昼休みの読書
今の職場は休憩できる部屋がせまいので、昼休みに本を読むことを控えるようになった。
顔を突き合わせて雑談しながら食事をしているような場所でひとり本を読んでいるのは、気が引ける。
本を読んでいると、何読んでるの?とか聞かれるのも、まあ、煩わしい。
勢い、話すこともなければ、スマホでTwitterを見たりして過ごすことになっていた。
中学生の頃は、食事を済ませたあと自分の席で小説など文庫本を読んでいたものだった。
教室ならば、一人でいても気まずくなかったのはなぜだろうか。
それが、二度目の緊急事態宣言が出て、職場でもデイサービスを利用する高齢の方向けの食堂が使われないことになった。
密を避けるということもあって、今までの休憩場所は利用人数が制限され、がらんと空いた食堂で職員が昼の休憩をとっても良いことになった。
それで、久しぶりに、昼休みに気兼ねなく読書できるようになった。
といっても、食堂が空いてから2週間ほどは、読書できるな、とも読書しよう、とも思わなかったので、習慣というのはおそろしい。
たまたま持参した本に栞がなかったのだけど、あえてそのまま栞を挟まないで、前後を確かめながらゆっくり読んでゆこう、そう思った。
久しぶりに実家に帰ったような感じで、あらためて休憩に読書することのよさを思う。
細切れの時間に、詩歌を論じた新書なんかを、ゆっくりと読み進めていると、せわしなくネットにつながった端末に目を落とすのとはやはり何か違って、ほんの数分でも、世の中から一歩身を引いて、くつろいだ時間に、凝り固まった気分を解きほぐすことができているようで、いったいいつまで気兼ねなく読書できる休憩をとる機会が許されるものかわからないけれど、しばらくは、このリラックスできるひとときを味わっておくことにしよう、と、そう思う。
Clubhouse冒険の書(7日目〜、そして日常へ)
http://yanoz.hatenablog.com/entry/2021/02/18/093537
の続き。
7日目早朝。
午前2時過ぎ、中途覚醒。
生命科学系の研究職をしている人たちが話しているroomを覗いてみる。
海外で働いているひとには、日本語で雑談できる場所にニーズがあるようだ。
世界各地から、時差を超えて人が集まって、和気藹々と交わされる海外暮らしの苦労話に耳を傾けていると、何故か軽くinferiority complex が湧いてくる。
clubhouseでは意識高い人が多くて圧倒される、自分はこんなんで良いのかなと思ったりする、と言っていた人の気持ちがわかった気がした。
7日目朝
いろいろなroomでいつも見かけていたobarazziこと尾原和啓さんの話をはじめてじっくりと聞く。本質を穿って行動まで落とし込む思考の徹底みたいなものが伝わってきて、著作を読んでみようと思う。
朝食後。
家事をしながら、いつ見ても続いていてずっと気になっていた「行き場を失った意識低い系」というroomを初めてじっくりと聞いてみる。
意識高いroomで行われているらしい「プロフィール添削」をパロディにして、マウントの取り合いをやめる脱力的プロフィールに書き換えるなんてことをやっている。
意識高い系のお作法をずらしながら、ゆるい連帯を広げて、居心地の良さを醸し出しているようだ。
逆境を楽しめる人はあたまが柔軟だなと思う。
7日目昼。
地域のカレンダーを描いたり地元で活動されているイラストレーターの方が話しているroomをのぞいてみたら、知り合いの誰かと思われたのか、スピーカーに呼ばれた。
これも何かの縁と、話してみる。地域活性化につながる仕事をしている方など集まっていて、ざっくばらんに地元トークで楽しいひとときを過ごせた。
地域でのつながりが広げられて嬉しい。
夜は科学系とか街づくり系とかジャーナリズム系とか、短詩系とか、いくつかのroomをのぞいてみる。
始めて一週間経ったので、初心者のアイコンに付くクラッカーの絵文字が消えている。
午後になってその事に気付いた。
フォローは900を越え、フォロワーも150を越えていた。
8日目朝。
6時15分起床。
出勤日は6時15分に起きるのがベストなのだけど、6時からの医療系roomを途中から聞く。
もどかしさはあるけど、そのために15分早起きすることもないか、
と思う。
昨晩、夜10時までといって開いていた神経科学のroomが朝まで続いていた。
議論が盛り上がると止まらないという時間も研究者には大切なものらしい。
仕事中、昼休み。
clubhouseきっかけで買った西村佳哲さんの『自分をいかして生きる』を少し読んでみる。
丹念に言葉が選ばれている文章をゆったり味わえた。
Twitterで本を知っても、リストに入れたままにしてなかなか読まないで終わってしまうがclubhouseで知った本は、すぐに読んでみたくなるようだ。これが声の働きというものだろうか。
8日目帰宅後
福祉Moverを始めたという方が話しているroomを入浴しながら聞いてみる。
落ち着いた語り口はリラックスできて、語られる内容にわくわくする。仕事に関わる話を聞いて、気持ちがほぐれることもあるんだな、と思う。
語り口やトーンの感触から、良いroomとの出会いをもっと手探りしたくなる。
次の日も出勤日。
早朝、中途覚醒。
週末だからか、朝3時頃でもたくさんのroomが賑わっている。眠る前に少しだけ、roomをいくつか覗いてみる。
6時前に目が覚めたので、寝床に入ったまま、あの内科医さんのroomを、開始準備中から聞いてみる。聞きながら少し寝落ちしていた。それはそれで悪くない心地。
朝食をとりながら、この時間いつも開いているようなroomをいくつか覗いてみる。
朝食を済ませて、clubhouseを閉じる。
ラジオを聞きながら家事を済ませて出勤する。
clubhouseを初めたころ、ゴミ出しを忘れたり、洗濯ものを洗い忘れたりしたことがあった。
この頃やっとclubhouse熱は少し落ち着いて、ラジオでCMを聞いても、これも日常だな、と和むような気持ちになる。
次の日は休日。
休みの日には家事の合間に時折りclubhouseでいろいろな声を聞いてみたりしながら淡々と過ごすようになってきた。
自分のフォロワーも増えたので、自分がroomに入ったことで参加者を誘導できたかなと思う事も起きるようになる。
聞いたことや、響いたものが、自分の中で次のつながりを待っている。
「clubhouseのある日常」がはじまる。
Clubhouse冒険の書(4日目から6日目まで)
前回の記事
http://yanoz.hatenablog.com/entry/2021/02/14/160619
の続き。
4日目朝
出勤日。
休日のClubhouseの気分を引きずったまま出勤してはいけないよな、と思いながら、いつものラジオ番組をきくだけにする。
自分にフィットしたroomの居心地の良さを思うと、朝のラジオの進行には、ちょっと自分には合わない瞬間があるよな、と思う。
ラジオcmの時間とか、今までよく耐えてきたよな、という感じ。
仕事の合間に、いずれやってみたいroomのアイデアがうかんで、休憩中にメモしたりする。
4日目夜
家事とナラティブというテーマが面白そうだったので、スープ作家の方と経営学者の方が話しているroomを聞く。
自分の家事の仕方について、いろいろヒントをもらう。
この二人を担当する編集者の方も話に加わって、あの本とこの本、同じ人が編集してたのか!と思う。一見つながらなさそうな人がこうしてつながっていくのだな、と思う。
5日目朝
この日は出勤しない日。
手当たり次第にしていたフォローを整理するチューニング作業を始める。
こういうroomに入るなら相性が良くないだろうな、という方のフォローをそっと外していく。
この朝、「妻がこんまり」とプロフィールに見かけて興味本位でフォローしていた川原卓巳さんの話をはじめてじっくりと聞いた。
まじめさとユーモアとのバランスの取り方が素敵な方だなと思い、著作を図書館にリクエストした。
あれこれroomに出たり入ったりしていて、どこかで見た名前だな、なんて思うと、以前読んだ本の著者だったりする。
著作を読んで、そこまで良い印象を持っていなかった方でも、語り口を聞いて、本からは見えなかった人柄の魅力に気付く、というようなこともある。
5日目昼食前
先日参加した哲学対話の方のroomにまた参加する。
自分はいくらでも話せてしまうので、どの程度まで話題にのって、どの程度まで話すかの加減をはかりながら、ちょっと話しすぎる直前くらいまで話すことにしてみる。
話題に上がった短編小説を青空文庫で読みながら感想を言い合うというおもしろことがおきていた。
5日目昼食後
30分限定のランチミーティング的なことをしているroomをのぞいてみる。
気さくな異業種交流会のような雰囲気。
いつ見ても開いていて、人が入れ替わり立ち代わり雑談しているようなroomも有れば、ルーチンのように時間を決めて人が集まっては解散するようなroomもある。
出勤前に気持ちを仕事モードにできるようなroomが見つけられると良いなと思う。
6日目
出勤日。
真夜中に中途覚醒したときにちょっと聞いてみたroomが、朝まだやっていた。聞きながら二度寝。変な夢をみた。
内科医の方が毎朝早起きroomをやっていて、毎日テーマを変えて医療の話をしている。
仕事の上でも勉強になりそうだし、出勤日は聞くことにしようかなと思う。
帰宅後は主に学問系のいろんなroomをはしごする。
数分聞いても、思考の型とか人柄とかみえてくることもある。
数分で情報として完結した話を耳にすると、それだけで耳学問ひとつゲットした満足感が残る。
この人ちょっと気になるな、と思って話を聞いていると、以前Eテレで見かけて興味深かったアニメの制作に関わった方だった、みたいなこともあった。
自分の雑多な関心が、何か持っている方向性みたいなものが、きっとあるのだろう、と思う。
続き
clubhouse冒険の書(初日から三日目)
以下、clubhouseを始めて3日間の日記になります。
初日、気になるキーワードでpeopleを検索したり、見かけたアイコンから少しでも興味を惹かれるひとをみつけたりで、手当たり次第に100人くらいフォローしてみる。
長野智子さんだったか、現役教員の方と話している様子を面白く聞く。
話題に上がった人をその場で呼んで話しはじめたりとか、フットワークの軽い使い方ができると体感して、わくわくする。
これは流行る、と納得。
森田芳光さんが気象予報士界隈の深い話をしているroomも面白かった。
原液のままで専門的な話が聞けるというのはこの事かと思う。
2日目の早朝
手当たり次第フォローしてみたのが幸いし、出身地の果樹農家さんが農作業しながら気ままに同業の仲間と話しているroomを見つけたので聞いてみる。
リラックスした語り合い。
良い声で魅力を感じる。
話す相手が抜けてちょっと間が空いたタイミングで、初めて手をあげて話す側に回ってみる。
果樹農家さんと地元トークや素朴な疑問を巡って気軽に話すことができた。
TwitterなどのSNSよりも、ハードル低く初対面の方と話せると実感。
音声のやりとりがその場で完結するので、すれ違いからのいざこざは回避しやすそう。
通勤時間を過ぎる頃、そのroomには様々な方が出入りしてきて、自分は聞く側に戻り、食に関する商売の話があれこれ転がったり膨らんだりする様子を小一時間楽しむ。
自営業の方が仕込みをしたり配達したりしながら雑談していると情報交換になるという、そういう仕方で機能しているのか、と思う。
Roomを探しているたびに名前を見かけて、武田双雲ずっといるな、と思う。
2日目の午後
若手ライター的な方が一期一会で誰とでも話します、みたいな趣旨のroomをやっていて、覗いてみる。
一対一で話しが進んでいる様子をこっそり聞いていると、前の方が退出して、話しませんか、と呼ばれた。
お互いのプロフィール欄なんかを見ながら探り探り話していると、意外とあれこれ共通点があって、小一時間楽しくおしゃべりできた。
話し始めたときには他に誰も居なかったのに、終えたときには3人ほど聞いている人がいて、軽く驚く。
初対面同士が互いに配慮し合って丁寧に話していると、第三者が聞いても楽しめるトークになっていた、という事だろうか。
自分でも何かroomを開いてみようかな、という気持ちになる。
深く考えずに、沢山の人をフォローしていたけど、フォローしていてもroomで一緒にならなければ特に関係が生じないので、Twitterなどに比べて見知らぬ人をフォローすることへのハードルが低いように思う。
2日目夜
本の著者同士が互いの本について話すというroomを聴いてみる。ジャーナリズムのプロ同士が落ち着いて内容を深掘りしている対談で、ラジオ番組のように楽しめた。
初対面同士が話す面白さもあれば、専門家同士が意気投合する様子を楽しむ面白さもあるのか、と思う。
2日目の夜も森田芳光さんがいるroomを見かけて、すこし聞いてみる。
ラジオよりちょっとくだけた感じ。気さくにコアな話をするのが楽しげで面白い。
3日目朝
フォローを勢いよく増やし過ぎて、制限される。
半農半Xみたいなテーマのroomを見かけて聞いてみる。世の中、面白そうなことをしてる人が大勢いるものだなと思う。
clubhouseは、やっぱり、独立自営な人に向いているSNSみたいだ。
3日目昼
哲学対話のroomを見かけて、運良く始まるタイミングで参加できた。
知らない人ばかりで、哲学対話の経験も浅いので、ちょっとドキドキしつつ何度か発言してみる。
clubhouseは、哲学対話でも使いやすいみたいだ。
3日目午後
樹木葬をしているというお寺の住職が知り合いの方とのんびり話しているroomを小一時間聞く。
ちょっと疲れていたので、clubhouseのやりすぎもいけないからちょっと控えようと思っていたところだったけど、落ち着いた話をしているroomは、リラックスできて良いな、と思う。
聞いてて癒されるようなroomは希少のようだけど。
3日目夜
藤村シシンさんがclubhouseを始めたってことで早速企画が立ってroomに呼ばれてるのを聞く。
楽屋裏感あって楽しい。
その夜、はじめて知り合いを招待してみる。いろいろ機能を教えてあげつつ、その人とroomの公開も試みてみる。不慣れな感じであたふたしていたら、間違えて入室した人が慌てて出て行くというような事が起きたりして、恐縮がちに部屋を閉じた。
不特定多数に公開しながら話をうまく楽しむのはなかなか難しそうだなとおもう。
どうせやるならちょっと企画を練ってみないとなと、あれこれ案を巡らせてみる。
と、そんな感じで。
週末にかけて、たまたま三連休にしていたので、clubhouseを開く時間を多く持てたというわけだった。
ビギナーズラックでスタートダッシュした感じの3日間、このお祭り状態もそう長くは続かないだろうし、clubhouseの初期衝動的な盛り上がりを運良く堪能できたよな、と思う。
続き
タイトル変更
ブログのタイトル「石のベンチとテーブル」だったのを、「朝のベンチとテーブル」に変更しました。
その前にも、別のタイトルだった気がするけど、忘れてしまった。
「石のベンチとテーブル」というタイトルには、座り心地の悪いテーブルに座って、対話したり、とりあえずやり過ごすように過ごしたりする場所、というようなイメージが込められていて、その頃の自分の社会に向き合う緊張感というか、社会への感触を託していたような覚えがある。
その後、住む場所も、職場も、家族のあり方も変わって、心境の変化もあり、前のタイトルはそぐわなくなってきたので、ちょっと模様替えしてみたというわけで。
それでなんで「朝」だったのか、次にタイトルを変える機会があれば、自分なりにまた書き添えるかもしれません。
夜の不/健康
先日ふと思い立って、自分が過去に関わったネット上の活動(※)や、その渦中に書いた記事をまとめて振り返ったりしていたら、半徹夜してしまった。
健康には良くないわけだが、そんな風にでもないと、一見生産的じゃないような過去の掘り起こしなどできないという事もある。
昼間の、生活の必要に迫られて、整理したり準備したりと道具的に役立ち役立てるような事柄でつい埋まってしまう、そんな時間にはできない事もある。
排水の渦巻きを励ます #mutamagawa
— yanoz (@yanoz) 2011年1月31日
過去の自分が衝動に駆られていた時の、すっかり忘れてしまっていた心の動きを辿ってみると、不思議と、眠っていた衝動が息を吹き返すような、鼓舞されるような感じになってきた。
閾値を超えて出口を探していた意欲に、突破口が開いたというような。
自分語りしたい欲みたいなものは、はしたないかのように思っていたが、他でもない自分自身のために有益なのだった。
こまごまと心の動きを書き残してくれた過去の自分ありがとう。
非公開の日記でも同じようなことはあるかもしれないが、他人に読ませるように書いたからこそ未来の自分に届いたとも言えるので、他人に向けて書こうという姿勢に意欲を与えてくれたインターネットありがとう、である。
(※)まあ、ツイート武玉川のことですが。
欲鬱
四半世紀を超えて生きていると、何か楽しみたいのに何も欲がわかないのが辛い、という風になっていることが時々あったりする。
アペリティフとかアペタイザーとかいうものがあって、食欲をかきたてるものであり、軽めの酒とか前菜だったりするらしいけど、さあ大いに食べるぞ、という前に欲がくるくるとよく働くように弾みをつけてくれるものを口にするわけである。
若いときは、そういうものの必要性が実感としてわからなかったような気がするのは、おでこのあたりに産毛とか綺麗さっぱり無くなって、え、いつの間にこんなに額が後退してたのこのままはげちゃうの、とかいう30前のたじろぎとか、つかの間の不安みたいなものが、まあ幸いにも取越し苦労で終わって、うちははげの家系じゃないからな、とか安心したりしていたのもすっかり忘れて過去のエピソードと化した40前の一時期に、そういえばアペリティフとかアペタイザーとかいうものの必要性がわかってなかったな、と思ったような記憶の感触がおぼろげに漂ってきたりするからである。
若いときは、などとと一般論にするべき事でもないかもしれないが、勝手にフル回転していた欲が、加齢につれて、なかなか弾まなくなるなんてことは、ありがちな、月並みな、よくある、ありふれた、事かもしれない、というか、面白くもないそこらに転がっているような歳くったなという感慨である。
去年あたり、音楽も、映画も、マンガも、アニメも、あんまり楽しくないなあなどと思うことが続いた。
そういう、欲の車が弾まないような状況は、重たく、息苦しい。
まあとりあえず、欲の流れが兆したら、ちょっと気前よく小銭を弾ませておくのが良いようで、ケチケチしないでKindleでマンガ買ったり、iTunesで曲買ったり、している。
まあ、たいした収入もないので、もともとのケチな性分が、節約しないといけないような気分こそ正義、みたいにからみついて、きがつけば息もつけなくなるようなことになる情けなさを察して頂きたい。
ブログに饒舌気味の作文をしたりするのも同じようにで、表現欲のドライブが、次の欲をくみ上げる呼び水になってくれたら、と思ったりしている。