Blue10のブログ

歯医者の豆知識を紹介します。

身元確認は歯が有効?

テレビでニュースを見ていて「歯型などから遺体の身元を確認しました」ということを聞いたことがある人がいるのではないでしょうか。
もちろん歯型を確認するのは警察ではなく歯科医師です。身元不明の遺体が発見されると警察から歯科医師会に歯型の確認の依頼がきます。誰なのか解っているが確定するために行う場合はその人の歯科診療のカルテが用意されています。これは警察が歯科医院を訪れカルテや写真などの資料を集めてたものです。全く誰だかわからないときは歯科医師が確認した治療の跡などから歯科医院を回って同じ治療をした人がいないかを探します。一度診療所に警察の方が写真とレントゲンを持って何年何月の時点でこのような口の中の人はいませんか、と来たことがあります。まったく見覚えのない人だっだのでそのことを伝えましたが、一件一件歯科医院を回っているということだったので大変なことだと思いました。
歯科医師会で身元確認の研修を受ける機会がありましたが手順と記入方法がわかれば歯科医師なら基本的には誰でもできると思います。
この身元確認で歯科医師が多く駆り出されたのは御巣鷹山の飛行機事故、最近では東日本大震災があります。過酷な状況の中で犠牲者の身元を確認し遺族へ返したということはよく知られています。
今までに依頼されたことはありませんが身元不明の遺体が見つかるというのは良いことではないので今後も依頼がないのが良いことだと思っています。

一つ気になることは、ほとんどの人が歯科医院で治療を受けているから、歯は安定した物質なので遺体の状態が悪くても確認しやすいなどの理由から歯は身元確認に有効であるとされています。ただ最近は予防が進みまったく治療していない人がたくさんいます。これからは歯が身元確認に役に立たなくなる日が来るかもしれません。

TCHとはなにか?

最近テレビで咬み合わせについていの特集をやっているのを見ることがあります。このブログでも咬み合わせについての記事をいくつか書いています。この咬み合わせのことを歯科用語でTCH(Tooth Contacting Habit)いいます。日本語では歯列接触癖といいます。その名の通りTCHは上下の歯が接触しているだけで一般的な食いしばりのイメージとは違います。また無意識にしていることなので基本的に自分で気づくことはありません。気づかないまま長時間上下の歯を接触させていると歯は疲れてしまします。TCHは顎関節症、知覚過敏、歯の破折、詰め物の脱離、歯周病、咬合痛、肩こり、頭痛場合によってはめまいなどの症状が出ます。
治療の第一歩はまず自分がTCHだと気づくことです。ではどうすればよいのかというと、この記事を読んでいる今現在上下の歯が触っている人はTCHだと思ってください。また背筋を伸ばして椅子に座ったときに歯が接触している人、唇を閉じて30秒間上下の歯を離したときに違和感を感じる人、反対に30秒間上下の歯を接触させも違和感を感じない人はTCHの可能性が高いです。
ではどのようにすればTCHを治すことができるのでしょうか。多くの人が食事で固いものをやめればいいと思うのではないでしょうか。実は食事を注意しても全く効果がありません。食事は3食合わせても歯の接触時間は20分弱で咬む力もせいぜい10kg程度とそこまで強くありません。そのため食事の負担を減らしたとしても意味がないのです。
ではそれ以外の時間に無意識にやっている咬み合せはどのようにしたら治るのでしょうか。今一番有効とされている方法は自分の生活スペースのいたるところにポストイットに「歯を離せ」と書いて貼っておくというものです。この付箋を見たら立ち止まり鼻から大きく息を吸い込見ながら肩をあげます、そして口から「ハッ!」と声を出しながら一気に息を吐き出すのと同時に肩の力を抜きます。これをやるのは付箋一枚につき一回です。この方法を行うと2ヶ月でTCHは改善するそうです。ただ付箋を見るたびにやらなくてはいけないので結構面倒な方法だとは思います。忙しい人には難しい方法であると感じています・・・。
この方法はできないという人にはとにかく肩と首をよく回すように説明します。肩と首の筋肉が緩んでいるときは咬む筋肉も緩むからです。気づいたら首を回すという習慣を積み重ねることにより咬む習慣がなくなっていくのに期待しています。
では寝ているときの食いしばりはどうしたらよいのでしょうか。日中の咬み合せと寝ているときの食いしばりは相関関係があると言われているので寝ているときの食いしばりを減らす方法は日中の咬み合せをなくすことなのです。ただ簡単にやめることはできないので寝ているときはマウスピースの装着を勧めています。

現在むし歯や歯周病で歯が抜けることが減ってきているため、このTCHで歯が抜ける人が確実に増えています。今までにあまり言われてこなかったかみ合わせを注意することが虫歯、歯周病の予防と合わせて今後多くの人の歯を守ることになると思います。

歯科で使う金属でも金属アレルギーは起こるのか?

金属アレルギーとはイオン化した金属に対して体が過剰に反応してさまざまな症状を引き起こすことです。女性はネックレスやピアスなどのアクセサリーで起こることが多いと思います。歯科で使う金属は大丈夫なのかということを聞かれることがありますが、もちろん歯科の金属でも金属アレルギーは起こります。ただ歯科で使う金属は基本的に貴金属なので金属アレルギーは比較的起こりにくいです。症状は金属と触れている舌や唇、頬の粘膜のただれなどの他にも全身の皮膚に現れることもあります。
金属アレルギーが疑われる人はまず皮膚科でパッチテストを行ってもらいます。そこでどの金属にアレルギーがあるのかをはっきりさせ、その結果で歯科で金属が使えるかどうかを判断します。チタンはアレルギーを起こさない金属と言われているので純チタンで作る場合もあるのですが加工が難しい金属であることや保険がきかないことからあまり一般的ではありません。最近はそれよりもセラミックの材質が良くなっているのでそちらを使うのが一般的となっています。金属アレルギーの診断があると保険で奥歯まで白い被せものができます。

歯科で使う金属が原因で起こるアレルギーは治療後すぐ症状が出るものは少なく、時間が経ってから発症するものが多いです。今は使われていない水銀を含むアマルガムという金属を使った治療が原因で金属アレルギーが起こることが知られています。数十年前の治療が原因で起こることが珍しくないのです。
ここで一つ勘違いしないようにして欲しいことなのですがアマルガムに含まれている水銀が原因ではなくてイオン化しやすい他の金属がアレルギーの原因となっているといことです。水銀というと水俣病のイメージが強いと思いますが、水俣病の原因となったのは有機水銀であり歯科で使う無機水銀とは別物で毒性が全く違います。ただ歯科でも保険治療からから外れてしまったので今後歯科治療を受けてもアマルガムを使った治療をされることはありません。

金属アレルギーがある人はもちろんですがそうでない人も金属を使う治療が必要にならないようしっかりと口の中を管理することが大切です。

金属の被せものはどのように作られているのか?

歯医者で治療をして金属の被せものや詰め物をしている人は少なくないと思います。型取りをしたあとどのようにして作られるか簡単に説明します。
まず型取りをしたものに歯科医院で石膏を流し込み模型を作ります。この模型を技工士さんが毎日取りに来るか郵送で届けます。模型を受け取った技工士さんはまず模型を調整して作業しやすいようにします。その模型上でワックスといってロウソクのロウのような材料を使って金属になる被せものや詰め物の形を作ります。ここが技工士さんの腕の見せどころです。出来上がったワックスを模型から取り外して特殊な石膏の中に埋め込みます。この石膏を歯科用の炉の中に入れてワックスを蒸発させ、石膏の中にワックスで作ったものの空洞を作ります。その空洞に溶かした金属を機械を使って一気に流し込みます。これが冷えると金属は完成するので、あとは石膏の中から取り出して研磨をすると口の中に入れられる状態となります。簡単に書きましたが少しは理解していただけましたでしょうか。一つ一つの工程に熟練した技術が必要となる大変な仕事だと思います。歯科治療には欠かすことの出来ないパートナなのでいつも感謝しながら治療をしています。

最近は3Dの技術が発達したため歯科業界でも使われています。一部の白い被せものは模型からスキャナーでデータを読み込み機械がブロックから削り出すものもあります。最先端の機械はは患者さんの口の中をカメラで読み込み、そのデータを技工所に送ると機械が削り出してくれるというものです。あまりにも高額で一般の歯科医院で導入するのはなかなか難しいです・・・。この技術がさらに進歩して歯科医院に普及すれば型取りをすることがなくなるかもしれません。

歯科で虐待を発見することがある?

最近テレビで毎日のように乳幼児の虐待につい放送されているのを見ます。3児の父親としては本当に信じられないことだと思います。
その虐待を歯医者が発見することがあるということで、年に何回か虐待(ネグレクト)についての研修を受けます。特に学校歯科医は研修を受ける義務があります。虐待とは暴力をふるったり、食事を与えないということだけでなく適切な医療を受けさせないということも含まれます。
一見しっかりしていそうな親でも子どもの口の中を見るとボロボロのひどい状態になっていて家の中では育児放棄してしまっていることがあります。そのような場合歯医者以外が気づいて発見するのは難しと思います。行政でも歯科医師会でも虐待を疑ったときの連絡システムができていて通報すると調査が入るようになっています。
ただ実際はむし歯がたくさんある子どもが来てもすぐに通報することはありません。むし歯の他に子どもの様子が明らかにおかしかったり、体中にアザができていたりということを確認できれば通報を考えますが、歯科で服を脱がせたりすることはできないので実際には難しいです。
何より親は子供に治療を受けさせるために診療所に連れてきている時点で虐待の可能性は低いと考えられるのです。ただ子どもの口の中に関心がなかっただけということが多いです。それはそれで問題があるのでしっかり親にも指導をすることが結構あります。
近隣の歯科医院の先生と話をしても診療所から虐待の報告は1件もありませんでした。さらにいうと周辺地域の行政機関からの報告でも1.6歳、3歳児検診のときの虐待を疑うケースは1件のみでそれも親の知識、関心の不足によるものであったという調査結果でした。
お気づきの人も居ると思いますが診療所に受診する、検診にちゃんと行く、幼稚園に通わせている、学校に毎日行っているという子どもは虐待を受けている可能性は低いのです。また怪しい場合でも歯医者が見る前に把握されており学校や幼稚園の先生が注意深く見ていることがほとんどです。問題なのはどこにも連れ出されない子どもなのです。そのような家庭には行政から自宅への訪問が強化されています。
ただいつ虐待を受けている子どもが受診するかわからないので研修を積み見逃さないようにしなければならないと思っています。

歯科医師になってから虐待で通報したことはありませんが、いじめで1件通報した経験があります。唇を切ったと母親同伴で受診したのですがどうも様子がおかしいのでほかの部分もチェックしました。すると耳の穴が切れていました、また髪の分け目に出来たばかりの傷とかさぶたが見えました。母親に事情を説明し体を見せてもらうとあちこちにアザができていました。時間差がはっきりわかるアザだったので継続して殴られていることが明らかでした。耳の穴は鉛筆を差し込まれたそうです。唇の傷は大したことがなかったのですが、いじめについては命に関わることだと判断して当時の上司と相談して然るべき機関に通報しました。大人しい子で学校にも親にも相談できなかったそうです。

歯周病は防ぐことができない?

前回はむし歯の予防について書きましたが、その話を聞いた公演の中で歯周病についても興味深い話がありました。
歯を磨く習慣があまりなかった数十年前と現在でむし歯の数が増えているということを前回書きましたが、同時に歯周病についてのデータもとってありました。そしてその結果はむし歯と同様に現在のほうが歯周病にかかっている人の割合が多いのです。その理由として8020達成率が50%を超えていることからわかるように高齢者の歯が多く残っているということが挙げられます。以前は多くの人が歯周病で歯を失っており、全ての歯を失った人は歯周病ではなくなります。そのため高齢者の歯周病が減っていくということは納得がいきますが、比較的若い年齢層の歯周病の増加の理由はっきりとはわからないとのことでした。
このことから歯周病が重症化して抜けるということは減ってきたが、歯周病自体は増えている、そして歯周病には予防処置によって防げるものとそうでないものがあるのではないかということでした。病的なものでなくて加齢変化でも歯周病は生じるのではないか、そうでないと説明がつかないといった感じでした。
また加齢変化とは無縁の若年者の歯周病は数十年前に比べて顕著に増加しています。これは生活習慣病のようなものではないかと感じています。生活習慣病は以前は成人病と言われていましたが若年者に多く見られるようになったため生活習慣病と呼び方がかわりました。歯周病は歯ブラシだけでなく生活習慣に問題があると発生すると考えると若年層に増加が見られたことに納得がいく感じがします。
今後歯周病の予防は歯ブラシ、歯石の除去はもちろんですが、それだけでなく生活全般を見直すこと、という時代がくるかもしれません。

歯ブラシをしてもむし歯は防げない?

前回の記事でおやつをやめてもむし歯の予防にはならないということを書きましたがこの記事ではさらに衝撃を受けたことを書きます。
みなさんはむし歯にならないように毎日数回歯を磨いていると思います。実はその歯磨きはむし歯の予防になっていないということなのです。この話を聞いたときに会場にいた歯科医師の先生たちは「えっ!?」となっていました。普段から当たり前のようにむし歯にならないように歯をしっか磨きましょうと指導しているからです。
日本人の過去50年間の歯ブラシの状況を集計すると現在は歯ブラシを1日に2回以上する人が大多数ですが、以前は1回以下という人が大半を占めていました。もし歯ブラシがむし歯の予防に効果があればむし歯は減っているはずですが驚いたことにむし歯がある人は現在のほうが多いのです。減っているのは子どもの虫歯だけだということです。
また給食後に歯ブラシを行っている学校と行っていない学校のむし歯保有者の割合のデータをとると差はみられないということもわかったそうです。
ではむし歯の予防には何をすればよいのでしょうか。
むし歯予防にはフッ化物の応用とシーラントしかないそうです。給食の後にフッ素洗口をしている学校はしていない学校に比べて虫歯保有者の割合が明らかに低くなっていることがわかったそうです。また歯磨き粉にフッ素が入っているものと入っていないものを比べたときにフッ素入りのものを使っている人のむし歯が少ないこともわかっているそうです。ただ歯磨き粉の使い方を守らないとフッ素の効果は低下してしまいます。イエテボリテクニックというのですが歯磨き粉は2cm出して全体をまんべんなく歯に塗る付けるように磨きます。磨いたら泡を吐き出して少量の水で数秒ゆすぐか全くゆすがないようにします。その後2時間は飲食を控えるのが効果的な使用法だそうです。やってみるとわかると思いますがまず歯磨き粉を2cm出せる歯ブラシを探すのは至難の技です。またあったとしても大きすぎて磨きにくいと思います。ただ1cmを2回に分けてつければこの問題は解消できます。しかしこの量で磨くと口の中が泡だらけになり、しかもゆすゆすいではいけないとなるとかなりの気持ち悪さです。試してみてください。
最も効果があるフッ素の使用法は洗口だそうです。年齢により決められた量を口に含みブクブクうがいを30秒してから吐き出し、やはり2時間は飲食を控えるという方法です。毎日法と週1回法がありますがどちらも効果は同じだそうです。大抵は寝る前にやると思うのですが歯を磨いて2時間してから洗口するとなると8時に寝る子どもは6時に夕食を食べ終わって歯を磨かないといけないことになります・・・。
歯ブラシにはむし歯の予防効果はないと前述しましたが、それならば歯ブラシはする必要がないのでしょうか。そんなことはなく歯茎の炎症を予防する効果はあるのでしっかり磨くのは必要ということでした。

どんなデータを出されてもなかなか納得のできる話ではありませんでしたがその道の第一人者て言われる先生のお話だったのでありがたく聞いていました。ただ歯ブラシは今まで通りきっちりやろうとは思います。