電光らんちうキック

漫画、特撮、映画に関してぼちぼちつぶやいてます

いい湯だな 湯気にかすんだ 赤い染み

引きこもりがお風呂屋でバイト始めたら、閉店度にそこで人を殺してました(掃除が楽なので)…という映画『メランコリック』を観ました。

 

メランコリック

メランコリック

  • 発売日: 2020/04/02
  • メディア: Prime Video
 

 
主人公は東大卒の無職男性。言うなれば「勉強特化すぎて他が全然できないタイプ」。しかも、調子に乗りやすく、危機意識が皆無。
偶然に偶然が重なって殺しの仕事の手伝い(浴場の掃除)というヤバい仕事に手を染めたにも関わらず、高額のバイト代が入ったことに舞い上がっていきなり同級生の女の子を高級レストランに誘っちゃうくらいに現状認識が甘い。後に殺し担当の同僚からヤバことになってる自覚が無さ過ぎると怒られるくらいに甘い。

そして、お風呂屋としては無関係の彼をイレギュラーでヤバい仕事に関わることになったので、元請のヤクザから銭湯のオヤジに「彼を始末するか殺しをやらせるかどっちかにしろ」とお達しが来ることに。

 

ヤクザから汚れ仕事を受けてるけど無茶振りが続いて疲弊している銭湯のオヤジ。
ヤクザに目をかけられてる殺し屋の青年。
そしてヤバいことになってる事にやっと気が付いた引きこもり元・東大生。
彼らはこの現状を打破するためにはヤクザを殺すしかないと決断するが…というお話。

 
このあらすじを読むと、「ダメダメな東大生が地頭の良さを発揮して危機的状況を切り抜けるのかな?」とか「陰惨なバイオレンス映画かな?」と思うでしょうけども、さにあらず。
もっと淡々とした「人生って、しあわせって何だろうね」という映画なのである。

前述した通り、主人公の「東大卒」という属性はこの事態に対して何の解決策ももたらさない。むしろ面接でも雑談でも「東大まで行ったのになんで無職なの?」と聞かれるばかり。「東大卒」という肩書が、それを活かせていない現実と相まってマイナスにしか働いていないのだ。東大卒であることと満たされた人生であることには何の相関関係にもないのに。

 

では彼がどん底にあるのかというとそうではない。
まず、両親が彼に普通に接している。「東大まで行ったのに仕事もしないで!」とか言わないし、風呂屋のバイトを始めたことに対しても非常にフラットに接している。
そして自分を気にかけてくれる女性ができた。

汚れ仕事のバイト先とはいえなんとなく会話ができる同僚もできた(若干調子に乗り始めて見てるこちらはヒヤヒヤするけどそれはそれとして)。
安心して帰ることのできる場所と、徐々に拡がっていく人間関係。「東大卒」であることとは無関係の所にしあわせが芽吹いている。

果たして彼の見つける人生の価値とは?

 


この映画はサスペンス要素はあるがサスペンスではない。ヒューマンドラマと言うほど重くもない。Amazon プライムではジャンルが「コメディ」となっているが喜劇というほど軽くもない。
サスペンス、ヒューマンドラマ、コメディの間に綱を張ってその真ん中でどっちつかずの場所に佇んでいるような絶妙なバランス感覚の作品である。

ポスターに添えられた文章が「人生、こんなはずじゃなかった」というヒューマンドラマ的なものと、「お風呂屋さんの仕事も、結構あぶないんですね。」というコメディ寄りのものと 2種あるのもこの映画をよく表している。

 

この映画のレビューを見ても感想が分かれていて面白い。
サスペンス的な視点で彼らの行く末に思いを馳せている人。
コメディととらえて素直に楽しんだ人。
主人公とヒロインの姿から青春映画ととらえた人など様々である。

 

あなたはこの映画にどんな感想を抱くだろうか。

オンライン対戦したいけどできないお話

マシーナリーとも子氏の「浅瀬勢のグラブルVS日記」という記事を読んでたらですね、自分の中の格ゲーに関する思い出やら不満やらがグルグルとうずまき始めちゃいまして。

感情がぐちゃぐちゃになりかけたんで、ちょっと文章化して吐き出そうという次第でございます。 

 

game.asahi.com

 

技やコンボはなんとなく出せるし、たまにランクマで勝てたりもするけど全然昇段できなくて、かといって勝ち上がれるようになるためにめちゃめちゃ努力するかというとそういうこともせず、延々と浅瀬でパチャパチャ水をかけ合っている者たち……。 

そう! 私のような中の下くらいの、なんとも言えない感じのプレーヤーがいちばん多いはずなんだッ! 

 

 

この「浅瀬勢」に私も属しております。強くないけど初心者じゃない。 

そして格闘ゲーム(以下、格ゲー)の対戦は大好き。 

 

対戦は大好きなんだけどもオンライン対戦に積極的ではないんですな、これが。 

ゲーセンでの対戦格ゲー全盛期から数十年。ゲーセンから格ゲーの筐体が消えて「対戦ができない」とがっかりしてたんだから、家にいながら対戦ができるオンライン対戦は喜ばしいものであるはずなのにむしろ忌避している。 

 

思い返すと初めてのオンライン対戦の思い出がよろしくないんですな。 

2000年頃かな。ゲームはドリキャスの『デッド オア アライブ2』。 打撃、投げ、ホールドの3すくみが楽しい大好きな格ゲーです。

初めてのオンライン対戦。「ゲーセンではあまり見かけない『デッド オア アライブ2』の対戦ができる!」とドキドキしながら入った部屋には先客が4人くらいいました。

自分の順番が回ってきて2回も対戦した後だったかな? 

部屋には誰もいなくなってて自分のアバターだけポツン取り残されてました。 

 

原因は自分が「浅瀬勢」だったからなんでしょう。 

一度手合わせすれば実力の差は充分すぎるほどわかります。

コンボの分岐を把握して適格に置かれたホールド技(※)。一度浮かせば確実に叩き込まれる最大火力の連続技。そもそも選ばれるのは強キャラばかり。 

チャンスにもモタついているような自分のプレイが場違いだったのは想像に難くありません。 

※:デドアラのシステムの1つ。投げを潰せる打撃、打撃をつかめるホールド、ホールドに強い投げの三すくみがデドアラの肝。 

 

しかし楽しく遊んでいたつもりが突然仲間外れにされたのはかなり堪えましたわ。 

子供の頃の「アイツつまんないからほっとこうぜ」と置いていかれる疎外感を成人してから味わうとは思わなかった。 

 

今は対戦のための部屋を立てなくても『ストリートファイター5』などには世界の誰かと1戦だけ対戦できるカジュアルマッチなんてのもあるんですが、それでも対戦後「対戦相手はつまらなかったんじゃないだろうか」という気持ちがぬぐえずあまり対戦はしてません。 

 

思えばゲームセンターで対戦をしていたころは、筐体の向こう側で誰がプレイしているのか、どんなプレイスタイルか、腕前は自分と比べてどれくらいの差があるか、などを確認してから挑戦することができました。 

対戦相手が思ったような相手でなかった時は「自分の見立てが甘かったな」と納得することができたわけです。 

 

オンライン対戦では気の知れた相手でない限りそれは無い。 

今対戦した相手は浅瀬勢にあたって舌打ちしてるガチ勢かもしれないという気持ちは常につきまとう。 実際、海外勢から罵倒してると思しきメッセージをわざわざ送られたこともあるし。

気にしなきゃいいんですけどね。最初のオンライン経験がアレだったし、SNS上でもたまにオンラインゲームの対戦相手(あるいはチームのメンバー)に悪態ついてる人を見かけるんでなかなかそうもいかんのです。

 

それでも人間との対戦は好きだし、マシーナリーとも子氏の記事で「浅瀬勢」って案外いるのかな?って気分にもなったので、同じような思いの浅瀬勢のみなさんがいるなら一緒に遊ばせてもらって対戦のリハビリをしたいですね。 

 

だって対戦は楽しいもの。

父と子と横綱の御名において

時は2XXX年。アメリカ合衆国
謎の奇病で立ち上がることもできなくなり姿を消した“技の横綱五大湖全身を機械化して土俵に姿を現した。

五大湖は次期横綱と目されている大関・満破綻(マンハッタン)を立ち合いの変形からの八艘フライ(飛行形態での急上昇→落下)で倒し、技を越えた技術(テクノロジー)の相撲を見せつけるのだった。

大相撲はこのままテクノロジーに敗れるのか?
否!
伝説の横綱であれば!あるいは!


横綱とは神である。
元は人の身でありながら、心・技・体を兼ね備え神になったのが横綱である。

では、その神はどこにいるのか?
神となった横綱教会にいるのだ。
合衆国相撲教会その地下で石像となって眠り、大相撲が危機に見舞われた時に三種の神器によって目覚めるのだ。


三種の神器
すなわち

神の子を突いたロンギヌスの槍(太刀)
神の子より流れる血潮を受けた聖杯賜杯
神の子の骸を包んだ聖骸布(まわし)

によって。


目覚めた伝説の横綱は、科学によって生まれた技術の横綱に勝てるのか?
あわせた両手から放たれる大閃光「CAT・FAKE(ねこだまし)」!
全身から放たれるミサイル一斉発射「四十八手フルバースト」!
技術の粋の兵器に対し、その身一つで前に出る伝説の横綱
やがて歴史的な激闘となるこの一番を描いたSF相撲漫画

その名を五大湖フルバースト』! 

 

奇才、西野マルタ繊細、かつ大胆な筆致で描くこの作品を紹介したくてうずうずしていたが、大好きな作品だけに紹介するタイミングを逸し続けていた(そういう作品が山ほどある)。
だがこの度、〝河童×相撲〟をテーマとして短編集『えんこうさん』が発売されるとの情報を得て「紹介するなら今しかないだろう!」と紹介記事を書いた次第である。 

えんこうさん (SPコミックス リイドカフェコミックス)

えんこうさん (SPコミックス リイドカフェコミックス)

 

 

このうち『小銀杏譚』は試し読みで全編公開されている。これを読めば「繊細かつ大胆な筆致」という特異な作風がご理解いただけるだろう。

『小銀杏譚』試し読み前後編

leedcafe.com

leedcafe.com


書籍版の五大湖フルバースト』には、薬物投与と遺伝子操作で究極の身体を手に入れた“力の横綱”リヴァイア山伝説の横綱五大湖と立ち会った伝説の横綱とは別の横綱)の一番『両国リヴァイアサンが収録されている。
そして、巻末にはSF相撲漫画3部作最終章“心の横綱の予告が告知されているがこの作品は未だ公開されていない

 

SF相撲漫画3部作はこのまま完結しないのか?『小銀杏譚』は書籍化しないのか?と恐れていたので、『小銀杏譚』の書籍化が成った喜びは筆舌に尽くしがたい!


これを機に西野マルタ作品が世に広まって欲しい!

 

そしてSF相撲漫画3部作の完結を皆で迎えたいのである!

たとえばそこにこんな歌があれば

部活モノの漫画は星の数ほどありますが今回とりあげるのは「工業高校の合唱部」漫画『はしっこアンサンブル』。 

 

「工業高校で合唱部?ノコギリに弦を当てて歌わせたりするの?横山ホットブラザーズなの?」とギャグ漫画的な作品を想像しましたが然に非ず
低い声にコンプレックスを持つ新入生の藤吉晃が、同じく新入生で合唱部を作ろうと1人校内で高らかに歌い続ける木村仁と出会うことから始まるストレートな部活モノです。

afternoon.moae.jp

「部員を集めて新しい部活を作ろう」と部活モノとしては王道ですが、特殊なのはその方向性。
歌がテーマの作品となると「想い」だとか「気持ち」だとかを前面に出しがちですが、仁が常に手に持っているのは「周波数解析アプリ」、語るのは「声帯と発声のメカニズム」「筋肉」「音の仕組み」あまりに論理的!最高にロジカル!

 

このロジカルさに完全にやられたのが同級生の折原昴聖のエピソードでした。
金髪で無愛想な上に常時イヤホンをつけて1人でいるので何かと目立つ上、目立つがゆえにちょっかいを出され怪力で暴れ狂うトラブルメーカー
その原因は彼の幼少時のトラウマにありその解決のカギになるのが合唱なのですが、このエピソードの解決があまりにロジカルだったのです!
「歌で心が癒された」とか「弟の想いが云々」とかでいくらでも感動のエピソードにできるのに「音が脳に与える影響」で説明しきっちゃった!
これで完全にやられてしまいました。

 

ロジカルロジカルと言ってきましたが論理一辺倒に振れているわけではありません。
仁が論理的な反面で人の気持ちの機微を推し量る能力に欠けるのに対して、晃が児童文学が好きで言葉への感度が高く空気も読めるためバランスがとれています。脇を固めるクラスメイトたちも個性豊かで学園生活のシーンだけでも楽しく、そして工業高校という学園モノではやや特殊な環境は良いスパイスになっています。
このとがった所はとがらせつつ絶妙のバランスが取れているのが『はしっこアンサンブル』最大の魅力なのです。

工業高校ゆえに数少ない女性陣も巨乳でメガネの担任盗癖持ちひきこもりボサ髪メガネっ子逸材揃いでバランスが良いのもいいですね!

目ん玉飛び出るようなプロレス漫画

プロレスゲームの名作である『ファイヤープロレスリング』の最新作、ファイヤープロレスリング ワールド』(Steam,PS4)が前作から13年の時を経て発売されました。 

 前作『ファイプロ・リターンズ』でレスラーをエディットしては数年間ホームページにアップし続けていた自分としては感無量。steamでのアーリーアクセス版を一足早く購入してPS4版も購入。
往年のファイプロファンたちの喜びの声や自慢のエディットレスラーをSNSで目にすることもできて、良い時代になったとしみじみ思っております。

 

というわけで、ファイプロ発売を祝して「だいたい5巻以内で完結する良作プロレス漫画」を御紹介。
いや、いつかやろうと思ってたんですが好きなジャンルの話ってのはかえって踏ん切りがつかなくて今日までズルズルと…


『1・2の三四郎 2』(小林まこと、全6巻、1994年) 

 海外修行から帰国したが、所属団体が解散していたためそのまま引退したプロレスラーの三四郎
ファミレスの店長としてそれなりに満足して暮らしていた三四郎だったが、かつての同僚が立ち上げた団体を助けるために再びリングに戻るのだった。

タイトルに「2」と入っていることから分かるように『1・2の三四郎』の続編にあたるが、「2」から読んでも全く問題は無い。

この作品の魅力は「プロレスラーがプロレスラーとして強い」という描写の説得力にある。
連載当時のプロレス界は多団体時代に入った時代。デスマッチ路線のFMWや格闘技色の強いUWFが一世を風靡していた頃。作中でも同様にデスマッチ系団体や格闘技色の強い団体が描かれており、特に格闘技色の強いプロレス団体FTOを率いるかつての後輩・赤城欣市との確執がメインとなる。

 

アントニオ猪木の格闘技戦から20年近く経ち、格闘技路線のプロレスが生まれたからこそ生じる「プロレスラーは本当に強いのか?」という疑問。ラリアットやブレンバスターなんて技は相手の協力が無いと成り立たないと作中で赤城にも純プロレス批判をさせている。
そんなプロレスに対する疑念の数々を三四郎は言葉ではなくプロレスで晴らして見せる。理屈でもなく格闘技に対応するでもなく、ただ鍛えた身体で、身につけたプロレスだけで。
プロレス漫画でこれほどカタルシスをもたらす作品は『1・2の三四郎 2』を置いて他にないと断言できる。全プロレス漫画の中でも比類無き名作。


『ロックアップ』(猿渡哲也、全4巻、2013年)

 あかつきプロレスの社長、兼現役レスラーのサムソン高木末期がんに侵されている上に長年のファイトで頸椎も肘も膝もボロボロ。満身創痍の身体を抱えて貧乏インディ団体のために今日もリングに上がる。

プロレスとは何かと問われれば「受けを見せる格闘技」であるというのが一つの答えになる。多くの格闘技の理想形が「(ルールの範囲内で)相手に何もさせずに一方的に無力化する」であるのとは真逆である。
プロレスラーは様々な攻撃を受ける。他の格闘技では危険であるため反則になるような技を仕掛けられても、体重100kgを越える男が頭上から降ってきても、パイプ椅子を振りかぶってきても受ける。
そのため「プロレスは信頼関係で成り立つ」とよく言われるが、サムソン高木が見せるのはまさしくその「信頼」そのもの。
自分の殻を破れずにいる新人にも、有刺鉄線を巻いたバットを持って殺し合いのつもりで挑んでいた相手にも、サムソンは「大丈夫だ。心配すんな」とボロボロの身体を差し出す。
『1・2の三四郎 2』が見せるのが攻めの強さだとすれば、『ロックアップ』が見せるのは心身共に筋の通った受けの強さ。プロレスラーの生き様を見たいのならこの作品一択。


ウルティモ・スーパースター』(須田信太郎、全2巻、2003年)

ウルティモ・スーパースター1巻 デジタルブックファクトリー

ウルティモ・スーパースター1巻 デジタルブックファクトリー

 

退屈な高校生活を送っていた三波ヨシアキの元に現れたのはウルティモ・スーパースターとるちゃプロレスの一団だった。元レスラーの担任教師を拉致して試合するスターを見た三波は田舎町でくすぶる自分も何か変われるのではないかと、翌日るちゃプロレスのおんぼろバスに乗り込むのだった。

プロレスの中でも空中殺法ジャベ(複雑な関節技)を主体としたスタイルをルチャリブレと呼ぶ。本場メキシコのルチャドールルチャ・リブレのレスラー)はプロレスの他に本業を持つ者が多いが、るちゃプロレスの面々も本業を持ちたまの興行の時にだけ覆面を被る。だが、ウルティモ・スーパースターだけは24時間常にウルティモ・スーパースターとして生きていた。

三波はそんなるちゃプロレスの面々と行動を共にすることでルチャの本質である"自由への闘い"に触れていく。


ルチャ・リブレリンピオ(善玉)、ルード(悪玉)と役割がハッキリしていて、なおかつ魅せ技の要素を持った技が多い。だからといって勝負論がないわけではない。格闘技でもなく、ショーでもなく、同時にどちらでもある。「プロレスとは何か」という問いに対してこの作品は一つの答えを見せてくれるだろう。

なお書籍版は1巻までしか出ておらず、全2巻で最終話まで収録された電子書籍版が事実上の完全版となっている。個人的には書籍版で収録されなかった名作「真夜中のルチャ教室」が電子書籍版で読めるようになったのは本当に嬉しい。 

 

『強くてカッコイイ女子は好きですか?』(川村一真、既刊1巻、2015年)

強くてカッコイイ女子は好きですか?(1) (星海社COMICS)

強くてカッコイイ女子は好きですか?(1) (星海社COMICS)

 

 強くてカッコイイ女子に憧れて女子プロレスの練習生になった美枝つかさ。やる気にあふれるつかさだったがいかんせんカッコイイを目指すにはずいぶんカワイイ寄りなのであった。

あんまりガッツリしたプロレス漫画ばかりだと胃もたれするのでここでライトな女子プロレス練習生漫画を投入。
作風は軽めの4コマ漫画なので読みやすいが、ただプロレスの道場を舞台にかわいい子がキャッキャするだけの漫画ではなくプロレス描写が丁寧なのが高ポイント。

その上で他の練習生も「悪役レスラーを目指すおっとり乙女」「社畜生活から抜け出したちびっこ24歳」「女性人気確実な長身美形なのに人前ではマスク必須な恥ずかしがり屋」とキャラが立っているのも嬉しい。
現在は休載中ということだが、是非とも復帰して続きを読ませていただきたい。

なお、基本的にはツイ4で現在公開されている範囲の全話を読むことができる(単行本1巻には175/252あたりまで収録)。

 

sai-zen-sen.jp


『プロレスメン』(ジェントルメン中村、全1巻、2011年) 

プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

 

 マスラオプロレスの無宿系極悪ユニット「ホームレス・ウォリアーズ」ドリー森下と矢井田耕三。彼らは「ホームレス」というキャラクターに説得力を持たせるため、誰も見ていない控室でも残飯を使った炊き出しを作り生肉を食らう。突飛な行動に見えるがそこには徹底したプロ意識と団体全体を見据えた洞察力があった。新弟子の虎馬俵太は破天荒でありながらも理知的な2人から多くを学ぶのである。

 

『強くてカッコイイ女子は好きですか?』と同じく練習生が主役の漫画だが、『強くて~』の売りが読みやすさと明るさだとしたら『プロレスメン』は絵柄も内容もクセが強くて濃厚と真逆の作風。

タックルしてきた相手の背中にゲロを吐く。
パッとしないレスラーに噛みついて血みどろにする。
遠征先のスーパーで野菜を食い散らかす。
だがそれら全てに理由があり最終的にみんながwin-winの関係になる。
この一見バカらしくも見える展開の裏にプロレスの本質が垣間見えるのも事実。垣間見える…見えてると思うんだけどうん、見える見える!
絵柄に怯まなければ是非一読してもらいたい。

たまに行くならこんな古本屋台

ジャンパーを羽織り野球帽をかぶったオヤジが1人、屋台の向こうで背中を丸めて煙草を吹かす。
屋台には古本。本好きの心をくすぐる選りすぐりがみっしりと詰められている。
メニューは無い。古本屋だから。
白波のお湯割りだけ出してくれる。一杯だけ。100円。屋台だから。
そこは本と酒を愛する者たちの憩いのオアシス、『古本屋台』。 

古本屋台 (書籍扱いコミック)

古本屋台 (書籍扱いコミック)

 

 

 「こんな場所があればいいのにな」という作品は多々ある。
一流のバーテンとこだわりの酒が待つBARレモン・ハート
ダンジョンと呼ばれるほどの広大な地下に古今東西の漫画を所蔵する金魚屋古書店。 

BARレモン・ハート (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

BARレモン・ハート (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

 

 

金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

 

 

『古本屋台』も同様にある種の理想郷漫画だ。
ただ、前述の作品たちと決定的に違う点がある。
古本に関する薀蓄が無い。
本のタイトルが出てくることすら稀である。

だが、それでいいのだ。


この屋台自体が稀覯本を並べるような屋台ではない。
酒だって出てくるのはお湯割りだけ。
言葉少なで頑固だがたまに小粋な所を見せるオヤジの屋台で、古本の背を眺めながら名前も知らない馴染みの客と他愛も無い話をする。
この屋台はそういう場所なのだ。


ほろ酔い気分であただ背表紙を眺める日がある。
屋台が現れずやきもきしながら過ごす日がある。
テレビで紹介されてできた人だかりを遠巻きに眺めて「メーワクな話だぜ、クソ」と独り言ちる日もある。
オヤジのさりげない教養に嬉しくなる日もある。

 

『古本屋台』を読んで、そんな「こんな場所があればいいのにな」を是非味わってほしい。

球鬼Zの異常な野球  または私は如何にして心配するのを止めて前田愛を愛していたのか

1998年頃。前田愛のグラビア目当てで買った『ヤングチャンピオン』。
一応中身も読むかと開いた先で目にした野球漫画の一場面。

 

二人の男がそれぞれマウンドとホームベース上に立つ。

「お互いボールは3球……3球で相手を破壊した方が勝ちです」
「物騒な…雪合戦てところだな……」

 

……野球漫画?え?

ピッチャーの人、顔を真っ黒に塗って白で「Z」ってペイントしてるんですけど、彼ひょっとして主人公?

それが『球鬼Z』との出会いでした。

 


あ、ちなみに前田愛というのはですね

元々はジュニアアイドルだったんですよ。当時はチャイドルなんて呼ばれてましたけどね。
髪はショートカットで中性的な顔立ちをして、その少年ぽさがある美少女感がたまらなかったんだなぁ。


ガメラ3 邪神覚醒』の比良坂綾奈でわかってもらえるとそれが一番早い。あの子ですよ。「イリス…熱いよ…」のあの比良坂綾奈。わかってくれるか?わかってくれた君とは美味い酒が飲めそうだ!

 

もう3次元のアイドルとか全然興味無かったんですけどね。前田愛だけですよ、写真集とか買ったの。初めて買ったのが『1311』だったのはよく覚えてる。妹の前田亜季と一緒の写真集で、姉が13歳、妹が11歳だから『1311』。古い校舎で制服や体操服着てる写真とかね、沖縄の古民家でゆったりしてる写真とかね、実に良い。芸術ですよ。ただブルマを大写しにして足に「LOVE」って書いてる写真だけはいただけなかったな。この写真集はね。そういうんじゃない。そういうんじゃないんだよ。

 

妹もかわいいんですよ。「美少女」ってカテゴリーに入るのは間違いなく妹の前田亜季の方。
でもね、姉の前田愛にはですね、なんていうのかな……あるじゃないですか。中学生の頃特有の中性的というか、双性的というか、加えて子供だけど大人になりかけてるというか、その感じがすごく強く出ててですね。
それでまたね、目が強い!真っ直ぐこちらを見据えるような視線!屈託ない少女の目をしてる写真もあるのに、時にこちらを射すくめるような強い目をしてる写真があってね。そんな目で見られたらそれはもう駄目ですよ。魅了されてしまいますよ。

 

はみだし刑事情熱系』も良かったな。柴田恭兵が演じる刑事・高見兵吾の一人娘役でね。早くに両親が離婚してるから兵吾が父親だって知らなくて、母の部下の一人の刑事と友達として接してると思ってるから「兵吾くん」なんて呼ぶんですけど、これがまた屈託なくてかわいいんだ。
全話録画して登場シーンだけ編集してまとめたテープとか作ったなぁ。刑事ものだからピンチに巻き込まれるシーンもそこそこあったっけ。セーラー服でね、囚われの身になったりしてね。
あのテープどうしたかな。さすがに途中で冷静になって作るのやめたけど。知人に「これはまた業の深いもの作ってますね」とか言われたっけ。

 

そんな前田愛もさ、六代目中村勘九郎と結婚して今では梨園で二児の母ですよ。当時はやっぱりショックはあったけど、いつかは来る夢の終わりですからね。
3次元のアイドルに夢中になったのは彼女が最初で最後だったなぁ。いや、いい夢見せてもらいましたよ。

 

 閑話休題

 


登録名はZ。本名経歴一切不明。背番号999。
自分の望む1打席のみ当番するペイント投手。
160キロから時に170キロを超える速球のみが武器。
変化球は知らない。
「セット・ポジションて何だ?」と真顔でキャッチャーに尋ねる野球のド素人。

 

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そのZが速球を武器に戦う相手は
自軍の4番バッター
ボクサー!
米軍特殊部隊の人間兵器!

 

対決方法は
自軍の4番バッター鬼塚 

→ Zの投球と鬼塚のスイング。先に相手にブチ当てた方が勝ち(至近距離)


ボクサー 

→ Zの投球とボクサーのパンチ。先に相手にブチ当てた方が勝ち(至近距離)


米軍特殊部隊の人間兵器 

→ 野球

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野球やれよ!!
というか、なんで米軍特殊部隊が相手の時は野球勝負なんだよ!

 

おかしい。でも、おかしくないのです。
何故ならZは野球がしたいわけではない。ただ勝負の快楽を求めているだけなのだから。

 

「何か面白い野球漫画知らない?」と聞かれたら「『球鬼Z』だな」と即答してきた私ですが、なかなか現物を見つけるのが難しい時代が続いていました。

その『球鬼Z』も電子書籍化されて誰でも読めるようになったのです。良い時代だ。
皆さまもこの機会に是非。

 

 

球鬼Z 1巻

球鬼Z 1巻

 

  

球鬼Z 2巻

球鬼Z 2巻