

*11:なぜ2003年が百合元年なのかはWikipediaの「百合(ジャンル)」の項目でも見て把握してください。

百合に挟まりたいボーイ 百合に挟まる男すべて殺すガール

 長文書きたいからはてな復帰してブログ書きますと言ってからだらだらと何も書かずに早半年(ちなみにその間ずっとスマホでマイクラやってた(る)。楽しいね、マイクラ!)。ここ数日あまり見なくなっていたTwitterで久しぶりにハッスルしてツイート多投しECHOESの「ZOO」の「しゃべりすぎた翌朝 落ち込むことの方が多い」という歌詞を身をもって体験しているところなので、折角だからブログにその辺をちゃんと書き記しておこうかなと。

 というわけで今巷で話題の「百合に挟まろうとする男」(百合挟男)についてのお話です。

 じゃかじゃん!

Q.今話題の「百合に挟まろうとする男」とは?

 えびかつ丼いったー! ではなくて。

A.「百合挟男」とは「百合な関係にある二人の女性に介入する(したがる)男」を指す言葉である。

 まずは定義の話と言うことで、乱暴に言ってしまうとこんな感じですね。一見すると凄く分りやすい、様に見えます。言葉のアウトラインとしては何も間違っては無いのだから当然といえば当然ですけれども、実際の所この言葉の使われ方を見てみるとそう単純な話でも無かったりするんですよねえ。

 どういうことかというとですね、とりあえずTwitterを「百合に挟」(「百合に挟まる男」でも可)で検索してみてください。上記の定義に従って「百合挟男」について語ってる多くの人達が出てくると思います。ただそのツイートたちを見ていくとあることに気がつく(人もいる)でしょう。

「こいつら同じようなこと語ってる様に見せかけて対象がバラバラじゃねーか」*1

 例えば百合作品における百合関係を邪魔する存在としての男性キャラの話*2をしている人もいます。例えばニコ動やpixivのコメントを持ち出して百合コミュニティ内の男性オタクの態度の話として語っている人もいます。例えば現実のビアンカップルにちょっかいかける男根主義の迷惑男の話とリンクさせて断罪する人もいます。

  なんというか「百合挟男」が上記の定義を基にした概念的存在と化しているんじゃないかという感じるくらい人によって指し示す対象が違う状況なんですよね。*3

「百合挟男」が顕在化させる百合ジャンル(百合オタコミュニティ)の問題

  さて一方でこんな感じで私も昔からちょくちょく刺していたのですけれども、百合ジャンル(百合オタコミュニティ)では昔から「男へのdis」をネタとして消費するところがあります。*4百合オタとしての帰属意識の確認のため、あるいは単純に百合オタ内で受けるネタとしての男disがカジュアルに行われているにも関わらずあまり問題視されない雰囲気があるんですね。*5

 それが「百合挟男」という概念的な存在と合わさるとどうなるか。

 簡単ですね、はい。実際Twitterを「百合 男」で検索してみるとすぐ分かりますが、「百合挟男」への敵意憎悪殺意といった攻撃性が垂れ流されるような状況、そういった攻撃性がコンテンツとして恒常的に消費されるような状況になっています。今回「百合挟男」の話題がTwitterで盛り上がったのも、今まで百合オタコミュニティ内部でなあなあに半ば許容されてきたこういう状況・異常性が外部の目にとまり疑問視危険視されたから*6というところが大きいのでしょう(少なくとも私のTLではそうだった)。

 勿論百合オタとしては異議がある人もいるのは当然で、実際今回の件で百合の定義と上記の「百合挟男」の定義を持ち出してそれを根拠に百合ジャンルにおける男の悪徳性を説き「百合挟男」disの正当性を主張する人は割りと見かけます。簡単に言うと「百合挟男」をジャンルやコミュニティへの侵略者として位置づけることにより「百合挟男」dis自体をそれに対する防衛行為として正当化する理論ですね。*7

 こういう理論が出てくる背景には元々百合ジャンルの足腰が弱く商業的にも安定しだしたのがここ数年の話でヘテロやBLと比べるとまだまだ市場規模的にも小さなこと、元々百合オタが百合と銘打たれた作品以外にも百合的な関係を見いだし百合として消費してきたこと(当然非百合的な方向に物語が進むことも多い)、エロ系で顕著な傾向ですが百合(レズ)的な関係がヘテロ恋愛(セックス)の前座にされがちな事など、百合オタを取り巻く環境的にヘテロ・男に対する被害者意識や対立・敵対意識が生まれやすい状況がずっと続いていたことがあります。さらに言うと百合オタコミュニティは割りと排他的というか気にくわないものを排除したがる傾向があるので、*8その辺も大きく影響している所はあるでしょう。

 だから百合オタが男dis・批判をする理由というのはある程度理解出来る範疇の物なんですが、問題はなぜそれがネタ的にカジュアル消費されるのかということが当の百合オタも説明出来てないところにあります。それどころか「百合挟男」に至っては「死」「滅」「殺」あたりのかなり強い漢字を含む単語がナチュラルに使われる状態が恒常化しているにも関わらず、そのことに疑問を持ってる百合オタもあまりいない。逆に「百合挟男」(男)への敵意・憎悪・殺意といった攻撃性を発露することが自分が百合オタであることを簡単にアピール出来る方法になっているんじゃないかと思えてくるような状況です。これは(あまりこういう言い方好きではないんですが)所謂「ヘイト」が恒常的に消費されているコミュニティと言われても仕方が無い状況と言えるんじゃないでしょうか。

 百合ジャンルや百合オタコミュニティにおいて百合オタがマジョリティになっているから、そしてそのマジョリティの中で攻撃的な男disは問題ないという空気が漠然と支配的になっているからなあなあになってるだけで、本来こういう状況というのは対外的に百合ジャンルが危険なコミュニティと受け取られかねない危険性を孕むものですし、内部的に見てもその攻撃性が暴走する危険性を孕むものと言って良いでしょう。

 直接的な男disではないけれども、実際に百合オタ界隈で私が観測した範囲内だけでも

  • アニメ『ゆるゆり』第1期が放映された頃に新しく百合オタになった人間の「ライトなものが百合でガチなものはレズ(だからアレは百合じゃない)」みたいな発言に自分に力を与えてくれた百合が簒奪されてしまうという危機感を持ち、毎日のように『ゆるゆり』やゆるゆりファンに対して攻撃的なツイートをするTwitterアカウントがあった。
  • 響け! ユーフォニアム』のアニメが放映された頃、男が絡んでくる作品であるのに百合オタ界隈では百合作品として見てる人が多いことに腹を立てた人間が「響け! ユーフォニアムは百合じゃない」という言葉を旗印にTwitterアカウントを作って百合作品として扱う事への批判攻撃を繰り返していた。
  • 2ちゃんねる(正確にはbbspink)の「レズ・百合萌え板」がこんな名前になったのも百合オタが少なくビアン系スレの方が活発的だったことに「ビアンに板が乗っ取られてしまう」という危機感*9を抱いた人間が居たことが発端だったり、ビアン系スレ(ナマモノ系を除く現実系スレも含む)が軒並み荒らされて潰されたりもした。*10

と言った百合オタが持つ攻撃性が暴走した事例があったので男への攻撃性だけ暴走しないとはとてもじゃないけれども信じられないのですよね。幸いにして今回の件も百合オタコミュニティとその周辺のみに話題が留まっているのでこれがコミュニティの壁を飛び越えて広がっていくような事態が起こる前にたとえ男が対象であっても安易な攻撃性の発露は許されないという風に百合オタコミュニティの空気を変える必要があるんじゃないでしょうか。

 最初の方で述べた通り、「百合挟男」と言う言葉が指し示す対象は使う人によって違っています。だから忘れられがちなのかも知れませんが、その中に実在する生身の人間も含まれているんですよね。生身の人間がネタであれ攻撃性を常に向けられ続けているとどういうものが積み重なっていくか、少なくともその辺をきちんと考えていく必要はあると思います。

「百合挟男」だって生きているんだ、友達ではないけれど

 というのものですね、今回の件とは別ですがほぼ同時期に百合ジャンル・百合オタによる自ジャンル否定を受け続けている(と認識している)人達による百合への怨嗟の声を二件ほど見ちゃったというのがあるんですよ。

 一つ目は『艦隊これくしょん -艦これ-』の大井が今年の梅雨時期の季節衣装で薬指に指輪を付けていたことで大井提督LOVE勢派の一部が勝ち誇ったように百合オタへの嘲笑をしていた件。これは某botなどの影響もあって艦これの大井=ガチ百合という認識が強すぎて提督LOVE勢としての側面*11がずっとスポイルされていた状態の中で新規グラで指輪装着という爆弾*12が落とされたことによって百合オタへの感情が爆発したという話。*13

 二つ目は百合オタ界隈でも百合として評判が高かった某アニメのスピンオフ漫画をその評判故に避けていた人が最近読んで、百合として評価されていた主人公二人の関係性は友愛であってこれを百合というエロスとして捉えた百合オタは頭がおかしいというような批判をしていた件。*14元々百合嫌いな人らしく「百合として見る=エロ目線で見ている」という雑百合定義を披露しているので本来ならあまり真剣に取り扱うものでもないんですが、とりあえず本人的には百合が嫌いだから避けているけれども百合でないものまで百合と言って自分の選択肢を奪っているみたいな主張の話。

 百合オタにしてみれば知らんがなの一言で済ませても良いような話でしょうけど(特に二つ目のは)、注意したいのが二つの話に共通してあるのが百合オタ・百合ジャンルによって自分たちが抑圧されているという認識とそれに対する恨みを募らせているという所。これは半ば逆恨みな所はありますが、「百合挟男」に関して百合オタが問答無用のサンドバッグ状態で酷い言葉を浴びせ続けているのは紛れもない事実な訳で、実在する生身の「百合挟男」の心にどんなマグマが溜まっているのか、想像するだけで恐ろしい。

 まあ実在する生身の「百合挟男」がどれくらいいるのかっていう話ですが、例え存在するのが一人二人だったとしても、一端マグマが噴出してしまえばネット上のコミュニティぐらいは簡単にかき回してダメにすることくらいは可能ですし、そうでなくともわざわざ百合ジャンル外のことに口を出して百合ジャンルにトラブルを持ち込む必要ってないはずなんですよね。

 さらに今回の件では「百合挟男」というのは百合ジャンルの浸食を試みる許されざる者ではなく、百合ジャンル外での百合消費の一嗜好形態に過ぎず、それを百合オタが必死になって攻撃して排除しようとするのはどうなのという話も出てました。もっと突っ込んでいくと百合オタが他ジャンルの作品のキャラを百合的に消費することとの整合性とか場的にマジョリティである側がマイノリティ側の嗜好を拒否排除しようとする形になっているみたいな話にもなっていきますしね。*15

 そしてそんな感じで争いの原因になりそうなネタを作ったり、理論的に突っ込まれそうな隙を作ったり、そういう潜在的なリスクを作る割りには「百合挟男」への攻撃をするメリットって見当たらないんですよ。2003年の百合元年以前ならともかく、百合漫画専門誌が毎月刊行され一般漫画誌・web漫画サイトにおいても百合作品の連載・掲載が恒常的に有り、その結果毎月百合漫画単行本が複数刊行される状況でそこからアニメ化される作品も少しずつ出て来ている現在、「百合挟男」は徹底的に攻撃して排除しなければならないほどの百合ジャンルの脅威になっているのかといったらまったくなってないですからね。だから考えつくメリットと言えばせいぜい百合オタが嫌な思いをしないとか気が晴れるとかくらい? それにしたってカジュアルに敵意や憎悪を消費してまでやるものでは無いと思うのですが……

 「百合挟男」だって私たちと同じ生身の人間で同じように感情を持っている存在だって事を忘れていたずらに敵意や憎悪をぶつけた先に何があるのか。その可能性の中に深刻なものがあることを理解して改めて百合オタは「百合挟男」への態度を真剣に考える必要があると思います。*16

おしまいに

 「百合挟男」が話題になってから約2週間くらい、その間にちまちま書いたものなんで割りと展開が滅茶苦茶だったり、割りと締まらない文章になってたり、文中で言及しているTwitterの検索結果も多分変わってたりとアレな記事だなあと自分でも思います。長文書くのムズカシイネ。

*1:さらに言うと、「百合に挟まる男」「百合に挟まろうとする男」「百合に挟まりたがる男」「百合に挟まりたい男」「百合に挟まれたい男」という感じで表記も割りとバラバラだったり。

*2:ただし具体的な作品名やキャラ名はあまり出ない。

*3:実際Twitterでは概念的存在として捉えている人もそこそこ見かけます。

*4:ちなみにこのツイート自体は男disネタに何か一言もの申したくなったけど百合オタ界隈で悪目立ちもするのもアレなので最後にオカダ・カズチカ的なムーブで逃げたものだと思われます。

*5:元々「百合ジャンル」自体が「男からの避難所・シェルター」「抑圧からの解放者」として機能している側面があり、その関係上男に対して厳しい態度を取る人達が一定数居るところでもありますが。

*6:ちなみに切っ掛けはよく分かりません。

*7:中には女性同士の仲に男性が割り込んでセックスするというのは暴力を用いてやる行為であり実際のビアンに対する加害に繋がるからネタではなく立派なヘイトとして取り扱って潰すべき(この辺うろ覚え)、みたいなことを言う人もいました。

*8:例えば背徳性や禁忌性、悲劇性の強調といった同性愛を異性愛と比べて悪い意味で特別なものとする要素は正しくないもの・古いものとして批判され程度の差は関係なくほぼメインストリームから排除されつつある状態だったりします。

*9:念のため書いておくと、危機感はともかく掲示板のルール的には専門板がある話題は専門板で行うことが正しいので本来ビアン系スレは同性愛板に立ててやるべきものではあった。ただ同性愛板がほぼゲイ系スレで埋め尽くされてビアンが入りにくい雰囲気が合ったというのも申し添えておきたい。

*10:あと些細なことではあるけれども、『コミック百合姫』スレが『コミック百合姫S』が創刊されたときに「男性向け百合」の話題が目に入るのも嫌だと言うことでスレ内の議論がないまま勝手に分離されたということも。

*11:きちんとゲーム内ボイスでも提示されている側面です。

*12:「艦これ」はゲームシステム的に提督から艦娘に指輪を贈れる。つまり……

*13:大井提督LOVE勢創作してる人に百合オタがわざわざ批判中傷しにいったという話も流れてきましたが未確認なので眉唾程度で。

*14:本当に個人の話なのであえてぼかしてあります。

*15:聡い百合オタは今回の件で「百合に挟まるという欲求自体は否定しない」みたいなエクスキューズを付けるようになっていましたが。

*16:勿論これは百合ジャンルや百合オタに敵意や憎悪をぶつけたがる人達にも言えることです。

私が今まであまりプロレスに触れてこなかった理由とサッカーに触れるのを止める理由

 実の所、はてなに戻ってきた理由の一つがプロレスについて語りたいというものだったりします。

 元々私は幼少の頃にゴールデンタイムで放送されていたプロレス中継を見た記憶がおぼろげにありつつ、本格的にプロレスに触れ出したのが新日本プロレスTEAM 2000が誕生した頃くらいからで、以降テレビ中継と雑誌でプロレスに触れてきた所謂在宅系ファンです。周りにプロレスを見てる人も居なく、プロレスファンに触れられるのは専らネット上のみという環境にずっと居ました。

 そこで触れてきたネット上のプロレスファンコミュニティは常に物凄く殺伐しているというか荒れている場所だったんですね。2ちゃんねるのプロレス板(正式名称は忘れた)どころか個人系情報サイト・ブログですら今あるプロレスへの不平不満が平気で載ってるような感じでした。勿論私がプロレスに触れてきた2000年代がプロレスメジャー3団体(新日本プロレス全日本プロレスプロレスリング・ノア)がそれぞれ浮き沈みをしながらプロレス業界全体が下降線を辿っていった時代というのも大きいのだと思います。特に前半は総合格闘技ブームへの対抗みたいなものもあってファンも含めた業界全体が疲弊していった感じは有りましたし。

 総合格闘技と比べて今のプロレスを批判貶す、昭和や90年代のプロレスと今のプロレスを比べて批判貶す、自分の気に入らない今のプロレスを行っている選手や団体を批判貶す、さらには自分の見ている団体のライバル団体やそのファンを侮辱挑発するような行為、そう言ったものが少なくとも私の観測範囲では横行していたのがネット上のプロレスファンコミュニティでした。*1 

 私自身が他人の楽しさを共有することでそのコンテンツを寄り楽しむタイプの人間なんで、そういう状態だと逆に他人の不平不満を共有することで楽しみが減る形になるんですね。まあ他人に影響されるなよと言われたらそれまでですが、ともかくそういうわけでプロレスに対する楽しいという気持ちを維持する為にも極力テレビ中継や雑誌、それに団体公式サイトの試合結果くらいしか見ずにプロレスを楽しむと言うことを自分の中で完結させてほぼ表に出さずネット上のプロレスファンコミュニティに参加するという事もなかったわけです。

 ただ最近になってプロレスをポジティブに楽しむ姿を前面に押し出すプロレスブログやサイトが出て来たように感じるんですよね。そんな基本今あるプロレスを楽しんでる人達*2を見ると自然とこちらのプロレスに対する楽しさも高まってくるわけです*3。そして高まってきた楽しさというのは表に出したくなるもの。何よりプロレスって語りたくなるものですしね。

 というわけでこれからはこのブログでプロレスのことを何かと語っていきたいと思います。今見てるのが基本新日本プロレスのみなので新日中心になるとは思いますが。

 そしておまけのタイトル回収。

 サッカーに関してはプロレスとは真逆の話ですね。サッカーというかJリーグが1年単位で争われて優勝の他に昇格や降格もあるという割りとシビアなコンテンツであることもあってネット上のサッカーファン(というかサポーター)コミュニティはことあるごとに揉め事が起き、ライバルクラブ同士のサポーター間は言うに及ばず自分と同じクラブを応援しているサポーターですらそのクラブに牙を剥くような至る所で殺伐とした光景が繰り広げられる場所になっている、そんな印象があります。

 自分の応援しているクラブが負けるというのはかなり哀しくてしんどいことで、負けが込んで成績が悪くなれば次の試合までの一週間丸々引きずってしまうことになるほどのもの。そこにサポーターコミュニティの殺伐とした空気が加われば命に別状はない致命傷を負うくらいの本当にしんどい辛さが生まれるんですよね……

 特にうちの応援しているクラブはここ数年成績の浮き沈みが激しく、去年の成績がかなりアレな感じになってしまったのもあって、Twitter上で監督の名前をもろに出して死ねとか言ったり、そんな罵倒をTwitterのアカウント名にしたりする馬鹿も出るくらいに荒れておりまして……

 そういう空気もあって本当にしんどくなってきたので、今年はネット上のサッカーコミュニティから距離を置き、公式の試合情報以外には極力触れないようにして、また自分からもTwitterなどで言及することも止めて、一人自分の中でサッカーを見る喜びと悲しみを消化していこうかなと思っています。

おしまい

*1:今にして思えばこれは完全に漫画・アニメ・ゲームオタク界隈でよく見かける「自分が嗜んでいたコンテンツが気に入らなくなった後でも批判やアンチ活動で関わり続けようとする厄介系オタク」とか「自分の好む作品と競合関係にある作品を貶したがるちょっとアレなオタク」そのものですね。

*2:まあ不平不満を書かないというわけではないけれども昔よりはかなり穏当な感じになってる場合が多い。

*3:ちなみにそれらのブログはスマホGoogle先生がサジェストしてきたものをなんとなく読んだ結果発見出来たものです。ありがとう、Google先生……

はてなよ、私は帰ってきた!

 色々と殺りあってたのがめんどくさくなってブクマだけ残してはてな撤退したのが……何年前だったけっかなあ。その後ずっとTwitterの方にいたけれども、Twitterの脳みそあまり使わない投稿に慣れすぎて最近ちょっとアレな感じになっていたので頭使って長文書くリハビリをしたいということで恥ずかしながら帰って参りました。

 プロバイダのブログサービスが軒並み終了していてどうしようかと思いましたが、そう私たちにはまだ帰る所がある。ありがとう、はてな。お世話になります。

 というわけで不適になると思いますが、その時々に考えていることを長文っぽいものにして投下していこうと思います。よろしく。