君と私の空 *4

この恋はかなわないって、そう思ってたよ?
だけど、信じてみてもいいのかな?

ねえ。君にとって私はどういう存在ですか?




君と私の空 *4



「俺、美咲のコト好きだよ?」



「・・・え?」
一瞬、世界が止まったような気がしたんだ。
・・・何コレ?


「美咲のコト、好きだってば。」
相変わらずニコニコしてる圭吾先輩
「本当ですか?」
半信半疑の私。
「嘘なんてつかないよ★」
うれしかったんだ。本当に。
だけど、圭吾先輩は勘違いしてたよ。



「これからも友達だぜ?大切な友達!」


 ***

朝がきた。
憂鬱な朝。


昨日の言葉が突き刺さる。
そういう好きじゃないっってば・・・。
ベッドに顔をうずめる。
もう・・・いいや2度寝しちゃえ!!

そう思ったのに。
ピンポーン ピンポーン
チャイムが鳴った。
きっと香奈だろう。
「香奈〜〜?」
パジャマのままドアを開けると、やはり香奈が
ドアの前に立っていた。
「香奈ぁ!!まだパジャマなのお!?もう時間だよ!!」
「うーん・・・わかってるよお・・・」
「あ★あと、今日はもう1人いるよ★」
「え・・・?」
「やっほー♪美咲っ!!圭吾君ですよー」

「圭吾先輩っ!!?」
まさかの人物。
パジャマ姿なのが恥ずかしい。
「友達でしょ?だから仲よくなるために一緒に
 学校行こうと思って★」
「あははは・・・」

香奈が、私の耳元でささやいた。
「美咲、よかったね★」
「もう!!とにかく着がえてくるから、まっってて!!」
「はーい」

 ***

「香奈と圭吾先輩は、いったいどうしてこうなったの?」
「いやぁね?いつものよーに、美咲っちに迎えに行こうとしたらさぁ、
 たまたま圭吾先輩見かけて、挨拶したら、
 俺も美咲と登校するー★友達だもん♪とか言い出すから。
 つれてきたの」
「香奈ちゃんなんかひどいー」
「圭吾先輩の言ったとうりに言っだけですよ?」
なんだか、ちょっと仲よくなってる
香奈と圭吾先輩に、ムッとする。
それに気がついたのか、香奈が、
「美咲と圭吾先輩って、仲いいですよねー!!」
「あはは、そうだね★」
・・・友達だから。そうなんだよね?
苦しいよ。


 ***

今日の体育は長距離走
最悪・・・。
たしか、3年生と合同授業だったけ。
今はあんまりうれしくない。

この時期に半そで半パンって、かなりキツいな。
男子だけ、下はハーパン。

4キロ走。
決められたコースを走る、マラソンみたいなもの。
今日みたいな寒い日に・・・。
ほんとついてない。


走りはじめて40分ぐらいが経っただろうか。
「こんな道、あったっけ?」
どうやら、道にまよったっぽい。
・・・ありえない・・・。ほんとどうしよう。
こういう時には雨が降るものなんだろうか。
ポツン、と冷たい雫が落ちた。

 ***
ザアーッ
あれからどれぐらい時間がたっただろうか。
もうとっくに・・・授業終わってるよね・・・。
・・・寒い。
ジャージはびしょびしょ。
こういう時って、濡れた服は脱がないと凍死
しちゃうんだっけ・・・。
とりあえず上のジャ^ジは脱いで、持っていた
フェイスタオルで体をおおった。
寒い・・・寒いよ・・・。
日が沈みはじめている。
もう・・・ダメなのかな。
本気でそう思った。

 ***
圭吾目線*


「ぅえーいっ★」
「ああー!!あとちょっとだったのに!!また圭吾が1位かよ」
「ま、とーぜんだろw」
「うぜえよw」
「そういえば、今日の道超ややこしくなかったか?」
「おうおう、俺迷いそうになったし!!」
「お前らしいな」

授業終了10分前には、全員がそろった。
ハズなのに。
「先生ー!!美咲ちゃんがいませんっ」
おそらく2年生であろう一人の女の子が
3年の体育担当の後藤と話しているのが聞こえた。
・・・え?美咲がまだ戻ってきてない?
そういえば、まだ見てない。
運動がトクイなあの美咲が・・・?

何かあったんじゃないか
そんな心配が俺の心の中をよぎる。
・・・そんなのゴメンだぜ・・・?
「先生。美咲まだ戻ってきてないんですか?」
「え、ああ。そうみたいだな。あの美咲が一番最後
 だなんて、珍しい事もあるもんだ」
「何かあったんじゃないですか?」
「まぁ、まだ授業は残り10分近くある。心配すんな」
「何かあってからじゃおせーんだよ・・・」
「何だ圭吾。真剣な顔して、お前らしくないなぁ。」
後藤は軽く笑う。
・・・教師だろ?もっと生徒心配しろよ。
「何だ?美咲は圭吾の彼女かぁ?」
ニヤニヤして言う後藤。
「は?ちげえし」
いい年して彼女もできないオヤジのくせに。

キーンコーンカーンコーン・・・
授業が終わった。
美咲は戻ってきていない。
「・・・まじかよ・・・」
普通じゃないだろ。こんなの。
俺はだんだん落ち着きがなくなってきた。
「おい、先生!!美咲帰ってこねえじゃねぇかよ!!」
「圭吾!!いつもその口調、直せと言ってるだろ!!」
「わかったから、早く・・・」
「先生達で探しにいくから、圭吾は早く教室もどれ!!
 帰りのHR始まるぞ?」
「・・・チッ」
俺はしょうがなく教室へと戻った。

 ***
HRをしている最中も、俺は落ち着けなかった。
美咲は今どこにいるのだろうか。
美咲は今寒くないだろうか。
美咲は大丈夫なのだろうか。

頭の中が美咲、美咲でいっぱいになる。
こんなに人を心配した事、今までなかったと思う。

そんなことを考えていた時。
「けいごお〜?」
クラスの女子達。
「何?」
「けいごさっ★今日暇ぁ〜?」
ふわふわに巻いた髪を指でくるくる巻きながら話す女子。
後の女子たちは、化粧を直しながらじいっと
こっちを見ている。
「あ、悪ぃ。今日はー
「何っ!!?今日もダメなのぉ〜?前次ならいいよって
 言ってくれたじゃん!!ねえ〜?」
後の女子達に答を求める。
「そおだよおっ!!けいご、前約束したじゃぁぁん!!」

・・・しょうがなく、女子達に付き合う事にした。

外に出ると、軽く雨が降っていた。
嫌な予感が俺を襲う。
「けーいーごっ★いこお?」
「あ、うん・・・」

むかった先は、近くのカラオケ。
・・・ってかココは、あの合コンの場所。

女子7人に、男子は俺1人。
気分が乗らねぇ。
ってか・・・美咲大丈夫かな。

ズイッと1人の女子が俺の顔を覗きこむ。
うわ、近ぇ!!
「けいごさぁー、今日元気なくなぁーい?」
「え、別に?いつもの圭吾くんですよー」
わざといつもどうりに、明るく言ったつもり。
・・・だったのに。
「顔が笑ってなぁい。」
・・・鋭いなぁ・・・。
「ちょっとお、今日は皆のアイドルけいごと久しぶりに
 遊べると思って、皆楽しみにしてたんだよお?」
「え、あ悪ぃな」
俺の隣に座ってた女子が、俺の肩に寄りかかる。
「けーいーごお、遊ぼお?」
バリバリの上目づかいで言う女子。
「え、遊んでんじゃん。」
「ばかぁー★そおじゃないよお。」
そう言って俺の顔に接近する。
・・・なんだこれ。キスしようとでもしてんのか?
唇との距離は約1センチ。
「―・・・やめろ。」
俺が珍しく真剣な顔をするからビックリしたのだろう。
すぐ顔を離して、
「ごめんね・・・」
苦笑で誤る女子。
何もなかったかのように、マイクを持って歌を歌いだした。

「悪い・・・ちょっと電話してくるわ!!」
できる限りの笑顔で笑った。
部屋を出て、携帯で時刻を確認する。
20:37
もうこんな時間か。美咲はさすがに見つかっただろう。
根拠もないくせにそう思った。
なのに。
こんなタイミングよく、市内放送が流れた。
「―・・・行方不明の―中谷美咲さんが―・・・」
え・・・?
俺は耳を疑った。ここじゃよく聞こえない。
俺は外に飛び出した。
「15時20分ごろから中谷美咲さんの行方がわかっていません。
 美咲さんは、○○高校のジャージを着ていて、
 ピンクのタオルをかけているそうです。ご協力お願いします」
嘘・・・だろ?
まだ見つかってないのか?
俺は、パニック状態になった。
「悪ぃ!!俺もう帰るわ!!」
ビックリしたように目を丸くする女子達。
返事を聞かずに俺はすぐに飛び出した。
今日走ったルートをもう一度走る。
何で俺、こんなに美咲の事心配してるんだろう。
不思議になるぐらい必死だ。
走って、走って走って。
周りが暗すぎてよくわからない。
1キロぐらい走ったぐらいだろうか。
2つの別れ道を発見した。
右の道が今回のマラソンのルート。もしかして。
美咲は誤って左に行ったのではないだろうか。
「ったく・・・馬鹿だな。」
ふっと笑いながらも、全力で走った。

何だよこの道・・・
こんな森みてぇなとこ、こんな都会にあったっけ?
ありえないだろ・・・。


人の足らしきもにが見えた。
「美咲っ!!!?」
美咲・・・美咲だ!!
とりあえず俺の上着を美咲に着せる。
肌が冷たい。
顔が青い。
「・・・美咲・・・。」
返答がない。
「美咲っ!!」
息をしてない。
俺は美咲の口を俺の口でふさいだ。
人工呼吸をしようとがんばるが、人工呼吸など
したこともないから、あまりわからない。
ちくしょー・・・。こんな事だったら保健の授業だって真面目
に聞いてりゃぁよかったな。
そんなこと思いながらとりあえず息を吹き込む。

「げほっ・・・」
「美咲!!」
美咲が息を吹き返した。
「・・・あれ・・・け・・・いごせんぱ・・・」
「何も話さなくていいから!!」
俺は美咲を負ぶって、真っ暗な道を走った。

 ***
美咲目線*

寒い。
コトバでは言い表せないぐらい寒い。

「・・・き・・・!!」
なんだろう。誰かの声がする。
ずっと聞きたかった、愛しい声。
・・・幻聴が聞こえるぐらい、危ないのかな。
そんな事を考えた。


・・・なんだろう。
唇が、とても温かい・・・。





しばらくして、目を開けると圭吾先輩がいた。
圭吾先輩は私を抱き上げ、暗い道をただただ、
無言で走った。

 ***
目をあけると、家のベットに寝ていた。
・・・何でここにいるんだろう。
あれから・・・圭吾先輩が助けてくれて・・・。
・・・それから覚えてない。
起き上がろうとした時。
「痛っ・・・!!」
鈍い痛みが私の右足を襲う。
コンコン。
「美咲、入るわよ」
「・・・お母さん。」
「まったく昨日は本当に驚いたわよ。方向オンチもたいがいにしてよね」
あきれた顔で笑うお母さん。
「ねえ・・・私、あれからどうやってここまできたの?」
ドクドク・・・と高鳴る心臓。
「ああ、学年主任の先生が家まで運んできてくださったのよ」
「・・・そっかぁ・・・」
ちょっと期待していた自分がいた。
圭吾先輩が助けてくれた夢を見たから。
そりゃ、そうだよね・・・
「ああ、でもなんだか3年生が走り回って探してくれたみたいよ?
 そのコが学校まで運んでくれたんですって。」
「えっ・・・?」
再び高鳴る心臓。
やっぱり、圭吾先輩が助けてくれたの…?
嬉しくて、嬉しくてしかたがなかった。

 ***
「じゃぁ、お母さん行ってくるわね。夕方には帰れるようにするから。」
「うん。行ってらっしゃい。」

私は自分の部屋のベットに戻った。
今日は安静に学校を休む事にした。
・・・やっぱり圭吾先輩が助けてくれたんだ・・・。
ますます圭吾先輩への想いは重くなる。
そんな事を考えていたら急にまぶたが重くなった。

 ***
ピーンポーン♪
ドアチャイムが鳴り響く。
その音で私は目が覚めた。
気がつけば時刻は11時。
・・・誰だろう。きっと宅配便かな。
体もダルかったから、私は失礼ながらチャイムを無視した。

ガチャッ
ドアのあく音がした。
・・・え?
鍵を閉めたハズなのに。誰・・・?
「お、お母さん・・・?」
返事はない。
階段を上る音がした。
音がだんだんと近づく。
ガチャッ
「・・・やぁ・・・!!」

・・・あれ?
おそるおそる目を開けると。
「美咲・・・?」
「け、圭吾先輩!?」
何故か圭吾先輩が私の部屋にいた。
「大丈夫か?」
「あ、ハイ。大丈夫ですけど・・・」
「・・・けど?」
「何で圭吾先輩がココに・・・?」
「お見舞いに来たんだYO★香奈ちゃんに合鍵借りた!!」
「えっ、お見舞いって・・・?今日学校じゃぁ・・・」
「サボリだし☆」
「あはは・・・」
「ってか、ゼリーとプリン買ってきた!!食おうぜ!!」
「え!!ありがとうございますっ!!」


 ***
「あの、昨日は助けてもらったみたいで。ありがとうございました」
「いやいやいいよ!!俺も必死だったからねぇ」
「本当に助かりました!!」
「ん〜まあ美咲は寒さに弱いからねえ☆」
「何で知ってるんですか?」
「いやぁほら、俺んち泊まった時も・・・」
覚えててくれたんだ・・・。
なんだか赤面。
「どーした?顔赤いぞ?熱でもあんのか?」
圭吾先輩は私のおでこを触った。
「ん〜熱はないみたいだけど。」
あわわわ・・・っ!!
「まぁほら、俺のプリン食え食え★」
無邪気で鈍感な圭吾先輩の今は私だけは見せる笑顔が可愛くて、かっこよくて。
すごく愛しい・・・。

 ***
時刻は午後4時。
圭吾先輩は私が暇にならないように、とか。
心配にならないように、ずっとそばにいて、はげましてくれた。
「んでよっ!!その尚輝がよぉ、三浦のズラをひっぱたいたワケ!1したらー・・・っ」
キラキラの笑顔。
そんな圭吾先輩が隣にいるだけで、心強かった。
「俺・・・そろそろ帰ろうかな」
「・・・うん・・・」
まだ一緒にいたい。
けど、ココまで付き合ってもらって、ワガママはいえない。
圭吾先輩は笑って、私をなでてくれた。
その笑顔は、いつものキラキラした笑顔ではなく、凄く優しい笑顔で。
「・・・美咲?」
私は、圭吾先輩のそでをつかんでいた。
「・・・まだ・・・もう少しだけ・・・。一緒にいてください・・・」
私今どんな顔してるんだろう。
圭吾先輩は一瞬すごく驚いたような表情をして、すぐにふっ、と笑った
「何か今日美咲キャラ違くね?」
「そ、そんな事ないですっ!!」
「美咲が迷惑じゃないなら、ココに居てもいい?」
「そんな!!迷惑なんて、とんでもない!」
「じゃぁ、まだ居るわ!!」
ニカッ、と圭吾先輩がわらった。
―嬉しかった。本当に。
  ***
気がつけば7時48分。
さすがにこの時間はマズい。
そう思ったのが圭吾先輩にはわかったかのように、
「んじゃ、俺帰るわ!」
「あ、ハイ!!今日は本当にありがとでした!!ゴハンまで買ってもらって・・・」
「いいよいいよ、そのぐらい♪俺も楽しかったから!お大事にね」
「はい!!明日には学校行けるように頑張ります」
「おー、待ってるよ」
ひらひらと手を振る圭吾先輩。
私もそれに答えるように手を振った。

圭吾先輩が帰ったとたん。
さっきまでの空間が嘘のようにしん・・・とした暗い空間。
・・・お母さん・・・夕方までには帰るって言ったのに。
まだ帰ってこれないのかな。

ガチャッ
ドアのあく音がした。
お母さんかな。

私は毛布に包まりながら、下へ降りた。
「・・・っお父さん!?」
「なんだ美咲か」
「今日帰ってくる日だったの?」
私のお父さんは、単身赴任で外国へ行ったりしている。
だから、家にいないときがほとんど。
「あぁ。1日早まった。母さんは?」
「まだ帰ってきてない。」
「そうか・・・。そういえば母さんから昨日聞いたぞ?大丈夫か?」
「うん。もう大丈夫。ちょっと足を打撲してるけどね」
「そうか。気をつけろよ?」
「うん。」

「ただいま〜」
お母さんの声がした。
「あ!お母さんかえってきた!」
「ごめんね〜美咲、緊急で会議はいっちゃって。って!!お父さん!?
 かえってくるのは明日のハズじゃぁ・・・」
「あー、わるいな。1日早まったんだよ」
「もう!!言ってくれればいいのにい。ご馳走作っておきたかったのにい」
「ごめんな、まあいいじゃないか」
私の両親は2人とも美形で、近所でもゆうめいである。
私の大きな目はきっと母譲り。高い鼻は父譲りだろう。
久々に家族3人がそろった夜は、とても楽しかった。

 ***
「美咲ぃ〜★おっはー♪」
いつものように香奈が家まで向かえに来る。
「おはよ!!香奈。」
「昨日はどおだったのよ?」
ニヤニヤしながら聞いてくる香奈。
「何がよ?」
「圭吾先輩!!お見舞いに来たでしょ?」
「あっ!!あのねぇ!!勝手に人の合鍵貸さないでよお!!香奈だから貸してるんだよ?」
「いいじゃーん★圭吾先輩がお見舞い行きたいって言うからさあー?」
「・・・馬鹿。」
「照れんなって★」

 ***
今日は席替え。順番にくじを引いていく。
私の席は・・・っと、
まどがわの一番後ろの席。
超ラッキー!!!
隣にすわったのは、黒川 早瀬(クロカワ ハヤセ)
前髪が目にかかっていて、この人も圭吾先輩と同じ、ナナメ前髪。
圭吾先輩みたいに髪はふわふわさせてなくて、むしろ髪は
ストレート。で、黒髪。
ちょっと目つきが悪い・・・かな。
でも、FANがすこしいた。
圭吾先輩ほどじゃないけど。
「あ、黒川くん?よろしくねー★」
明るく声をかけてみたけど、返事はなし。
・・・え、シカト?
イラッときたけど、初対面に近い存在だったから、こらえた。

 ***
授業は数学。
・・・あ、いけない。
教科書忘れちゃった。
「・・・黒川くん、教科書・・・見せてくれないかなぁ?」
「・・・」
「あの・・・黒川くん・・・?」

まっったシカトかよ!!!!!!!!!!!!
何なんだこの人っ・・・。

 ***
「美咲ぃぃ〜☆」
「んぁ!?何、香奈?」
「いいなぁー。早瀬君と隣の席なんてっ」
「・・・あの方、とてもムカつくんですけど。」
「なんで?」
「つーんとしたトコがとても!!シカトするんだよお!?」
「何言ってるの美咲〜。早瀬君って言ったら、クールで無口キャラですぜ!?」
「知らないしそんな・・・」
「女子となんて話さないんだから!!」
「わかったけどーっ。でも隣は嫌だよお。」
「贅沢なヤツめ!!圭吾先輩だけで十分ですよ〜ってか?」
「うるさい!!///」

 ***

「香奈、帰ろ〜?」
「ごめん美咲っ!!今日ヒロ君と帰るんだー」
「そっかぁ。わかった!楽しんで☆」
「ごめんねぇ」

ヒロ君。
宮下 大輝(ミヤシタ ヒロキ)
付き合って1年3ヶ月の香奈の彼氏。
隣のクラスで、委員長。
さわやか系イケメンで女子の評判はかなりいい。

私は1人で歩きだした。
今日はなんだか肌寒い。
香奈が隣にいないだけで、なんだか寒い。
なんだかこのまま家に帰るのもつまらなかったから、
私は近くのコンビニに寄った。

ウイイーン・・・
「いらっしゃいませー・・・」
え・・・
早瀬君・・・?

早瀬君がコンビニでバイトをしていた。
向こうもこちらに気がついたのか、目を丸くして
こっちを見ている。
ほしかった雑誌とガムを買って、
気まずいながらも早瀬君のレジへ向かう。
「・・・・・・」
「・・・」
やっぱり、気まずいっ。
「・・・660円です」
「あっ、うん」

「・・・あは、早瀬君ってコンビニでバイトしてたんだねっ!!」
必死に話題をつくった。
・・・だって、無言で帰るのもなんかおかしいよね!?
「・・・別に、いいだろ、そんなのかってじゃん。」
「・・・」
やっぱり、むっかつくこの男・・・!!!!
怒りを必死に抑えて、私は出口へむかった。

 ***

次の日。
いつもどうり香奈と一緒に登校した。
校門前に、圭吾先輩・・・と、爽。

「あっ!!美っ咲ーーっ♪」
圭吾先輩がこっちに気がついて、声をかけてくれた。
嬉しいけど、それは友達としてなんだよね・・・?
でも、いつまでも暗い気持ちでいたらダメだよね。
圭吾先輩をあきらめたワケじゃないし。
「おはようございますっ圭吾先輩っ♪」
明るく、明るく。
せいいっぱいの笑顔でわらった。
「何?なんか今日の美咲可愛い〜っ★」
「なっ///やめてくださいよ圭吾先輩っ」
「何照れてんの美咲い〜♪」
香奈がからかうように笑う。
そんな楽しい会話の中。
「・・・そうかな」

爽の一言が響く。
「俺には、無理して作ったような笑顔にしかみえないけど?」
「・・・え・・・」
空気が一瞬にして変わった。
・・・見破られてる?
「・・・美咲・・・?」
圭吾先輩が私の顔をのぞきこむ。
・・・泣くな・・・!!泣くな!!
自分にそう言い聞かせて。
「何言っんの爽〜!そんなワケないじゃん?今日いいことあったの」
笑顔、笑顔・・・!!
爽に見破れてるとしてもかまわない。
圭吾先輩には・・・嫌われたくない。
「そっか、よかった♪」
圭吾先輩の顔に再び笑顔が戻る。
「じゃ、香奈っ教室いこっ」
「えっ、うんっ」

振り返らずに、私は走った。
涙を・・・
悟られないように。

教室へ入るまでの間、涙がポロリ、と
流れていた。
香奈は気がついていたのだろうか。
何も話かけてこないで、ただただ、手を握ってくれていた。
それが温かくて、優しかった。

 ***
キーンコーンカーンコーン・・・
チャイムと同時に私と香奈は教室に入った。
その時には頑張って涙は止めた。
「美咲、香奈っ!!ギリセギリセ!!」
「よかったぁ」

席につくと、決して目を合わせないようにしている
早瀬君がいる。
「おはよう」
そういってみたものの、返事が返ってくるハズもない。

と、思ったのに。

「あのさ、」
「・・・え?」
「目・・・腫れてる。泣いてた?」
「っ!!?」
うそ、腫れてる?
皆気がつかなかったのに。
「・・・そんな事ないっ!!」
「あ、そ」

そんな事なら、いちいち言ってくれなくていいのに。

「ん、」
渡されたのは、目薬。
「・・・え?」
「使えば?目、充血してるし。」
「え・・・ありがとう・・・・・・」

なんだ、意外と優しいとこあんじゃん・・・?
「・・・なんで目薬なんか?」
「俺、ドライアイなんだよ。しかもコンタクトだから、目超乾くの」
「へえ・・・」
なんか意外な一面知れたなあ。
「・・・お前、何で泣いてた?」
「っ!!だから、泣いてなんか・・・
「明らかに目ぇ腫れてるから。」
「・・・わかったよ、まぁ先輩の事。」
「男?女?」
「男・・・だよ」
「ふうん」
「・・・」
えっ
それだけ・・・?なんだか早瀬君との会話ってあっけないな(笑

 ***
キーンコーンカーン・・・
4時間目の授業が終わった。
すると香奈がものすごい速さでこっちに走ってきた。
「美咲っ!!!!!」
「っ?」
「今日のお昼さっ、外で食べない?」
「うん。いいよ」
「やったあ♪じゃあ裏庭行こっ」

裏庭は誰もいなくて、風とうしもよくて、なんだか落ち着く。
「・・・香奈、ありがとね?」
「え?何が?」
「ううん、何でも」
香奈は拗ねたようにほおをぷくっと膨らませている。
・・・そういうトコが可愛い。
「・・・ねえ、美咲さ、最近圭吾先輩とどお?」
申し訳なさそうに聞いてくる香奈。
その言葉にドキッとした。
でも、香奈には秘密を作りたくない。
「・・・圭吾先輩はね、私の事友達以上には思ってないみたい。」
「そっかあ・・・」
沈黙。
香奈はあえてそれ以上何も言わなかったのかもしれない。

それからは楽しい香奈とのランチだった。



カシャッ

シャッター音が鳴る。

向こうの木の影に、一眼レフを持った男子生徒の後ろ姿がみえた。
あれ・・・早瀬君?

早瀬君とは思えないような、いきいきとした顔で、
すごく楽しそうな顔をしている。

「はっ、早瀬君っ!?」
目を丸くしてびっくりした顔でこっちを向く早瀬君。
「美咲っ!?」
香奈も立ち上がる。
「早瀬君?何で一眼レフなんか?」
「・・・部活。」
早瀬君って写真部なんだ。
「見る?」
香奈と一眼レフを覗き込む。
プロみたいにキラキラした風景が写されていた。
綺麗・・・
にしても写真が大好きなんだな。
すごくいきいきしてた。
「・・・邪魔して悪かったな」
「ううん!!そんな事ないよ!!早瀬君、写真が大好きなんだね!すごくいきいきしてた」
すごい、すごいよ!早瀬君にこんな才能があったなんて!!
早瀬君は相変わらず無表情だけど、一瞬だけ
ふっ
と笑って。
「さんきゅ。」
それだけ言い残して向こうへ歩いていってしまった。

「みさきぃー」
「おお!!?な、何?」
「何でそんな早瀬君と仲いいのさああ」
「え・・・席が隣だから?」
「席が隣なだけでそんな仲よくなれるワケないじゃぁん!」
「・・・といわれましても・・・」
「だって、あの早瀬君が女子と話すなんて・・・」
「でも香奈ともちょっとしゃべってたよね?」
「・・・え?あれ・・・?ほんとだっ!!!きゃああー♪」
「おい、ヒロ君はどうしたんだ」
「ヒロ君は大好きだよお?だけど早瀬君としゃべれるなんてすごい事だよ!」
「あーはいはい」


ねえ、君は今どんな空を見ていますか?
私と同じ空を見ていますか?

今、何かが動きだす・・・



                NEXT・・・?

君と私の空 *3

不器用に気がついたこの気持ちだけど、
きっとこの恋に報いはあるよね・・・?

そう思ってたけど、それはただの
思いこみだったんだね・・・?


君と私の空 *3


携帯のアラームの音が部屋になり響く。

「・・・んん〜・・・」
アラームを止めて、ムクッと起き上がる。
いつもなら、アラームがなってから10分は
しないとおきれないのに、なぜか早起きだ。

まぁ・・・ちょっと早めに学校行ってみるか。
制服に着替えて、髪は下ろして。


 ***

ガラッ

はは・・・やっぱ誰もいないか(笑
時刻は7時17分。
まだちょっと早すぎる。
自分の席につこうとした時、足元で何かがモゾッと
動いた。
「ひやぁっ!!・・・」

よく見ると。

「・・・大泉・・・爽?」
寝ていたのか、眠そうな目でこっちを見ている。
表情をかえることなく、
「・・・何。」
金髪に銀のピアス。睨み付けるような
視線が怖い。
「ひ、久しぶりっ・・・何してるの?」
「お前には関係ねえよ・・・」
さすがにイラッときた。だけどやっぱり怖いから
「ふ〜ん。あ。そう」
それだけ口にしたのに。
「お前さ、圭吾のなんなの?」
「・・・え?」
予想外の言葉に目を丸くする。
「だから。圭吾の何なんだよ」
圭吾・・・って、圭吾先輩のことだよね・・・?
「どういう意味?」
「お前、圭吾と仲いいの?」
「うーん・・・仲いいっていうか・・・」
何て言ったらいいんだろう。
「何・・・。」
爽が一言つぶやいたとたん。
ガラッ
教室のドアが開いた。
クラスメイトの男子達
「・・・チッ」
爽は立ち上がって、教室を出た。
「・・・おい。今のって爽?」
「あれ、美咲じゃん。もうきてたの?」
「・・・あ、うんっ」
「てかさ、今の爽だよな?なんで教室にいたの?」
「だよなぁ、不登校の爽が教室にいるなんてめずらしいじゃん。」
「いつも授業でねえしなぁ」
「・・・うん。めずらしいよね・・・」
私はそれしか言えなかった。
爽が何をしてたのか、それも全然わからないから。


 ***
4時間目終わり。
今日は香奈が休みだ。
一人でたまにはお弁当でも食べようかなぁと思っていた時。

あの人の声がした。
「美咲いるう〜?」
軽っぽい口調。絶対あの人だ。
圭吾先輩。
「圭吾先輩!!」
ぱぁっと私の顔が明るくなっった。
「一緒にお昼とかどう〜♪?」
「えっ?」
ぐいっと手を引っ張られた。
「え、ちょっと、圭吾先輩っ!?」
「いいじゃーん☆俺ら友達でしょお?」
友達。
うれしいようで、なんだか胸が締め付けられた。

つれてこられたのは、やはり図書室前。
圭吾先輩達のたまり場。
私はそこについたとたん。ドキリとした。
・・・大泉 爽だ。
すごい目つきでこっちを見てくる。
私はそれに気がついていないフリをして、圭吾先輩
の隣に座った。
何故かこの3人で昼食。
・・・ぶっちゃけ気まずい。
「ああーっ☆美咲、その卵焼きちょーだいっ☆」
「え、あっどぞ、」
「美咲、超料理上手いんだぞー?爽も食うか?」
爽は、珍しく表情を変えて、
「え、料理上手いって何でわかるの?」
「えー?だって、俺美咲の手料理食ったことあるもおん☆」
「・・・どういう関係?」
爽の視線が痛い・・・。
「えー?いやぁ、一回ウチに泊めたことあるんだよねえー」
「・・・は?」
圭吾先輩があまりにもスラッといってしまったので、
言い訳も何もできない。
圭吾先輩、何も考えてなさすぎ!
「ああ、つまりそういう関係ね?」
「え、どういう関係?」
爽がはぁーっと深いため息をつく。
「圭吾って、ほんと馬鹿。」
「やだやめてよ爽ちゃーん♪」
からかうような顔で、圭吾先輩は爽に抱きつく。
「だから、美咲って、圭吾のツレ?」
あ、爽。私の名前知ってたんだ。
って・・・。
そうじゃなくて。

なんつう質問してんじゃああああ!!!


圭吾先輩は、ポカン、としたような表情で。
だけど次の瞬間。


「はははっ!!んなわけねーじゃん!!」



こういわれることはわかっていた。
ハズなのに。


深い暗闇に突き落とされたようなショックだった。
「あ、そ。」
「何それだけですか爽ちゃんw」
「それだけですよ。やけに最近仲いいなぁーと思っただけ。」
「あ、そおー?俺達友達だよねえ☆」
最高の笑顔で笑う圭吾先輩。
それがなおさら切なくて。
私は何もいえなかったんだ・・・。

私は、2人を残してその場を立ち去った。



 ***
携帯が鳴る。

誰だろ・・・。知らない番号。
「はい・・・もしもし?」
警戒しながら電話に出る。
「・・俺。」
「は?」
「俺だけど。」
「俺じゃわかんないんですけど。」
「・・・大泉爽だよ。」
「え、爽?」
「あのさ、今すぐ○○駅前まで来い。」
「はああ?」
「絶対来いよ。んじゃな」
プチッ ツーツーツー
わけわからん大泉爽・・・。

いやいや私服に着替えて駅に向かう。


駅につくと、すぐに爽を発見した。
金髪に目立つかっこうだから、すぐわかる。
「・・・っ爽!!」
「・・・、」
「何?」
「今日の態度は何?」
「はっ?」
「今日の昼だよ。」

あ、そうか・・・何も言わず逃げてきちゃったんだっけ。
「・・・。」
言う言葉がなくて困る私に、
「美咲ってさ、圭吾好きでしょ。」
凛。とした爽の表情。
「・・・っちが・・・」
「いや、もう知ってるから、顔に出すぎ。」
私の言葉をさえぎるように爽は言った。
「・・・うん。」
そう言ったとたん、涙があふれた。
「・・・う・・・っ」
ただただ、爽は冷たい目で私を見ているだけ。
どうして爽は私をわざわざここへ呼んだのだろう。
私には全然理解ができない。
私の気持ちを確かめるだけのために、ここへ呼んだの?
「・・・−だって、聞いた?」
「・・・え?」
突然爽が誰かに問うように話した。
   

え・・・?
圭吾先輩・・・?
何、どういう事?
「圭吾、美咲の言ってること、わかった?」
「う、うん。」
はっ、と我にかえる。
圭吾先輩に聞かれてた・・・!?
顔が熱い。
圭吾先輩と目があわせられない。

「んじゃ、俺は帰るから。あとは2人で。」
「ちょっ・・・」
爽はスタスタとかえってしまった。


「・・・美咲。」
「えっ?」
ビクン、と肩が動いた。


「なんか、ごめんね?なかせちゃったみたいで・・・」
「いや・・・別に・・・。」
どうしても、圭吾先輩の顔が見れない。

「美咲。」
「何ですかっ」

私のほおを両手で優しくつつんで。
圭吾先輩は私の顔を上げた。
「ちゃんと顔見ろよ。」
真剣な眼差しに、ドキっと心臓がうるさい。

「なくなって・・・」
「泣いてなんかないれすっ・・・!!」
「ないれす って・・・(笑)我慢すんなよ」
「だ、誰のせいだと思ってるんですかぁっ!!」
「ごめんね〜?}

顔を上げられたまま、私は涙を流した。
「ごめん。ごめんな?でも俺、」






「美咲のコト、好きだよ?」


     


        Next・・・?

君と私の空 *2


初めて感じた「すき」という感覚は、
とても切なくて、苦いものでした・・・。



君と私の空 *2






私、圭吾先輩が好きなんだ。


そう実感したとたん、
息が苦しくなって、涙があふれた。
手がかすかに震える。

うまく呼吸ができない。

視界がだんだんぼや〜っとしてくる。



 ***


気がついたら。
全然知らない風景。


圭吾先輩のにおいがするベットに
寝ていた。
私、寝ちゃってたんだ。


制服に気がえて、1階に下がると、
圭吾先輩がソファーで寝ていた。

私をベットに寝かせて、圭吾先輩は
ソファーで寝たんだろうか。
きゅん・・・と胸がしめつけられる。

意外と優しいとこあんだなぁ、と
関心した。

「圭吾先輩〜っ」

何も聞こえてないように、
気持ちよさそうに寝ている圭吾先輩。

私は圭吾先輩のほおをつねって、
ぎゅっと引っ張る。

「いでででででででっ!!」

「あ・・・おはよう美咲・・・」

苦笑いの圭吾先輩。
「おはようございます圭吾先輩」
「美咲さぁ・・・もうちょっと起こし方考えてよお」
「起きないからですよ」
「あってか!!今何時?」
「7時15分です」
「ええっ!!髪セットしなきゃ!!」

寝グセのついたまだセットしていない
圭吾先輩の会身は、昨日見たアルバムの
圭吾先輩みたいでなんだか可愛かった。

その間に、私は冷蔵庫の中身をチェックする。
・・・これぐらいあれば、朝食ぐらいなら作れるかな。

スクランブルエッグと、野菜が入ったパンケーキ。
それと暖かいホットミルクを入れる。

すると、髪をセットし終わった圭吾先輩が、
不思議そうにこっちをじっと見つめる。

「何、やってんだ?」
「何って、朝食の準備ですよ。」
にかっと笑ってみせた。
「おおお!!すげぇ!!もう食っていいのか!?」
「どーぞ★」

「いっつもパンとかだけだからよ、すげー嬉しい!!」
「あ、あと、コーヒーは飲めないだろうと思って。
 ホットミルクにしてみました。」
「おお!!さんきゅ!!なんかすげー優しい味がする」
「砂糖使ってないんですよ★」
「ええ!!まじか」
「じっくりお鍋で暖めると甘くなるんです」
「ほおーすげーな」
「圭吾先輩って、いつも髪セットするのに
 こんなに時間かけてるんですか?」
「ん?まぁな」
圭吾先輩は、ナナメ前髪に、いまどきの
アイドルのようにふわふわさせた、
ちょっと悪系のスタイル。
「髪、そめてますよね?」
「ん、まぁな★ナイショで★まぁ
 生徒指導よくはいるんだけどなw」

 ***
髪をポニーテールにして、黄色の
水玉のシュシュ、柑橘系の香りの
ヘアコロンをシュッとひと吹きする。

「なんか柑橘系って、美咲に似合うよな」
「え」
「いつもキラキラしてて、元気って感じが似てる」
にこっと笑う圭吾先輩がかっこいい。
「ありがとうございます・・・///」


 ***
圭吾先輩と一緒に登校。
圭吾先輩の家は学校から近くて、
徒歩で通っているらしい。

「美咲ってさー、部活やってんのか?」
「あ、はい。チアリーディングやってます」
「おお!!かっけー!!」
「圭吾先輩は何かやってますか?」
「俺はバスケ★」
「あ、なんか似合ってます」
「ありがと★美咲もチアそのものって感じだぜ?★」

日差しのせいなのか、キラキラの笑顔で笑う
圭吾先輩がまぶしい。

あいかわらずの圭吾先輩のきくずした制服。
ボタンは3つあけ。
そして腰パン。
スクバは指定のものではなく、
もち手をリュックみたいにしてしょっている。

でも、圭吾先輩のスタイルだと思うと、
すごくかっこよく、みえてしまう。

そんな幸せな時間は10分程度でおわった。
学校周辺に着くと、圭吾先輩は
「んじゃな」
そう一言残して走ってむこうへ行ってしまった。


なんだか切ない。



自分のクラスへ入ると、
「おはよおー★」
香奈が声をかけてくれた。
「美咲ぃ!!今日家にいなかったでしょお?
 待ちくたびれて先きちゃったよお?」
「あっ!ごめん」
「いいけどさー」

女子達は昨日の合コンの話題で盛り上がっている。

「んでねー!?そのあと2人でカラオケ行ったんだけどー、
 もーカラオケの店員が高校生だから駄目とか
 言って入れてくれなくてぇ!しょーがないから
 昨日は帰ったんだけど、今日会う約束しちゃった★」
「まじでえ」
「うちは昨日公園で話てかえったよ!!」
「んでんで!?」
「付き合うことになりましたぁー♪」
「まっじでぇ!!あの知的イケメン君?」
「うんっ♪」

めずらしく会話に入ってこない私を
不思議に思ったのか、香奈が疑問そうに見ている。
「美咲、風でもひいてんの?」
「えっ!?ひいてないよお?」
「なんか今日元気なくない?しかもなんか顔赤いよ?」
「ふぇっ!?」
なんとなく、赤面。
「もしかしてぇー恋?」
にやにやしてこっちを見る香奈は、私をからかうようで。
「いいじゃん別に!!」
「あれー?ドンピシャ?」
「なんでよっ」
「顔真っ赤だよ?」
「・・・」
自分でもそんなこと、わかってる・・・。
顔が熱い。
「教えてよお。親友でしょお?」
「んー・・・誰にも言わない?」
「あたりまえじゃーん☆」
「あのね・・・・・・3年生の、圭吾先輩・・・」
「うっそおお!!圭吾せんぱ・・・
「ばっか!!声大きいってばぁ!!」
「あ、ごめんごめん。」
「ってか、知ってるの?圭吾先輩のこと。」
「はぁ!?」
あきれた様子の香奈。
「圭吾先輩なんて、3年で一番モテるじゃん!!」
「え、そーなの?」
なんかショツク。
「そりゃぁそうでしょ☆だって超イケメンじゃーん☆」
「あははは・・・」
「しっかしさー。あの男に興味ない美咲が、
 来いしちゃうとはねぇ☆」
「うるさいなっ・・・」
「圭吾先輩、4組っしょ?遊びに行けば?」
「いや・・・それはちょっと・・・」

 ***

「香奈ぁ〜、次の理科移動教室だよ?いこー」
「あ、うん」

渡り廊下にある図書室の入り口には、
3年生男子3、4人が寝転がっていたり、
すわってしゃべっていたりした。
その中に、圭吾先輩がいた。
入り口をふさいでるから、図書室を利用したがってい
る人達は、とても迷惑そう。

香奈が、私の耳もとでささやく。
「美咲っ♪圭吾先輩じゃん★」


ふ、と圭吾先輩と目が合った。
ペコッとお辞儀。
「やっほ〜みっさき〜♪」
手をひらひらさせて笑っている圭吾先輩。
周りにいた3年男子達が、誰?といったような目で
こっちを見ている。

「リボンの色、青じゃん。って事は2年?」
「おう、」

圭吾先輩周りの男子の質問攻めに答えている。


あれ。


赤色のネクタイ。3年生の赤色のネクタイの中から、
青色のネクタイをした男子を見つけた。


大泉爽だ。
大泉爽は、同じクラスの不登校がちな生徒。
学校に来たとしても、授業なんかうけていない。

髪は金髪で、ピアスをしている。
大泉爽は、私をじっと見つめて、ふい。と顔をそらした。


「またねぇ〜美咲〜♪」


圭吾先輩と学校で話す事ができたのが嬉しかった。
「美咲ってば、圭吾先輩と仲いいじゃーん★」
「あははっそうでもないって」
「とか言って。嬉しいくせにい?」
「香奈っ!!///」


私はこの時、とても幸せだった。
圭吾先輩が私に親しげに話してくれるだけで、
とても幸せだったんだ・・・。

だけど、そんなの私の勝手な思い込み。
本当は、違ったんだね・・・




             Next・・・?

君と私の空 *1

あなたは震えるほど誰かを
好きになった事がありますか?










   君と私の空 1






いつもどうりの通学路。

「美咲っ♪おっはよーっ!」

いつもどうりの友達。

「香奈、おはよっ★」
いつもどうりの朝。


私の日常は、ここから始まる。


中谷美咲
なかたにみさき

現在高校2年生。


小学校から仲良しな友達、
香奈と一緒に学校に登校するのが
あたりまえ。


「今日も暑いねぇ〜」
「初夏だけどねww」
「これからどんだけ暑くなんだろお」


何気ない会話。
私の人生は、本当に普通。
って感じ。特に目だったこともないし、
病んだ事だってあんまないし。

こんな生活が出来ているのは、
本当に幸せな事だと思う。


普通の幸せってやつ?



  ***




「美咲っ!!」



息を切らして向こうから走ってきたのは
隣のクラスの男子。

「何?」


そんなに仲がいいってワケじゃないけど、
1年のとき同じクラスだった。


「今日放課後空いてる!?」

 ・・・でた。

「暇・・・だけど、」

「じゃぁ放課後屋上に集合なっ!!」



 ***



自分で言うのもなんだけど、
自分はけっこうモテる方だと思う。

多分今回も告白だと思う。

・・・まぁ私は誰とも付き合う気ないけどね。





「好きなんだ」


もう聞き飽きたコトバ。
軽く見えて私は大嫌い。


「その大きくてパッチリした瞳も、
 ゆるくカーブがかかったサラサラの髪も、
 全部大好きなんだっ」


・・・キモ。
どんだけ私の事見てたんだよ。


笑いそうになるのを我慢する。
 


「だから・・・えっと・・・」


何か口ごもる。
付き合う気ならないよ


「付き合って・・・
「ごめん。私誰かと付き合うとかないから」


「え・・・でも。」


「・・・ごめんね」



サァッっと、私のほおに心地良い風
が吹く。

屋上を後にしようとしたその時、
人影が見えた。

ふわふわでこげ茶の髪。
大きくてぱっちりした目。
ちょっと着くずした制服。

3年生だ。
受験受験って精一杯な周りの3年生
と違って、なんだか何も気にしてなくて、
自由・・・ってかんじ。


ふいに、目があった。
ペコリとお辞儀をして、その場を
後にする。





 ***



私は女子友達がいれば十分だと思う。
女子達とわいわい話して、
かわいいお店いったり。


男子なんてうるさいだけで、
めんどくさい。
男子なんて、私の生活では
必要ない。

 ***

それでも、私の周りの友達は彼氏がいたり
彼氏を作ろうとしてるみたいで。

「今日合コン行くけど、行く人ぉーっ!!」
「まじでっ!!行くいくっ☆」
「あ、私パスーっ」
「あー、彼氏サン?」
「うんっ♪だからごめんねぇー?」
「いいよいいよぉ、あ、美咲行く?」
「えっ・・・私はいいや」
「えー何でぇ?行こうよお☆」
「もしかしてっ美咲、彼氏いるっ?」
「ええええええーっっ!?そおなのお?」
「えっそんなんじゃないよお」
「じゃぁ決まりね☆」


無理やり行く事になった合コン。
全然気分が乗らない。

皆に付いていって、着いたのは
カラオケ。
カラオケで合コン。
よくある話。

「緊張するねぇー☆」
「うんうんっ美咲頑張ろう〜♪」
「え、うん」

部屋に入ると、5人の男子。
男子の顔は見ずに、一番端の席に座った。


「こんばんわ〜♪」
「こんばんわ〜」

皆積極的だけど、私は下を
向いたまんま。

暗いって思われるかな。
・・・まぁそれでもいいか、男子とは
絡みたくないしね。

男子から自己紹介をしていく。
ふと、私の座っている方の正反対の隅に
座っている男子を見つけた。


あの3年生だ。
・・・って事は同高。

皆気がつかないのかな。

そんな事を考えていたら、その3年生が
立ち上がった。



「○○高3、池川 圭吾です★よろしくなっ♪」                                   

「○○高校ってうちらと同じじゃーん♪」
「始めましてだよねぇ?♪」

「そうだねー♪よろしくっ」
軽っぽい口調でしゃべる3年生。


「あっ!!」
何かに気がついたように私を見る。

「この前屋上にいたコだよね?」
「あ、はい」
「なんだー☆知ってたなら声かけてよ♪
 おれの事普通に「けいご」でいいからさ☆」
「圭吾先輩、よろしくです。」

出来る限り交流深めたくないんだけどね。
だからあえて冷静なフリ。

「なんだぁー☆美咲と圭吾先輩、面識
 あったんだねぇ☆んじゃぁうち、
 席変わるよぉ☆」
「えっいいよお別にっ」

私の耳元てささやく。

「・・・違うよぉ、あの一番端の
 知的イケメン狙ってんの♪」

しぶしぶ私は席を替わる。

・・・圭吾先輩って、軽そうだなぁ

「美咲っていうのー?」
「あ、はい。」
「何組っ?」
「2組です」
「おおー、俺4組♪こんど遊びに
 くればっ??」
「あ、暇だったら。」


なんて、普通の会話。
こういうの慣れてないから何話していいのか
全然わかんないんだよね。


「美咲ちゃん?俺たちと一緒に歌わね?」

香奈と、真ん中にいた男子2人。

「えーっあんまり上手くないんだよねぇ」
「いいじゃーん♪うちも歌うからさぁ☆」


勝手にきめられて流れてきた曲は、
アイドルの最近のヒット曲。

この歌、大好き。
ちょっとテンション高めで、かわいいメロディーがいい。

大好きな曲だから、ノリノリで歌える。


曲が終わったところで、まず始めに声をかけてくれたのは
圭吾先輩。

「美咲、歌上手じゃんっ☆」
「ありがとうございます☆」

「美咲、可愛かったよおー♪」
「ちょっとぉ、うちはー?」
「香奈ももちろん可愛かったよ☆」


 ***

「圭吾先輩は何か歌わないんですか?」
「ん、俺はいいや」

バレバレ。歌うのが苦手ってとこ。
なんだか一生懸命で見てて面白い。


本当に、自由なんだな。
この先輩。

「あの、圭吾先輩。」
「ん?」


「受験とか・・・気にしてないんですか?」
「大丈夫っしょー☆」
「え?」
「俺、外見こんなだけど、学年で20番以内には
 入ってるからねー?★」
「っえ、意外です・・・!!」

くすっと笑って。
「・・・驚きすぎ。」


なんかこんな人、初めてかも。
いい友達になれそう。


 ***


「じゃぁねー!!」
「またなー」

今、22時30分。
23時すぎたら、補導されるから。

まぁ、いい雰囲気になった人達は
2次会行くとか言ってた人もいたけど、
私は電車に間に合うように、
足を動かした。


「待って美咲!!・・・っ」

向こうから走ってきたのは
圭吾先輩。


「何ですかっ?」
「あ、アドレスっ!!聞いてないなぁと思って!!」
「あー・・・」
「アドレス教えてっ♪」

・・・アドレスぐらいいっか。

「赤外線OKですか?」
「いいよー」


アドレスを交換してる最中。



サァッ・・・



急に雨が降りだした。
・・・そういえば今日夜から台風が近づいてくるって
言ってたっけ。


ピカッと、イナズマが向こうの空に
はしる。

私は携帯を開いて、電車状況をチェックする。


・・・げ。最悪。

「どうしたの?」
「電車、停まっちゃった・・・」

どうしよう。ますます雨は強くなるばかり。


薄着で着たから、すぐにビヨビショになってしまった。
「・・・寒っ・・・」


本当にどうしよう。帰る術もないし・・・
そんな事を考えていた時。
「俺んち来る?」


思いもしなかった圭吾先輩の一言。
「で、でも・・・」

「ん?」
「悪いし・・・」
「そんなの気にするなって。大丈夫だから★」
「だけど・・・」

男の人の家に上がるなんて、どうなの?

「あー、気にしてる事わかった!大丈夫だよ★
 親いるし、食べちゃったりしないから★」

「な・・・」
私のほおが熱くなったのがわかる。

「まぁ、このままじゃ風邪ひくよ?
 行こ。」


かなり寒かったし、びしょぬねだったから、
コトバに甘えて上がらせてもらった。


・・・大きな家。


「おじゃまします。」

家に上がってみると、人の気配がない。


「・・・美咲。ごめん」
「え・・・?」
「実は、俺一人暮らしなんだよね・・・」
「えっ!!?」
「だって、こうでもしないと美咲、風邪ひいちゃうよ!?」

じゃぁ、2人きりってこと?


ても、今はそんな事言ってる場合じゃなかった。
・・・寒い。


 ***


圭吾先輩はタオルを貸してくれた。
私はそのタオルにくるまって、黙って下を
向いていた。

本当に寒い。
絶対風邪ひいちゃう。
ってかもうひいてるかも。


「今日、泊まってく?」
「・・・・・・え・・・?」

何を言ってるのか?
はて?とした顔で圭吾先輩を見る。

「今日泊まってくかって事。」
「いいいいいいいやっ、
 それはさすがにまずいんじゃ・・・」
「だって今日電車とまってるし、
 このままじゃ帰れそうにないし」

絶対こんなのあり得ないけど、
体力的に限界だったから、
泊まる事にした。



しかし本当に寒い。

「・・・さ、」
「え?」
「あのさ・・・とりあえず、風呂はいれば?」
「なっ!?ふ、風呂っっ!?」
「え、だって寒いっしょ」
・・・う。バレてる。

「だから〜ぁ、食べちゃったりしないから
 そんな警戒すんなって★」
「な・・・っ!そんな事わかってます!!」
私の反応をおもしろがるように圭吾先輩は
笑う。


 ***

結局。
服まで貸してもらっちゃった。
・・・本当、わるいなぁ・・・。

結構、大きいんだなぁ。

貸してもらったジャージは、腕も、足も
だぼだぼ。


・・・圭吾先輩のニオイがする。
なんだか落ちつく。


圭吾先輩、待たせちゃったかな。

「圭吾先輩・・・」
ゆっくりと部屋のドアをあけると、
ソファーで圭吾先輩が寝ていた。


お風呂、長かったのかな・・・


なーんか、よく見ると、圭吾先輩って・・・。
まつ毛長くて・・・鼻とかスラッとして高くて・・・


けっこうイケメン・・・

って!!!




何考えてんだ私!!
何だ今の!!
本当、おかしい・・・



「圭吾先輩・・・っ」
「圭吾先輩ーーっ!」


全然起きる気配のない圭吾先輩。



私は、圭吾先輩のほおをぎゅっと
つかんで引っ張る。

「いでででででででででっっ」
「あ、やっと起きましたね。」
「痛いよ美咲!!もうちょっと違う
 起こし方とかないのお!?」

ふふっと笑いがこぼれる。

「じゃぁ、俺風呂入ってくるから。」
「はい」


圭吾先輩の部屋に残された私。
ふと目についたのは、中学校の卒業アルバム。

ちょっとぐらい、いいよね?


そっとアルバムに手を伸ばす。
「わぁ・・・!!圭吾先輩の中1時代!!」

髪はまだペッタリな圭吾先輩。
ページをめくるにつれ、今の圭吾先輩に
近づいてくる。

中2の夏には、髪はすこし染められていて、
ワックスで髪をふわふわさせた、
今と同じような髪になっている。


そして、中3のページをめくった。

中3の写真は、親しげにある一定の女子と
肩を組んでいる写真、一緒にピースして写っている
写真がよく見つかる。

・・・その時の彼女だったのかな。


卒業文集には、「将来自分」
がテーマに書かれていた。


私は、最初の1文を読んだ瞬間、
ドクン
と、心臓が締め付けられたようだった。



俺の将来は、亜里沙と結婚してる。


亜里沙

その聞いた事もない名前が私の
胸を強く締め付ける。


続きは読みたくない。
そう思っているのに、何故か読んで
しまう自分がいる。


亜里沙は、俺の中で、一番大事で、
なくてはならない存在。


亜里沙だけは一生かけても俺が守る


圭吾先輩の素直な気持ちが胸に刺さる。



亜里沙、大好きだ。




文集の最後の1文。
ぽた。

と、何かが文集の紙におちた、


視界がぼやぁっとした。


・・・泣いてる?
私、泣いてる?


何で?

そうして、私は今こんなに悲しいんだろう。
どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。


どうして・・・。










どうしてこんなに「亜里沙」という人が
うらやましいんだろう。





なんでこんなに
圭吾先輩の事ばかり考えてしまうのだろう



私はその場で声を殺すように泣いた。
泣いて泣いて。自問自答を繰り返した。



私。圭吾先輩が好きなんだ。



         

         Next・・・?