yutoyou blog

出版社で編集者みたいなことをしています。本とペンとお箸とバックパックと。よろしくどうぞです。

「学校なんか行かなくたっていい」鎌倉市図書館のtwitter~わたしの中学時代

夏休みも終わり、2学期が開始した学校もちらほら。

電車にも、徐々に学生さんの姿が戻ってきました。この時期、いじめを苦に自殺する子が多いことも指摘されています。日本では、18歳以下の年間自殺者数は約300名。年間およそ1学級30人、10クラスの子供が自ら命を絶っていることに。

先日も鎌倉市図書館のtwiterが話題になりました。「逃げ場がある」それだけで、当時の私も救われたことを思い出しました。

統計によると、全国年間自殺者数は東京都が1位、2位が私の故郷、愛知県でした。私自身、愛知県の田舎町出身でしたが、上京してきて驚いたのが学生の表情。色のない満員電車でうつろなまなざしの少女。田んぼが通学路だった私には、衝撃的な光景でした。

そんな私の中学時代は、2年目の9月まで。以降、学校には一切行かず、卒業式も不参加。なんとか卒業できたものの、当初希望していた高校とはかけ離れた、名も知らない私立女子高校へ。その後、今までの人生を取り戻すかのように猛勉強。東京の大学へ進学後、現在は希望業界で働いています。 

中学入学時から、学級委員を務めたり、部活動のキャプテンをしたり。文武両道のいわゆる「優等生」でした。そんな2年目のある日、学年リーダー格の女性生徒Aが首謀となり、いじめがはじまりました。理由は「なんかウザいから」。

当初Aが好意を寄せていたB君と幼馴染で仲が良かった私。Bに振られた憤りを、私へぶつけるという、なんとも学生時代によくありがちな人間関係のトラブルでした(笑)

毎朝登校すると机がない。根拠なき噂を流される。体育の授業時には、チームに入れてもらえない。物がなくなる。「気にすることない」と気丈にふるまっていた私も、クラスひいては学年ぐるみのいじめに徐々に耐えられなくなっていきました。毎朝起きるのが辛くなり、徐々に学校を休むように。仕舞いには不登校になり、不眠症うつ病統合失調症など身体にも影響がでるようになりました。学校にも行かずに家にいると両親の目も気になり、居場所がない。そんなときにであったのが、吉本隆明さんでした。

「一人でこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。『分断されない、ひとまとまりの時間』をもつことが必要なのだとぼくは思います。一人でこもって過ごす時間こそが『価値』を生むからです……「『孤独』ということを、どこまで自分の中に呑み込んで、つきつめていけるか。その上で、どこまで風通しよく生きていけるか。それを目指していこう」『ひきこもれ: ひとりの時間をもつということ』(だいわ文庫、2006年)

引きこもっていいんだ。学校なんか行かなくたっていいんだ。そんな許しがうれしかった。それからは本屋に行っては授業に関するだろう教材を手に自宅で勉強。図書館で1日中読書にふける時間が続きました。思えば、あの時期この本に出会っていなかったら、いじめられていなかったら。今の私はここにいないと思います。

こんな話をすると、現在の私を知る人からは「嘘だ~」と信じてもらえないこともしばしば。今、こうして記せているのも、私が過去を受け入れ、真正面から向き合うことができたから。大学時代には、「いじめが多く、なかったことにしてしまう日本の悪しき教育を変えたい」との思いから中高一貫教員免許を取得。現在は、より多くの子どもに「少しでも安らげる時間と、寄り添える本を」と、編集者を目指し出版社で働いています。

今、いじめられているあなたへ。

学校なんか行かなくったっていい。長い人生、ちょっとくらい休んだってバチは当たらないし、いくらだって取り戻せる。周りの目を気にせず、居心地のいい場所にいていい。人生、思ったより残酷かもしれない。けど、支えてくれるひと、救ってくれる本、安心できる場所もきっとある。世界はずっと広い。たまたま通っている学校だけが、居場所のすべてじゃない。居心地の悪い空間に、無理に染まらなくったっていい。足をとめて深呼吸。一緒に休もう。 

最後に、わたしの想いを代弁してくれる大好きなバンド、HONEBONEのこの歌詞を。

 「昔いじめられていたことを話すときがきたみたいだ。そんな今の自分と言ったらもう、健康そのもの。……殺したいほど憎かったあの子ら、今では誰かのお嫁さん。無責任な思いでいてくれて、ありがとう。ありがとう。ありがとう、ざけんな。その分、わたしは優しくなった。人を愛せるように。」

 

「カタをつけると、片付く」


「カタをつけよう」
先日、オフィス移転があり、慣れ親しんだ場所を離れ、心機一転、新社屋にて働きはじめました。

社内ペーパーレス、データ化の動きに抗えず、紙資料大好きの私も泣く泣く紙媒体をシュレッダーへ。(頼むぞ、シュレッダー)必要最低限書類のみ手元にとっておくことにしました。努力の甲斐あって、移転時の段ボールは1個に!(自分に拍手)そのとき、ふと冒頭のことを思いました。

「片付ける=今までとこれからを考えて、想い出とモノにカタをつける」ことなのではないかと。 元恋人との想い出の品(笑)から、昔から大事にしていて中々捨てられないものなど、たくさんありますよね。今は必要ないけど、いつか必要になるだろう、と思って長年日の目を見ないあの一品…

今は、松井棒以来の「片付け」「お掃除」ブームですね。タイトルマジックで買ってしまったものの、中身は必ずしも掃除ノウハウについてではなかったのがこちら。

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実体験をもとに、フランス人の日常を描いた本著でのコアメッセージは、「必要最低限のものをもつ」ことではないかと感じました。良質かつ長く使える愛用品を大切にする、量より質の考え方。日本でいうと「足るを知る」的な感じです。

また、こんまり先生のこちらの著書。
「世界で最も影響力のある100人」にも選出されるきっかけともなった本著コアメッセージも「想い出と物に感謝をしつつ、自分自身がときめくものをもつ」だと感じました。お掃除ノウハウはもちろんのこと、大元となるモノに対する姿勢が大切だったんだ!と。

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私は「片付けができているように見えるけれど、実際はまとめて奥の方にしまっているだけの整理整頓不得意人間、なんちゃってA型」なので、常に周りはひっちゃかめっちゃか。一念発起して掃除はするものの、三日坊主で、ハイ!もととどおり。その原因は、きっと色んなことに「カタがつけられていなかった」こと。なんでも欲張りに手元にとっておそうとしていた、そんなダメちゃんなわたしの背中をそっと押してくれたのがこちら。

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ジャケ買いならぬ、装丁買いしたこちら。私の尊敬する土橋正さんが、ご自身のデスク周りの写真とともに、こよなく愛する文房具を紹介しています。効率的な働き方は、実用性ある文房具によって実現可能なのだと実感し、早速こちらを購入。

カール事務器 ペンスタンド
縦置き、横置きと2way仕様。マス目で仕切りもしっかりなので、分別が苦手な私でも大丈夫。

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hane ペーパーホルダー
何枚ものペーパー収納も可能。更には紙の厚さも問いません。2010年には「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を授賞!メモ書きをひょいと置くのに重宝しています。

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こんな風に、身の回りの日常文具も見直し、必要最低限の相棒揃いにしていきました。すると、仕事がはかどるはかどる!(TVショッピング風に)
思考がシンプルになり、必要最低限のもの以外は潔く手放す。そう、まさにカタをつけることに躊躇いがなくなりました。まさしく、 

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「少ないほどに、多くを得られる。」
なんとも矛盾していそうですが、本当でした。両手がいっぱいだと、いざチャンスが来たときにキャッチできない。だからこそ、勇気をもってえいやっ!と手放す。そうすると、不思議と次へのフットワークが軽くなったような気がします。

モノや情報に押しつぶされそうなとき。
思考が絡み合う糸のように複雑になってしまっているとき。そんなとき、無理矢理強行突破するのではなく、一旦整えてみる。そうすることで、先が見えてくるような気がします。

ちなみに、土橋正さんも関わっておられた文房具の祭典、ISOT展が来月開催

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アナログとデジタルの融合が絶妙なキングジムさん、既成概念にとらわれず常にデザイン性の高い商品発信を続けるデザインフィル(旧:ミドリ)さんはじめ、おすすめブース盛りだくさんなので、ぜひ!

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カタヅケがひと段落した後、無性に読みたくなって手にしました。

片付けるとは、

・今までの想い出とモノにカタをつけること「ありがとう&もう大丈夫だよ」(ベイマックス風)

・失うことと手放すことは必ずしも同義ではないこと

・手放すからこそ、手に入るものがたくさんあること

・いつでも身軽な自分でいると心地よいこと

こんなことを片付けから学びました。ただただ「掃除しなさい!」と怒るお母さん。実は子どももこどもで考えることがあるのかもしれません。なぜ手放せないのか?手放すことでどんな自由が手に入るのか?易しいことばで語りかけていくと、ひょっとするといいかもしれません。

では、私もまだまだ積読の書籍に向き合ってこようと思います〜(笑)修行の道はまだまだ続きます…(続)今日もありがとうございました。これにて、失敬。

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人と情報が混み合う電車でも、思考は混み合わずに、と意識した帰途にて。

出版「者」と出版「社」

今回は、賛否両論あることを覚悟した上で、業界内外で話題になっている元少年Aによる『絶歌』出版について、出版社で働くものとして、見解を記しておこうと思います。

神戸連続児童殺傷事件の加害男性「元少年A」が書いた手記が太田出版から出版されています。

1.今までは「少年A」として、ルポライターや記者に取り上げられることの多かった当人による手記であること。

2.また他の元被告による書籍と違い、あくまでも「少年A」という仮名での出版であること。

3.営利目的のライターによる売り込みではないのか、また本人である確証が見込めずに不透明な点が多いのではないか。

このあたりが、各メディアでの論点になっているように思います。
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【個人的な見解】
私としては今回の出版にやや懐疑的です。その理由としては、主に下記3点。

1.実名公表ではないという不透明さ
他被告による書籍と異なり、本名を伏せたままでの出版に疑問を感じます。なにか違うだろうという、感覚的なものも含まれます。

2.太田出版から発売された経緯
担当編集者は、「私には特に修正するところがなかった」と語っていますが、いささか疑問点が残ります。果たして編集者は、元被告に直接面会ないしは傍聴のうえ接触したのか。売り込み目的のルポライターと、営利、世間の注目を目的とした版元によって仕組まれたものではないのか。

版元の太田出版のルーツは、太田プロダクション。元はビートたけし関連本出版のために立ち上げられた有限会社です。毎週土曜TBSでの北野武のコメントが気になったものの、本人は海外授賞式のため不在。なんとも皮肉でした。

販売収益はすべて「被害者の方のために」と説明されているそうですが、果たして被害にあった方はそんなことを求めているのか。今回、誤解を恐れずに言うと、このような本の場合、世間では、一般的に「売れる本」とされます。その分、発行部数、実販数の伸びとともに、著者印税も比例します。果たしてどのような使い途なのか、疑問を抱かざるを得ません。

3.ご遺族の想い
昨日ニュース番組でインタビューにこたえられるご遺族の方のことば「みなさんには手にとってほしくない」この言葉に、かなり胸をえぐられました。自分だったらと、きれいごとではなく、ただただ、考えてみました。

4.書店の切実な対応
不買運動や世情のあおりを受け、啓文堂書店さんはじめ、販売、注文も一切受け付けない書店さんもいます。1日に何件も潰れ行く書店。なぜ出版不況の中、敢えて販売拒否の立場をとる書店さんがいるのか。版元はこのあたりもしっかり考えていてほしいと、切に思います。単なる営利目的でもなく、著者の社会復帰目的でもなく。出版社として、ある程度の表現の自由は許容されるし、必要。でも、その分責任が伴っているのか。

みなさんは、どう思われましたか?
ちなみに、こちらは事件をもとに石田衣良さんによって描かれた作品です。問題提起が根本にあり、事件の本質について問いかけくる1作でした。中学時代の自分自身の記憶にも強く残っています。
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同じ事件をあつかう書籍。
書籍と一概にいえども、書き手や販売形態によっても、大きく賛否わかれるような、そんな媒体だと思います。

私自身も、版元という立場で発信していく者として、書くことと覚悟と、いつも一緒にいようと思っています。

「いろがない」


「いろがない」
6年前、大学上京を機に感じた感覚を今でも覚えています。満員電車に、どこへ行っても混み合う空間。一歩外に出るだけで、息苦しさを感じていた日々。
疲れた顔は小さな世界に向けられ、周りを見ずに、聞かずに、言わずに、ただただその場をやりすごす日々に押しつぶされそうでした。

そんなとき、出会ったこの本。
「歩くはやさで」
京都の恵文社で手に取った本の帯
「本当は奪われているのかもしれない、と僕は思う」このことばにやられました。

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文は、ピクミンの歌作詞や淡麗グリーンラベルCMなどで知られる松本 巌さん。絵は、現在ホットモットCMでも知られる堺 直子さん。そして、裏面帯が、寄藤文平さん。
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歩くはやさも速くなったなあと。
地元で気心知れた仲間たちと歩くとき、ふと自分が先に行ってしまっているとき、はっとします。

ふと、立ち止まって深呼吸。
空を見て、緑を感じて、今を楽しむ。
どうしても忘れがちなことだけど、意識的に、丁寧に過ごしたい。改めてそう思わせてくれる1冊でした。

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デスクにいろを、と思いテラリウムワークショップへ。定期的な水やりも不要で、虫も寄ってこないので(笑)おすすめです。「いろがない」から、「いろをそえる」へ。

徒然なるひとりごと、はじめました。

拝啓 夢見る少女へ

希望した出版業界に飛び込み、早2年。
忙しく、こなす感がいなめない毎日にふと足元をすくわれそうになったとき、誰かのひとことや何気ないやり取りに救われることがありますよね。そんなささやかな瞬間もこぼれ落ちてしまいそうな、取りこぼししまいそうな毎日が怖くなって、少しづつでも文字として残しておきたい。そう思ったのでしょう。

日頃感じたことや気になっていることやひとなど。徒然なるままに、かつてのように、ずっと冒険を楽しむようなあなたで。あなたに。
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