手をとりあって。

私はイギリスのバンド、QUEENが好きだ。

今から20年ほど前、当時小学4年だった頃にQUEENのベストアルバム「Jewels」が発売された。

父親がたまたまそのCDを買い、感銘を受けて、その時から聴いている。

 

しかし5年前にのちに妻となる女性と同棲し始めてからはあまり聴けなくなってしまった。

彼女の元カレがQUEEN好きで彼のイメージがあるから、というのが理由だ。

それを気にしたのが彼女なのか当時の私なのかはもう覚えてない。

 

彼の事は私はあまり知らない、会った事もなかったか、一度すれ違った事があったか。

いずれにせよその程度だったと思う。

 

彼女の中で彼の存在は当時とても大きかったように思う。

というより、彼女は過去の男性を引きずるタイプかもしれない。彼女が別れを切り出したとしても、その後の動向が気になるし、その動向を知ってまたイライラしたりしていたと思う。

流石に最近はなくなった。ただ私に見せなくなっただけかもしれない。

 

だから彼のイメージの滲みていたQUEENを避ける事になった。

 

この事に、物凄く腹が立つ。

なぜ私が好きなQUEENを聴く事を我慢しなければならないのだ。

先ほども申し上げた通り、彼女発信ではなく、私が気を遣って避ける事になったかもしれない。本当に覚えてない。

にしたって、何か腹が立つ。なぜ私が気を遣わなければならないのか。

 

そもそも、先にQUEENを好きになったのは私だ。

彼女は私の5歳歳下、彼は彼女の1歳上だったと思う。つまり私と彼は4歳差だ。

私がQUEENに出会ったのが10歳だから、彼が私より先にQUEENを好きになるためには、6歳の段階でQUEENを好きになってなければならない。

ありえない。絶対にありえない。

もっと言えば私は3〜4歳の頃にハッチポッチステーショングッチ裕三ボヘミアン・ラプソディのPVをパロディしつつ、

犬のおまわりさんをMIXした曲でQUEENを認識したという、

本当の話ではあるが若干苦しい論理のエピソードもあるからもう勝てるはずはあるまい。

 

とにかく、時系列的に先にQUEENを知ったのは私なのだ。

彼は小学生の時に夜な夜な、歌詞カードの解説を読んでRadio Gagaの背景に理解を深めたりしていないのだ。

The Show Must Go Onの背景に涙したりなどしていないのだ。

古参ファンがJewelsを快く思っていないと知ってしまった夜などないのだ。

(それでも私はJewelsのおかげでQUEENにハマれたので感謝しかない)

 

そんなペーペーの奴に気を遣ってなぜ私がQUEENを避けて生きなければならないのか。

ただただ彼女と出会ったのが彼の方が早かっただけなのに。

 

私は彼女の中のQUEENを私の物に、QUEEN=私にする自信がなかったのかもしれない。

上塗りできるほどの何かが私には無いと思ったのだと思う。

彼のせいではないかもしれないが、このやり場のない怒りは関係性がないからこそ、彼に向いてしまうのだろう。

 

今日、そんな彼女が産んだ1歳の娘にDon't Stop Me Nowを聴かせて、一緒に踊っていたら足をグネってしまった。

どういう形であれ、幸せと引き換えにQUEENを失う運命だったのかもしれない。

 

<ここから蛇足>

ちなみに、私が一番好きなQUEENの曲はKiller Queenだ。

当たり前にあった、昔から決めていた答えのように堂々としているが、めちゃくちゃ悩んだ。

決め切るのには本当に40分くらいかかった。

 

Made in Heavenがめちゃくちゃ好きだが、QUEENバージョンはフレディの死後リリースということもあって、一番とするのにはなんだか気が引けた。

Under Pressureも無人島にQUEENの曲を一曲しか持って行けないならコレにするくらい好きだが、

純粋にQUEENの曲かと言うと怪しい。

One Visionも好きだが、好きなのはイントロのゴーストチックな遅回しの部分がメインだ。

などと考えていて、最終的には小4の時に最初に刺さったKiller Queenにしたのであった。

何者とは何者なのか。

こんばんは、山本謙吾です。

いやー始まりましたね、「だが、情熱はある」。

日テレのドラマです。

南海キャンディーズの山里さんとオードリーの若林さんのユニット「たりないふたり」の半生をジャニーズの子が演じる作品。

 

面白いです。面白いんですけど、時々刺してくるんですよね。

 

第一話で、高校生の山里さんが言う、「何者かになりたい」。

めちゃくちゃ分かるんですよ。

 

僕も中高、その後と、ずっと何者かになりたかった。

劇中の「何者」というのは

「好きな人に面白いと思われること」

「人より少しモテること」

「芸人になること」に

都度都度、変化していきますが、

その感じも分かります。

 

僕も面白いと思われたかった。

モテたいは・・・あの頃はあったかな?

モテたいというより、自分の事を好きな人を見つけたかった。

あとはこれよく言うんですけど、中学生の頃の自分を笑わせたかった。

こんな感じの抽象的な夢や希望を叶える為に何になればいいか分からなかったから、何者かになりたいって表現なんですよね。

それを叶えるのは多分芸人なんじゃないかな、だからとりあえず芸人になろう、なんですよね。

 

こんな感じで、共感、いや共鳴してるんですよ。

あの頃の僕が。

ドラマの面白さのバロメーターの一つとして「共感」って大きいと思うんです。

だから当然、面白い。

 

だけど、両手あげて面白いだけで済まされないんですよね。

それって何なんだろうなぁ、と思ってたんですけど、

アレですね、山里さんは結果何者かになってる事を知ってるからですね。

 

あの頃の僕と考えている事が似ていて共感するけど、出口が違う。

向こうは何者かになれるサクセスストーリー。

かたや、現実の僕は未だに何者にも成れていない。

 

だからずっと付いて回ってるんですよね。

「それ分かる!でも、この人最終的にあの山里亮太になるんだよな」って。

「お前とは違う」って事が刺してくる。

 

僕には結婚して妻がいて、娘がいます。

二人とも今の所僕の事好きでいてくれるので、やっていけています。

けどやっぱ、今以上に何者かになりたい。

二人のためにも。

自分のためにも。

それを突きつけられる。

 

まぁ、だから「だが、情熱はある」は

僕にとって、

ヤクルトとかカルピスみたいな乳飲料ですね。

美味しいけど、なんか飲んだ後、喉がイガつくんですよね。

 

何度も言いますが、面白いんです。

でも、それだけじゃないんですよね。

やめるのをやめるのをやめるのをやーめた。

中川パラダイスさんのYouTube企画「50時間ラジオ」に出させていただきました。

もちろん自分から出たいと言って出させてもらった、一般人枠です。

実質自分が喋ってたのは30分くらいかな?

それでも貴重な時間でした。ありがとうございました。

 

今回僕が何者なのか、説明する時にめちゃくちゃ困りました。

芸人を目指している者として何かやってるわけでもない、

ネットでやっていたラジオすら子供が産まれる寸前で全て辞めたので。

(ご報告する場所がありませんでしたので、遅れましたが、子供が産まれました。かわいい娘です。)

 

ネットでやるラジオは来年4月か5月か、

ちょっと落ち着いた辺りでまたやろうって思ってはいますが、

全て過去形で芸人目指してたとか、そんな感じで話しました。

 

けどパラダイスさんはずっと「目標持って今からでも頑張れ」って言ってくださりました。

 

そういう事言われるとこの人生辞められないのよ!!

子供も産まれたし、真人間にならなきゃ、でもなれないなぁ

って思ってるところに。

そういう事言われると!!

 

このブログを更新してなかった期間に、こういう事はいくつもありました。

爆笑問題のラジオでネタメール読まれたり、ナイナイのANNでネタメール読まれたり・・・。

そんな事で!?と思うかもしれませんが、

僕にはでかい事です。

「僕の考えた事」が作家さんや芸人の皆様に認められて放送に乗っているのですから。

何らかの可能性を感じてこの人生を辞められなくなってしまうのです。

 

7月に行った黒木渚のライブのMCで黒木渚は言いました。

「みんなの諦めた夢も背負って、代表して私は夢を追う」と。

泣いてしまいました。

僕は宗教を信じないけど、黒木渚は信じています。

こういう、ピンポイントで刺さる言葉を定期的にぶつけてくるからです。

 

そうして、黒木渚に背負わせてしまおうか、とも思っていた所に今日の50時間ラジオ。

気持ちの持っていき方がもうね、分かりません。

 

でも、言わせたのかもしれないなぁと思います。

だって自分から出してくれって言ってるし、

それって諦める人の行動じゃないんですよね。

パラダイスさんに、言わせたのかもなって。

 

あと、初めて山本謙吾として、

コンビ組んでた時の相方以外の人と絡みました。

それも楽しかった。

山本謙吾は孤独だった。ずっと。

コンビ解散してから誰かと何かをやるのは無理だと思ってました。

だから望んだ孤独だったと思います。

 

でも29歳、結婚して妻もいて、

一人の娘の父になった今、

誰かとまたコンビなり、ユニットなり、

一緒にできたりすんのかな。

今度は上手くやれるかな。。。

みたいな事を考えてます。

 

諦める気ねーじゃん!!ねーよ!!!

眠れなかった日の僕の思考回路。

「出て行って。」

夜中、同棲している彼女とベッドで横になっていた時に、そう言われた。

ここ最近の本気で別れるかどうか、の話し合いの最終的な結論だという。

 

言葉を聞いた瞬間、彼女の頭の下にあった僕の右腕はその重みに耐えられずに千切れた。

それに続くように身体中の関節が分裂して、僕はバラバラになり宇宙の藻屑となった。

上下左右も、枕のある位置が北なのか南なのかも分からない。

視線の先にある天井の白色は高速で回転していた。

こういう時、早すぎてむしろゆっくりに見えるあの現象は起きないのだと知った。

 

それからというもの、僕は流石に眠れなかった。

朝5時になり、2秒後には朝6時を迎えた。

一方の彼女はいつも通り口を開けて寝ていた。

僕がもし逆の立場だったとしても今日ばかりは眠れない事に自信がある。

でも、この人はそういう人だ。

いつだって、口を開けて寝られる女。

そこが好きだった。その果てしない生命力が。

 

そんな彼女でも、いつもと違った事もあった。

時折目覚めては、キスやハグをしたり「遅いよ」と僕をなじったりしたのだ。

そしてまた口を開けて寝た。

一体彼女の中で睡魔と何が戦っていたのだろう。

僕が泣いているから、優しさかもしれない。

文字通り、遅かった事への怒りかもしれない。

僕は数日前に「別れたくない、結婚したい、今なら僕は変われる」という長文の手紙を送ったばかりだ。

その決意というか想いがどうやら遅かったらしい。

一蹴されるとはこの事だ。

けれど、どうしようもない僕のどうしようもなく遅い手紙が、あの強い生命力を持つ彼女の心を1mmでも揺さぶったのなら、光栄だと思う。

 

そんな事を考えながら彼女を眺めていても眠れなかった。

困った僕は、とりあえず目を瞑って口を開けてみた。

舌が乾燥して下顎に張り付く。

これで寝れるとは。どういうシステムなんだ。

 

謎が深まり、さらに困った僕は彼女に、

「次に出会う男と幸せになる」という呪いと、

「僕としか幸せになれない」という呪いを、

交互にかけた。

僕に呪術の才能があれば、どちらの呪いが勝つのだろう。

くだらない「ほこ×たて」だと思った。

それでも眠れなかった。

 

史上最速で心因性不眠症に突入したのだろうか。

だとしたら、しばらく解決しないだろう。

それを悩んでしまったら、さらに眠れなくなりそうなので、考えるのをやめた。

 

ちなみに、出ていくとして、今後どうするかみたいなシミュレーションなども一切しなかった。

それをしたら不眠症どころか、一生眠れない気がしたからだ。

 

ならば、今のこの気持ちを文章にしようと、これを書いた。

そのうち、僕は眠りについた。

 

寝て起きても、彼女が出した結論や、僕がどうしようもない事など、何も変わっていなかった。

夢ならばどれほどよかったでしょう、という歌詞がこの日世界一響いたのは他でもない僕だと思う。

 

唯一変わった事と言えば、彼女がもう僕の隣では口を開けて寝たりしなくなったという事だった。

楽しみにしているバラエティ番組リスト<2020/05/20現在>

<月>
テレビ千鳥(テレ朝)

さまぁ〜ず×さまぁ〜ず(テレ朝)


<火>
相席食堂(ABC)

ロンドンハーツ(テレ朝)


<水>

有吉の壁(日テレ)
水曜日のダウンタウン(TBS)


<木>
勇者ああああ(テレ東)

霜降りバラエティ(テレ朝)


<金>
全力!脱力タイムズ(フジ)


<土>
さんまのお笑い向上委員会(フジ)


<日>
モヤモヤさまぁ〜ず2(テレ東)
有吉ぃぃeeeee!〜そうだ!今からお前んチでゲームしない?〜(テレ東)

日向坂で会いましょう(テレ東)

 

<ネット>

ブラマヨ吉田のガケっぱち!!

ジュニア小籔フットのYouTube

極楽とんぼ山本圭壱 けいちょんチャンネル

極楽とんぼのタイムリミット


<局別>
NHK・・・無し
日テレ・・・1
TBS・・・1
テレ朝・・・4
テレ東・・・4
フジ・・・1

ABC・・・1


合計・・・12


<即予約ワード>
藤井健太郎


(敬称略)
 

 

ラジオ定期聴取リスト<2020/05/20現在>

<月>
月曜JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力


<火>
アルコ&ピース D.C.GARAGE

火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ

 

<水>

うしろシティ 星のギガボディ


<木>

ハライチのターン!

ナインティナインのオールナイトニッポン

 

<金>

問わず語りの神田伯山

霜降り明星オールナイトニッポン0


<土>
中居正広 ON&ON AIR

オードリーのオールナイトニッポン

 

<日>

有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER


<ネット>
なかよしビクトリーズのオレンジサンセット

錦鯉の人生五十年

 

<録音再生>

ななくさのラジオ DEMOBAN!!


(敬称略)

だいじょうぶだぁ教の国。

新型コロナウイルスが猛威を振るっている。

私が最初に中国が新しいウイルスで大変なことになっているらしいというニュースを見たのは昨年末か1月頭か。

正確な時期を覚えてないくらいなので、対岸の火事だと思っていたのだったのだろう。

あれも何時頃だったか、ダイアモンドプリンセス号の件があった辺りでも、まだまだ他人事だった。

ダイアモンドプリンセス号が何故日本に停泊することになったのか知らないし、

停泊していたのも横浜だった気がするなぁぐらいの知識。

しかし今考えればあの頃にはもう、着実にこの災いは身に迫っていたはずだ。

そして今がある。

 

以前、「注文を受けてから時間をもらって商品を提供するバイト」をやっていた時の話をする。

私はそのバイト先の店長の考え方がとても嫌いだった。

間に合うか間に合わないか分からないギリギリの提供時間をお客様に提示する店長だった。

私はその度に「お客様を裏切ることになるので、もう少し余裕を持って時間を頂いて下さい」と頼んだ。

だが、件の店長が言うのはいつも「大丈夫大丈夫、なんとかなるから」だった。

その事について話し合った時に聞いた考えはこうだった。

 

“今までも大丈夫だった。

蓋を開けたら間に合う事もあるし、間に合わなくても謝ればお客様は許してくれる。

だから大丈夫。

それよりも余裕を持った時間を提示して、

時間のかかる店だというイメージがつく方がマイナスだ”

 

何が大丈夫なのか。

その「大丈夫」には、

何とか間に合わせた人がいるし、待たされたお客様がいる。

確かにマイナスイメージは避けたいが、それで守れない約束をしては意味がない。

私はそのバイトを辞めた。

それ以来「大丈夫」という言葉が嫌いだ。

しかしその言葉は国民性そのものだったのかも知れない。

 

今回のこの新型コロナウイルスの件で自覚したことがある。

日本は「大丈夫」という言葉を神よりも仏よりも信じているという事だ。

中国で得体の知れないウイルスが流行った。

日本に停泊している船で感染拡大した。

全国で感染が広がった。

でも「大丈夫」。

なんなら今も思っているだろう。

「大丈夫、日本はきっと乗り越えられる」と。

 

確かにそうだ。

いつだって日本は大丈夫だった。

第二次世界大戦で敗戦しようが、阪神淡路大震災東日本大震災に見舞われようが、原発が爆発しようが。

今も日本はあり続ける。私はあり続ける。

数々の事から立ち直ってきたじゃないか。

大丈夫だったのだ。

 

でも考えて欲しい。

その「大丈夫」の裏には、

撃たれた人がいる。

炎に包まれた人がいる。

津波に飲まれた人がいる。

今も家が避難区域に含まれて帰れない人がいる。

大丈夫なのはそこに当てはまらなかった人だけだ。

 

そして、自分が「大丈夫」と言える立ち位置に明日以降もいる保証はどこにある?

前向きなのは良い事だが、前向きと能天気は違う。

もう大丈夫なんて言えるような、思えるような状況じゃないと私は思う。

 

それでも私は明日も仕事へ行く。数日のうちには買い出しにスーパーへ行く事もあるだろう。

こんな文を書きながらも心の奥底では

まだ「大丈夫」だと思っているのだろうか。

私もまた、この「だいじょうぶだぁ教」を作る一人なのかもしれない。

夢で逢えたら。

私は「今過ごしている現実が夢なのではないか」と思いながら眠りにつき、

その夢が醒めない事の証明として朝を迎える。

死ぬまでこの夢が続けばそれは現実だけど、明日醒めるのではという恐怖の中で毎日生きている。

 

事の発端は「あの人」だ。

私の前に突然現れて、私の妄想を具現化したような存在でありつづける「あの人」。

あの人は私のこのクズみたいな人生を認めて受け入れて、更には支えようとしてくる。

端的に言えば頭がおかしい。

 

出会ってすぐ、あの人は「結婚しよう」と言いだした。

私は言った。

「結婚したいのは山々ですが、そのような権利はありません」と。

あの人がその理由を聞いてきたから、

男だけど働く事が苦手とか、

24歳だけど親の仕送りで一人暮らししているとか、

だからあなたを養う事ができないとか、

いかに私がクズで結婚する権利がないかをプレゼンする羽目になった。

一通り聞き終わったあの人は言った。

「私が働いて、あなたを養う。それじゃダメなの?」と。

 

さすが男女平等社会。意識改革はここまで来ているのか!なんて思うわけはなく、

単純にこいつは気が狂っていると思った。

私は過去、恋愛をしてこなかったわけじゃない。

この人となら結婚したいと思った人もいた。

だけど皆、私のクズさに耐えられずに消え去った。

あの人だって、この場ではそういう受け入れてくれるような事を言っているが、

その内バカバカしくなって過去の人と同じように消え去ると思っていた。

夢なら早く醒めてくれと思った。

 

ところがあの人は今日も私の隣にいる。

大きな誤算だった。

それどころか、事あるごとに私の理想でありつづける。

 

いつだったか、私がインフルエンザにかかった事があった。

運の悪いことに、あの人と旅行に行く2日前に高熱が出てしまったのだ。

私はインフルエンザと分かってすぐに、謝罪とこの埋め合わせは必ずする旨を綴ったメッセージを送った。

あの人は言った。「旅行はいいから看病させてくれ」と。

一緒に居られればそれでいいと。

嬉しかった。私は一人暮らしだったし、隔離されて5日間も過ごさなければならなかったからだ。

でも会うわけにもいかなかった。

それはあの人に移す事を心配する気持ちもあったが、

それより社会的なルールというかマナーというか常識のような事を考えたら会ってはいけないと思ったからだ。

あの人はとても怒った。

「しんどいあなたのそばにいる権利もないの?」と。

 

それから丸一日、インフルエンザではなくあの人と文字で戦い、私は遂に負けて、あの人は家に来た。

インフルエンザになったという報告を受けた時点でそういう状況下に好ましい料理のレシピを調べ上げ、献立を決めていたらしい。

それで来るなと言われたらそりゃあ怒るわけだ。

ごめんねという私の前には、私の好きなもの、栄養のあるもの、食べやすさを重視したものまであらゆる料理が並んでいた。

夢なら醒めるなと思った。

 

他にも、

働く事が苦手な私がギリギリなんとかやっていたバイトをクビになった時、

恐る恐る報告すると、「ふーん、だから何?」の一言で済まされた事もあった。

 

私には人生を賭けて追いかけていた夢があって、その事を話した時、「とても素敵だと思う。夢に向かって輝いている君が好きだよ」とあの人は言っていた。

そんな矢先に夢を諦めることになって恐る恐る報告すると「別にいいじゃん、悔いがないなら。それでも君が好きだよ。全然輝いてないけど。」とあっさり流された事もあった。

 

あの人はベタだ。ベタベタだ。ベタドラマだ。

私が心折れそうな時に何でもない事のように受け入れて支えてくれるあの人は、

クズな主人公を支えてくれるイカれた感性のヒロイン。

そんな私の陳腐な想像から生まれた脳内ドラマを、あの人は天然で忠実に再現する。

 

私の頭か精神がとうとうどうにかなってしまって、脳内ドラマのヒロインが虚像として現実に現れているのか。

それとも私の頭か精神がとうとうどうにかなってしまって、私の理想を叶え続ける長い夢の中から抜け出せなくなってしまったのか。

 

どちらにしても、死ぬまで一生続けばいいと思っている。

現実なんかクソ食らえ。

今、私は妄想だか夢だかよく分からない世界で幸せに溺れている。

そのまま溺れて死にたい。

痣。

あれからというもの、毎日気が狂いそうで怖い。

首筋にあった複数の痣が愛おしくてたまらなくて、

それが薄くなるにつれ、寂しさが押し寄せてきた。

僕は24年生きてきたが、痣を愛したのは初めてだろう。

彼女は初めてにこだわるから喜んでくれそうだ。

まぁこの話はしないが。

 

誰の何の曲を聴いたって彼女の事を考える。

最近PUNPEEの「MODERN TIMES」をよく聴くが、

未来をひたすら考える日々を送る今の僕の状況に合っていて仕方ない。

ポジティブそうでポジティブではない、でも少しポジティブみたいなリリックにぶん殴られる日々。

そんな日々すらも愛おしい。

 

こんなくだらないポエジーの塊みたいな痛い文章を書く自分もそのうち愛せるのだろうか。

今まで愛した事がなかった痣を愛せたのだから、いつか愛せるのかもしれない。

煙月。

一昨日の話。

僕は目が覚めた時から体調が悪かった。

腹痛、吐き気、頭痛。

いつもの"ヤツ"だった。

熱がないあたり、いつもの"ヤツ"。

僕は昔からストレスを感じると体調が悪くなるし、季節の変わり目も体調が悪くなった。

きっとどちらか一方に悩まされてる人は多いし、僕みたいなハイブリッドも多いと思う。

何も考えずに二度寝をした。バイトが休みでよかった。

 

それから僕は17時くらいまで寝ていたと思う。

今回はきっとストレスの方だ。

最近、バイトに関する事をいくつか深く考え込んでしまっていたから。

ストレスが原因だ。そうだきっとそう。

そうと決まれば何か食べたい物を食べよう。

大体そのレベルの事で体調なんか戻る。

対処には慣れていた。

コンビニでうどんとレンジで温めればすぐに食べられる調理済みの魚を買ってくる事にした。

体調悪い時はうどんに決まっているし、魚は単純に最近食べてない。

ここの所、悩んでるだけではなくて、バイトそのものが忙しいという事もあって食生活が荒れていた。

そうだ最近魚を食べていないからやられたのだ。そう思った。

ストレスが多い中で免疫力が落ちていた。だから体調が悪い。

そう決めつけた僕は、コンビニに行く程度の服装に着替え、家を出た。

そして気づいた。

 

『月が燃えている。』

 

これから僕はこういうライトな文章にありがちなライトなSFの話をしようと思っている。

自分でも恥ずかしいくらいにありきたりな設定だった。

 

で、月が燃えていた件だけど、最初は意味がわからなかった。

最初というかずっと意味はわかってない。

月が綺麗に燃えていた。

そういえば起きた時、17時にしては異様に明るかった気がする。

この間まで「夏長えなぁ」なんて思っていたのにここ数日で一気に冷え込んで秋ではなく冬の空気が鼻を通り抜けるようになっていた。

そんな季節の17時なのに、明るかった。

何故今の今まで気付かなかったんだ。

 

僕は動揺しつつも駅前のコンビニへ行き、うどんと魚を買って帰ってきた。

街中は騒々しくなっていると思いきや、

人々は、

「あぁ、本当に燃えているね。」

「燃えているで思い出したけど昨日加奈子が焼肉ビュッフェで肉燃やしたらしいよ。冷静装ってたけど軽く火柱になって、店員が消火器使ってやっと鎮火したんだって。」

「何それウケる。」

ぐらいの温度だった。

僕だって月が燃えている事よりもその後加奈子がどうなったかという事の方がよっぽど気になっている。

火柱に軽くも重くもあるのだろうか。

 

家に帰って、僕はうどんをレンジに入れて5分待つ事にした。

その間、少しカーテンを開けて月を見たが燃えていた。

当たり前だが燃えていた。

しかしもうそんな月を見たって思い出すのは会った事のない加奈子の火柱焼肉だ。

そうこうしているとうどんは温まり、出汁のいい匂いがしている。

言い忘れていたが肉うどんだ。

 

この時に月がああなってることに気づいてから、初めてテレビをつけた。

テレビではさすがにどこの局も特別編成が組まれていて、似たり寄ったりの話をしていた。

なんだかわからない専門家が色々言っていたりもした。

ある局では天文学者、またある局では科学者、何かに絶望してしまったのか奇天烈な髪型の宗教家を呼んだ局もあったらしい。

磁場がどうとかナントカ波がどうとかよく分からない話をしていて、全く分からないし、全員トンチンカンな事を言っているように聞こえた。

 

ただ、その中でも最もトンチンカンな事を言った学者、つまり「モストオブトンチンカン」はCMの間に摘み出された。どいつもこいつも似たようなレベルだろうに。

流石にクマのぬいぐるみに入れ替わったりはしなかったようだ。

 

その摘み出されてしまったモストオブトンチンカン(以下MOT)はもともと災害の研究をしているおばさんだった。

ヒステリックに「今晩には月が爆発する

!絶対!絶対!本当に絶対!」と討論する気もないのだろう、大声で口角に泡を付けながらゴリ押ししていた。

 

それに対して夕方のニュース番組によく出ている所謂名医的なおじさんが

「ありえない!そもそも月が燃えてるのではなくそう見えているだけだ!実際には燃えてない!月が燃えるなどありえない!」

と、こちらも割と大きな声で対抗し始めた所でテレビを消した。

摘み出された事は2時間後ぐらいにネットで知った。見続けていれば良かった。

 

僕の経験上、こういう時は最もトンチンカンな事を言っている人こそが意外と正解に近かったりする。

映画のデイ・アフター・トゥモローだってそうだった。

というかトンチンカンが正解っていうのはデイ・アフター・トゥモローの話だ。

それ以外は知らない。

 

あとこういう時に「考えられない」とか「ありえない」とか言うコメンテーターこそトンチンカンだと思う。

現状起こってるのにありえないとか言ってどうするつもりなんだ。

そんな奴はずっと目の前の事から目を逸らして逃げていればいい。

 

だから僕は摘み出されたMOTおばさんの「絶対!」を信じて、遺書を書いた。

一体全体何がどうなるか分からないから、この遺書が誰に読まれるのか、そもそも残るのかどうかすら分からなかった。

でも書くべきだと思ったから、思ってる事とか無念さとか遺書を書くべきだと思ったという気持ちすら、書いた。

汚い字と汚い表現で汚い文章をなんとか書いた。

 

さて。

冒頭でも言ったけど、これは一昨日の話だ。

先ほど確認した所、月は相変わらず燃えている。

つまり、あのMOTおばさんもといマジで信用ならないトンチンカンクソババアは見事にハズしたのだ。

それどころか太陽が二つあるようなものなのに地球全体の温度が上がらないので、そう見えるだけで実際には燃えてないのでは?という話にまでなっている。

賭ける人を完全に間違えてしまった。

 

もちろん世の中は何もないかのように動いている。

月が燃えていても、僕のバイト先は9時に開店して21時に閉店する。

叔父がやっている工場だって普通に8時に始業するそうだ。

改めて人間は凄いと思う。

 

僕はというと、体調は治ったし遺書を書いて以来、バイトの事でもあまり悩まなくなった。

一度死を感じると強くなるという噂は聞いていたがどうやら本当らしい。

遺書はとりあえず机の奥の奥につっこんだ。

僕が70歳超えたあたりで引っ張り出されて僕が赤面するのもいい。

僕以外の誰かがそれを見つけた事をきっかけに色々考えるのもいいかもしれない。

なんとなく未来が明るくなったような気がした。

23時くらいになると明日からもまた頑張ろうと思ってみたりもしている。

こんな簡単な方法で気持ちが楽になるなんて。

何故気付かなかったのだろうか。

惜しい事をした。

そんなこんなで、きっと明日も明後日も来週も来月も来年も未来もなんだかんだで来る。

だから僕は布団の中でこの文章を書いた。

いつか迷った時に今日のこの気持ちを思い出せるように。

 

その夜、僕が電気を消して目を瞑る瞬間に、それまで体験した事のない強さの光に世界が包まれる。

その事に僕はまだ気付いていなかった。