今回も、『サラモニスの秘密』をプレイして思ったことなどをつらつら書いていきます。今回は、特にネタバレ度が高いので、これからプレイする予定の方は読まないことをおすすめします。
- ドリーの村は魔境?
- シュリーカーってなんだ?
- フラグ管理の補完
- 〈格闘〉って取れる?
- 〈幸運〉は3回まで?
- 火吹山の夢?
- 特殊技能を取らずにクリアできるか?
- 結局、能力値上昇はいつできるの?
- ルール改変の提案
- リンク集
- プレイ記録(旧Twitter)
- 関連する記事
ドリーの村は魔境?
まだプレイ開始して間もない頃。自分が最初に冒険者ギルドの任務掲示板を見て(120番)、一番ヤバい任務だと思ったのは、大釜草をドリーの村に届けるという任務でした。ドリーの村がどういう場所かは、『モンスター誕生』をプレイした方ならよくご存じでしょう、とだけ言っておきます(^_^;) さらに、大釜草はブ・フォン・フェン(カエル沼)に生えているというじゃないですか。タイタン世界において行きたくない場所のワン・ツーと言っても過言ではない。そんな任務はまっぴらごめん。
というわけで、最初のプレイでは、この任務からは逃げ回って、「豚小屋の害獣除去」→「サラモン王の鉱山」→「ガルー大隊商団の護衛」→「“叫ぶ空”の謎」と任務をこなして、名誉点が足りなくて他の任務が選べなくて*1、仕方なくこの任務を選んだところ、なんと簡単に任務達成できました。しかも、その回は〈カリスマ〉を取っていたので、ずいぶんいい思いをさせていただきました。交渉の運だめしをする場合でも、失敗しても当初の値段で取り引きしてくれるなんて、ドリーの魔女も本当はずいぶん優しかったんだなあ。てっきり、運だめし失敗即蛙かと。ずっと誤解していました。ごめんなさい。
シュリーカーってなんだ?
本作は「シュリーカー」が1つのキーワードとなります。そもそも、シュリーカーって何のこと?
古いファンタジーゲームで名前を聞いた気がしますが、「どんなモンスターなのか?」と聞かれるとイメージが湧きません。自分が「シュリーカー」と聞いて思い出すのは「ダンジョンマスター」ですが、水晶玉が埋まっている緑の塊?みたいな何をモチーフにしたのかよくわからない外見でした。毒矢と毒攻撃で有毒状態にしてくる毒々しいモンスター。解毒するのが面倒なだけで、そんなに強い敵ではなかった。
"shrieker"は「金切り声を上げる人」という意味だけど、ダンマスのシュリーカーはそんな感じはなかったなあ。むしろ、“ダンマスのアイドル”とも呼ばれる(?)スクリーマーの方がシュリーカーの名前にふさわしい気がする。
……というような投稿を旧Twitterにしたところ、「シュリーカー」が出てくる作品の情報が続々と集まりました! ありがとうございます! みんなすごーい!
- Xユーザーのニフさん: 「@y_koutarou shriekでGoogle翻訳すると想像がつくかもです。ダンマスだと、スクリーマーの方が近い特徴を持つかも…」 / X
https://twitter.com/niftorl/status/1765700789484519833 - Xユーザーの大崎瑞香さん: 「@y_koutarou @niftorl FF外から失礼します。 多分ですが、元ネタはAD&Dのモンスターマニュアル(1977出版)掲載のモンスターだと考えられます。 https://t.co/KQpmm5gddh」 / X
https://twitter.com/MizukaOhsaki/status/1765864616955977801 - Xユーザーのヒロポンさん: 「@y_koutarou 昔の日本ファルコムの大ヒットアクションRPG「ザナドゥ」のシュリーカーは、確かキノコだった様な? 倒すとfoodが手に入るんですよね。」 / X
https://twitter.com/XiphiasC/status/1765750767108214941 - Xユーザーの近畿Buffaloesさん: 「@y_koutarou 旧番の「ウォーロック」に載ってました。叫び声を出して、失神させる能力があったような。 https://t.co/zqNaNYjCpB」 / X
https://twitter.com/1019Buffaloes/status/1766303579747569820 - Xユーザーのケイトしんじ@TRPGさん: 「@y_koutarou サークルで使ってるオリジナルのTRPGの機械人が使える弾頭で「シュリーカー」って名前の弾があってルール作成した人に聞いたら「ナウシカの笛弾みたいな弾頭で発射後の音で動物を引き寄せたり威嚇したりできる。元ネタは戦うと金切り声で警報出して仲間呼ぶクリーチャー」と教えられたことを思い出した https://t.co/X0u0gLwz3C」 / X
https://twitter.com/CateSyndi_/status/1765764424537911649 - Xユーザーの5d1g0さん: 「@niftorl PS2ゲーム「ラチェット&クランク4th」にも「シュリーカー」という敵がいた。 見た目は頭部にキバが付いた二足歩行の動物。攻撃方法は噛み付きのみ。 https://t.co/iwo5sfypWy」 / X
https://twitter.com/5d1g0/status/1765759287631237623
まあ、過去に「シュリーカー」と呼ばれていたものがどんなモンスターだったかは、本作の「シュリーカー」像をイメージする上では何の役にも立ちませんでしたが……。
フラグ管理の補完
本作は、起こるイベントがフラグ管理されているのが特徴ですが(特に序盤と幕間)、よく調べるとどう考えてもおかしいと思う部分がありましたので、気になった部分を書いておきます。
〈泥どろ豚小屋〉から同じ場所に行ってもいい?
序盤の、一文無しの状態から冒険者ギルドに加入するお金を稼ごうと奮闘する場面。この部分は、ある程度ループできる構造になっています。冒険者ギルド前の54番には「まだ行っていないものを選ぶこと」と明記してあるので無限ループはできませんが、他の項目では、同じ場所に行ってはいけないとは書かれていない選択肢も多数あります。その場合に同じ場所に行く選択は許されるのか?
特に問題となるのが、〈泥どろ豚小屋〉での仕事を終えて(415番)“乞食の印”がない場合の188番の選択です。ここでは同じ場所に行ってはいけないという指示はありません。すると、行ったことのある場合でも45番(ブーンドッグ)か89番(〈月の門〉)へ再び行くことができるので、「ナノックの家族」や「乞食」、「喋る犬と一芝居」などのイベントを2回できてしまいます。これは不自然です。
かといって、188番で同じ場所に行けないと解釈すると、〈泥どろ豚小屋〉に行くまでに45番と89番は両方通ることができるので、行き先がなくなってしまう可能性があります。
これをどう解消するか。妥当だと思うのは「188番では行ったことのある場所へも行ける。ただし、以降同じイベントに入る選択肢は選べない」というものです。具体的には、次の選択肢は、一度選んだ場合は選べないことにします。
- 367番での390番(ナノックの家族再会を見届ける)
- 410番での431番(乞食になる)
- 229番での249番(喋る犬と会話を続ける)
- 153番での122番(ヴァガンに教えてもらって〈泥どろ豚小屋〉へ行く)
しかしこれでも、ブーンドックへ2回行った場合は367番のナノックとの会話を2回してしまう問題、〈月の門〉へ2回行った場合(かつ小アクセサリーを持っている場合)は229番の喋る犬との会話を2回してしまう問題は回避できません。
もっと厳しく、上記に加えて、188番から45番(ブーンドック)も、行ったことのない場合しか行けないとする方法もあります。こうすると、367番のナノックとの会話を2回してしまう問題も解決できます。この方が進行としては自然ですが、188番の選択肢に制限を加えるのは不自然なので、微妙なところです。*2
自然な進行ということなら、188番では(122番と415番も)「45番(ブーンドッグ)や89番(〈月の門〉)へは行ったことがない場合にしか行けない。行き先がない場合は11番(の6行目)へ行く」という進行が最も自然です。しかし、書かれていない選択肢を作るのはためらわれます……。
“おたずね者”の罰金を何回も払わないといけない?
“おたずね者”であるために〈火曜日〉に(253番)衛兵に罰金として金貨4枚を要求されて(35番)、断って独房に放り込まれて(133番)、ピンチペニーに罰金として金貨8枚を支払って釈放された場合(221番)。“罪人”を消すという指示はありますが、“おたずね者”を消すという指示はありません。*3
よって、次に〈大市場〉でピンチペニーに遭遇した際に(427番→446番→144番)、“おたずね者”として複利で上がった税金を要求されてしまいます(459番)。理不尽(´・ω・`) 221番では“罪人”とともに“おたずね者”も消すべきだと思うなあ。
さらに、“おたずね者”としてピンチペニーにこの割り増し税金を支払っても、“証明書”はもらえますが、“おたずね者”は消えません(55番)。よって、次に〈火曜日〉(383番→253番)か〈大市場〉(446番で7を書く→400番→7番)で衛兵と遭遇した際に、再び“おたずね者”として罰金を要求されてしまいます。これも理不尽。というか俺、初見のプレイでこの目に遭いました(´・ω・`) ひどいよピンチペニー。“証明書”があれば衛兵は素通りしてくれるべきだと思うんですけど……。
これらの現象は、ミスなのか、税の理不尽さを表現するためにわざとやっているのか……。
コーヴンの村からサラモン王の鉱山へ向かうのに8日経過する?
10番。コーヴンの村から銀山へ向かう場合、8日進ませるという指示があります。しかし、同じ意味の34番・60番・84番では8日進めるという指示はありません。それに、もし今日が〈風曜日〉だった場合、ここで8日進めるとサラモニスに戻る頃には〈海曜日〉を過ぎて〈高曜日〉になってしまうので、進行上重大な齟齬が生じます。
ここは記載ミスと考えて、10番の8日経過の指示は無視して良いでしょう。10番は普通にプレイすればまず通らない項目なので、実質的には問題ないですが……。
意味のないフラグ?
他にも、ゲームの進行上は影響ありませんが、意味がないと思うフラグや不自然な記載などがいくつかあったので、列挙します。
- 202番に、〈クモの森〉の訓練所に行くことをアドベンチャーシートに書いておくという指示がありますが、書いておく意味がないと思う。
- 222番に、ナノックに同行することをアドベンチャーシートに記すという指示があるが、意味がないと思う。
- 242番の「(ロドリゲスがきみに教えてくれる“芸”をアドベンチャーシートに書いておくこと)」という指示があるが、意味がわからない。
- 206番・452番・407番・185番には、それぞれ「【聖印】があるなら4へ」という指示があるが、この時点で【聖印】があることはあり得ないので、直接469番へ行かせてもいいと思う。
- 任務から帰還する383番で、〈火曜日〉の場合は253番に行って衛兵と遭遇する。ここで“おたずね者”になっていて衛兵に罰金を支払うと、宿屋に泊まるなどの描写がなく冒険者ギルドへ行ってしまうので(120番)、ちょっと不自然。〈火曜日〉の分岐は、383番ではなく、宿屋に泊まる403番に設けた方が自然だった気がする。
- 70番(ブルーズ兄弟の屋台)。「一二〇と書いて」という指示があるが、ここに来るには427番で120と書いて446番→144番を経由する場合だけなので、すでに120は書かれている。
- 284番。「攻撃力に課せられるはずのペナルティを無視して構わない」とあるが、このあとの戦闘では攻撃力のペナルティはない。
- 332番に“豚頭”の絵があるのはなんで?(ここであっても意味ないし……)
〈格闘〉って取れる?
6つの特殊技能のうちの1つ、〈格闘〉。序盤でナノックの家族再会を見届けて、キーワード「ベンボーイ」を知っている場合だけ取ることが可能な技能です(222番→150番)。
しかし、この技能を取得した後の進行が厳しすぎると思う。
〈格闘〉を取得した直後に人オーク(技8・体7)と戦闘になります。この戦闘は297番で能力値をアップする前なので、技6・体12・運6で挑むことになります。これだけでも十分厳しいですが、さらに不利な条件が付されます。まず、開始時からここまで体力点を回復する機会はないので、体力点はいくらか減っている状態です。そして、この戦闘の直前に技術ロールを要求されます。技術点は最大6なので失敗する可能性は高く、失敗すると体力点-2・技術点-1を食らいます。
〈格闘〉と同時に〈振り直し〉(サイコロを振り直せる。3回まで。振り直しの振り直しは不可)と〈即死〉(攻撃力決めの2dで6ゾロを振ったら即勝利)も取れますが、それを含めても、人オークに勝つのは至難の業です。なんでこんな厳しいイベントにしたんだろう?
ここは、297番で行なう能力値アップを、前倒しして150番で行えるということにすれば良かったんじゃないかなあ? イメージ的にも、長い旅と訓練で能力値がアップするというのは腑に落ちるし。
そんなに苦労して〈格闘〉を取ったとしても、〈格闘〉は使う箇所が1箇所しかなく(404番)、その1箇所もすごく重要というほどではない。同時に取れる〈即死〉も発生確率が低すぎるし*4、〈振り直し〉も同じ特殊能力をロガーンの寺院でも取れるし、という報われない技能になっています。
2024/05/16追記:〈格闘〉が取れるもう一つの手段
5月14日にエラッタが発表されまして、〈格闘〉は訓練所の283番でも取得できることが判明しました。
- XユーザーのグループSNEさん: 「【サポート】 ファイティング・ファンタジー・コレクション~スティーブ・ジャクソン編~「サラモニスの秘密」のエラッタを更新しました。 更新タイトルは以下の通りです。 ・サラモニスの秘密 お手数ですが内容をご確認くださいますよう、お願い申し上げます。 https://t.co/ldvlWsjmo2」 / X
https://twitter.com/GroupSNE/status/1790290959613518296 - Group SNE | 製品情報 | ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~スティーブ・ジャクソン編~「サラモニスの秘密」
http://www.groupsne.co.jp/products/aff/affcolection4.html
前項に書いたとおり、〈格闘〉は取得するのが非常に難しい特殊技能でしたが、なんと別に取る手段が存在したのですね。訓練所で何の技能も取得できないのは、所詮罠選択だからそれで良いと思っていましたが、こんな特典があったとは。
……しかし、こちらもナノックの上級戦闘訓練に負けず劣らずの難関ルート。
まず、訓練所に入る段階でほとんどのプレイヤーが振り落とされます。訓練所に入るテストの合格条件は4dで体力点以下を振ることです(467番)。この時点ではまだ能力値をアップする前。体力点が原点の12だったとしても成功率は33.6%です。しかも、ここで体力点が12であることはあり得ません。これまでの選択によりますが、少なくとも475番(ボートのオールに頭をぶつける)・337番(衛兵に押されて膝をすりむく)・456番(溝の中で寝る)でそれぞれ体力点-1を食らっているプレイヤーが多いはずです。ここまで体力点を回復する手段はありません。この時点で体力点9だとすると、成功率は9.7%しかありません。
そして、テストに合格して訓練所に入れたとしても、もちろん最終テストが待ち構えています(388番)。1dを振って奇数なら一九番のサイ男(技8・体9)、偶数なら七二番のオーク(技7・体7)に勝たないといけません。どちらも、技6・体12・運6の主人公にとっては強敵です。これも、388番の間に名誉点による能力値アップを前倒しして行える機会があってしかるべきなんじゃないかなあ。サグラフの戦闘訓練を受けたら、当然能力値もアップするでしょう?
結局のところ、この訂正があっても、〈格闘〉は取れない特殊技能であることに変わりはありませんでした。
〈幸運〉は3回まで?
ロガーンの寺院で取れる特殊技能〈幸運〉(79番)。その効果は、次のように説明されています。
これからきみは〈運だめし〉を指示されても、サイコロを振ることなく自動的にその行為は成功となり、運点を減らさなくて済む
「運点を減らさなくて済む」が太字で書かれているので自分は初見では読み飛ばしていたのですが(^_^;)、運だめしに自動的に成功するという強力な特殊技能です。おまけに、〈振り直し〉も付いてくるのでかなりお得です。
しかし、ここで注目の訳注が付されています。
(訳注:これはあまりにも強力な能力なので、次のサイコロの〈振り直し〉能力と同じく、三回までにした方がよいと思います)
訳注はこれまでのFFコレクションでもありましたが、これまでは『危難の港』の開始直後の1番で体力点が回復するという指示を「原点を越えて良い」と解釈するものや、本作で名誉点16点以上という分岐条件は累計と考えるもの(341番・437番)など、あきらかにそう解釈するのが妥当だろうと思えるものでした。それらと比べるとこの79番の訳注は、作者が考えるゲームバランスに異を唱える形になっているので、より踏み込んだ内容です。
本作では、〈幸運〉取得後に行なう可能性がある運だめしは16ヶ所あります。1回の冒険で半分~3分の1程度の運だめしを行なうと考えれば、すべての運だめしが自動的に成功するというのは、ゲームバランスが崩壊するというほどではありませんが、確かに強力です。ことに、本作では強化しない限り原運点が6なので……。
この訳注を見たときは、「できれば、作者が考える意図を尊重したいなあ」とも思ったのですが、〈幸運〉が3回までというのは妥当なバランスだと思います。*5
火吹山の夢?
〈風曜日〉に始まる夢の中の冒険は(465番)、もちろんFFシリーズ第1作の、『火吹山の魔法使い』の序盤をほぼそのままなぞった内容です。敵の強さやイベントはもちろん、パラグラフ番号までそっくり同じです。
本作では開始直後も、双頭のオーガーから逃げるという印象的な夢のシーンからスタートします。しかも、両方ともただの夢ではなく、双頭のオーガーの夢では体力点や運点の減少が、火吹山の夢では獲得した金貨が、現実でも有効という不思議な夢となっています。
てっきり何かの伏線だと思ったのに、触れられないまま物語が終わってしまったのは残念でした。ところどころ、運と偶然、策略の神ロガーンの影が見えますが、はっきりとした言及はなかった。
自分がスティーブ・ジャクソンのゲームブックで一番好きなのは『モンスター誕生』です。その理由は、パズル的な難しさ、完成度の高さもさることながら、ゲームブックならではの物語の面白さがあったからです。オープニングで長々と書かれている物語が、一見意味がわからないただの背景説明のように見えながら、謎解きのヒントとなりつつ、終盤で見事につながります。
本作も、『サラモニスの秘密』というタイトルからもそういう点にも期待したのですが、その点はちょっと弱かったと思います。結局、大した秘密でもなかったように思えるし。ラズニック・ウルセンが語るサラモン王の統治の話や(234番)サラモニスの繁栄の話(290番)、99番のサラモニスの下水道の秘密とか、背景説明としては興味深いけど、物語に絡めてほしかったなあ。
特殊技能を取らずにクリアできるか?
冒険者ギルドに加入した後、普通は冒険者になるための訓練を受けてから冒険に出るのですが、なぜか、訓練を一切受けずに冒険に出るという選択肢があります。一見、ただ不利なだけのように見えますが、有利な点が1つ。訓練を一切受けないと297番ではなく389番で名誉点による能力値アップを行ないます。こちらのルートだと、このあと王室徴税官ピンチペニーに “求職税”を要求されずに済みます。もちろん各種授業料も払わなくて済むので、手持ちの金貨10枚を丸々〈大市場〉での買い物に使うことができます。保存食を4食分も多く買うことができるのは嬉しい……かも。
あきらかに用意された選択肢なので、これは作者の挑戦と受け取りました。ぜひ受けたいところですが、さすがにこれはきついなあ……。クリアに必須となる「〈土曜日〉までに名誉点16」は何とかなりますが、〈綴り呪文〉も〈カリスマ〉も取れないので、黒ユニコーンのイベントで運だめし成功が必須になるのがつらい(277番)。今回の主人公は原運点6の上に、このルートだと訓練で取れるはずの名誉点が取れないので運点を伸ばす余裕もないし……。
結局、能力値上昇はいつできるの?
本作の注目ポイントの1つが名誉点による能力値アップです(297番・398番)。名誉点2点につき原技術点・原体力点・原運点のどれかを1点伸ばすことができます。これは一見、プレイヤーが“経験値”を振り分けて伸ばす能力値を選択できるという、RPGによ くあるシステムに見えます。本書の巻末の解説「ジャクソンとファイティング・ファンタジー」でも、こう書かれています(466ページ)。
名誉点がいろんなイベントに際して与えられ、それをある区切りごとに貯めて使用して、キャラクターの能力値を上げ、いろんな行為を成功しやすくしていく。
自分も、最初に297番の項目を読んだ時は、そのようなルールだと思いました。
しかし、前に書いた記事でも書いたとおり、普通に項目を辿って指示に従っていくと、能力値を上昇させる機会は1回しかありません。これでは「区切りごと」に貯めて使用するということはできない。ここに違和感を持った方は多いと思います。
自分としては、前の記事でも少し触れましたが、能力値アップの機会は1回だけというのが作者の意図なのだろうと思います。能力値アップの機会は1回だけと解釈しても、ゲームバランスは十分保たれています。逆に、今後も名誉点を得るたびに能力値を伸ばせるとすると、ゲームとしては簡単になってしまいます。簡単に技術点12にできるので、強敵との連戦なども、大した工夫なく勝ててしまいます。これはもったいない。一見、能力値上昇が1回のみではとても勝てない強敵が出てくるように見えますが、序盤や幕間の街中でのフラグを把握して、手順を尽くして準備すると十分勝てる。これが本作でスティーブ・ジャクソンが用意した趣向だと思うのです。
こういう能力値アップシステムだと、プレイヤーが伸ばす能力を自由に選択できるのがおもしろいところと思ってしまいますが、本作はそのような面白さを意図したものではないのだろうと思いました。
ルール改変の提案
しかし、それならなんでこんなルールにしたのか?とは思います。名誉点による能力値アップが、たった1回の「冒険者に憧れるただの少年」が「本物の冒険者」なる過程を表現したかっただけなら、こんなRPG的なルールにする必要はなかった。もっとシンプルに、297番と398番では、
- サイコロ一個を一回振る。出目を原技術点に加える。
- サイコロ二個を同時に振る。出目の合計を原体力点に加える。
- サイコロ一個を振って、出目を原運点に加える。
とした方がFFらしくて納得できた気がします。ゲームバランスの問題は残りますが、元々FFシリーズはそういうものですし……。
自分がこの成長ルールで問題だと思うのは、能力値アップの機会が1回しかないこともさることながら、それ以上に“レート”が技術点に有利すぎることです。すべての能力値が名誉点2点につき1点アップできるというルールだと、あきらかに技術点を伸ばすのが最善です。FFの戦闘ルールは技術点が何より重要です*6。運だめしでの逆転は相手の体力点が低ければ可能性はありますが、運だめしはするたび運点が減っていくので、安定して勝つことはできません。
297番か398番までに体力点や運点が大きく減っている場合には、回復させるためにそれを伸ばすという選択もなくはないですが、技術点の価値の高さを考えるとそれが有利になる可能性はかなり低いです。
せっかく、伸ばす能力値を自由に選べるというルールなのに、有利不利が明白で、ほとんど選択の余地がない。これはもったいない。
というわけで、こんなルールを考えてみました。297番と389番の指示をこう読み替えます。
今日は高曜日だ。《中略》(アドベンチャーシートの“週の輪”の高曜日に印をつけておくこと)。
《中略》
- 名誉点4につき、原技術点を1点加えられる。
- 名誉点1につき、原体力点を2点加えられる。
- 名誉点1につき、原運点を1点加えられる。
その後、現在の能力値をその原点まで回復する(伸ばさなかった能力値はそのまま)。
以降、383番を通るたびに、同様の処理を行なう。
名誉点は、累計値と能力値上昇に未使用の値を両方記録すること。
つまり、体力点は技術点の8倍伸ばしやすいということになります(運点は4倍)。これくらい差があれば、どちらを伸ばすのが有利か微妙になります。特に、4点に達していない場合に、他の能力を伸ばすのに使うか、溜めておいて将来4点に達したときに技術点を伸ばすのに使うかが迷い所になります。減っている能力値を回復させるためにアップさせるという選択もあるでしょう。
〈高曜日〉スタートなので、〈海曜日〉までに行える任務が1つ増えます。また、〈火曜日〉を迎えるのが1日遅くなります。すごく大きな影響があるわけではありませんが、間違いなく有利な変更なので生かしましょう。まあ、このルールの意図は、こなせる任務の種類は多い方がおもしろいというくらいです。
あと、この文を読んでいる方はすでにクリアしている方だと思いますので、もう1つ〈綴り呪文〉取得禁止というルールも加えるとよりおもしろいと思います。正直言って〈綴り呪文〉は強すぎるので……。ジン枢機卿と黒ユニコーンは〈綴り呪文〉なしで任務達成してこそ真のクリアだと思う。〈幸運〉を獲得する場合は、訳注の通り3回までとします。*7
このルールで、〈綴り呪文〉ありでもなしでも、十分クリアできることは確認済みです。ガチガチに最善手ばかり選ぶプレイでなくてもクリアできます。もちろん、キーとなる選択を逃すと厳しくなりますが……。ぜひお試しあれ。
リンク集
- FFコレクション4と5の話 - ウルトロピカルな??GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙 ※2024年2月17日
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/17/071555
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/18/071702(攻略感想その1)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/19/220515(攻略感想その2)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/20/232615(攻略感想その3)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/22/234232(攻略感想その4)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/24/033337(攻略感想その5)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/26/000319(攻略感想その6)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/27/070224(攻略感想その7)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/28/230505(攻略感想その8)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/02/29/230749(攻略感想その9)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/03/02/072319(攻略感想その10)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/03/03/104512(攻略EX)
https://shinsei.hatenadiary.jp/entry/2024/03/05/055957(追加エラッタ) - サラモニスの秘密 冒険記録用シート | フリーゲーム投稿サイト unityroom ※2024年2月20日
https://unityroom.com/games/salamonisadventuresheet(ブラウザ版)
https://booth.pm/ja/items/5514113(アプリ版) - Secrets of Salamonis (book) | Titannica | Fandom ※英語サイト
https://fightingfantasy.fandom.com/wiki/Secrets_of_Salamonis_(book)
プレイ記録(旧Twitter)
『サラモニスの秘密』まとめ。
— kouy (@y_koutarou) 2024年4月9日
1回目:背負い袋を取り戻せず独房に放り込まれる。
2回目:○○の○○が思いつかず任務に失敗する。
3回目:砂地から飛び出した何かに鉤爪で打たれて体力点を失う。
4回目:ジン枢機卿に負ける。
5回目:人オークに負ける。
6回目:ガレーキープの囚人となる。 https://t.co/CB8xn8xM9z
関連する記事
*1:しかし、いま数えると名誉点は足りているはずだな……。どこで間違えたんだろう……。
*2:何回も読んでいるうちに、これが作意という気がしてきました。415番は「“乞食の印”があるなら」ではなく「ブーンドックへ行ったことがあるなら」というつもり、小アクセサリーは1回しか使えないアイテムというつもり、だったのではないかなあ?
*3:“おたずね者”を消す指示があるのは、35番で衛兵に罰金を支払った場合のみ(56番)。
*4:せめて、『モンスター誕生』のようにゾロ目ならすべて発動でも良かったのでは。まあ、あの怪物と冒険者になりたての少年の能力が同じというのも変な話かもしれませんが……。
*5:訳注を無視して無限に使えるとする場合でも、戦闘での運だめしには〈幸運〉は使えないと解釈するのが良いと思います。戦闘での運だめしにも適用できるとすると、こちらの与えるダメージは常に4点、受けるダメージは常に1点になって、それはさすがに強力すぎます。説明をよく読むと「〈運だめし〉を指示されても」と書かれています。つまり、戦闘での運だめしはプレイヤーの判断で行なうものなので、「指示された」運だめしではないので〈幸運〉は適用されないと考えることができます。
*6:例えば、体力点10の敵に勝つために自分が失う平均体力点は、技術点1点負けの場合16.6点、2点負けの場合27.8点、3点負けの場合47.9点となります。
*7:さらに、62番から49番に行くには「【黄金の樫の葉】を持っていて、かつ名誉点25点以上」というルールも考えたんだけど、これはかなりきついのでやらない方がいいです(^_^;)