Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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俺を連れてってくれ、羊文学、【POWERS】

 

宗教と文化に違うところは何もないと俺は思う、嘘だから、でも、どちらも素敵だ。胸を動かすのはいつも誰かが作った嘘だ。信じるとか信じないじゃない、自然とうなずいた時に、いやそうなんだよ、うん、本当にそうなんだよ、と言って立ち上がってしまうもの。

文化の受け取り方は自由、個人宛てのプレゼントだと思っていいと俺は勝手に開封する。逃げるわけじゃないけど、受け取り方は人それぞれだから、こんな感想が君に刺さるかはわからん。でも、俺にどれくらい刺さってるかは伝わる可能性がある。

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羊文学とは?ウィキペディアではオルタナティブロックということになっていて、僕の周りじゃシューゲイザーで聴いてる奴が多い。まあ、とにかく音楽であることに変わりはない。結成は10年代、羊文学は俺らの時代の音楽でもある。ちなみにボスの塩塚モエカ氏は1996年生まれ。ええやん俺に聞くなや。本人に電話するか、ウィキペディアや本人のインタビューに聞いてくれ。

羊文学 - Wikipedia 

羊文学は歌い鳴らす、「声なき声」をなかったことにしないために - インタビュー : CINRA.NET

 

前作の『若者たち』で鳴っていたサウンドは夏だった。アイスクリームを唇に着けた若者、彼女の前髪には太陽が光る、中身もほんとにあの通りの夏の音。青春が終わることを嘆いて明日にノーと叫びたかった俺にはタイムリーだった。爽やかで夏っぽく叫んでいたあの2年前のアルバムから、羊文学はどう変わったのか?

『POWERS』のカバーでは羊文学の3人が身を寄せ合って、向かって右を睨んでいるのか、見ている。若者たちとは対照的に冬になって、目が少し怒ってる?不満?寂しい?音はずっしり重くなった。ベースが結構でかい音でくるくる回りながら聞こえてくる。ノイジーな顔はあの時のままだけれど、重量のあるノイズ、引きずるような重いノイズが響く。声は遠くを見ている。

羊文学の音楽がロックの歴史に依って語られるとき、きのこ帝国とかスーパーカーが引き合いに出されることが多い。ギターやメロディにある日本製シューゲイズたちの影響が大きいのは確か。けど俺が好きなのは言葉、羊文学は言葉。最高の音楽に乗ってる、言葉。

涙が出るほど美しい
全てが思い出に遠ざかる

聞いて思った。黙ってうなずくしかなかった。この人たち、俺がここにいることをめっちゃ知っている。これが羊文学の変化だと俺は思った。変な意味じゃない。この人らは聞いている人に直に言葉を投げかけている。

惹かれあい すれ違い
睨み合い 黙らない

↑『Girls』最高じゃないか?これが感情よ。マジで最高。黙っちゃダメだよな。溢れる。『若者たち』では叫んでいるのを勝手に聞いている立場だった気がする、でも『POWERS』はみんな俺に言ってる歌だろう? そうだ、俺に怒鳴ってるだろう?そうなのよ、俺もそう思ってるのよ、と離れた場所で夜中に怒鳴る。この共感が音楽だろう?

わたしだけが一番可愛くなきゃやだ
両手いっぱいのハッピーをつかんでなきゃ嫌だ
ごまかさないで、大変身よ!
もうすぐ世界が終わるとしてみて
あなたは本当にいいの?

↑『変身』 負けそうになってる人、がむしゃらに求めまくるしかないと思った。感情が希薄になって死んだ人みたいになってないで、生きよう、生きよう、生きよう、生きよう。本気でもう欲しいものの方へダッシュで行かなきゃなとうなずいた。

両手を高く広げ、君ならできるはずだ
正解が何か、関係がないぜ
今は誰も奪えない

『POWERS』は本物の力だ。”力”ってのは、強いんですわ。彼女の声って響く、声張って本気で、これを聞くと俺も叫びだしたくなる。言葉には意味がある、言葉の力は強い、ブルースリーぐらい強くて、それはね、人の手を掴んでブンと持ち上げてくれる。やっぱムキムキだから。うっわ、眩しい、と穴の方へ戻ろうとしたら、「立たんか、歩きなさい、これ聴いて、頑張りな」と尻を蹴り飛ばされて、あー、そうか幸せになる努力ってのをしてないと、そりゃ幸せにはなれないな、って言って羊文学の後ろをよっちよっち着いていく。足掻きたいと思いながら。

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民衆を導く羊文学

見えないものの声が聞こえる
いつかあなたにまた会う日まで響くよ

天国を聴いていなくなった人のことを思い出して泣いてた人は一歩前かわからんけど歩くよ、これを聴いたら。昔のことも忘れずに。12月になると毎年、なんだか暗くなってショックを受けたみたいに動けなくなる。どよんとしてたら、夕方に玄関をノックされて、ほかほかの言葉をお裾分けしてもらって、ちょっと泣いて頑張ろうって思ったよ。この人たちはほとんど聴いた人全員に愛を配り回ってるよ、これは知っておくべきよ、しかも手渡しで、こんな寒い時期にね。手渡しでもらったものはめちゃくちゃ温かい。これはかなり感謝しないといけないことだと思う。本当にありがとうございます。頑張ります。

※この文章は主観に基づいた感想に過ぎません

 

 

 

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購入は以下から

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by merah aka 鈴木レイヤ

コミックソングがJ-POP発展の鍵を握っている説

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今田はナウロマンティック!(本人は黒歴史とするところですが妙に似合っててめちゃくちゃ好きです)



近頃、芸人のみやぞんが八代亜紀とのコラボでリリースした楽曲である「だいじょうぶ」が非常に往年のポンキッキーズ曲のようで、なんだかほっこりしていたところです。こういうのもコミックソングって言うのかな?こんばんは、一番好きな芸人さんはバナナマン、設楽統にたぶらかされたい会長のべしちゃんです。

 

 

 芸人さんとJ-POPの世界

コミックソングの枠を出た芸人さんの名曲といえば、古くはたけしの「浅草キッド」、「wow war tonight ~時には起こせよムーヴメント」、「明日があるさ Re:Japan」…やはりエンタメ業界における芸人さんの立ち位置と「人情味」という部分は切っても切れないもので、そこに名だたるクリエイターが付けば自ずと名曲が仕上がる図式にも頷けるものです。やはり我々日本人って横ノリと人情に弱いもので、これって歌謡曲や演歌をベースに発展を遂げてきたJ-POPの源流とも言えると思います。

 

でもやっぱり時代の徒花に終わった有象無象も存在しており、思い出せないようなものも多数存在するこの業界。(業界?)

しかし一方で、ある意味「仕掛けられる」フィールドでもあるのです。あくまで先述のヒット方程式に乗らず我が道を行った結果、むちゃくちゃ後世に残したい作品となった数作をご紹介。

 

TOWA TEIの現行プロジェクト「Sweet Robot against the Macine」

日本の縦ノリといえばテクノ。テクノといえばYMO。今きてるYMOファミリーといえばTOWA TEI、テイトウワ。

テイトウワといえば近年は高橋幸宏を始めとした豪華メンバーによるバンドプロジェクト「METAFIVE」や水原希子・水原佑果姉妹との共作と精力的な活動が目立つ最中。

そんな中、テイトウワのサイドプロジェクト「Sweet Robot against the Macine」(初代は麻生久美子をフィーチャリング)が再始動。迎えられたのはMETAFIVEよりまりんこと砂原良徳と、なんとバカリズム。

バカリズムといえば自ら主演と脚本を手がけたTVドラマ「架空OL日記」にて向田邦子賞を受賞。マルチな活躍を見せる昨今、兼ねてよりヴィジュアルが激似と名高かったテイトウワとついにタッグを組むことに。「架空OL日記」にて共演した女優の夏帆をゲストに迎え「Sweet Robots against the Macine 3 with KAHO」としてSweet Robot名義では16年ぶりとなる楽曲「ダキタイム」をリリース。


Sweet Robots Against The Machine 3 with Kaho / Dakitime

バカリズムと夏帆の取り止めのない会話の抑揚がなんともアンビエントな響きを持っていて、この手のコラボ企画の新たな一手を見ているよう…!ちなみにバカリはthe pillowsの山中さわおとも「公認の激似関係」なんですがそっちはまだですかね。

…といってもバカリズムってちょっと文化人枠というか、なんかそんな感じじゃないですか。楽曲作るなら秋元センセのところじゃなくてこういう畑に迎え入れられる系というか。テイトウワとバカリズム、もともと組む宿命(さだめ)だったでしょ?みたいな…

 

J-HIPHOPのもう一つの回答「GEISYA GIRLS」

そうでもないのもあるんです。遡ること平成初頭、2人のゲイシャがNYCを練り歩くーーー

白塗り・日本髪・に、きらめくGOLDのアクセサリー…ゲイシャガールズ!!

…正体はダウンタウン。「ガキ使」内で坂本龍一とのコラボを企画。その際、DJ・トラックメイカーとして参加したのが当時Deee-Liteを脱退、ソロ活動の中でカイリー・ミノーグなどビッグネームと仕事をしていた時期のテイトウワであったのです。ちなみに別名義を用い、DJ Shungikuとして。

テイトウワの手がけたトラックがこちら。


Kick & Loud / Geisha Girls

冒頭1秒で映るテイトウワ。教授若っ!…はさておき、まじゴリッゴリのヒップホップです。(リリース時期から考えても尚更)かなりJ-POPの潮流から外れたオールドスクール調。当時米国チャートはヒップホップの全盛を辿っており、ビースティ・ボーイズのブレイクなどとも同時期。

ブレイクに用いられるのは60年代のアフリカン・アメリカンのサックス奏者、Oliver Nelsonの作品「Freedom Dance」から。サンプリングの源流も抜かりなしでここでもガチ感を汲み取れます。

それでもなお「日本で流通させる商業音楽」たる体裁を保っているのは、日本屈指のクセが強い街・アマこと尼崎市出身のダウンタウンの2人が変なカッコで故郷のアマ弁で自ら綴ったリリックをべしゃり倒す…というポイント。単純にオモロイし、関西弁話者圏に住もうてても尚あんま何言うとるかわからへんコッテコテさ。

…(まさにコンビ名通り)ダウンタウンのストリート出身のMCが自らのルーツを自らの言葉で綴る、これってオールドなヒップホップの基本をムチャクチャ踏襲してるのでは…?

 異色のタッグに思わぬ形で生まれたジャパナイズ、いやアマナイズヒップホップ。ゲイシャルックと合わせてジャパンヒップホップのもう一つの世界線としてもっと評価されていい作品な気がします。

 

黒歴史で終わせるなんて勿体無い!今田耕司扮する「KOJI1200」

異色のタッグ、それだけでは終わらない!ゲイシャガールズプロジェクトの翌年1995年、今田耕司のシングル「ナウ・ロマンティック」をまたもテイトウワが作曲・プロデュース。

元来UKミュージックカルチャーに造詣が深いという今田耕司。ディヴィッド・ボウイに代表されるグラムロック、少しときを経て登場したデュラン・デュランなどのニューウェイヴ勢をフェイバリットに挙げ、この「ナウ・ロマンティック」の制作にあたってはヒューマンリーグを意識した…そうです。


KOJI1200-Now Romantic

案外お化粧がハマってたり今田はナウロマンティック…といった歌詞だったりなんだか言いたいことは色々ありますが、渋谷系の大躍進を遂げていた時代の最中でこのモロにニューロマンティック意識のサウンドは良すぎる…!

前述のヒューマンリーグのみならずデペッシュモードからの流れも汲んでいて、テイトウワのセンス、そして今田さんのなんだかんだモノにしてる歌唱もなんだかんだそれっぽい歌詞も今聴いても新鮮で、黒歴史にしてしまうのは勿体無く感じます。今田さんがMCを務める深イイ話などでも度々「黒歴史枠」として言及されますが、以前ダンスパフォーマンスグループ「東京ゲゲゲイ」が番組に出演した際、この曲をダンスパフォーマンスの一部に組み込んでいて、やはり音色の派手さもあって非常にダンスミュージックとして映えていました…

 

そしてバトンはtofubeatsへ、KOJI1200もう一つの名曲

そして今田耕司、もといKOJI1200の楽曲で忘れちゃならんのがこれ、「ブロウヤマインド」。DAOKOのカバーで一躍有名となったtofubeatsの「水星」のサンプリング元楽曲です。

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岡村ちゃんやスチャダラとも共通点のあるような、かなりR&Bエッセンスを感じるシティ派の90’sソウル!リリックはアレですけど、20年先を行くこのセンスはすでに近い未来で新世代のミュージシャンが再度この曲に灯をともすことを運命づけていたと言っても過言ではない仕上がりです。

 

決してこの独自進化が悪いわけではないとおもうのですが、横ノリと人情味とが横行する(なんて言い方は良くないですが敢えて)ガラパコスとも形容されるJ-POP業界に、コミックソングという一枚の強烈なフィルターを被せた上で海の向こうのコアとも言えるジャンルのエッセンスをこれでもかと持ってくるテイトウワの手法は、J-POPに風穴を開ける手段としてかなり有効なものだと言えるのではないでしょうか。

 

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そしてサンプリングという手段を用いてtofubeatsが蘇らせたとも言えるブロウヤマインド。語らずもがなの名曲「水星」です。

 

 

tofubeatsの参入と藤井隆の可能性

ボケかましたリリックにガチガチのトラックを持ってくるのがテイトウワ流だとしたら、そう言う意味でのコミックソングの縛りをゆうに越えていくのももちろんありまして、やはり思い浮かぶのは藤井隆。

キャリア初期段階より松本隆や川瀬智子と組んでいたり、早い地点で「芸人の曲」という見えない縛りからの脱却を図っていました。

2014年には自主レーベルを設立。前述のtofubeatsと組み、tofubeatsアレンジによる「ナウロマンティック」を椿鬼奴、レイザーラモンRGとともにパフォーマンス。ここで繋がるぅ〜!

その後もtofubeats楽曲「ディスコの神様」にてボーカリストとして客演。ま〜たこれがいいんだ!

tofubeats - ディスコの神様 feat.藤井隆(official MV) - YouTubeyoutu.be

Jigsawの「Skyhigh」やGrand Funk Railroads直系のディスコメロディでありながらすこぶる現代的。藤井隆の特徴的な声も生きる華々しい曲で、テイトウワの其れとはまた違ったアプローチを見せています。

その後一昨年2017年にリリースされた最新アルバム「light showers」では堂島孝平、ノーナリーブス、EPOと言った名だたる玄人からの楽曲提供だけに留まらず、スカートの澤部渡、シンリズムといった新世代のミュージシャンからも楽曲提供を受けており、ガチさを伺えます。

またアルバムティーザーのデザイン性の高さにも感服で、もはや今回ここで紹介する括りなのかも怪しいくらいガチです。

藤井隆 "light showers" CFまとめ - YouTubeyoutu.be

土曜はダメよおじさんや思とったらアカンで!!

 

芸人さんの楽曲リリース、いっときに比べてまた増えてきておりこういう普段昨今のJ-POPのチャートには乗ってこないような音楽が外気に触れるいい機会であるとも言えます。なにかしらのキラーチューンカモン!べしちゃんでしたー!

QueenB面・未発表曲を語ろう〜セッションシリーズから製作過程が垣間見えるぞ・後期編

こんばんはべしちゃんです。べすです。

 

QueenB面・未発表曲を語ろう連載、第3回・最終回です。今回は「A Kind Of Magic」から「Innuendo」まで、いわゆる後期と呼ばれる期間におけるレア曲集です。

 

初期〜「Jazz」まではこちらにて。

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

また「The Game」〜「The Works」まではこちら参照ください。

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

 

 

 

例に倣って少し背景解説を

 

 時は日本で言うところの昭和の終わり頃の1985年、アメリカ国内のみで驚異の400万枚を売り上げた「We Are The World」のリリースを引っ掛けに、遥か英国ウェンブリーと米国フィラデルフィアでは世紀のチャリティイベント・「ライブエイド」が敢行。大御所たるミュージシャンが中継環境・バックバンド・寄せ集め再結成の裏目に出ること出ることと次々と滑り散らかす中名声を欲しいがままにしたクイーンは、その勢いに乗ったままシングル「One Vision」のリリースを皮切りに映画「ハイランダー」のタイアップ・サウンドトラックでもある「A Kind Of Magic」をリリースすると、続けざまに最大規模ワールドツアーを敢行。

メンバー各々のソロキャリアも円熟、フレディはソロワークの2期目に入りオペラ歌手モンセラート・カバリェとともに来たる1992年開催に内定していたバルセロナ五輪に向けてテーマソングを発表。

そんな市場の動向を顧みずとも独自のクイーンサウンドが確立されゆく中、「ライブはもうやりません」宣言の発布。様々な憶測を呼ぶも、1989年「The Miracle」を発表、これも当時のチャートはジャネット・ジャクソンに代表されるR&B勢の本格登場、マドンナのますますの活躍、ニューロマンティック勢の登場によりますますのディスコサウンドの発展と、おおよそクイーンサウンドとは無縁そうなラインナップが並ぶ中で大いに善戦。

 一方で日本では平成元年、好景気も好景気の最中TM Networkもとい小室哲哉の登場によるJ-POPの夜明け直前を迎えています。セールス自体日本では落ち着いた様子であったものの本国UKに加え「The Works」期に掴んだ南米市場をはじめとしてやはりその人気はワールドワイドに健在。

しかしライブ無し発表からも、病的な衰えを隠しきれないフレディのビジュアルからも、憶測が憶測を呼ぶ状況に。そんな1991年、市場ではBon Jovi、ガンズなどの新世代のスタジアムロックバンドの活躍、グランジの金字塔NIRVANAのブレイク前夜、本国UKでも二大ブリティッシュロック巨塔と名高いoasisとblurもブレイクまで秒読み、とロック界に新しい風が吹きつつある中、フレディ存命中ラストアルバム「Innuendo」をリリース。前作「The Miracle」に続きこれまでのキャリアを総括する集大成の如くのサウンドで90年代のクイーンの新路線を指し示す出来であったものの、リリース半年後にフレディは公式にAIDSキャリアであることを発表、翌日享年45歳にて死去。

 

 

今回はB面「落ち」や未収録というよりは、セッション過程で生まれて音源として形が残っていて、他収録曲にアイデアが取り込まれたりB面収録に落ち着いたり…と言ったものばかりです。そんなわけで聴いてて一番面白いのはこのあたりのレア曲かなと思ったり。

それでは今回も行ってみましょう〜。

 

 ※取り扱う内容上、音源は所謂ブートレグですのでおよそ半数の出典元は非公式であることをご容赦ください。該当する楽曲は曲タイトル部分に該当リンクを貼っています。

また公式リリースのある音源については、iTunes(apple music)/Spotify両リンク記載しています。お使いの環境に合わせてご一聴あれ!

 

 A Dozen Red Roses For My Darling(1986)

A Kind Of Magic」未収録曲でロジャー作。「ハイランダー」の劇中ではカーチェイスシーンに使用されていたりと厳密にはバリバリ表に出てきている曲ですが…シングル「A Kind Of Magic」のB面。

同収録「Don't Lose Your Head」をリミックスしたインスト曲で、なんかもう一周回ってイマドキ。おそらくシモンズにディレイとリバーブをかけた特徴的なビートミックスの手法はRADIO GA GAと同手法で、80'sカルチャーやインダストリアルビートがリバイバルしつつあるトラックメイカー界隈に見つかれば一発で化けそうと予測。クイーンインストトラックでは一番の出来かもしれません。
邦題は「赤い薔薇を君に」と「愛する人へ薔薇の花束」の二つ…シブいね。

曲タイトルにリンクあり。

 

Blurred Vision(1985)

One Vision」シングル、同コンプリートバージョンにB面収録。「One Vision」のボーカルトラックを一部を除き排除したリミックストラック。

これは確実なんですけどこの曲クイーン好きな人は嫌いだと思います。逆に普段ミニマルやノイズやインダストリアルを聞く人ならめちゃくちゃハマる筈。そんな人はこの記事読んでないと思うけど…
セミデジタル時代のミニマルミュージック特有の気色悪い浮遊感と、その曇りが一気に晴れて「One Vision」が顔を出す瞬間の対比。まさに体験的な実験音楽です。これに噛んだ人、おそらくメンバーじゃないだろうけどもクイーンというフィールドで何故それやろうと思ったんだろう?疑問は残りますが。

曲タイトルにリンクあり。

 

A Kind Of Vision(1985)


長年通名は「A Kind Of Vision」であったこのデモトラック、2011年のリマスター再販時に「A Kind Of Magic」のデモとしてタイトルがマジックに揃えられました。おそらくファンの皆様みんなヴィジョンのままの方が良かったと思っている筈なのですが…というのも曲の骨は「A Kind Of Magic」、歌詞の骨とサウンド要所要所は「One Vision」。それゆえに合体してA Kind Of Vision。こっちの方が粋ですよね。

ライブエイド直後の脂の乗った一番イケイケだった時代のクイーンの製作過程が感じ取れるとても価値あるデモです。それになんというか、分岐し完成した2曲ともヒットナンバーでリスナー側が完成形をくっきりと知っているゆえか、めちゃくちゃデモデモしい。公式配信されてるのにも関わらず本当に製作過程の秘蔵トラック聴かせてもらってるみたいでちょっとドキドキします。
一応ロジャー作曲となっていますが、ドキュメンタリーにも製作過程がある程度残っているように「One Vision」は名実ともに共同クレジット。なんともこういう時期の楽曲はじめの一歩が残っているのはエモがすごい…

A Kind of Magic

A Kind of Magic

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Dog with a bone(1989)


The Miracle」期のロジャー作のデモ曲。ファンクラブ・コンベンションにて発表され、初期におけるロジャー作に近い雰囲気を持ちながらも、彼のソロプロジェクト経歴な度により培ったより一層の渋みが映える曲。

このテイクはメンバーによるメッセージボイス付きで、他にも何バージョンか音源が存在します。デモテイクの中でもとりわけ人気が高い曲で納得の出来。公式リリース内ではニューウェイブやシンセポップに傾倒していたロジャー、彼の真骨頂である渋みのあるロックナンバーがこのタイミングでも発揮されていたところにソングライターとしてのポテンシャルを感じます。ちなみに別名「Goodtimes」だそう。

曲タイトルにリンクあり。

 

I guess we’re falling out (1989)


ブライアン作。「The Miracle」デモ曲、アルバム製作過程でボツになりパーツがバラされ他の曲に至る、とジャムセッション由来の曲が多数を占める「The Miracle」ならではのエピソードが付随します。

パーカス・転調進行・ボーカルテイクの最高域はそのまま後述「My Baby Loves Me」に引き継がれ、エンドのギターフレーズは同じく後述「Hang On In There」へ。このアルバムの製作過程を象徴する位置付けであるデモです。
「The Miracle」期の製作過程でのデモは多々残っており、度々当時の関係者が登壇するファンイベントなどで近年になってからも公開される楽曲が多いです。AffairsGran Dameなどは2010年初出。これから先もでてくるかも…?曲タイトルにリンクあり。

 

My baby Loves Me(1989)


The Miracle」デモ曲。先述「I Guess We're Falling Out」から派生した曲の一つで、完成形であるアルバム収録曲の「My Baby Does Me」に似ているものの歌詞や音数が随分と異なり、かなりシンプルな印象。ただでさえ完成形がシンプルでセクシーな曲なのにかなりスッキリしているが故に未完感が否めません。

曲タイトルにリンクあり。

 

Hang on in there(1989)

初出はシングル「I Want It All」カップリング、ただし「The Miracle」がこれまでのレコード主体のリリースではなくCD媒体でのリリースの本格スタートだったことから、「The Miracle」リリース当初よりCD版にはすでにボーナストラックとして収録。大幅な収録可能時間幅の上昇をアピールするための販促であったとされます。
CD版で言う所の一曲前、アルバム本編のラストナンバーこと「Was It All Worth It」同様に派手なシンセの音が気持ちよく、パワーポップの金字塔とも言えるThe Powoer Stationの発足から数年経っている89年リリースでもなんら出遅れ感のない”クイーン流”パワーポップ。派手!
また「Jazz」収録の「Let Me Entertain You」に見られるようなギターの多重録音テイクが立体音響のように分散パンを割り振るミックスも久々に登場!時代の変遷に伴ってデジタルミックスの導入があったのかなかったのか(そらあったでしょう)、かなり出来ることの幅が広がっているなという印象を見受けられます。
またおそらくスタジオアルバム中でフレディの非ファルセット、地声での最高音域が聴けるのがこの曲じゃないかな?HighEまで出てます!!恐ろしい!!! 

ちなみに公式音源中ファルセットでの最高音域は「Under Pressure」でのHighAかな?どっちにせよなんて喉だ。

Hang On In There

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Hijack my heart(1989)

ロジャー作曲、シングル「The Invisible Man」カップリング曲。「The Miracle」初盤CDには収録がなく、2011年リマスター版にてアルバム初収録。

ロジャーがメインボーカルをクイーン名義では久々の披露、深いリバーブの中でスネアが揺れるAOR調ながらブライアンの泣きのギターが全編通して映えており、アダルティな雰囲気。もうこの時代になってくるとロジャー主導曲が一番シンセサイザーこなしてるなという印象を抱きます。
「The Miracle」シリーズで多用されるラテンパーカッション群も随所でいい味を出しており、収録落ちこそしているものの、地続きで録音されている様子がわかりなんともお得な一曲です。

Hijack My Heart

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Stealin’(1989)

シングル「Breakthru」カップリング。こちらも「The Miracle」初盤CDには収録がなく、2011年リマスター版にてアルバム初収録。

前半はバウンステンポの1度→4度→属7コードとジャムセッションの花形進行で進み、後半二度に渡るテンポアップはおそらく「The Miracle」の”That time will come~”以降の元ネタとなった部分でしょう。
クリーンサウンドの12弦…かな?これ…がキラキラと綺麗な、この時期のクイーンならではの曲。本当にこの時期の楽曲の多くがジャムセッション由来なのがよくわかる、ミックス後音源にも関わらず生っぽい過程を見せてくれる曲。クイーン曲は大抵ここからもう3ひねりくらいわけわかんないコード展開とかしますもんね。

ミラクルのスタメン落ちはどいつもこいつも優秀でええなあ。 

Stealin'

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 Chinese torture(1989)

 こちらは初盤CDよりボートラとして収録。

ブライアンによるインストナンバーで、ちょっとよくわからない。ホントにちょっとよくわからない。だってCDで初盤聴いてたら「Was It All Worth It」では終わらず地続きで「Hang On In There」、次にコレ、最後のトラックは「The Invisible Man」の12インチ盤長めミックスバージョンですよ、そうなったら実質これが最終トラックで「オペラ座」で言うところの「God Save The Queen」枠ですよ。しかも直訳は中国処刑。ナニコレ??カッコええけど… 

ちなみにこの曲だけクレジットがブライアン名義。せやろな!

Chinese Torture

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Self made man(1991)

Innuendo」デモ曲でブライアン作。

多くのバージョンが存在するこの曲は、テイクにもよりますがベースとなっているのは総時間が10分以上もある大作。「Innuendo」アルバム内におけるシンセサイザーサウンドと共通する各パートの音作りと、この段階ですでにある程度練られているコーラスワークによる「クイーンっぽさ」に舌鼓ならぬ耳鼓。

レア度は尋常ではなく、各国のクイーンファンが捜し続けている幻の曲…だったのも昔の話。現在では数多くのバージョンが流出し、その神秘性もこの情報社会の圧倒的さにはすごすごと敗走。有難いんだかなんとも言えないんだか。いい曲です!!

曲タイトルにリンクあり。

 

Robbery(1991)

Innuendo」デモ曲で、セッション内にて構成されたと推測できるスタンダードなロックナンバー。フレディのボーカルは冒頭数小節に渡るのみで、未完成曲。

あまりにも当時の健康状態の問題から完成しなかったであろう様子がありありとわかるため、苦手な方はスルーで。

内容は本当にスタンダードなリフレイン主体のロックナンバーで、シンプルな中にレッドスペシャルの特徴的な音色が映えています。

曲タイトルにリンクあり。

 

My secret fantasy (1991)

Innuendo」デモ曲でジョン作ともフレディ作とも。曲自体は歌詞すらも確定していないようで、スキャット・主題の繰り返しと即興的な歌い回しが目立つテイクです。

ヘビーかつ幻想的な弦セク音をはじめとするシンセサイザー構成、ズンズンくるシンセベースと、アルバム本編収録「All God's People」にも共通する美麗な構成が特徴的です。ていうか前述「Self Made Man」もこの曲もそこに繋がってそうな造りですね。

リリース年の1991年から逆算して、セッションシリーズはおそらく1990年ごろ。この頃の流行音楽の主流はと言えば、背景解説でも述べたようにR&B勢に代表されるメロウなすでにかなり現代的とも言えるサウンド。CD媒体でのリリースがLP市場をほぼ完全に駆逐したこの時代、音楽性は流行音楽の潮流と全く違う初期クイーンばりのミクスチャーサウンドなれど、両者とも同じようにミックスの精度もトラック数もグンと上がります。

曲タイトルにリンクあり。

 

lost opportunity(1991)

Innuendo」デモ曲。ロジャー作とブライアン作の二つの説があります。どう聴いてもブライアンやと思うけど…

そもそも「Innuendo」に収録されたとしたら曲が弱いというかこの曲でなくてもええじゃないのんといった雰囲気は否めず、様々な要素からスタメン落ちになったことが想像されます。ソロワークを経て、ボーカルテクニックもより一層深みの増したブライアンの情感豊かなメインボーカルも必聴。

初期キャリアから定期的に製作されていたブルースの潮流を感じるナンバーで、多岐にわたる変化を遂げたクイーン楽曲群のなかにも一貫した芯があることを感じる作品。

Lost Opportunity

Lost Opportunity

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そんなわけで3回のシリーズ中全30曲を紹介しました。取りこぼしは確実にあります、すみません…。極端なレアトラックや公式にタイトルすら付けられていないセッションナンバー、既存曲の前身となったデモでも普通に「前身です」以上の解説のしようが無いものは省いています。

その手の物以外で「これ無かったんですけど!?」と言ったのがあればコメントなどで耳打ちお願いします。

 

まとめプレイリスト

紹介楽曲中サブスクで公式に配信しているものをまとめました。当方Apple MusicユーザーにつきSpotify版は用意していませんが…

 

あとこんなの考えてみました。まあ需要はなけれどよかったら…

誰が言ったか知らないが 言われてみれば確かに聴こえる ポストクイーン曲アワーのお時間がやってまいりました、お相手はこの方、べしちゃん(apollo96)です。 各フェスでヘッドライナー級を務める現役第一線のスタジアムミュージシャンや、クイーンの影響を公に言及しているミュージシャン、70’sの影響を取り込んだ次世代のUK・USミュージシャンを中心に選定。 この中では異色に見える「セックスマシーン」について、これは日本のインディーロックバンドで、ギターサウンドにモロにブライアンメイの影響を感じて笑います。 またSPARKSはポストクイーンというよりは同時代のバンド。ちょっと矛盾してますがぜひご一聴あれ!

 

 

でもこれだけ言わせて

初期スタジオアルバムにその傾向は顕著ですが、クイーンの制作スタイルには一貫してコンセプチュアルであることに徹しており(そんなことなかった時期もあるけど)、洋楽界隈で度々議論となる「わざわざボートラ付けて作品価値潰すなや」問題の渦中によく放り込まれるものでもあります。

2011年に販売レーベルの移籍に伴い、全てのスタジオアルバムのリマスター再販が行われ、今現在新品で流通していクイーンのスタジオアルバムはだいたい「本編をディスク1に、ボーナストラックをディスク2に」といった処置が取られています。

が、現在試聴媒体として主流であろう音楽ストリーミングサービスに於いては思いっきりボートラ一体(なんなら映像作品も一体)のデラックスエディションが主となっており、既存曲のライブテイクやセッションテイクならまだしも、上で紹介した未発表曲も本編地続きで収録されていたりと、どこまでが作品として意図されたものなのか下手したら解りづらい有難ナンチャラ仕様となってます。

ただ、公式YouTubeチャンネルで全楽曲公開していることに代表されるように、非常にオープンな商売をするバンドなので、はじめにの項でちっちゃい字でふんわり触れたように出所が不透明なブートを駆逐する意味でもレアトラックの再販・再録を定期的に行なっているのかなと個人的には推測しており、いい面も悪い面も持ち合わせたサブスク順応の仕方なのかなと思っています。

ただ通常盤も併せて配信されていますので、これから追う人今追ってる人〜!まずはそっちで聴いて〜!!

 

 最後に宣伝させて

散々貼って申し訳ないんですけどapollo96所属ライターのミヨシくんとひたすらクイーン全キャリア通して謎の上から目線でクダを巻く連載「口の悪い若者2人がQueenを好き放題語ってみた」シリーズ、低空飛行で連載してました。全4回。併せて一読あれ!

 

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

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 あとかなりの反響を見せたこちらの記事。ありがとうございます。

あまりクイーンの音楽そのものの文脈には触れていないので、いわゆる「界隈」へのゾワゾワを感じちゃってる方はよかったら併せてご観覧ください。そうじゃない方はまっったく読む必要は有りません。僭越ながらワタクシ筆でございます。

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以上3回の連載終了!長々とすみません。ディグの手がかりになればこれ幸いです。

べしちゃんでした!またね。

 

 

 

QueenB面・未発表曲を語ろう〜 隠れ名作も隠れ駄作も揃い踏み・中期編

こんばんはべしちゃんです。べすって名前の方が売れてきたのかしら。ややこしくて申し訳ないです。

QueenB面・未発表曲を語ろう連載、第二回です。今回は「The Game」から「The Works」まで、いわゆる中期と呼ばれる期間におけるレア曲集です。

〜「Jazz」期まではこちら参照のこと。

 

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  • その前に少し背景解説をば 
    • Sandbox(1979)
    • It's a Beautiful Day(1980)
    • A human body(1980)
    •  Feel like(1981)
    • Soul Brother(1982)
    • Cool Cat with D.Bowie(1981)
    •  I go crazy(1981/1984)
    • Let me in your heart again(1984/2014)
    • There Must Be More to Life Than This(1984/2014)

 

 

その前に少し背景解説をば
 

時は80年代手前。ディスコカルチャーの台頭・ロンドンパンクムーブメントの勃興、そして少し間を置きマイケル・ジャクソンの「Thriller」発売、これは映画ボヘミアンラプソディ内でも物語の動くキーワードとして登場しましたね。爆発的大ヒットは確実にチャートも歴史も塗り替えました。また国内でもYMOの逆輸入デビューから始まるジャパンテクノの勃興期と位置付けられます。

そんなポピュラー音楽史における転換期、クイーンはというと「The Game」収録の「地獄へ道づれ」の大ヒットを皮切りに、このムーブメントに一枚噛んでやろうとリリースした…もののチャート上でも評論誌上でもスベった「Hot Space」。

ソロ作においてもダンサブルなビートサウンドに舵を切ったフレディ、「地獄へ道づれ」作曲者であるジョン、シンセサイザー解禁作である「The Game」製作においても一早くニューウェイヴサウンドをそれなりに取り入れていた流行敏感系ロジャー。一方でシンセサイザーを取り入れたは良いものの「Flash Gordon」作品一連におけるようにまだあくまでも効果音としてのシンセを主体として曲作りをしていたブライアン。この時期不仲であったが故に「Hot Space」は地獄へ道づれられたという通説がありますが、単純な不仲に加えてこの辺りの製作スタイルへの認識のズレの方が大きかったと思います。どうかな?

そして少しの休憩期間をはさみ、「The Works」のリリース。その間にはデュランデュランをはじめとするニューウェイヴ界隈のポップチャート進出、シンセポップ勢も黎明期ながら市場台頭の兆し、MTVの登場もそれを助け、ある種分かりやすいエレクトロサウンドが主流となった原点の期間と言えます。日本ではアイドル黄金期、AORの登場、同じくMTVの輸入で分かりやすさと視認性といった点で海外市場と整合性を持っていた時期です。

クイーンメンバーも各々ソロキャリアを重ね、いざ集結し出来上がったのは前作と同じ轍を踏むまいという意気込みが見え隠れする”もはやベスト盤”。クイーンらしさ満点のロックサウンド、より噛み砕かれたクイーン流ニューウェイヴ(機材環境の洗練も大きいと思います)、そんなナンバーをPV共に多数シングルカットし、ワールドツアーで掴んだ新規市場も巻き込み、現在ステレオタイプとして想像に容易いクイーン像を確立させていきます。

 

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