山下司法書士事務所のブログ

長野市篠ノ井にある,山下司法書士事務所のブログです。(Web:https://yamashitashiho.com/)

system()やexec()はあまり使うなとは言われるけど

Windowsであっても,Linuxであっても文字を操作するプログラムには,文字コード変換が絡んでくる場合が多いです。

Windowsの場合は,以前のプログラムの文字コードがShift-JISのままになっており,最近ではUTF-8に変換する必要があります。

Fedoraにおいては,創生初期からUTF8を採用しており,特に問題にはならない場合が多いのですが,昔の資産であるbashコード等のプログラムを利用するため,system()やexec()を利用したときに変な現象に遭遇しました。

その現象とは,例えば以下のようなソースを,コマンドラインで直接実行した場合と,Web経由でPerl(CGI)とsystem()を利用してbashとして実行したときに全く別の結果が出ました。

#!/bin/bash
test=’長野県長野市
echo ${test:0:3}

bashperl: 長野県
Apache経由CGI: 長

説明すると,通常は前から3文字目まで文字の切り出しをして表示するので,「長野県」と出力されるのが正しいところ,Web経由で「長」と出力するのみで文字化けのような状況になりました。

よく考えるとCGIの場合,漢字1文字で3バイトであるため,3バイト分しか表示していないことがわかります。

試しに以下の実行命令をしのばせておくと

locale

出力にOSからのコマンドラインPerlからexec()やsystem()で実行した場合には,”ja_JP.UTF-8″と表示するにも関わらず,CGIから実行した場合には,”POSIX”を表示してしまいました。このままでは,コマンドラインとWeb環境では日本語処理が同じようにできない状態です。解決方法としては上記ソースの2行目に

export LANG=ja_JP.UTF-8

を挿入すれば,Apacheでも正常に文字の切り出しができることがわかりました。

本来はどうすればいいか調べると,どのサーバー環境の文字環境でも対応できるよう,POSIXに統一してソースを書いたほうがベストらしいので,

#!/bin/bash
export LANG=POSIX
test=’長野県長野市
echo ${test:0:9}

とするほうが正しいのかも知れません。しかし,プログラムが長い場合,大量の文字数の書き換え等が必要となってしまいます。古い資産を使うという点では,system()やexec()の用いたときには,ソースを書き換えずには利用したいので,対処方法としては「export LANG=ja_JP.UTF-8」の1行を挿入するほうを選択しました。

UNIXLinuxはすでに歴史が長くなってきているので,昔の人が作ったプログラムをそのまま実行したいというニーズも多いかと思いますので,参考にしてください。

Fedora40アップデート後のWeb上のファイル出力制御には手を焼いた

以前Fedora39からFedora40に移行について,記事にしましたが,Webサーバーからのファイル出力やデバイスの制御ができなくなってしまい,かなり手を焼きました。

症状としては,Fedora39からFedora40にアップデートしてから,FAXサーバー(efax)と知識の整理に使っていた「YukiWiki」というウェブアプリケーションが使えなったことです。

eFAXは,受信も送信も使えなくなりましたが,送受信それぞれ原因は異なりました。FAXの送信ができない理由とYukiWikiが使えなくなった理由は一緒でした。

FAX受信のほうは,もともとtiff形式で受信するため,tiffをPDFに変換するソフトが必要で,今までは「tiff2pdf」を利用していましたが,Fedora40からバンドルされなくなったのが原因です。
これについては,他のツール「ImageMagick」のconvertというコマンドを使うことにして解決しました。

convertの使い方は

convert recivefax.000.tiff recivefax.001.tiff recivefax.pdf

というように,複数のtiffファイルを1冊のPDFにすることも可能なので比較的移行が簡単にできました。

FAX送信のほうはかなりたいへんでした。症状としては,httpd(Apacheサーバー)から,/home以下にファイルの出力ができなくなったことと,/dev/serial といったモデムデバイスにアクセスできなくなったことです。

例えば,次のcgiを作成してWebサーバー上からアクセスした場合,

open(DATAFILE, “> ./test.txt”) or die(“Error:$!”);
print DATAFILE “長野県\n”;
close(DATAFILE);

通常なら,cgiのあるディレクトリ上にtest.txtというファイルが作成され,長野県と文字が入力されますが,作成されず,エラーログを確認すると

[cgid:error] [pid xxxxxx:tid xxxxxx] [client ::1:xxxxx] AH01215: stderr from /home/hoge/test.cgi: Error:Read-only file system at /home/hoge/test.cgi line 1.

が「/var/log/httpd/error_log」上に出力されます。他にも,PukiWikiを実行して,テキストの書換えを行うと

AH01215: stderr from /home/hoge/test.cgi: Permission denied at /home/hoge/test.cgi line x.

AH01215: stderr from /home/hoge/wiki.cgi: [Fri May x xx:xx:xxx 2024] wiki.cgi: /home/home/hoge//diff/XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX.txt cannot be created at Yuki/YukiWikiDB.pm line 84., referer:(略)

等,大体同じようなアクセス制御系のエラーが表示されました。

httpdのコンフィグやファイル,ディレクトリのアクセス権限等,いろいろあたってみましたが,全然解決せず,途中でFedoraフォーラムに問い合わせてみましたが,書いたあとにたまたまsystemdでhttpdのファイル制御している記事(Webuzo:「How to increase the number of open files allowed for Apache2」)を見つけて,自己解決できました。

理由は,どうやら,systemdの制御のコンフィグが変わったのが原因のようでした。解決の方法としては,

vim /usr/lib/systemd/system/httpd.service

以下追記
DeviceAllow=/dev/ttyS0 rw

ProtectHome=read-only
PrivateDevices=yes

ProtectHome=false
PrivateDevices=no
に変更

のちに,

sudo systemctl daemon-reload
sudo systemctl restart httpd

を実行したらうまくいきました。/homeディレクトリと/devをsystemdでアクセスを制限していたようです。無事Fedora40でもefaxサーバーの運用ができるようになりました。
(”PrivateDevices=yes”と” sudo systemctl restart httpd”は,5/11追記 )

Fedora39→40にアップグレード

 

Linuxサーバーのディストリビューションのひとつである,Fedoraが40にアップグレードされました。

アップデート方法は,今までとあまり変わりないようです。
(参考:Fedora Documentation “Upgrading Fedora Linux Using DNF System Plugin“)

FedoraRed Hat Linux9(RHL9)から派生したディストーションですが,RHL9からファイルサーバー等に利用しています。司法書士業務での利用は,Fedora20から開始しており,セキュリティを考慮し,この時期からアップグレード毎に更新をしています。

Fedoraは,ほぼ半年に1回は更新されており,Linuxの中でも先進的な技術を利用することができる反面,更新されたパッケージが成熟していない場合もあり,バグ対応や自身のメンテナンスを必要とする場合が多いです。

オンラインの登記申請,書類作成等は,当然Windowsのパソコンを利用しますが,データの保存やバックアップ,履歴保存,クラウド利用のみならず,データベースやFax,プリントサーバー,内線通話にも利用しているため,Fedoraサーバーも欠かせない存在となっています。

利用頻度が高いため,将来的には安定版のCentOSRed Hat Enterprise Linux(RHEL)への移行も考えなければならないところですが,踏み切れていないのが現状です。

 

代表取締役の住所を非表示にできます

非表示の措置をすると,多少なりとも支障があるようです。

株式会社の社長など,代表取締役は住所と名前が登記されています。
そのため代表取締役の住所は,登記情報や登記簿謄本でお金を払って取得すれば分かる仕組みです。

この代表取締役の住所を簡単にはわからないようにするために,本年10月からこの住所を非表示とする措置をとることができるようになります。
(参考 法務省:「代表取締役等住所非表示措置について」)

ただ,この措置は,登記のときに申出をしなければならず,あとからすることができません。現在登記されている代表取締役の住所を非表示にするためには,別の住所を表示する登記(住所変更や,新たな就任の登記)をともに行う必要があります。
(解釈上,重任や同一人物の「退任と就任」と同時の登記では非表示にすることができません。前の登記の表示が残ってしまうからです。)

また,法務省から以下の注意点が示されています。

代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

法務省 「代表取締役等住所非表示措置について」(上記引用先参照)

非表示措置といっても,市町村までは表示されるようです。非表示措置には支障が生じることもありますので,注意しましょう。

遺言書の遅い発見により,遺言が無意味に

相続回復請求権が認められないという最高裁判決がありました。

遺言書が相続から10年以上あとに見つかった場合には,それより前に遺言書と違う内容で相続した相続人の遺産は,時効取得によりそのまま遺言書と違う内容による相続が認められる判決がありました。
令和6年3月19日最高裁第三小法廷 事件番号: 令和4(受)2332

本来相続は,一般承継といって被相続人の権利義務をそのまま引き継ぐため,相続独自の時効取得を認めるかどうかは,否定する判決も多いです。(例 昭和54年4月17日最高裁第三小法廷

今回の件は,遺言書の遅い発見による場合には,時効取得を認めて,遺言書の効果を否定したかたちです。

相続回復請求権は,知ってから5年,相続開始から20年という民法の規定(民法第884条)があるところ,遺言書の発見が遅れた場合には,他の相続人の相続財産の占有から10年で時効取得となってしまい,この20年の規定が無意味になってしまいますので,注意が必要です。

商工ファンド(SFCG社)の根抵当権仮登記は抹消できますか?

今回は実務についてですが,商工ファンドの「根抵当権仮登記の抹消」の「訴訟」と「登記」が,研修の同期の司法書士の協力を得て実施できましたのでご報告します。

かつて事業者金融商工ローン)として事業していた「商工ファンド」社,後の「SFCG」社(参考 WikipediaSFCG」)ですが,サブプライムローン問題による金融不安や,同社自身の損害賠償や過払い金の請求により,民事再生→破産開始決定と経営破綻し,令和元年12月18日に破産手続の終結により,法人格を失いました。

登記事項証明書の例

同社の商工ローンを組んだかたが所有している不動産に,同社を根抵当権者とする「根抵当権設定仮登記」がされていることがあります。なぜ仮登記かというと‥登録免許税を1筆・または1棟1,000円に抑えるためのように思われます。
(通常の根抵当権設定は,極度額の0.4%)

登記の効力として,仮登記権利者が配当を優先的受けようとする場合には,あらかじめ根抵当権仮登記の本登記をしておかなければなりませんが,同社はすでに破産手続終結をしてしまっているため,仮登記権利者である同社が自らなにか手続きをする見込みはありません。このことが通常の根抵当権設定登記以上に,仮登記の抹消手続きを難しくし,手間と時間がかかるようになっています。ほぼ間違いなく登記の抹消「訴訟」により,抹消登記手続きを進めることになります。

また,通常会社に対する登記や訴訟をする場合には,会社の代表者を相手したり,共同にて行いますが,同社は法人格を失っているので,すでに代表者は存在しません。この場合,裁判所に同社の「特別代理人」を選任してもらわなければなりません。

このように同社の根抵当権設定仮登記を抹消して,お持ちの不動産を身綺麗にするためには,様々な検討を重ね,パズルを組み合わせるような手順を踏むことが必要となります。

大まかな流れとしては,

1.根抵当権の「抹消原因」の検討
 ある程度時間が立っているのであれば,「時効消滅」の原因を検討します。
 時効であっても,根抵当権の消滅なので,元本確定後10年(債務)または20年(根抵当権自体)を経過するする必要があります。

2.「元本確定」要因の検討
 債務者の死亡などで元本確定事由を確認します。元本確定がなされないと,根抵当権の債務や権利自体は時効にかからないようです。(参考 平成30年2月23日最高裁,事件番号:平成29(受)468

3.証拠書類の収集
・SMCG社の登記事項証明書
・不動産の全部事項証明書
・元本確定事由の証拠書類(例 債務者の戸籍謄本等)
 を集めておき,後に証拠として裁判所に提出します。

4.訴状の作成
 訴状の起案をします。特に訴額ですが,土地は評価額の1/2(価額)の1/2(担保権),つまり1/4が訴額です。(参考:平成6年3月28日民二第79号高等裁判所長官 「土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について」)また,被担保債権の金額の方が低額な場合には,その額とされています。
建物は評価額の1/2(担保権)です。また,被担保債権の金額の方が低額な場合には,その額とされています。
訴額によっては簡易裁判所に訴えの提起をします。
事件名の例は「根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件」。

5.法務局に相談
 訴状をある程度起案できたら,管轄法務局に起案した「請求の趣旨」で登記できるかを事案によっては確認することになります。(事案の形態が初めての場合など)
 例 登記原因とその日付
 「年月日確定」(元本確定日,判例では「年月日元本確定」というのもある)
→「年月日時効消滅」(元本確定日の翌日) 

6.特別代理人の選任申立
 不動産の所在地を管轄する地方裁判所(不動産価格(訴額)によっては簡易裁判所)の根抵当権仮登記抹消訴訟の提起と同時に,特別代理人の選任申立てをします。事件の内容によっては,この特別代理人をあらかじめ知っている弁護士に依頼し,就任承諾書を徴求の上,「特別代理人候補者」を記入することで,裁判所に特別代理人を早めに選任してもらえます。

8.期日,判決後,判決書正本と確定証明書を取得して抹消登記をします。
 時期によっては,元本確定登記のため,代位により同社の「商号変更」や「本店変更」登記が必要です。

今回担当してみて,課題もたくさんありました。

特に司法書士の簡裁代理権や弁護士により,訴訟を遂行すれば,本人の口頭弁論への出席は必要ないですが,訴額が高く,訴状の作成業務として司法書士が関与する場合には,本人に「口頭弁論期日に出席」してもらい,「陳述」と「証拠調べ」をしてもらわないといけないため,綿密な打ち合わせが必要でした。また,訴状や特別代理人の選任申立書のほかにも,多くの訴訟に必要な書類のやりとりをするため,本人と綿密にご連絡させていただく必要があります。

期間的にも,受任から抹消登記まで,4か月から6か月はかかる見込みですので,そのあたりを見据えた上で,各司法書士にご依頼いただければと思います。

今年の年度末の3/31は「日曜日」

公告や催告の開始日には注意が必要です。

日曜日が期限の末日の場合は,期間はその翌日を満了日とするよう定められています。(民法第142条)

本年は3/31が日曜日のため,1か月の公告期間の必要な公告で,2/29に知れている債権者への公告等をしてしまった場合には(例 会社法第449条 資本金の減少等),1か月の満了日は4/1となってしまい,効力発生が可能な日は4/2となってしまいます。(2/29に公告してしまった会社はもう遅いですが‥)
(参考 株式会社兵庫県官報販売所「官報公告の掲載日と公告期間満了日、登記の効力発生日について」)

そのほか,日曜に取引慣行のない契約の満了日も3/31までのものは,4/1が満了日になりますので,注意が必要かと思います。