レア度において赤坂とらやの「虎屋饅頭」は別格として、糀の香りのする酒饅頭は私の大好きなまんじゅうです。
今回ご紹介したいのは、新潟・長岡で出会った「紅屋重正(べにやしげまさ)」の大手饅頭です。
酒種で発酵させたふっくら生地と中のこしあん(黒糖入り)のバランスがとてもいい。
紅屋重正の創業はなんと文化二年(1805年)、長岡城の大手門近くに暖簾を下げていたので「大手饅頭」と命名したようだ。
その当時からの作り方を伝承し続けているのも凄いが、和菓子文化が爛熟した江戸文化年間を思い描くことができるのも、私にとってはうれしいこと。
現在7代目になるが、経営権を柿の種で知られる「阿部幸製菓」に譲渡している。
つい、うるうる。
★今回ゲットしたキラ星
大手饅頭(4個入り)900円
飴入最中(5個入り)780円
※価格は税別です。
【センターは?】
そのまま⇒バターで焼く。大手饅頭を二度楽しむ
そのまま:王道の楽しみ方
サイズは70ミリ×70ミリほど。重さは約53グラム。
表面のツヤと張力。「大手」の焼き印が沁みる。
ゲットしてから時間が経っていたので、ラップで包んで、電子レンジで30~40秒ほど温めた(蒸留水をスプレーして)。
蒸し立てとほとんど変わらない状態でふうふうしながらいただく。
〈実食タイム〉酒種のいい香り。手で割ると、ごらんの通り、ふかふかで、しかも密度がある。
中は濃いめのこしあんがたっぷり(北海道十勝産小豆×沖縄産黒糖)。
江戸時代の砂糖は黒糖が普及していたので、その意味でもこの構成は文化文政期のあんこに近い味わいではないか。
酒饅頭の歴史的な老舗「高岡福信」(大阪)や「湯沢屋」(日光)とほとんど同系の味わいだと思う。
遠い江戸を空想しながら食べる。
たまらない楽しみ方。
もう一つの楽しみ方:バターで焼く
紅屋重正のスタッフは「油で揚げてもおいしいですよ」と教えてくれたが、岐阜・中津川の酒饅頭屋さんで教えてもらったバター(マーガリンでもOK)で焼くことにした。
バターがなかったので、マーガリンをフライパンに。
これが意外に美味しい。
焦げすぎないように注意しながら焼く。
いい焼き色とマーガリンの香りが鼻腔に来る。
〈実食タイム〉表面がカリッとしてきて、マーガリンの塩気がいい具合に染み込んでいて、まったく別の味に変化してくる。
その分、酒種の香りは減るが、これはこれで十二分に楽しめる。
こしあんの風味もプラスα効果。
酒饅頭は二度楽しめる。
【セカンドは】飴入最中
紅屋重正はもともとは飴屋でもあったようで、これも創業当時からのもののようだ。
個人的にはあんこではないのが少々残念(笑)だが、サクサクした皮種の中はもち米からつくった飴(琥珀色)でいい景色。これはこれで美味。
トロリとした飴が上質で、長岡藩の歴史を感じることもできる。
酒饅頭と飴。
この二つを一緒に味わえること、越後あんこ旅の貴重な時間となった。
「御菓子司 紅屋重正」
所在地 長岡市表町1-10-35
最寄り駅 JR長岡駅から歩約8分