週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

豆大福&青海苔大福😎「餅屋」の感動

 

あんこ旅の醍醐味の一つは予想を超える店と出会えた時。

 

店名の「餅屋」という、シンプルの極みみたいな和菓子屋さんに惹かれて、宇都宮まで足を延ばした。

 

ハズレてもともと、期待半分で宇都宮駅からかなり離れた場所までクルマを走らせた。

 

あれっ、看板がない。店名も見えない!

シンプルなレンガ仕立ての店構えに白い暖簾がかかり、臼と杵のイラストが小さく、控えめに描かれていた。

よく見ると、店名の小さなプレートがかかっていた。何という控えめさ。

 

意を決して入ってみると、木枠の渋いケースがいくつか見え、そこに見るからに手づくり感のある大福類が数種類収まっていた。

いちご大福豆大福コーヒー大福海苔大福(のりだいふくって珍しい)などなど。

 

まだ午前中なのに売り切れも出ていた。

 

あんこころがくすぐられた。

 

明るい店内と和モダンな世界

 

奥に女将さんらしきお方がいて、明るく「いらっしゃい」とこちらを見た。他にも常連らしいお客が2~3人。

 

よく見ると、横の棚にはおはぎ(3種類ほど)なども置かれている。当たりか?

 

★ゲットしたキラ星

 いちご大福 300円

 豆大福   200円

 海苔大福  300円

 草餅    200円 

  ※すべて税込みです。

 

【センターは?】

豆大福と海苔大福と草餅で迷う

 

無添加づくりなので、今日中にお召し上がりくださいね」(女将さん)

 

自宅に帰るのが夜遅くなるので、ひょっとして餅(杵つき餅)が固くなっているかもしれない。

 

その心配が当たった。餅の表面が固くなり始めていた。本物の証拠。

やむを得ず、電子レンジで20~30秒ほど温めることにした。

 

豆大福:香り立つようなつぶあん

秀逸ぞろいな中で、私がもっとも感動したのがこの豆大福だった。

サイズは大きめで、重さは約87グラム。餅粉がたっぷりとかかり、赤えんどう豆が悩ましくお顔を出している。

手で割ると、餅の伸びがしっかりとすごい。

 

〈味わい〉

搗(つ)いた餅のピュアな味とふっくらと炊かれた赤えんどう豆の塩気がとてもいい感じ。

店名に餅屋を名乗るだけのことはあるなあ、などと一人心地。

 

何よりも驚かされたのはつぶあんの美味さ。

藤紫色のオーラをまとい、しかも小豆の大きめの粒々がびっくりするほど柔らかい。

 

歯に引っかからない。

 

甘さがかなり抑えられていて、それ故に、豆本来のいい部分が口の中にわっと広がるのをそのまま感じた。春風の気配。

あずきのこだわりを知りたくなった。

 

どうやら北海道産大納言小豆を使用しているようだ。

 

砂糖は?「企業秘密です」とかわされてしまった(当然だよ)。

 

かなりのレベルのあんこ、と脱帽したくなった。

余韻の長さ。

 

私的には東京の名店に負けていない味わいだと思う。

 

素朴ではなく、洗練された豆大福。この洗練はうれしい誤算でもある。

 

海苔大福:餅に青海苔がちりばめられている

コーヒー大福などもあったが、最も驚かされたのがこの一品

大福類はかなり食べているが、青海苔というのは初めて

 

よく考えてみれば、青海苔の伸し餅もあるので、大福にあっても不思議ではない。

中はつぶあんで、豆大福と同じ洗練を感じさせるものだが、餅粉の奥に見える青海苔の淡い緑色の点々と鼻腔にくる海の香りに慣れるまでちょっとだけ時間がかかった。

 

ひょっとしてミスマッチではないか? とさえ思ったが。これは 間違いでした(反省)。

 

〈味わい〉

海の香りが思ったほどイヤではない。

 

春の潮風が柔らなか餅とともに口中からいずこかへと抜けていく。そんな感じ。

つぶあんの美味さがすべてを丸く収めて、「こういう大福もアリだな」と次第に新しい感動を連れてくることに、舌の奥まで洗われる。

 

大福の世界が少し広がったような。

 

ほんのりと漂う塩気も心地よい。

 

【サイドは草餅】

よもぎの香りがほどよく、中のつぶあん上質な美味さとぴったし合っていると思う。

重さは84グラムほどで、草餅としてはやや大きめ。

 

手でちぎってみると、伸びのある草餅と甘さ控えめのつぶあん「早く食べてね」と誘ってくるようで、春先のたまらない感覚

草餅好きの心までとろかすような、深くてきれいなマリアージュだと思う。

 

●あんヒストリー

創業は大正5年(1916年)と百年を超える歴史を持つ。もともとは市内の大通りにあり、水害などで清住町通りに移転、リニューアルオープンしている。伝統と新しさが同居していて、作り方は代々相伝されているとか。

 

「餅屋」

所在地 栃木・宇都宮市松原3-8-38

 

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜増刊号:皮と餡のミラクル「和糖饅頭」

 

東京・三田に暖簾を下げる「秋色庵大坂家」(しゅうしきあんおおさかや)は元禄時代創業という長い歴史を背景に、日本の和菓子界に渋い光を放っている。

ルーツは店名でおわかりのように土偏の「大坂」(大阪ではない)で、秋色最中(三色最中)が看板商品の一つだが、茶席などにも使われる上生菓子にも定評がある。

 

と書いたところで、敷居の高そうなこの老舗の、敷居の低そうな饅頭「和糖饅頭(わとうまんじゅう)」がワタクシ的には「超」が付くほど好きな饅頭です。

なので、今回俎上に載せるのは、この和糖饅頭です。

 

★今回ゲットしたキラ星

 和糖饅頭 1個250円

 秋色最中(大型3種類) 1400円

  ※すべて税込みです。

 

【センターは?】和糖饅頭:ただの茶まんじゅうではない

 

皮に和糖(和三盆の前の段階の希少な砂糖)を使用し、一見すると、フツーの温泉饅頭のようだが、口に入れた瞬間、ふわりと別世界に連れていかれそうになる。ホントそんな感じです。なので、センターに(個人的な好みです)。

 

●サイズと外観 大きさは55ミリほどの饅頭形。重さは約52グラム。

 

表面の見事なツヤともっちり感。職人さんの手を感じるような。

頂上にはケシの実が点々。

 

艶やかな表面張力。もっちり感。

 

●味わい 皮は薄く、あんこはごらんの通りギリギリまで詰まっていて、和三盆と黒糖のいい香りが鼻先までやってきて、「早くちぎって食べてよ」とささやく。そんな感じ。

 

裏皮の引力。

歯を立てると、穏やかで上品な歯ざわり。和糖の香り。

 

うーん、これはすごいね。

 

ワクワクしながら、中心部へ。

ぎっしりと詰まったあんここしあん×黒糖)が見るからにみずみずしい。

 

作法通りにガブリと行く。

和糖皮の求愛に応えるかのように、しっとりと濃密な大波を引き連れてくる。

 

黒糖(波照間産)と北海道産あずきのマリアージュがとてもいい。

うめえ~・・・言葉が自然に漏れそうになる。

 

1個250円は安くはないが、私的には感動がそれを上回る。

 

〈あんヒストリー〉

創業は元禄年間(1688~1704年)で、大坂から江戸・日本橋小網町に移転し⇒その後ももらい火などでさらに移転している。そのため、古文書など記録を紛失したようだが、江戸時代の名ガイドブック「江戸買物独り案内」には名店として記載されている。すごい歴史。現在19代目。もともとは「大坂家」だったが、祖先の一人が女流俳人で「秋色家」を俳号としていた関係で、店名の上に冠したようだ。

 

【サイドは?】秋色最中(3色最中):中が小倉あん(大納言)、黒糖あん㊨、栗あん㊧の3種類。皮種がパリッとしていて、とても香ばしい。

上品でやさしいあじわいが共通している。

 

3種類の中で私が最も気に入ったのが中央の小倉あん大納言小豆とこしあんがきれいに合体していて、小豆のいい風味がおだやかに広がってくる。

黒糖あんの最中は和糖饅頭でもわかるが、妙な雑味が抜けていて、それでいて黒糖の風味がふわりと広がる。上品な黒糖最中

 

栗あんは大手亡の白あんに栗の風味が伴走してくる。甘すぎず、皮種のサクサクとした風味とよく合っている。きれいな余韻も心地よい。

 

「秋色庵大坂家」

所在地 東京・港区三田3-1-9

最寄り駅 都営浅草線三田駅から歩約1~2分

 



 

 

 

 

 

 

 

ネオ和菓子の傑作😎金沢の小鳥たち

 

「旅する和菓子」編で今回取り上げたいのは金沢の老舗「清香室町」(せいかむろまち)のチャレンジングな、かわいいネオ和菓子たちです。

 

先月、新宿高島屋で開催されたイベントで「かわいらしすぎて(小さい)」ついスルーしちゃいました。失態。目利き落第、です。

最初の印象。パッケージが小鳥の文鳥(ぶんちょう)をデザイン化したもので、従来の和菓子の発想からははみ出て(飛び立って?)いました。

 

会場を2周ほどしてから、見落としはないか、あんこの名探偵ポワロにでもなった気分(勝手に、です)で、じっくり見学していると、その小鳥たちと目が合ってしまいました。

 

かわいらしい鳴き声で「おい、スルーはないだろ?」と言われた気がしました(冷や汗)。

 

「金沢文鳥(かなざわぶんちょう)という菓銘の、ネオ和菓子(創作和菓子)でした。「とまり木によりそい文鳥のクールなネーミング。

それも2個ずつ3種類。加賀紅茶ようかん、加賀棒茶ようかん、白い珈琲ようかんと表記してありました。

 

うーん、どんな味わいなんだろう?

 

近くにいたイケメンの4代目に取材しながら、なんとかゲットし、自宅の編集室に戻ってから、翌日賞味することにした。

 

★ゲットしたキラ星

 とまり木によりそい文鳥(3種6個入り)1890円

 銘菓くるみ(6個入り)594円

  ※価格はすべて税込みです。

 

【センターは?】

3種類の個性、伝統と進化のユニークな合体

 

あん子「デザインがかわいいですねえ。赤いくちばしがキュート。グッドデザイン賞をもらったのもなるほど、と思うわ」

編集長「斬新なのはパッケージだけではなくて、中身も、だよ。ベースは煉り羊羹(白いんげん豆)だけど、それぞれ加賀紅茶+ドライフルーツ(いちじく、クランベリー、ブルーベリー、レーズン)、加賀棒茶+ナッツ類(ピスタチオ、アーモンドなど)、コーヒー+能登大納言小豆。アイデアも技術もすごいね」

あん子「さすが金沢ですね。伝統と新しさが近未来を感じさせる。個人的には21世紀美術館に展示したくなります(笑)」

 

●試食タイム

金沢紅茶味:地元の食材を生かすというポリシーが感じられる。石川の茶葉でつくられた紅茶をブレンド。なので、見た目は黒っぽいがベースは白羊羹(北海道産白いんげん×白ザラ糖)。水も天然の井戸水を使用しているようだ。

包丁で切ると、ビックリの断面。イチジクや真っ赤なクランベリーなどが夜空の打ち上げ花火状態。

あん子「きれいですね。色彩が鮮やか」

 

編集長ドライフルーツの果実味がどっと押し寄せてくるね。このネオ感覚が新しい。羊羹部分も本格的でさすが金沢、というマリアージュになってる」

あん子「重さは50グラム前後で、小さくてかわいいけど、コーヒー好きの私としては有機コーヒーに合わせたいですね」

編集長「これは白ワインにも合うと思うな。それとウイスキーも試してみたい。従来の和菓子の枠を超えて、ちょいと世界に飛び立たせたくなるね。金沢の文鳥、大空へ」

 

金沢棒茶味:広い意味ではほうじ茶だけど、この金沢棒茶は風味がより濃く、口に入れた瞬間、ほとんど爆発的にほうじ茶の波が広がる感覚。それにナッツ類の合わせ技。

あん子「ピスタチオが気に入りました。棒茶の羊羹と不思議に合ってますね。ナッツの歯触りも悪くない」

編集長「僕が一番気に入ったのは加賀紅茶だけど、これも次にいいね。ナッツ好き、ピスタチオ好きにおすすめだよ。これもウイスキーに合いそう」

 

白い珈琲味:これは白煉り羊羹に能登大納言の甘納豆がきれいに浮かんでいる。かすかに珈琲の香りが来るのがコーヒー好きにはたまらないのでは? それに能登大納言のふくよかな風味が重なるように立ち上がって来る。

あん子「コーヒー好きの私としてはこれはグッと来ますね。能登大納言小豆が全体を引き締めていて、この組み合わせも素晴らしいと思うなあ」

編集長「3種類の中では一番素直な味わいで、余韻もすっきりしてるね。気品を感じる美味さだね。ネオ和菓子の世界がこれからどうなるか、楽しみでもある」

 

【サイドは?】

銘菓くるみ:くるみの形の小さな最中(もなか)。1個が約13グラムほど。

皮種まで自家製で、サクッとした歯触り。中はこしあん(自家製)。くるみがそのまま乗っていて、この組み合わせは当時としてはかなり斬新だったと思う。

創業当時からこの店の目玉商品のようで、上質なこしあん(北海道産小豆×白ザラ糖)とくるみが口の中で広がる感覚は、とても味わい深い。

 

甘すぎない、やさしい余韻。

 

〈あんヒストリー〉「清香室町」の創業は昭和21年(1946年)。現在4代目。伝統と新しさの融合を求めて、和菓子界に新しい息吹を起こす可能性もある。

 

「清香室町」本店

所在地 石川・金沢市本多町2-1-2

 

             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頂上の餡二刀流🤩おしるこ&あんみつ

 

寒風と春の予感のなか、東京スカイツリーを仰ぎ見ながら、向島の甘味処を目指す。

 

口開け(午前11時)と同時に、あんこ好きの間で、製法のこだわりも含めて「最高級のあんみつ」の一つとも称される「深緑堂」(しんりょくどう)が今回「日曜増刊号」のターゲット。

創業が2014年(平成26年)、上野「みはし」や浅草「梅園」、「赤坂とらや茶寮」といった大看板ではなく、ご夫婦二人で小さく暖簾を下げる、私好みの甘味処

 

「早めに行かないと、売り切れちゃうよ」との辛口あん友の助言もある。

 

ちょうど店を開けたところに到着。

 

平日の早い時間だったせいか、込み具合はさほどではなく、渋めの店主が準備をしている最中だった。

 

餡ラッキーな出会い

 

品書きはごらんの通り多くはない。いい感じ。

その中から二品を選んだ。いわばあんこの二刀流。ワクワクしながら打席(カウンター席)に立つ。

 

★ゲットしたキラ星

 おしるこ(仕立てつぶあん)850円

 あんみつ    850円

    ※すべて税込みです。

 

おしるこ:究極のつぶあんか?

漆塗りのお椀(大き目)の蓋を取る。この瞬間がたまらない。

ひと目で見事なつぶあんだとわかった。

 

ふっくらと炊かれていて、しかも腹割れしていない

 

一見すると、何気ないようだが、最初のアタックで素材選びから作り方まで、熟練の技が裏側にうかがえる。

湯気と北海道産小豆のやさしい風味が同時に立ち上がって来る。

 

うーん、これはすごいね。

 

この店主、ただ者ではない。と合点した。

 

いい焼き色の餅が2枚。

 

箸休めは塩昆布。余分なものがない。

 

●味わい 甘さが抑えられていて、何よりも小豆の柔らかな粒々感と深い色(赤みが強い)、そして皮があるのかすらわからないほど、歯がすっと入る。

煮崩れがまったくない、ふっくらとあまりに柔らかい小豆に驚かされる。

 

味わいながら、あんこ炊きのこだわりに少しだけ踏み込みたくなった。

 

店主によると、砂糖は白ザラメときび糖を使っているそう。

渋抜きは風味を損なわないよう細心の注意を払いながら数回行うそうで、その加減がとても難しい。プロフェッショナルのお仕事だと思う。

 

塩もほんの少し。

 

おしるこはこれまで結構食べているが、このおしるこは私の中では5本の指に入る味わいだと思う。

 

「仕立てつぶあんと表記していることも、ワンランク上のあんこを目指しているのがわかる。

餅の焼き方といい、箸休めの塩昆布といい、侘び寂びの世界に通じる、シンプルだが、それ故にぜいたくな逸品と感じ入った。

 

あんみつ:粒子を感じるこしあん

おしるこに続いて、この店の主役「あんみつ」をいただく。

中央にこしあんが太陽のごとく輝き、その周りを白玉2個、抹茶白玉、あんず、それに赤えんどう豆が惑星状に配置され、その下には賽の目切りの寒天が控えている。

店主の自家製で、そのこだわり方。手抜きが一ミリも見えない。

 

黒蜜(沖縄産黒糖使用)が横に置かれている。

 

●味わい 白玉のもっちり感と赤えんどう豆のほのかな塩気、それに大きめの砂糖漬けあんずが手造りのいい掛け算となって、口の中でゆっくりと広がっていく。

何よりも驚きは中心部のこしあん

きれいな赤紫色で、口に入れた瞬間、あんこの粒子がそよ風となって巻き上がってくるよう(表現が追いつかない)。そんな感覚に陥ってしまった。

 

そのみずみずしさ。雑味のなさ。甘すぎない、絶妙度

なぜかクルミがちょこんと乗っていて、これがいいアクセントになっている。

 

面白いアイデア

 

寒天のキリリとした歯触りといい天草の香り。

 

黒蜜をかけると、味わいが一瞬変化し、これはこれで楽しみが広がる。

こしあんがあまりに美味いので、思い切って店主に聞いてみた。

 

竹ざると馬毛で漉しているんですよ。昔ながらの製法ですが、今も続けている店は少ないと思います」

 

こしあん造りは手間暇がかかる。なので製餡所に任せるか、器械で漉すかというのが一般的だが、ここはそうせずに、「竹ざると馬毛で」というのはとても珍しい。

他のお客が一組二組と入って来たので、残念、見ることはかなわなかったが、秘伝の作り方は秘伝のままがいい。そう思い直す(当たり前だよ)。

 

二つの究極をすっかり平らげると、このところ迷路にハマっていたわがままな心が、おだやかになっていくのがわかった。

 

スペシャルなあんこの効力に改めてかしわ手。

 

「あんみつの深緑堂」

所在地 東京・墨田区向島5-27-17

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空と月と雲😎大阪発クールな創作羊羹

 

創作羊羹の世界がおもしろい。

 

老舗のチャレンジがすでに始まっていると思う。

 

新宿高島屋で開催された「旅する和菓子」で出会った逸品を取り上げたい。

 

老舗の中でも選りすぐりの8店、それも若手(4代目が中心)が実演販売まで行うのは素晴らしいことだと思う。

 

さすが高島屋、とまずはエールを送りたい(カッコつけすぎだよ)。

 

その逸品がこちら。

菓銘も「刻~toki」と凝っている。

 

大納言あずきをベースに伝統と斬新をうまく閉じ込めた創作羊羹だと思う。

 

和菓子を未来へとつなぐ強い意志すら感じる。

 

大阪・四天王寺に本店を構える「本まつばや」

 

もうすぐ百年の歴史を迎えようとする老舗でもある。

 

★ゲットしたキラ星

刻~toki(創作羊羹) 1本864円

桜咲くら(季節限定) 2個入り756円

 ※価格は税込みです。

【センターは?】

創作羊羹「刻~toki」:夜空と月と雲の絶妙

 

見た目 シンプルなデザインの紙箱を開けると、小倉色のあずき羊羹が「ようおいでなさったなあ」とほほ笑んだ気がする。

サイズを測ったら90ミリ×53ミリ×30ミリ(厚み)。重さは100グラムほど。

 

凄みはこれから。

 

包丁で切ると、断面が現れた。

有機大納言小豆をちりばめたあずき羊羹、蜜煮した大栗、求肥・・・。それぞれ空、月、雲を表現しているようだ。

 

古典でありながら、その組み合わせで「どないでっか?」と語りかけてくるよう。

和菓子の過去と未来を意識しているのは多分間違いない。

 

味わい あずき羊羹は甘さが抑えられていて、大納言小豆(有機栽培)の食感といい風味がおだやかに広がる。

続いて蜜煮した栗のほっこり食感がその広がりを押し上げてくる。

 

掛け合わせの上質。

さらに雲(求肥餅)が柔らかなアクセントで時間の流れを忘れさせてくれる。

 

抹茶も合うと思うが、私の好みでドリップコーヒーでいただく。

 

シングルモルトウイスキーも合うのではないか。刻とtokiのワールドなチャレンジとなる日も近いかもしれないぞ? そんな想像もしたくなる。

 

あんことANKOの変換。その未来まで。

 

【セカンドは?】

桜咲くら:ひと箱に2個入っていて、こちらも凝り方が古くて新しい。

2層仕立てで、上半分は山芋を練り込んだ淡雪のような軽羹(かるかん=米粉ベース)で、上に塩漬けした桜の花びらが乗っている。

下半分は桜色の浮島(カステラ状の蒸し菓子)で、大納言あずき(備中大納言)が土をシンボリックに表現しているよう。

 

素材選びから作り手のこだわりまで、さり気ない想いと技術が組み合わさっていると思う。

桜への想いが過去から未来へとつながる。

 

と思いたくなる。

 

上品なもっちり感と塩漬け桜の香り。

 

黒文字でいただくと、その崩れ方と舌の上の溶け方がとてもいい。

春の雪⇒桜への予感。

 

淡い甘さ。軽羹と浮島と桜。備中大納言のアクセント。

 

一夜限りの合体?

 

あっという間に2個、ぺろりと胃袋に消えた。

 

●あんヒストリー

「菓匠松葉屋」として1927年(昭和2年)、大阪・四天王寺東門筋で創業。現在3代目。伝統と新しさを求めて、四季折々の和菓子づくりに挑んでいる。数々の賞を受賞。4代目のチャレンジ精神も注目されている。

 

「本まつばや」本店

所在地 大阪・天王寺区真法院町1-14

 

         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜増刊号😎湧き水「元祖葛まんじゅう」

 

新宿高島屋で開催された「旅する和菓子」で、人気を集めていた一つが「元祖葛(くず)まんじゅう」だった。

 

福井・小浜市「御菓子処 伊勢屋」の逸品。

このイベントのためにわざわざ小浜から地下30メートルから湧き出ている名水「雲城水」(名水百選にも選ばれている)を運んできた。すごいこだわり方。

 

6代目が熟練の技で自家製の葛生地を造り、手づくりあんこ玉を包み、名水に浮かべていく。

つい見入ってしまった。

 

夏季限定の商品だが、今回は「旅する和菓子」イベントのためにスペシャルサプライズとなったようだ。

本当なら福井まで足を運んで、若狭名物「丁稚羊羹」(同店のもう一つの目玉)などと一緒に味わうべきものだと思う。

 

自分の目と足と舌であんこ旅を続けている身としては、これはラッキーなのかアンラッキーなのかわからない(汗)。

 

だが、見てしまった。

 

迷っている場合ではない。

 

この2月の時期に味わえるのは「餡ラッキー」とあんこの神様に感謝することにした(当たり前だ)。

 

★ゲットしたキラ星

 元祖くずまんじゅう 3個入り 660円

 桜どら焼き 250円

 ※価格は税別です。

 

金星あんこ:元祖くずまんじゅう

《見た目》名水に浮かぶ半透明の葛生地。淡い光を吸い込むように自家製こし餡がしっかり控えている。

一見すると、和菓子屋さんで見かける水まんじゅうと変わらないが、ガラスの皿に置いてよくみると、そのオーガニックな気品と奥行きに「ただならぬもの」を感じた。

 

秘すれば花、の誘惑。

うっすらと見えるこし餡、その赤紫色のオーラと甘い予感

 

一個のサイズは約45ミリ、横から見ると半円形で、一個一個微妙に形が違う。

 

絶妙な手づくり感。

 

《味わい》葛の風味がプルプル感とともに舌と口の粘膜をくすぐる。たまらない。

すぐ後から自家製こし餡の波が押し寄せてくる。

 

甘さは控えめ。だが、厳選あずきのいい風味がドドと来る。

口どけが素晴らしい。

 

次第に今自分が食べているのは「水の精」ではないか、と思えてきた。

 

あずきの精と水の精のマリアージュ

葛はあの江戸時代の儒学者頼山陽吉野葛に負けない、と感嘆した福井・熊川葛を使用している(頼山陽は美食家としても知られている)。

 

葛生地は素材の美味さを生かして砂糖は加えていない。

 

自家製こし餡は北海道十勝産×白ザラメ。

添加物などは加えていないので「できれば今日中に召し上がってください」。

 

食べながら目を閉じて舌の上で溶けていく極上感を味わう。

 

夏ではなく、寒い冬に味わえるなんて。

 

「旅する和菓子」を旅をしないで味わうなんてこれでいいのか、贅沢すぎる。

 

銀星あんこ:桜どら焼き

こちらも季節限定品。塩漬けした桜葉をまとったきつね色のどら皮が気分をリッチにする。

ユニークなどら焼き、独創力を感じる。

サイズは約80ミリ、重さは73グラムほど。

 

大きくはないが小さくもない。

 

《味わい》どら皮のしっとり感がとてもいい。卵の黄身と蜂蜜のバランスもいい。

中は自家製つぶ餡。このあんこが格別で、よく見るとつぶとこしを別々に炊いて合わせたような、つぶのテカリとこしの蜜な感じがいい掛け算になっている。

塩漬け桜葉が一足早い春を運んでくるようで、これは絶妙などら焼きだと思う。

 

桜粒の塩気がいアクセントになっている。

 

●あんヒストリー

創業は天保元年(1831年)。現在5代目。息子さんの6代目も新進の和菓子職人としてコンテストで受賞する他、フランスで和菓子のワークショップ行うなど活動の幅を広げている。注目の若手の一人。

 

「御菓子処 伊勢屋」

所在地 福井・小浜市一番町1-6

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

限定品「五色のおはぎ」😎旅する和菓子

 

時間が出来たので、新宿高島屋B1で開催中のイベント「旅する和菓子」(全国から8店舗参加)をのぞいてみた(2月19日で終了)。

 

最前線のあんこワールドをこの目と舌で味わってみたい。

 

伝統と革新、あんこからANKOへ? 好奇心がむくむく、どんなものかいな。

 

混雑を避けて、平日の午前中に到着。

今回ご紹介したいのは、まずは滋賀・高島市「とも栄菓舗」。「ベイクドようかん湖々菓楽」など新しい発想の創作和菓子を生み出していることで注目を浴びている和菓子屋さん。

 

見渡す限りキラ星ぞろい。だが、私のあんこハートがときめいたのは「五色のおはぎ」だった。

曲げわっぱに収まった小ぶりのカラフルな創作おはぎ。私が外国人ならKawaii

!」と叫びたくなるね、きっと。

 

五色の創作あんこの中身がびっくりもの。

 

「旅する和菓子 限定」と表記されていて、「コロナで出せなかったので、ここで初めて出しました」とスタッフ。スペシャルな出品とわかった。

 

★ゲットしたキラ星

 五色のおはぎ 1300円

 瑞羊羹(こし) 350円

  ※価格は税別です

 

【センターは?】

創作あんこのチャレンジ力と技術力

 

アプローチ⇒発想力とこだわりが五色のあんこに結実して、源氏物語絵巻のように檜の曲げわっぱの中に納まっていた。はっとするあでやかさ。五色は以下の通りです。個人的に気に入った順に並べてみました。すべて自家製創作餡のようです。

一色目:桃餡

こんなのあり? 和と洋のお見事なマッチングと表現するほかはない。

 

白餡ベースで、桃のペーストを加えているようだ。

大きさは楕円形で約66ミリ×47ミリ。重さは38グラムほど。

 

つまり小ぶりの創作おはぎ。

きれいな桃餡を真ん中から切ると、中心部がレモンクリームチーズで、滋賀産羽二重もち米がたおやかに包み込んでいる。

〈味わい〉桃餡はなめらかでしっとりと舌にささやきかけてくるよう。

 

もち米のピュアなもちもち感とレモンクリームチーズが意外なほど合う。

 

ひょっとしてミスマッチでは?という思いが一瞬で吹っ飛んだ。

桃餡とレモンクリームチーズの酸味が口の中で絶妙に絡み合う。もち米のみずみずしさと合体して、そよ風となって、私を天国まで誘導しそうになった。危ない、あぶない(笑)。

 

この驚きの創作おはぎは4代目のアイデアのようで、発想力と技術の裏付けに舌を巻くしかないなあ。降参です。

 

二色目:粒餡×ヘーゼルナッツ

粒餡とヘーゼルナッツともち米がこんなに合うとはね(下の写真左)。

〈味わい〉甘さを抑えた、雑味のない粒餡のふくよかさとヘーゼルナッツのかりっとした食感が1∔1=3的に融合している。

私にとっては伝統と創作の見事な掛け算。おはぎ=ぼた餅が一気に進化して、未来から2024年にタイムスリップしてきたようと表現したくなる(わかりにくい=汗)。

 

三色目:ピスタチオ餡

白餡×ピスタチオペースト。上になんとピンクペッパーを3粒ほど愛らしく乗せている。これも驚きの発想。

〈味わい〉抹茶色だが、ピスタチオ餡。思ったよりもピスタチオの風味が強くない。むしろ秘すれば花、のよう。しっとりと甘すぎない。

ショッキングなのはピンクペッパー。色はピンクだが、噛んだ瞬間ペッパーが小さく爆発するよう。コショーだ!

 

ペッパーの刺激がピスタチオ餡を上回る感じかな。

 

四色目:こし餡×古代米

藤紫色のきれいなこし餡に吸い込まれそうになる。古代米の素朴なもっちり感。

〈味わい〉雑味のない、職人のきれいな手の香りがするようなピュアなこし餡と古代米の素朴な風味がしっとりとマリアージュしている。

シンプルな中にこだわりがにじみ出てくる、上質な味わい。こし餡のみずみずしさがしばらく舌にとどまる。淡い甘さと余韻も長い。

 

五色目:栗餡ブリュレ風

栗餡をバーナーで(?)焦げ目をつけているのがブリュレ風でおもしろい。

味わい〉栗餡は甘すぎない。ブリュレ感がどこかスイートポテトのような印象。それに羽二重もち米が絡み合う。

これも面白いチャレンジだが、五色の中ではもっとも素朴な印象。秋を感じさせる美味さ。

 

【サイドは?】

瑞羊羹:これほどなめらかな水ようかんはあまりないかもしれない。

 

プラスチックのカップ入り。

素材は砂糖と小豆と寒天のみだが、寒天の存在が表に出てこない。

 

スプーンで掬うと、ゆるゆると崩れそうになる。揺らぎのあんこ。

私的には名刀でスパッと切ったような水ようかんが好みだが、これはこれで一つの究極形ではないかと思う。

 

「水」ではなく「瑞」と表記しているのもこだわりを感じる。

 

●あんヒストリー

創業は昭和7年(1932年)。現在3代目。初代から飾り菓子などで数々の賞を受賞している和菓子屋さん。4代目(息子さん?)も注目の和菓子職人で、新しい発想で和菓子界に旋風を起こしつつある。

 

「とも栄菓舗」本店

所在地 滋賀・高島市安曇川町西万木211-1