○ 聞こえない糸電話
「 誰かを愛して 誰かを失った人は 、何も失っていない人よりも 美しい。 」
(映画 イルマーレ)
私は、大好きだった人に別れを告げられた。ずっと一緒にいるんだと思ったし、本気で好きだった。隣にいることが当たり前。あの人の隣は私だけのものだったのに。
あの人の背丈も香りも雰囲気も空気感も何もかもが大好きで大切だった。唯一無二の存在。自慢の人だった。でも あの人からの「さようなら 」はあっけなかった。
嫌だった。嫌だって言いたかった。だけど言えなかった。だってもうあの人は私を見ていないんだから。
しょうがない、次があると自分に言い聞かせることしかできなかった。
理由は 「 他に好きな人ができたから 」
なんじゃそりゃと。だってつい最近までデートしたじゃん。これからも一緒だよって話したじゃん。一緒に家具屋さんに行って、今年の冬はコタツ買おうねって話をしてたじゃん。
あの笑顔、あの話は嘘だったの?
本当は別れたかったけど私に合わせて言ってくれてたの?
あぁ、なんて自分は惨めなんだろう。
あの人の隣に私以外の人がいるなんて想像もしたくない。だけど。だけど あの人は魅力的だから すぐに誰かが隣の椅子に座る。
元々私の特等席だった場所に。
だって私の特別な人。世界一素敵な人。そんなの魅力的に決まってる。
ねぇ、お願いだから 私の席を返してよ。
なんで奪うの??なんでよ。
私は 負けたのです。 敗者には情けはないの。
残酷なさようならでした。
それでもあなたが好きでした。今までもこれからもあなたは私の大切な人。
苦しくて、悲しくて、つらくて、ご飯が食べれない。そんな毎日。だって本当に好きだったの。アホらしいのは分かってる。
だけど私は信じています。
いつか、あの人を超える素敵な人と会えることを。
それまではゆっくりさせて。まだ あなたのことが好きだから。
もっと美しい人になりたい。
そしてあなたが選んだ人を超えてみせる。
今までありがとう。さようなら。
大好きだったよ。