孤高の敏腕刑事・加賀恭一郎シリーズ まともに「シリーズもの」と意識して読んだことなかったので いまさら読んでみている。
シリーズ1作目の『卒業』はずっと前だけど読んだことがあるので(そしてあんまり面白いと思えなかった覚えが。)飛ばして、2作目の『眠りの森』から。
『眠りの森』
早朝のバレエ団の事務所で、身元不明の男が死んだ。取り調べによると、団員の女性が彼と遭遇して揉み合いになり、部屋にあった置き物で殴ったところ、死なせてしまったとのこと。不審な点がみつからなければ、身を守ろうとしてとっさにした行動「正当防衛」が成り立ち、女性は放免となるはずだが、どうもこのバレエ団の面々はみんな、なにかを隠しているような・・・。そしてそんななか、バレエ団の関係者に第二、第三の死者が。
おもしろかったけど、90年代あたまの作品てことで、さすがにかなり古さを感じた。それに、天下の東野圭吾にも、こんな時代があったんだなーとおもった。どこか幼さと浅さが感じられた。でも一定以上にはおもしろいんだけど。いまの東野圭吾がこの作品を書くならもっとバキバキにおもしろく仕上げるんだろうなー。
テレビで特別ドラマとして放送されたことがあったみたいで、U-NEXTで観られたので、観た。おもしろかった。一般受け用にわかりやすくアレンジされていた部分はあったし、加賀とヒロインのロマンスの要素は、役者の実年齢などを考慮してか、薄められていたけど、大筋では原作をゆがめることもなく、うまくまとめられていた。というかむしろドラマの脚本の方が、原作のやりたいことを上手にとりだして、よりはっきりと伝わるように、メリハリつけた演出がなされていたようにおもう。ヒロイン役の石原さとみが、良かった・・・。彼女のラストシーンは、さすがにわたしもうるっときた。
『どちらかが彼女を殺した』
離れて暮らしていた妹が死んだ。直前に落ち込んだ様子で電話をかけてきたため、自殺かとも思われたが、交通課の警察官である兄は、事故現場の検証で培ったするどい観察眼で他殺を疑い、重要な証拠資料をひそかに独占、自力で事件の真相に迫ろうとする。
加賀恭一郎シリーズの第3作。
これはいわゆるリドルストーリースタイルってやつだな。
犯人が結局はっきり明かされないようになっている。
うまいぜー。こんちくしょう。
犯人が誰かを考えること以外に、ドラマとしてもすごくおもしろい。
かわいい妹の、知らなかった横顔。
『悪意』
人気作家が他殺遺体となって自宅で発見される。被害者は海外への移住を目前にひかえており、荷物はほとんど発送ずみだったので、綿密な下調べをしたうえで侵入することが多いとされる強盗などのしわざとは考えにくく、加賀恭一郎刑事はすぐに、顔見知りによる犯行をうたがう。そしてまもなく犯人があきらかになるのだが、その人物は犯行の動機について頑なに口をつぐむ・・・。
加賀恭一郎シリーズ4作め。
おもぴろい!!!
わたしは「犯行の動機」を語ることに重点をおいた推理小説には繰り返し読みたくなるような傑作がおおいと思っていて、そういう小説がじっさい好きでもあるので、犯行動機にテーマ全振りのこの作品は楽しかった。
作者による地の文で展開していくのではなく、登場人物たちそれぞれの日記や手記、インタビューの書き起こしなどといったいわゆる「記録」によって全編が構成されている というスタイルが、すごくこの作品にマッチしていたとおもう。
いやー良いですね。