栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【攻守の出来のコントラスト】J2 第10節 栃木SC vs 水戸ホーリーホック

スターティングメンバー

栃木SC 3-5-2 15位

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 前節山口戦は0-0のスコアレスドロー。前の試合で大敗したことを考えれば守備面の立て直しに成功した試合だった。次に期待したいのは2試合連続ノーゴールの攻撃陣の奮起である。前節からの変更はラファエル→大谷の1枚のみ。大谷は今季初先発。井出は今季初めてリーグ戦でメンバー入りを果たした。

 

水戸ホーリーホック 4-4-2 18位

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 開幕戦に勝利して以降、8試合白星から離れている水戸。現在は4試合連続でドローが続いており、前節群馬戦もスコアレスドローだった。前節からのスタメンの変更は3人。ここまで全試合先発だった長尾と落合がベンチスタートとなり、代わって前田と安藤が先発を飾った。

 

 

マッチレビュー

■保持側が優位に立つ

 昨季は北関東ダービー4試合で2分2敗と不甲斐ない結果に終わった両チーム。そのうち2分けはこのカードから生まれたものであり、栃木にとっては対水戸4試合ぶりの勝利を目指す一戦となった。

 試合前のコイントスで風上を選択した栃木だったが、序盤からペースを握ったのはホームの水戸。栃木のプレスに対してボランチを下ろした3枚回しで牽制を図っていく。深い位置まで寄せてくればCB間にGKを挟んで同じく3枚を形成。まずは栃木のプレスをいなして、自分たちのポゼッションから攻撃を開始するスタンスだった。

 攻撃の起点となったのは左サイドに下りるボランチ。左サイドでそれぞれ内外を取る新井と大崎にパスを入れつつ、栃木の陣形を寄せたところで逆サイドに展開する。栃木のプレスの具合に応じて寺沼や安藤のキャラクターを生かすロングパスを織り交ぜるなど、保持をベースとした攻撃で主体的にボールを動かしていった。

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 対する栃木は水戸のポゼッションに規制をかけるところからスタート。水戸の左重心の繋ぎを受けて、15分過ぎから矢野がこのサイドを切って寄せるようにすると、GKに蹴らせて回収するなど歯車が噛み合うように。しかし、直後に矢野が負傷交代を余儀なくされると、ファーストDFが徐々にハマらなくなりジワジワと押し込まれる時間が増えていった。

 パスの出しどころを制限できなければ、そのしわ寄せは後方の選手にいくことになる。2トップの脇から自由にボールを動かされると、縦パスに対する反応が遅れ、ファールで止めてしまう場面が頻発。それでもファールで止められればまだマシだったが、 良い状態でボールを受ける水戸の前線に対して弾き返す強度が不足していた点は気になった。

 32分の失点はその延長線上のようなものだった。長いボールに対して大谷は安藤に競り負け、平松はこぼれ球に反応した寺沼の動きを規制できず。そこからはシンプルなワンツーでサイドを突破され、クロスから被弾。後ろの強度が不足するため全体の重心が低くなり、最後までボールホルダーにプレッシャーがかからないまま失点してしまった。

 

 失点後の栃木は守備の立ち位置を修正。右IH大島が少し高めに取ることで水戸のこのサイドからの繋ぎを牽制していく。前からの守備で方向付けができるようになると、後ろの守備も安定するように。ボールを取り返して自分たちのポゼッションの時間を少しずつ増やせるようになっていった。

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 水戸はそれほど高い位置から寄せてくる訳ではなかったため後方での保持は比較的安定していた。しかし、3バックから進めた先は窮屈で、特にWBやIHがサイドに閉じ込められる場面が多かった。水戸はプレスをかけない分、横ズレによる圧縮の機能性は非常に高かった。

 それでも神戸を中心にボールを動かし、奥田がスペースに引き出すことで時間を作れるようになると、42分に栃木が同点に追い付く。石田のクロスに合わせたのは宮崎の陰から入り込んだ南野。ゴールに背を向けた状態から右足でトラップし、身体を捻って左足でゴールにねじ込んだ。

 ともに自分たちがボールを握った時間帯に得点を挙げることに成功した両チーム。ボールを握った時間がそのまま主導権に繋がったことから、前半はやや水戸ペースといえる内容でハーフタイムを迎えた。

 

■交代選手が仕事をする

 後半まず始めにテコ入れしたのはホームの水戸。栃木の最終ラインに時間を与えた反省から、強めのプレスで栃木のボールホルダーに襲いかかっていく。とりわけ左SH新井のアプローチは鋭く、対面の藤谷は前半とは明らかに違う圧力を前に繋がせてもらえず。ほか2人も2トッ簡単に蹴り出す場面が増えていった。

 ボールを落ち着かせることができない栃木は守備の時間が増加。57分にはバー直撃、63分にはポスト直撃のシュートなど危険なシーンを作られていく。水戸の攻撃は2トップの連携やSH-SBの連携、ボランチの攻撃参加など3人目が絡むような難しい守備対応が求められるものではなかったが、ボールホルダーへの寄せが甘いため決定機を量産された。

 防戦一方の栃木は相手のペナルティエリアにボールを運ぶことがなかなかできなかった。強い圧力を受ける右サイドからは前進できず、左サイドでは人数を集めた細かい連携もチャンスには至らない。大島が逆サイドからエリア内への動き出しを繰り返したが、神戸の浮かせたラストパスは2本とも届かなかった。

 停滞感のある栃木だったが、69分に小堀を投入すると直後にワンチャンスを仕留めることに成功する。これまでは外→外の繋ぎによりWBが狙い撃ちされていたが、このシーンでは藤谷が小堀に縦パスを差し込んだことで1列目を突破。落としを受けて前を向く石田、間に顔を出す奥田、裏に抜けてボールを引き出す小堀と選手が次々に連動すると、最後は石田のダイレクトクロスに南野が見事に合わせてみせた。ゴールに至る一連の流れは、まさに今季チームが取り組んでいるボールの動かし方だった。

 交代選手が勢いをもたらしたという点では水戸も同様だった。途中出場の落合は安藤とは異なる役割を与えられ、トップ下として中盤でのボール保持を強めていく。水戸の同点弾は中盤からの縦パスを寺沼がポスト受けしたところから。栃木はオフサイドを取り損ね、藤谷が寺沼に振り切られると、こぼれ球への反応で平松が一歩遅れてしまい落合に押し込まれた。

 同点直後のPK判定には疑問符が付くが、PK失敗により失点を免れると、終盤は互いの意地がぶつかり合う展開に。84分には石田のクロスを宮崎が胸トラップからボレー。85分には小堀のロングドリブルから奥田のフィニッシュはDFブロック。89分には落合のスルーパスで得能に抜け出されるも大谷が絞って対応。ゴール前を行ったり来たりする展開のなか、特に石田の闘志溢れる守備は目を見張るものがあった。

 互いに打ち合った試合はこのまま2-2で終了。昨季に引き続き3試合連続でこのスコアでのドローとなった。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
失点シーンは判断ミスもあったが、クロスに対する枚数が少なかったり、味方の守備対応が遅れたりとそれ以外の問題も大きかったように思う。

DF 2 平松 航
水戸の2トップとバチバチのマッチアップを繰り広げた。特に安藤には厳しく対応し、迎撃がファールになることも多かった。

DF 5 大谷 尚輝
背後への長いボールやライン間への縦パスで攻撃の起点となった。49分には相手の強烈なシュートを頭でブロックした。

DF 17 藤谷 匠
寺沼とのマッチアップで後手を踏み、2失点目はシンプルな間合いに抜き去られた。逆転弾のきっかけは藤谷→小堀の縦パスであり、外回しの繋ぎから目線を変えさせる地味ながら大きなプレーだった。

MF 6 大森 渚生
背後に走り出す南野や間受けする奥田へ正確にボールを届けた。あれでPK判定はない。

MF 7 石田 凌太郎
鋭く曲がって落ちるクロスで南野の2ゴールをアシスト。90分間ハードワークを怠らず、むしろ終盤になるに連れて守備力が上がっているようだった。

MF 19 大島 康樹
攻守において相手の嫌がるプレーを徹底できるのが大島の強みだが、ここ最近は陰りがあるように見える。

MF 24 神戸 康輔
水戸の中盤の出来と比べれば物足りない。プレスでは水戸ボランチに寄せ切れず、構えても周りから突破された。散らし役以上の存在感を示したい。

MF 42 南野 遥海
1点目はシュートを打つまでの一連の流れがパーフェクト。2点目は絶妙なポジショニングで大外でフリーに。守備貢献が巡り巡って自身の得点に繋がる好循環の中にいる。

FW 15 奥田 晃也
ライン間で受けて良し、背後で受けて良し。柔らかいタッチでボールを収め、チーム全体の重心を押し上げた。

FW 29 矢野 貴章
味方のロングボールに裏抜けした際にもも裏を負傷。軽傷であってほしい。

FW 32 宮崎 鴻
矢野の負傷で22分にピッチイン。左サイドから仕掛けて相手の股を抜いたり、ロングボールを胸で受けてボレーを放つなど好調をキープ。

FW 38 小堀 空
途中出場から試合にすんなりアジャストし、すぐさま逆転弾に貢献した。中央をドリブル突破したシーンは自ら右足を振っても良かった。

FW 9 イスマイラ
短い出場時間のため特に目立つプレーはなかった。

 

 

最後に

 数分とはいえリードしただけに勝ち点3を掴み取りたかったのが正直なところである。課題の攻撃面ではゴール前へ届ける過程とフィニッシュの局面でトレーニングの成果を窺うことができたし、今季初めて試合をひっくり返すことができた。ダービーを知る期待の俊英も活躍を見せた。それだけにこの日の2失点は強度不足からあっさりと喫したものであり、非常にもったいなく感じる。攻撃の回数自体が少なく、個々で粘り強い守備を見せた場面もあったが、試合全体を通して見れば、攻守の出来のコントラストがはっきりした試合だったと言えるだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.4.13 14:00K.O.
栃木SC 2-2 水戸ホーリーホック
得点 33分 黒川 淳史(水戸)
   42分 南野 遥海(栃木)
   73分 南野 遥海(栃木)
   77分 落合 陸(水戸)
主審 大坪 博和
観客 4244人
会場 ケーズデンキスタジアム水戸