Vまん、徒然

北の果ての素人ギター弾き、独り言

人間椅子「苦楽~リリース記念ワンマンツアー」@青森Quarter

待ちに待ったという表現が正に相応しい、人間椅子の生ライブ。アルバムが出る度にツアーライブに参加、それを毎回心置きなく堪能出来ていたというのがついこの間までは当たり前のことだったのに、新型コロナウイルスはエンタメ界のすべてを変えてしまった。

規制の中、注意喚起の中、人数制限の中、ファンクラブ会員にさえチケットが行き渡らないという状況の中、更には蔓延防止対策のあおりを受けて福島公演が中止になる中、本当にあのお三方は来てくださるんだろうかという一抹の不安を抱え乍らようやく迎えたその当日であった。

開場前に外で並ぶ光景にさえ懐かしさを覚え感傷的な気持ちになる。顔馴染みの椅子ファンがやはりいつもより少ない。普段とは少し異なる状況ではあるが、間もなく大好きなあのライブが見られるのだという気持ちの高揚は間違いなく、だがそれをあまり外には出さずに、感情を静かに大事にそっと抱えていたという表現が正しい。始まるまでは何があるかわからないところもあるし、頼むから無事に時間を迎えられて問題なく開演してくれという、願いに近い。それは列に並んでいたほかのお客さんも同じであっただろうと察する。

会場内には椅子が並べられている。入場時の検温と手指消毒は当然のこと、特別な注意書きなど無くとも誰も騒ぐでもなく、マナーに則った大人のライブ会場だ。ワンドリンクもいつものアサヒスーパードライは無く、すべてソフトドリンク。ステージ上にはメンバーの方々の機材が並ぶ。スコーピオンズのSEが流れる低照度の客席は、固唾を飲んで今か今かと。

メンバー、登場。「此岸御詠歌」に乗り、一人ずつ出てきて頭を下げる。1曲目は何だろうか。新譜からかな。SEが終わって弾き出されたアルペジオ。「夜明け前」だ。いろんな雑誌のインタビューで和嶋さんはこの歌詞について熱く語っていた。このご時世だからこそ心に響いてくる言葉のひとつひとつが、轟音だが的確なために決してうるさくない演奏の中に放たれてゆく。今回のツアーでは最後の演奏だったという「肉体の亡霊」を挟み、津軽弁でのMC。青森市のかつての繁華街である新町の話、玄米が買いたくて沖館のユニバースまで歩いたという話、ご当地ならではのゆるく楽しいトークに、本当は声を発してはいけないのだが思わずブホッと笑ってしまう箇所が何度もあり、ああ椅子のライブってこれだよな、とそんな遠い昔のことでもないのに懐古するような気持にもなる。地元ならではのリラックス感が出てていいなあと感じたのは、ギターソロの話題を鈴木さんが振った時に、間奏部分をリプライズしてくれる場面があったこと。和嶋さん一人で弾き直すのではなく、3人で一気に。これはライブ中に2回あった。まるでリハーサルの断片を覗けているかのよう。スティーヴィー・レイ・ヴォーンがよくやる、アップで1弦を弾く奏法は、ピックによるアップストロークではなく指でプリングするのだということを移動中の車内で発見したようで、解説付きで何度もやってくれて、ほかの数曲でも曲中で誇張してのけぞり気味になりながら、半分照れたような笑みとともに、嬉々として弾かれていた。

今回の選曲は新譜「苦楽」からの選別が圧倒的に多くセットリストの大半を占め、それこそ新譜発売のツアーたる演目だった。ほかのアルバムからは代表曲を1曲ずつといった感じで、数あるアルバムのうち「桜の森の満開の下」「黄金の夜明け」「踊る一寸法師」「無限の住人」「頽廃芸術展」「二十世紀葬送曲」「怪人二十面相」「修羅囃子」「真夏の世の夢」「未来浪漫派」「此岸礼讃」「萬燈籠」「無頼豊饒」「怪談そして死とエロス」「異次元からの咆哮」からの選曲は無し、という形であった(「無限の住人武闘編」は再発時に「無限の住人」にボーナス収録されているがそれを考慮しないで書いている。「此岸御詠歌」もSEとしての使用なので「萬燈籠」からの抜粋とはしていない)。

これらのことから、わがままなファンとしてはまだまだ物足りない感も否めないけれども、初期~中期の曲もたくさん聴きたいのがあるけれども、だがしかし今回の生ライブはもっと大きい趣旨に基づいたものであるだろうから、体感できたことだけでもありがたき幸せである。世の中の閉塞した状況にメッセージを発信すべく、猟奇的・殺人的・事件的なものは敢えて外したのかなという憶測もしている。
かつてのとおりの素晴らしいライブ演奏。各楽器の爆音が体の芯まで刺さってくるようで、各ボーカルも伸びやかで、今まで椅子で椅子のライブを体感したことは皆無であるけれども、座ってじっくり演奏を観戦するのも悪くない。精一杯の拍手で表現される歓喜も悪くない。客席のヤジから発展してゆく面白いMCもたまにあったりするので、また発声を制限されない時が来るまで期待して待っていたい。

ライブ本編の最後の曲の前。「人面瘡」のエンディングのあと、楽器の音が残る中、鈴木さんのMC。上手く聞き取れなかったのだが、斜め後ろのお姉さまがスックと立ちあがったのを感じて、察した。そうか、最後は立って観てもいいって言ってくださったんだな。いつも通りの曲振りMC、「最後にいっぱーつ、針の山」。シンプルで力強い70年代の名ギターリフがドラムとベースを呼び込み、音の束になり、塊になり、太く真っすぐなベクトルで総立ちの客席に突進する。客席は、声は出せずとも立ち上がって、腕を上げ頭振り髪乱し息切らす、文字通り何かの逆襲のようだ。互いにフィードバックし合って相乗で高まりゆく、凄まじいまでの一体感だった。ライブだ。これこそがライブだ。素晴らしい。本当に素晴らしいパフォーマンス。ありがとう。こみあげてくるものを抑え切れなかった。
アンコール。おそらく対策のためもあり、1回のみ、2曲。恐怖だがコミカルでシンプルな、鈴木さんならではの作風の「恐怖!!ふじつぼ人間」から、和嶋さんの才能を世界に知らしめるきっかけとなった「無情のスキャット」で〆。ちなみにこの日はノブさんのお誕生日だということで、ケーキを使ったサプライズも。

ああ、終わってしまった...という強烈な寂莫感に襲われたのが正直なところではあったが、きっとまた来てくれるだろうという確信と、まだまだこれからもやってくれるだろうという期待と、この世の中はまた立ち直れるはずだという大きな連帯感に満たされていた。

なによりも、日本が、青森が誇るロックバンド「人間椅子」への愛と感謝を。効果覿面な音のワクチンを注入してもらって、かつての日常にひとつ戻れたような気がした。

音楽の力って凄い。エンタメこそ、心豊かに生きていくために不可欠なものだ。

 

 

人間椅子「苦楽~リリース記念ワンマンツアー」@青森Quarter
2021年9月20日(月)

夜明け前
肉体の亡霊
杜子春
宇宙海賊
無限の住人 武闘編
洗礼
見知らぬ世界
人間ロボット
恍惚の蟷螂
疾れGT
もっと光を!
至上の唇
人面瘡
針の山
(en)
恐怖!!ふじつぼ人間
無情のスキャット

 

f:id:zakkzakk0919:20210924164824j:image

人間椅子 22nd Al 「苦楽」

このコロナ禍を逆手に、じっくり作りこまれたアルバムという印象。綿密に、緻密に練り上げられた、詞と曲と構成とアレンジそして演奏と歌。今までどおりにサウンドは重く硬く、だけどどこかに希望を見出せというポジティブな命令と指令を感じる。綴られた言葉もかなり深みがあり、今まで以上にしっかり噛み砕いて聴きたい、じっくり堪能しなければ失礼に当る、そう思わせるぐらいの名盤である。


1.杜子春
 先行でMVも公開された今回のリードトラック。パッと聴いた感じはブライトだったけど、聴き込むほどに重さが増してくる。人間椅子得意のテンポに乗るシンプルなリフの繰り返しが、麻薬のように身体に染み込んで来る。修羅場の様を表すかのような間奏部分が鬼気迫る。エンディングでは希望を見出す光が差し込んでくるかのようだ。1音半下げのローチューニング。

2.神々の行進
 研ちゃんのカラーとも言うべき3連のヘヴィシャッフル。これもローチューニングなのだが、途中で入る掛け声など、どこかに前向きな明るさもある。間奏の銅鑼のシーンではまるで岩戸が開いていくかのよう。70年代丸出しの直球ギターソロ、そしてこの曲でもラストのメロディアスなハモリでじわじわ希望を感じさせつつエンディング。

3.悪魔の処方箋
 3曲目もローチューニング曲。曲中いろんなリフが目くるめく。Youtubeの外国人さんからのコメントで「シンジはリフメイカーだ」というのを最近見たが、まさにその通り。間奏の展開がかっこいい。ドラムサウンドも重く、アタック感が強くて素晴らしい。これはアルバム全編通して言える。

4.暗黒王
 そしてさらにローチューニング。こんなに立て続けにローシリーズが続くのも珍しい。この曲は今回のアルバムで一番好きかな。ドスの効いた研ちゃんの声、アクセントで入る変拍子、地獄の描写が映像で見えてくるようだ。ラストではスピードが上がり、恐怖を抱えたまま奈落へ落ちていくかのようだ。

5.人間ロボット
 「宇宙からの色」や「屋根裏の散歩者」にも通じる、オクターブ上を足した機械的なアッパーファズフレーズが、マーチングスネアに乗って始まる。一糸乱れぬロボットたちの行進。その後スピーディーでストレートな曲調に。シングルノートのリフが「悪魔と接吻」的で、更にはゆったりした中間部の切なさが素晴らしい。機械人間の無機質な悲しさ、銀河鉄道999のラストを連想せずにはいられない。

6.宇宙海賊
 研ちゃんお得意の宇宙シリーズ。ギターのコズミックな効果音も素晴らしい。今の世の中でこんなにシンプルなリフが続く曲があるだろうかというくらいに潔く、しかし3人でボーカルを取り合うアレンジや巧みな展開で飽きさせないのはさすが。サビの部分は「青い衝動」や「地底への逃亡」を彷彿させる。交互に繰り出すテルミンソロとギターソロ。椅子のスペースロックの名曲がまたひとつ産まれた。これもローチューニング。

7.疾れGT
 和嶋さんのバイク好きが講じたであろう疾走する8ビート曲。だけどただ軽快で終わらないのは踏み続けられる2バスの効果で、エンジンのトルクやパワーをその音に感じる。80年代の特撮ヒーローやアニメのOPに合いそうなかっこいい正統派のロック。「地獄のヘビーライダー」と連チャンでやってほしい。

8.世紀末ジンタ
 淡々としたシンプルなリズムの中に印象的なアクセントのサビが来る。中間部ではクリムゾン的な響きも挟みつつ、ドライブするスライドギターソロへ。ラストはいかにも人間椅子といった感じの3連リズムに展開してからの変拍子で締め。「人間ロボット」にも感じたのと同じ、機械的な雰囲気がある。

9.悩みをつき抜けて歓喜に到れ
 苦悩に立ち向かい突き抜けろというベートーベンの名言がタイトルに起用されている。ポジティブな歌詞の中に、このコロナ禍においての和嶋さんのメッセージが込められている。中間部の変拍子は「菊人形の呪い」でも使われていたパターン。サビバックのメロディアスなギターフレーズが感動を呼ぶ。

10.恍惚の蟷螂
 虫好き研ちゃんの真骨頂。雌に食われても恍惚を感じる雄、そこに大人のエロスも垣間見える。頭打ちの曲調が「地獄の球宴」らしくもある。コミカルなところも内包する重いMソング。

11.至上の唇
 研ちゃんがこの歌詞が歌いづらいということでノブさんに歌わせたというこのスピード感のある8ビートは、ド直球の接吻ソング。ノブさんが歌うと不思議と恥ずかしさを感じない。「赤と黒」で披露されたような70年代後半スタイルのハードロック。

12.肉体の亡霊
 ローチューニングのゾンビソング。「月夜の鬼踊り」に似たちょっと跳ねた曲調。中間部はダンサンブルなボ・ディドリー風リズムになるのだが、そこに恐ろしやとか恨めしやという詞が乗ると逆に恐怖を感じるから日本語って不思議だ。ラストのハイテンポな8ビート、リフの中に織り込まれるD(6弦1F)の音が邪悪に効いて、尽きること無く亡霊が蠢き彷徨っているかのようだ。

13.夜明け前
 1曲目の「杜子春」とともにリードトラック候補だったという曲。いろんな人にブラックドッグですか?と聞かれたそうだが、全然そうは感じない。そんなことをいう人はきっと深くZEPを知らないんだろう。長くドラマティックな展開の中に、さまざまなアイデアのリフが詰まっている。間奏部分でのタム多用のフィルはまさに夜明け前の嵐のようでもあるし、差し込む光を思わせるクリーンのアルペジオからの戻りは芸術的ですらある。締めのこの曲もローチューニング。

 

弾いてみた。

https://youtu.be/n3eKn9d8k_s
 

f:id:zakkzakk0919:20210811004704j:plain

 

映画「人間椅子 バンド生活三十年」

 
 
 

時折黒い曇天を白い稲光りがつんざく中、ひとり車を弘前に走らせ。みんぱいで糸肉ラーメン食ってからの、映画「人間椅子 バンド生活三十年」鑑賞。なんて素晴らしいシチュエーションなんだ。

人間椅子の音楽は特定のジャンルに属さないと思うのですが、この映画もまたジャンル分けできない作品でした。普通、ミュージシャンを題材にした映画というのはパターンがあって、生い立ち〜出会い〜初出演〜順調な軌道〜人気〜スランプ〜確執〜離散〜再会〜新たな夢〜というものがほとんどで、いわばバイオグラフィのドキュメントになりがちです。しかしこれは違います。例えるならばツェッペリンの永遠の詩に近いかな。

まず、余計なもの一切を排除した演出。付け足し的なナレーションもテロップも皆無。発売されている書籍からの文章の抜粋を、無音の中に黒バック白字で合間合間に映し出すだけ。ひたすら生身の無修正の強力な演奏をもって観客に問いかけます。過去の映像もわずかに使われますが、紛れもない「今」にとにかく執着しています。イカ天に端を発する衝撃のデビューから、それこそ長い長い暗黒時代を経ているだけに、最近バンドを知った人へ向けた歴史解説モノにもしやすかったはずなのに、これでもかと「今」を。過去の遍歴ドラマーは一切銀幕には現れず、目指している場所が常に先にあることを、無駄な解説を使うことなくビシビシ伝えてきます。30年の節目もきっとひとつの通過点でしかなく、今までのような毎年新しい作品を作り上げてきたコンスタントな活動を、これからも淡々と続けていくのでありましょう。どこにも媚びることなく。

いくら動画サイト等の影響があって今ブレイクしたとはいえ、元来その素質・本質がなければそうなるはずもなく、しかもその個性はデビューから一貫して変わっていないのです。つまり、せっかくインパクトのあるデビューを飾ったのにもかかわらず、以後前線に出ることがなかったというのは、メディアなりプロダクションなりレコード会社なりの無能さ、もっときつく言うなればそれらの怠慢にほかなりません。同じスタイルでブレずに頑なに継続して、現にこんなに大きな存在になっているんですから。
スクリーンを見ながら、何度笑顔にさせられたことか。同時に、ずいぶん遠いところにまで行かれてしまったなあと、帰路ハンドルを握りながら少々の寂しさも噛み締めておりました。
これからも世界一愛するバンドに変わりはありません。健康でいつまでも素晴らしい音楽を創造していって欲しいと願ってやみません。

いい映画でした。

 
f:id:zakkzakk0919:20201006015024j:image

コロナ禍に苦しむライブハウスのために

5月某日、青森Quarter・BAR1/3のオーナーであるタカさんから電話をいただきました。
この新型コロナウイルス感染症対策による営業自粛により、かつてないほど大打撃を受けており、もうまいってしまってるんだ、そこでお願いがあるんだ、とのことでした。「ほら、よく無観客とか配信とかいろいろやってるっきゃ、ああいうのできないべが?」と。私は、そういうものは名だたるプロの方がやるから意味を成すんだと常々思っていて、田舎のいちアマチュアがやったところで誰も見ないし、たいして力にはなれないからと、最初は断りの返事をしました。しかし、「またいつか通常のライブ営業ができる時までの、その繋ぎを作ってほしいんだ」と言われたときに、ちょっと考えが変わりました。プロミュージシャンはツアーを回れないし、普段からお世話になってきた地元のライブハウスを今盛り立てていけるのは、身軽に動ける地元のアマチュアしかないんだなと。

国レベルで槍玉の筆頭に挙げられ続けるライブハウス。お客さんを入れて普通にライブができない状況ですが、その間にライブハウス自体の存在や、その意義や、存続への意思の証、なおもってこの窮状、そういうものを世間さまに少しでも提示したい、微力ながら一助になれたら、そう思いました。

いちばん一般的にウケやすいであろう鋼鉄節のメンバー1人ずつに電話をして趣旨を説明したところ、各自理解してくれました。それからBAR1/3に集まって相談をしました。とりあえずクォーターの客側スペースを使って、密にならないように距離を取って配置して、マスクも装着して、5曲くらいやろうということになりました。配信方法はどうするか。生配信だと機材やカメラのスイッチングで準備が大変になるとのことでした。ですので、動画で収録して、後からサイトに乗せようということになりました。過去にクォーターでやった動画とかも使えないかという意見も出ましたが、今のこの状況下でやったものがいいんだとのオーナーのご希望でした。

クォーターのチャンネルは音楽仲間のYama-Dが作ってくれました。収録の撮影も音楽仲間のあぶっちさんが協力してくれました。編集用のPCも貸してくださいました。PAオペレーションは坂本さんが協力してくださいました。照明はオーナーの奥様がやってくださいました。いろんな方の支えのもと、やっとバンドの収録ができました。

今回鋼鉄節はベーシストがミッチェルから雄太に変わり、しかも1回もスタジオ入りできず、やっつけ感満載の中で各自ミスも多々ありますが、今回の趣旨はそれとは違う次元にあったので、久しぶりに集まれて演奏できて収録できたことそのものが良かったと思います。
あぶっちさんには編集のやり方も教えていただき、素人ながら私や雄太が毎夜がんばって製作しました。撮った動画はこれから徐々に乗せていくつもりです。バンドスタイルでの最初の収録でしたので、実験的な要素もあり、編集に時間がかかってしまったのは反省すべきところです。本来ならばスピードが大事なので、スマホ1発動画で撮って、即上げのほうがよかったのかもと思ったりもします。

これから続いてほかのバンドさんの演奏も乗せていきたいなと思っております。今の状況がわかる感じで。お客さんがいないから寂しいところはありますが、それこそ、再開できる時までの大事な繋ぎの一環として。
ご賛同いただける方はご相談ください。地元のハコを、地元のバンドマンが支えていけたら。

いろんな意見があると思いますが、私はその一心で動いております。

 


兄弟船/鋼鉄節(メタルブシ)

 



人間椅子「新青年」

人間椅子30周年を記念するアルバム「新青年」。好きになって、応援し続けて、もう30年経つということか。それはすごいことだ。

ファンだからこそ、愛しているからこそ、今回その新譜の感想を、敢えて辛口で書こうと思った。今まではたとえ納得いかない部分があっても、がんばって好きになる努力をした。好きになれるはずだと自分を信じて、努力をした。しかし頭や体というのは正直なもので、此岸、萬燈籠、無頼、怪談、異端といった最近のアルバムと、収録曲がまるで一致しない。染みるように味わっていた頃はアルバムすべての曲目を覚え、曲順も覚え、歌詞も覚えたものだ。だから、これといった必殺ナンバーを見出せなかった本アルバムを、辛口評価したかった。
だが、初回限定特典の、レコーディング風景とメンバー2人ずつの対談を収めたDVD を見るにつけ、ああやっぱこの人たち好きだわ、素晴らしいわと、当然の伏線のように気持ちが戻ってくる。ファンというのは人柄や生き様を含めてファンなのだ。映像を見ながら、あぁなるほど、あぁそうだったんだと、ただひとりでうなづきながら見ている自分にハッと気づくものだ。30年間休むことなく、メジャーからドロップした時期も屈することなく、ライブを続け音源を出し続けてくれることに感謝を、世界一好きなバンドが今もなお前進している事実に喜びを、毎年会いに行けている幸せを噛み締めながら、中辛程度で、今の感想と思いを簡単に記しておこうと思う。

 

新青年』/人間椅子

1.「新青年まえがき」
ゾクゾクさせる始まり方、食い込んでくるワウ使いの重いリフ。初期を連想させる曲調だが、新しい。4パターンほど次々とリズムが変わっていくけど、まえがきという位置にするのならば、最初のひとつのパターンだけで2分くらいの序曲扱いにしても良かったかなぁと。

2.「鏡地獄」
二十世紀葬送曲のあたりに近いサウンド。Bメロで徐々に盛り上がってから導かれるメロディアスなサビが印象的で、なおさら1曲目が序曲ならこの曲が映えたのにと思う。

3.「瀆神」
研ちゃんのベースの音が良い!タメた感じの8ビート、リズムチェンジも自然でかっこいい。「こぞって〜…」はコーラスパートにしない方が良かったのでは。和嶋さんの声質がどうしても軽く感じてしまうから。

4.「屋根裏の散歩者」
イントロはアッパーファズとスライドかな。これも曲の雰囲気は二十世紀葬送曲の頃を思い出す。展開がドラマティックで、妖しいリフやフレーズがたくさん入ってる。

5.「巌窟王
ヘヴィでストレート。研ちゃんの曲はどこか安心して聴ける、張り詰めない良さがある。途中、「塔の中の男」っぽいリフも入る。これもサビの掛け合いコーラスは無くていいかな、ユニゾンなら良かったのに。

6.「いろはにほへと」
リフも歌もキャッチーで、途中に和のテイストもあり、名曲になるはずだったのだが、ドッキンやズッキンはやはり馴染まない。きっと慣れないだろうな。でもライブで女性たちはここで腕を上げるんだろうな。

7.「宇宙のディスクロージャー
これも研ちゃんのストレートでかっこいい曲。「宇宙遊泳」をさらにハードに、速くした感じ。特典DVDを見るともっと好きになる。

8.「あなたの知らない世界」
何回か繰り返し聴いていたらどんどん好きになってきた。リフと歌がとても合っている。サビのメロディアス感はM2の「鏡地獄」にも通じるものがあり、中間部のテンポが上がるところは何となく「蛇性の淫」を思い起こさせる。

9.「地獄小僧」
サビは特に「猟奇が街にやってくる」をテンポ落として能天気にしてハネさせたような感じ。これも、うらめしやーのコーラスはいらないかなぁ。

10.「地獄の申し子」
これも安心ゾーン、かっこいい!コーラス、掛け合いばっちり。「青い衝動」に近い疾走感。研ちゃんの曲で自由に弾く和嶋さんのソロって過去の作品を聴いてもどれも素晴らしい。

11.「月のアペニン山」
「リジイア」的な、アルペジオが美しいバラッド。和嶋さんがソロライブでやりそうな曲調。中間は「白昼夢」っぽくもあり、無機質さも。最後の数秒だけドラムが入るところ、この発想はなかなかほかのバンドには出せないなと思う。

12.「暗夜行路」
やっぱり研ちゃん節。力強いシンプルなリフ。泣きの要素もあるし、王道の70代風のリフ満載。

13.「無情のスキャット
映像付きで予習ができていたため、8分40秒の長さでもすんなり入ってきた。先行公開の効果って絶大。「見知らぬ世界」風の重くまっすぐ装甲車のように何かに向かい一途に突き進むリフ、中間のギターと歌の絶妙な絡み方、後半は椅子ならではのシンプルなリフに乗るアイオミ調のダブリングソロ。珍しいなと思ったのは、エンディングをピタっと切らないで余韻を持たせたところ。

14.「地獄のご馳走」
ボーナストラック扱いのラストソング。速い3連リズムで往年のプリーストあたりのヘヴィメタルを思わせる。歌詞が少しグロく過激だからボーナス扱いにして歌も聴き取りづらくして歌詞も載せていないのかな。

 
【総評】
なんだかんだ言ってやっぱりすごい、かっこいい、大好きだ。
ただ、特別30周年記念盤という感じがせず、今までの流れのニューアルバム。ジャケットの背景のベージュの色の雰囲気がどうしても各楽曲に付きまとい、これがもしも漆黒の本の表紙のようなデザインだったらもっとダークに引き締まったイメージになったのに、と思う。曲としては、当然ヘヴィなものから速いものまでバラエティに富んでるのだが、ここ15年くらいの和嶋さんのギターサウンドが乾いたトレブリーなもので、曲然として、陰湿さ、引き摺り感、まとわりつき感、粘り感が初期の頃ほど無いのも事実。しかしあくまでこれは長きに渡って愛し続けてきたからこそ言えるのだとも自負している。やはり最初の3枚は強烈すぎた。私みたいな古参な老害を新たなファンは煙たく思うのだろうが、今もなお変わらず応援し続けるところは全く同じ、むしろ負けはしないのだ。
f:id:zakkzakk0919:20190605235110j:image

斉藤和義 弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" 北上市文化交流センター さくらホール

バンドを従えてのツアーは青森も組んでくれるのですが、ひとりで回るスタイルではなかなか来てくれず、ライブアルバムでしか体験できていなかったそれを生で感じるべく岩手は北上へ。
会場はお洒落でモダンなアーキテクト。割りとステージが近く見える2階席の右袖突出しにて、たっぷり堪能してきたのであります。
ギターを弾き語る真ん中のコーナーのほか、上手にドラムセット、下手にキーボード。さながら自宅のガレージを模したステージセット。徐々に大きくなる足音のSEのあと、ドアを開けて現れました。
ギター1本で「月光」と「愛に来て」の2曲を弾き語ったあと、打ち込みのリズムに合わせて「ずっと好きだった」。エンディングはブルージーなフレーズをアドリブで奏でます。スナックしかないという北上の夜の街の様子の感想を述べたあと、初めて披露されたダークジャズ「流星」、立て続けに「劇的な瞬間」へ。上昇していくリードフレーズを文字通り劇的にかきむしり。
立っていた客を着席させ、ガットギターに持ち替えてしっとり歌われたのはサードアルバムから懐かしの「何となく嫌な夜」。
ドブロを手にしスライドバーを用いてかまやつさんのカバーへ、穏やかな人柄についての思い出を語ったあと「やつらの足音のバラード」。
セミアコを歪ませて打ち込みとともに「オモチャの国」。アイロニカルな言葉、カオスのエピローグ、何回聴いてもゾクッときます。
アコギのみに戻して「時が経てば」。自殺志願者をテーマにした歌詞のひとつひとつを、大事に歌われます。がんばれ負けるな、もうちょっとの辛抱だよ…心の臓がえぐられるようです。
斉藤さん節満載の新曲「小さな夜」のあと左側のキーボードに移動し、エレピサウンドで「嫌いになれない」を。
右側のドラムセットに移動し、マイナストラックとともに、叩きながら「幸福な朝食、退屈な夕食」。
真ん中にまた戻りアコギと打ち込みで、途中の展開が印象的な「老人の歌」。アウトロではSGに持ち替えてドライブさせたサウンドのフロントピックアップでの長い長いアドリブソロ。
打ち込みリズムに乗せて、北上の人達はきっと踊りが上手でしょという確認のあとはノリの良い「Good Luck Baby」。新し目の「アレ」のあと、自作のベースとギターのツインネックの楽器を持ち、それぞれをサンプラーで重ねていきながらポッキーソング「Stick To Fun! Tonight」。
アコギ1本でスリリングなアレンジの「マディウォーター」。本編ラストは「Summer Days」。最後、遊ぼうとなんども誘いかける歌詞のところ、ショーケンさんやミチロウさんや裕也さんにも語りかけていました。
アンコールはギターのみで「空に星が綺麗」「歌うたいのバラッド」。広いホールの静寂の中を、優しい爪弾きと優しい声が淡く包み込みます。何百回聴いてもいい曲だなぁ。
最後はポジティブなアップテンポ「Endless」。

ライブ途中、鼻が出る鼻が出るといいながら何度も拭いていた飾らぬ自然、本当にご自宅のガレージで歌っていただいているかのよう
若い頃にレコーディングしたマイナストラックとの今の自分との共演においては、現在の状況を自虐しつつ笑いを誘いながら。
頻尿でキレが悪くなってきたから常にコンドームを付けなきゃダメだなとか、外れないようにフグリまで被せなきゃダメだなとか、さすがのおシモワールドも炸裂。
ちょっと遠かったけど、行ってよかったよかった。

斉藤和義 弾き語りツアー2019
"Time in the Garage"」

月光
愛に来て
ずっと好きだった
流星
劇的な瞬間
何となく嫌な夜
やつらの足音のバラード
オモチャの国
時が経てば
小さな夜
嫌いなれない
幸福な朝食、退屈な夕食
老人の歌
Good Luck Baby
アレ
Stick To Fun! Tonight
マディウォーター
Summer Days
(en)
空に星が綺麗
歌うたいのバラッド
Endless

大橋隆志/JAIL大橋さんのギタークリニックへ


秋葉原で行われた、
「イケベ楽器店Presents 共同開発エフェクター完成記念 大橋隆志/JAIL大橋ギタークリニック」
及び「Aria ProⅡ JAIL大橋モデル Owners Club Guitar Workshop vol.7」
へ行ってきました。

前日の夜に高速バスで発ち、昼の部と夜の部両方に参加。その夜にまた夜行バスで帰る弾丸の旅。
思いのほかどちらも長い時間やってくださったので、帰り間際はメシ食う時間もなく。

各2時間半近くずつ、内容としては共通して、マイナスワントラックに合わせたデモ演4曲と、使用機材の説明や演奏方法の解説、客からの質問コーナー。40人以上集まってたと思うんですが、全ての質問に答えてくださりました。デモ演は共通でしたが、この質疑応答により、実に多岐に渡るお話を聞くことができました。

渡された質問用紙によるもののほかに、デモ演毎に挙手の質問も受け付け、それをした人にはピックのプレゼント。私も昼の部と夜の部1回ずつ挙手質問し、2枚いただきました。ブラッシング時に鳴ってしまうハーモニクス音の対処の仕方と、アダムの林檎のキュルキュルはどの弦を使っているのかを。質問用紙のほうでは、ペンタの高速ランニングフレーズについてと、大橋さんのMacが直ったかどうかを。

弾き方の話やギターや音楽に対するスタンスの話のみならず、聖飢魔IIの裏話等、本当にたくさん。穏やかなトーンで、熟考しながら、優しく。

特に心に残ったものを回想すると、まずチョーキングやビブラートは手の力ではなく、人差し指の付け根を支点にしてテコで行うということ。
それと、パワーコードで5度を押さえるのは小指であること。これは一緒だったのでとても安心しました。
また、クリーンはギター側のボリュームを絞って作ること。これも同じだったのでとても嬉しかったです。歪みとクリーントーンは決して足で切り替えるものではないとのこと。
スウィープはアダムで一瞬出てくるけど、後にも先にもそれだけで、スポーツ感覚の奏法は好きではないということ。和嶋さんしかり、橘高さんしかり、ふと気づくと憧れるギタリストはみんなそういうスタイル。
更に、休符は音がお休みするのではなく、無音状態を演奏するんだということ。
マーシャルでの音作りの仕方は、フルテンから余計なものを絞っていくやり方であること。そして、演奏等も引いて考えていくことが必要だということ。
アメリカの鉄は硬いので、アメリカ製の弦は張りがあるということ。
飼っているネコちゃんは、里親探しで結ばれたということ。ペットショップで家族を買ったことのない私はここにも大いに共感。

概して、男性は機材や演奏方法を、女性は曲作りや音楽以外の質問が多かったかな。そのどれもに、頷きながら笑顔で丁寧に答えくださりました。質問用紙、挙手合わせたら計100個に近い質問を。

なにしろカッコいいし、あんな間近で拝めて会話もできて、行った甲斐がありすぎました。そして当然、シグネイチャーのODペダルの注文も済ませてきました。
最後CDにサインをいただくときに青森から来ましたと申しましたらば、雪の心配をしてくださりました。ライブで来て欲しいという旨もお伝えしてまいりました。

アットホームかつ濃厚な時間をありがとうございました。

 

デモ演奏曲:
GOBLIN'S SCALE/聖飢魔II
Come Inside/大橋隆志
アダムの林檎/聖飢魔II
秘密の花園聖飢魔II

 

f:id:zakkzakk0919:20181223125021j:plain