Kuitanの頭の整理場

触れた物語の感想とか、考えたことをあげていきます。

シャニマスを知って欲しい。

前置き

1年振りのブログです。

去年のブログは、「君が望む永遠」について書かせていただきました。

実は、そのブログを書いている時、私は浪人期の最もメンタルがいかれている時期でした。

今は晴れて大学に入学することができたのですが、ふと自分の浪人期を振り返ってみると、精神的に頼っていたものが二つあったことに気がつきました。

一つは「君が望む永遠」を含むage作品。もう一つは「アイドルマスターシャイニーカラーズ」です。

もちろんこの二つは未だに大好きな作品ですが、「アイドルマスターシャイニーカラーズ」、通称「シャニマス」の方はブログにしていないことに気がつきました。

そこで、「シャニマス」を布教する目的だけでなく、自身を支えてくれたものに対する感謝の気持ちも含めて、このブログを書こうと思いました。

1年経っても拙い文章ですが、最後までお付き合い頂けたら幸いです。

※ここから先の内容は個人の主観が大きいです。

本編

シャニマスとは?

そもそも「シャニマス」とはなんぞや?という方もいらっしゃるかと思います。

シャニマス」とは、株式会社バンダイナムコエンタープライズより、enzaにて配信されているブラウザゲームです。

プレイヤーはプロデューサーとなって、アイドルをプロデュースし、トップアイドルを目指していく、そんなゲームとなっています。

また、楽曲やグッズ、ライブなど幅広く展開しています。

シャニマスの特徴

世の中には多くのブラウザゲームがしのぎを削っています。

ゲーム性がよかったり、キャラが可愛かったり、BGMが素晴らしかったり、それぞれが他のゲームと差をつけるために様々な特色を前面に押し出しています。

それではシャニマスの特徴とは何なのか。

私はそれはシナリオであると考えています。

もちろん、他のゲームのシナリオが面白くないという話ではございません。

しかし、シャニマスには他のゲームと明確に違うシナリオの面白さがあるのです。

シャニマスのシナリオ

それでは、シナリオのどこが面白いのか、4つのポイントにわけて話していきたいと思います。

・登場人物の実在性

トップアイドルを目指す物語と聞くと、多くの人は、まだアイドルとして未熟な女の子が、必死に努力して何度も挫けそうになりながらも頂点を目指す、そんな物語を想像する人が多いのではないでしょうか。

もちろん、そう言った、王道なアイドルもいます。しかし、シャニマスはそれだけではありません。

シャニマスには25人のアイドルがいるのですが、それぞれが違った、考えを持ち、課題を持ち、プロデューサーに対する感情も違います。

それぞれのアイドルが違った特色を持つのと同じで、プロデューサーとしての接し方もそれぞれ全く異なります。

素質はあるけど、自信がないアイドルに対して、もっと自身を持って頑張るよう励ますなんていう王道のシナリオもあれば、アイドルになるという事に対するモチベーションがそもそも低いアイドルもいます。

天才的な才能を持ちながら、アイドルとして必要な心構えを持っていないアイドル、アイドル活動に対する考え方が明確に他のアイドルと違って、ともすれば軽く見ているととられてしまうようなアイドルもいます。

更には、アイドルの考え方にプロデューサー自身が変化していったり、プロデューサー自身が全く才能を感じないアイドルをプロデュースするなんてシナリオもあります。

シャニマスでは後半にあげた、普通ではないアイドルが話題になりがちですが、これは、そうじゃないアイドルのシナリオが面白くない訳ではありません。 

話題になるアイドルはその重い、暗いシナリオで話題になることが多いのですが、シャニマスは別に、そういったシナリオを売りにしている訳ではないと考えています。

それではシャニマスのシナリオの売りは何なのか、私は実在性だと思います。

現実世界でも、同じものを目指していても、全員が同じ考え方を持っている訳ではないですし、その目標に対する姿勢も、アプローチの仕方もそれぞれ異なります。

それと同じで、シャニマスはただ暗いシナリオを描こうとしていることのではなく、25人のアイドルの中にはあくまでそういったシナリオになる人もいるということを描きたいのではないでしょうか。

なので、その中で王道のシナリオを持つというのは、ただ王道だからとりあえず描かれている訳ではないと思いませんか?

また、その王道なアイドルと、普通ではないアイドルが同じ事務所にいたり、同じユニットにいたりする、それだけで物語が生まれそうじゃないですか?

実際、イベントコミュやサポートコミュといった、アイドル同士の話を描いたシナリオも存在します。

そこでも、アイドルの性格や背景、課題を把握して見てみると、アイドルの言動の裏に何を考えているのか等が読み取れてめちゃくちゃ面白いのでおすすめです。(もちろんそこがわからない状態で見ても、それはそれで別の面白さがあるのでおすすめです。)

また、シャニマスのシナリオで面白いのは、プロデューサーが自身の分身ではないということです。

普通、こういったゲームでは主人公は自身の分身として存在していて、シナリオに意思を持って介在することはあまり多くありません。

しかし、このシャニマスというゲームでは、プロデューサー自身の考え方が変わったりなど、明らかに、一人の人物としてしっかりと描かれています。

なので、何人かプロデュースした後、他のアイドルのプロデュースをする時、アイドルの性格や背景が気になるのと同時に、プロデューサーはどういった行動をとるのかがとても気になるなんて事も起きます。

このように、主人公含めた登場人物の性格等がしっかりと設定されているからこそ、それぞれの人物の言動に説得力が生まれ、リアリティが増す。

その実在性の強さがシャニマスのシナリオ最大の特徴と言えるでしょう。

・起きる出来事の実在性

先ほどまでは登場人物の実在性の話をしていましたが、シャニマス世界でアイドル達に降りかかる出来事も、非常に実在性が高いです。

例えば、オーディションの出来レースであったり、番組でやらかして干されたり、ファンからの批判のメールを受け取ったり、他のアイドルから嫌味を言われたり...。

もちろん、これらはアイドル達の課題に結びついている大事なファクターではあるのですが、あまりアイドルゲームとして触れないようなところにも触れていて、その事で悩むアイドルたちの姿はリアリティのある分尚更心にきます。

実際我々もTwitterでアイドルのリプ欄に悪口を書くオタクをよく見かけますよね。

そういった現実で起きうる出来事にアイドルとプロデューサーが向き合い、乗り越えていく姿を見ていくうちに、その世界に没入し、本当にアイドル達が存在しているかのような錯覚を覚えます。

決して私の頭がおかしくなった訳ではありません。

しかし、その実在性のおかげで、感情移入がとてもしやすくなっています。

・まるで小説のような構成

シャニマスにはまるで小説ではないかと思えるほどのシナリオがあります。

例えば、多くのオタクを怪文書制作へと駆り立てた「チエルアルコは流星の」というコミュがあるのですが、そのシナリオの構成はゲームのシナリオとは思えないほど、表現力の高いものになっています。

あまり、細かくは話せないのですが、元気溌剌で、明るいまさにアイドルといった性格の八宮めぐるというアイドルが考えている事、抱えているものについて、直接的にその事には触れずに、読み手側に伝えてくるのです。

そして、そのシナリオは八宮めぐるがその抱えているものに対する答えを見つけいくという流れになっていくのですが、シナリオ内で一切めぐるが自身の抱えているものをカミングアウトしたり、プロデューサーが触れたりはしません。

シナリオ内では、めぐるがオーディションの役の話をしたり、金魚を一緒にみるといった出来事しか起きていません。

それなのに、読み手である我々はめぐるがどういったことを抱えているのか、そして、めぐるはどのような答えを見つけたのかがわかるのです。

シャニマスにはこのような、シナリオの構成を楽しめるようなものも沢山あります。

なので、ラノベ的なシナリオが苦手な方でも楽しめます。

・散りばめられる教養

シャニマスのシナリオには、色んな文学等からの引用が多く仕込まれています。

例えば、「明るい部屋」というイベントコミュがあるのですが、そのタイトル名は「ロラン・バルト」という人物の著書からとられています。

また、「ストレイライト」というユニットがあるのですが、その名前は、ニューロマンサーというサイバーパンク小説の中からとられていて、ユニット名だけでなく、イベントコミュのタイトルや、衣装名も、その小説から引用されていて、ユニットの衣装やイラストもサイバーパンクなものが多くなったりしています。

他にも、ボブ・ディランの歌からの引用やニーチェの言葉からの引用、ベンサムの著書からの引用などもあり、それぞれ、ただ引用するだけではなく、その著書等の内容を意識したシナリオになっていたりと、とても凝っています。

このように聞くと、そういったものを知らないと楽しめないんじゃ...と思うかもしれません。

そんなことはありません。

私もここに書いたもの含めて全て、人から聞いて初めて知りました。

なので、これを一切知らないままでももちろん楽しめます。

私自身は、こういうのを聞くと調べたくなる性質なので、こういった所も好きな要素の一つとなっています。

現に、ニューロマンサーはストレイライトで知って買いました。

とても、面白い小説で、知れて本当によかったと感じました。

このように、知らないものに触れる機会としてもシャニマスは非常に優秀です。

シャニマスの楽しみ方

ここまで長々と書いてきましたが、実際シャニマスを始める時は何をすればいいのでしょうか。

それは人それぞれ...と言いたいところですが、そうやって言われても迷ってしまうと思うので、何を楽しむかによっていくつか紹介していきたいと思います。

・キャラを楽しむ

シャニマスは始める時に、アイドルを選択する画面があります。そこにはアイドルの出身地や特技といったステータスが載っていたり、サンプルボイスが載っています。

また、ユニットのテーマも載っているので、キャラを知ってるけど、あまりどんな子なのか知らない人は、まずそこで大体どんな子なのかを把握することをおすすめします。

個人的に注目して欲しいのはアイドルの私服です。

シャニマスはアイドルの私服もとても凝っていて、ただ現実味のあるファッションであるだけでなく、そのアイドルの性格とかも出ているので、ぜひ注目して欲しいです。

・シナリオを楽しむ

シナリオを楽しみたいなら、ゲームを初めてまずはWING優勝を目指していくことをお勧めします。

シャニマスはプロデュースシナリオが現在4つあるのですが、最初はWINGしかできません。

WINGは時系列的にもアイドルの始まりに位置するので、抑えておきたいポイントです。

プロデュースシナリオはどれもアイドルを育成していくゲームなのですが、ゲームの途中で、コミュという形で、そのアイドルのシナリオが挟まれていきます。

また、WING優勝のシナリオはもちろん優勝しなければ見れないので、最初は苦しいかと思います。

なので、初心者ミッションをこなしつつシナリオを読んでいくという形が最初は良いかと思います。

また、イベントコミュというものが、アルバムから見ることができて、見るのにアイテムが必要ですが、すぐに手に入るので興味があるアイドルユニットのイベントコミュをたまに息抜きで見るのもおすすめです。

見る順番ですが、時系列順に見たいのなら下から見ていった方がいいですが、見る順番は特に気にしなくても楽しめます。

特に、評判のいいコミュを聞いて始めた人は、そのコミュから見てしまってもいいと思います。

・イラストを楽しむ

先ほどまで、シナリオがすごいという内容を書いていましたが、シャニマスはイラストもとてもすごいです。

キャラが可愛いのはもちろんですが、イラストの構図がかなり攻めているものが多いです。

話題になったものだと、「メロウビート・スローダウン」や「我・思・君・思」のようにメインのアイドルが端や下に寄って小さく描かれていたり、他にも、アイドルが見切れているものや、アイドル二人が手をつないでいるところを後ろから撮ったものなど驚くものも多いです。

また、そういったカードはSRであったり、配布でもらえたりなど、入手しやすいのも嬉しいです。

もちろん、そういった攻めたものだけでなく、ちゃんとアイドルが描かれている素晴らしいイラストも沢山あるので、安心してください。

・曲を楽しむ

シャニマスには現在7ユニットあるのですが、それぞれ違った曲調でどの曲も素晴らしいです。

フェス画面のユニット編成の中に曲を選択できる場所があってそこからGame sizeの曲を聞くことができます。

個人的には歌詞にも注目して欲しいです。

特に全体曲と呼ばれるユニットを超えてアイドル全体で歌う曲の中でも、周年の節目で作られる曲は、シャニマスのテーマを歌っているものになっていることが多く、聞いていると、アイドル達のコミュであった出来事が思い浮かんで泣きそうになります。

ちょっと調べると、どのコミュがどの年に出たものかがわかるようになるので、それがわかってから改めてその年の周年曲を聞くと、とても感慨深いのでおすすめです。

シャニマスの難点

ここまで楽しみ方を書いてきましたが、ゲームを楽しむ上で障壁となるものがあります。

それは、プロデュースが作業になりがちであるところと、入手困難なカードがあるということです。

このゲームは先程挙げた通り、コミュを読むのにプロデュースをしなきゃいけないのですが、最初はとても楽しいのですが、アイドルのカードのコミュを読もうと思うと、同じゲームを何回も繰り返さなければならず、マンネリ化して飽きてしまう人が多いです。

そういう時は、他のプロデュースシナリオをこなしたり、イベントコミュを読む等、息抜きをしましょう。

シャニマス以外のゲームをやっているのならそれをやればいいと思います。

楽しみ方は人それぞれなので、そこまで根気をつめずにやるのがベストでしょう。

一応グレフェスというプロデュースしたアイドルを編成して、他のユーザーと競うコンテンツもあるのですが、そのコンテンツで上の方を目指そうと思うと、かなりきついので、序盤はそこまでやらなくていいですし、興味がないなら全然やらなくても大丈夫です。

もし、本気でやってみたいと思う方は、 Youtubeやブログに攻略が上がっているのでそちらをチェックしてください。

また、入手できないカードがあることは、本当にどうしようもないので、気長に待つしかありません。

シャニマスには限定カードというものがあって、それは限られた期間中にしか手に入れることができません。

例えば三峰結華というアイドルの「NOT≠EQUAL」というカードはそのアイドルを知るのにとても重要なカードなのですが、限定カードなので、現在は入手することができません。(少し前復刻していたので、今からガチャから入手するのは絶望的です。)

一応、復刻と呼ばれる期間限定のガチャが一時的に復活していたり、闇鍋と呼ばれる、限定カードが全て入っているガチャもあるのですが、復刻はあまりにも不定期ですし、闇鍋から欲しいカードを狙ってひくのは絶望的です。

周年イベントで、限定スカウトチケットと呼ばれる、欲しい限定カードを確定でもらえるものが売られるので、それを狙いましょう。

シャニマスの楽しみ方2

ここからはシャニマスの世界観に慣れてきた人にむけて、さらに楽しむための方法を紹介していきたいと思います。

シャニマス世界のことを考える

例えばシャニマス世界でイルミネーションスターズはどんなアイドルとして見られているんだろうとか、自分がちょこ先輩の同級生だったらどんな気持ちを抱えるのだろうとか、シャニマス世界で一般人の目線でアイドルを見た時のことを考えるのはめちゃくちゃ楽しいです。

これも、シャニマスが実在性が高いので、アイドル像の解像度がめちゃくちゃ高く、シャニマス世界で生活する姿が目に浮かぶのでやりたくなるのです。

私も、大学までの道を歩きながら、この大きい広告、シャニマス世界なら甘奈が載っていただろうなとか考えたりしています。

他にも、自身に問題が起こった時、アイドル達ならどう乗り越えるかを考えたりと、自身の生活の一部になっていきます。

決して頭がおかしい訳ではございません。

また、シャニマスが好きな友達と、シャニマス世界の話をするのも楽しいです。

例えば、シャニマス世界のオタクでアイドルに脳味噌を最も破壊されるのは誰だろうという話をしたりします。

こんな感じで、シャニマスという強固な世界観があるおかげで、こういう遊びもとても充実します。

・シナリオを深く考察する

私は頭が良くないので、そこまでできませんが、シナリオを深く考察するのもとても楽しいと思います。

シャニマスのシナリオは深く考えすぎるということは絶対にないので、考えれば考える程、そのアイドルに対する解像度が高まっていきます。

また、多くの人が、自身の解釈をネットにあげているので、それを見て、新たな知見を得ることもできます。

他にも、先程挙げたような、シナリオの引用元を調べて、さらに深く理解するのも楽しそうです。

そうやってやっていくと、更にシャニマスの沼に落ちていくことになりますよ。

個人的には、シナリオだけじゃなくて、ユニットコンセプトも実は結構深く考察できる部分もあると感じています。

 

 

私はこんな感じでシャニマスを楽しんでますが、楽しみ方は十人十色だと思うので、自分なりの心地よいシャニマスとの付き合い方を探っていきましょう。

 

終わりに

長々と書いてしまいましたが、言いたいことは、シャニマス面白いからやろうぜ!ということです。

私はシャニマスと前述の君望のせいで、シナリオにとても注目するオタクになってしまいました。

しかし、改めて布教用にシャニマスの面白いところを整理して、そこに固執するのも良くないなと感じました。

このように文字を書くことの楽しさを知れたのも、君望シャニマスのおかげです。

今後も何かしらの形で、文字を書くことは続けていきたいです。

もし、これでシャニマスやろうかなと思ってくれたらとても嬉しいです。

本当にいいゲームなので、ぜひ楽しんで欲しいです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

それでは、またどこかで

君が望む永遠をプレイした感想と頭の整理場

1.初めに

君が望む永遠の遙ルートと水月ルートをプレイし終わりました。

前からこのゲームがすごいという噂は聞き及んでいましたが、なかなかプレイする機会がなく、âge20thBOXを購入し、ようやくプレイすることが叶いました。鬱ゲーかつ泣きゲーと聞いていて、泣く覚悟は出来ていて、実際感動で泣いてしまいましたが、それ以上に深く考え込んでしまい人生で初めてブログを書いて考えをまとめることにしました。拙い文章ですが、どうぞ最後まで読んでいただけるとありがたいです。

 

2.感想

最初は数十日かけて少しづつプレイするつもりだったのですが、あまりの面白さにどうしても手を止めることが出来ず、徹夜で約3日間かけてメイン2ルートを終わらせてしまいました。今考えるとすごく勿体なく感じます。マブラヴもそうでしたがBGMが凄く良く、徹夜の興奮も相まってものすごく君望の世界に没入してプレイすることが出来ました。Rumbling hearts君が望む永遠を聞く度に鳥肌が立つようになってしまいました。間違いなく君望は人生で経験した物語(とはいってもまだまだ少ないですが)で最も感動した物語の1つだと思います。

3.君望から感じたリアリティ

 君望をやっていて1番感じたところは登場人物、特にあの丘で写真を撮った4人組がとても人間臭く感じた事でした。それはあくまで思いつきでしたが、その原因を自分なりに考えていったところ、1つの結論に辿り着きました。

 

創作物、特に最近のアニメでは登場人物に属性がある程度決められていることが多いです。例えばこの子は真面目な子だとか、お調子者だとか。創作物に限らず、現実世界でも私たちはこの子はこういう性格だとか、ある程度その子を簡略化した要素を頭に入れてコミュニケーションを取っているのではないでしょうか。

 

もし、創作物の中でお調子者の人間が真面目な態度をとったら、何かしら事件がつきものです。大体の場合それで1つの話が出来上がってしまいます。しかし、現実世界ではどうでしょうか。お調子者だと思ってた人が例えば自分の知らないところでは真面目だったとしても、自分から見えてなければ関係ないですし、自分に真面目な態度をとってきて、少しそれを奇妙だと感じても、実際は大したことがなかったりすることが殆どです。

 

君望では、創作物であるのにそういった部分が上手く表現されているのではないかと思います。普通に創作物の中でそれをやってしまうとキャラがぶれただけのように思えてしまいます。しかし、君望の世界では常にバックに「遙の事故と目覚めと時の経過による変化」という事件があるため、そういった登場人物達のキャラのぶれ(あえてそういう表現をさせてもらいます)がとても人間らしさを感じさせるのではないかと思います。実際現実世界でも何かしらの事件で他人が思いもよらぬ行動をとることもありますし、自分も自分でもわかっていなかった性格を自覚することがありますよね。君望ではまるでそれぞれが意志を持って行動しているかのような行動が多く見られます。主人公の知らないところで色々動いてたりなどです。人間はその性格の型にハマった行動ばかりとるわけではない、そういう難しい部分を上手く表現できているところが君望の登場人物を人間臭く感じさせるところなのではと考えました。

 

4.全員が被害者?

 君望をプレイしていてハッとしたのは誰も(プレイしている自分を含めて)轢いた人間を悪いと考えない所です。それは遙ルートの水月が東京に出た時に元部活仲間に言われて初めて気が付きました。確かに、普通に考えれば1番悪いのは轢いた人間であり、他は全員被害者であるのに、何故誰も轢いた人間を責めないのか。災害と違い、遙の事故は明確に加害者がいます。もちろん遙を狙っての事故ではないが、間違いなく恨まれてもおかしくないです。しかし、香月先生も言っていた通り、孝之は少なくとも加害者への恨みという動機で遙を見舞っていた訳では無いし、他の人間もそうでした。それはなぜなのでしょうか、考えても明確な答えが出ませんが、そこが、孝之達の性格を表しているのかもしれません。香月先生は「極端」と言っていましたが、口で「加害者が悪い」というのは違うにしても、心の中で加害者のせいにして楽になることは出来たと思います。しかし、それをしなかったのは彼らの根底にある優しさ故に自分で自分を罰する性格からなのかもしれません。遙が眠っていた3年間は加害者のせいに出来る部分が大きかったとしても、目覚めてからは加害者のせいに出来る部分が少ないのも事実です。なぜなら遙の時間が止まっているのは加害者のせいにしろ、孝之達の感情の変化は、彼ら自身の問題であり、そこを孝之達は理解していたのではないかと思います。勿論それすらも加害者のせいにしようと思いばできると思いますが、加害者のせいにしても何も進まないことを何となく理解出来たが故に苦しんだのだと思います。そうやって思った事が良かったのかは分かりません。しかし、加害者のせいにしない事こそが、彼らの性格や問題点を端に表しているのではないかと思うのです。

 

5.物語の焦点はどこか

君望のメイン2ルートを3章まで完走しきった時、ものすごい感動と共にものすごいモヤモヤとしたものが心に残りました。それは私が物語を読んだ時などにはよくあって、それを自分なりに噛み砕くことが楽しみだったりします。しかし、君望はいくら頑張っても上手くまとめることができません。なぜ上手くまとめられないのかを考えました。

 

あまり他作品と比較することは良くない事だと思いますが、自分の中でそういうテーマを持った泣きゲーといえばKey作品を思い出します(浅くてごめんなさい)。Keyも何かしらのテーマを持った作品だと私は考えていますが、君望とKey作品の違いは何か、私は「答え」があるか否かだと思います。AIRを比較対象として出させて頂きます。AIRに限らずKey作品はファンタジーが多く、君望と単純に比較することは難しいだろうと考える人も多いかと思いますが、今回はあくまで教訓性をもった作品として比較させて頂きます。

 

AIRをプレイした時私はこれがハッピーエンドか否かをとても悩みました。(ここはまたブログにまとめられたらと思います)しかし、AIRは「マブラヴ オルタネイティヴ」のラストのようにこれがハッピーエンドかどうかを悩ませるような作品ではなく、これがハッピーエンドであると捉える事がこの物語の根幹なのでしょうであり、麻枝さんの伝えたいことなのではないかと思います。AIRをプレイされた方々ならわかると思いますが、もっと救いはなかったのかと感じるほど物悲しい話です。しかし観鈴は自分の「母親」を救い、さらに過去の因縁までも救う事ができた。だからこれはハッピーエンドだ。それが最も大事な部分であると思うのです。これは智代アフター等も同じ事が言えます。他のKey作品にも言えますが、あの作品達は答えが明確にあった上で、問題提起をし、麻枝さんが考えた答えに向かって進んでいく物語であるといえます。

 

対して、君望はどうでしょうか。君望は皆が優しく、お互いを気遣うが故にさらにお互いが傷ついていく、負のスパイラルに陥ってしまいました。誰が悪い訳でもないし、間違いなく全員被害者。なのに自分に責任を感じ、贖罪のための行動でさらに自分も含め傷ついていく。見ていてとても辛かったです。2人のルートのどちらも、ハッピーエンドと言えたでしょうか。確かに、それなりに孝之はくっついた方と幸せになり、もう片方もそれなりに幸せ。それをハッピーエンドだと捉えられる事がこの物語の根幹なのでしょうか、私は違うと考えます。

なぜなら、彼らの行動は正しくなく、最良の選択ではないと香月先生が言っているからです。彼らは間違いなく今自分達が考えられる最高の行動をとってきてその結果お互いに傷ついてきた、それを香月先生は若さ故の間違いだと言っているのです。「極端」という言葉を香月先生は用いていましたが、彼らの行動はいわば若くて経験がない故の行動ばかりであり、大人である香月先生からみれば間違いである行動ばかりだったのだろうと思います。

 

では、この物語は間違え続けた人間達の不幸な話というのが根幹なのでしょうか。それも違うと私は思います。なぜなら、香月先生は「若いうちに悩むのはいいこと」とも言っているからです。彼らは間違っていたとしても自分達なりに悩み、もがき苦しんだ事で、数年後あの丘で当時の出来事を笑いながら話せるようになると言うことだと思います。もし、ここで悩むことを放棄してしまっていた場合その「数年後」というのは永遠に来なかったのかもしれません。

 Key作品を最初から結論を見据えたうえで、そこに導くための物語だとするならば、君望はそういった答えのない問いを私達にそのままぶん投げてくる物語なのかもしれません。

 

私ではいくら考えても孝之達がとった行動以外にどうすれば良いのかも分かりませんし、そもそもこの物語の解釈が今まで書いた通りなのかも分かりません。ここからの解釈は完全に自分の意見になってしまいますが、若いうちに悩み続ければ、時が経てば過去にあったことも笑って話せるようになるというのは、単に時が経てば大人になって笑い飛ばせるようになるということでは無いのではないかと思います。

 

当時考えていた事を数年後考えたら違うというのはよくある話だと思います。しかし、それは単に「成長」しただけなのでしょうか。それはあくまで時が経って色んな経験をしたがために起きた「変化」なのではないでしょうか。経験を多く積めば正しい判断ができると安直に考えることは少し危険なのではと私は思うのです。若いうちに悩むことで、その時の最適解を導き出し、それを数年後もう一度考えて当時との違いを認識し、それを笑う事が出来る、そこまで行って初めて人として「成長」できたと言えるのではと思います。香月先生はそういう意味で「若いうちに悩むのは悪いことではない」と言ったのではないかと思います。

 

あの4人が数年後丘でどういう話をしたのかは明確に分かりません。しかし、彼らは当時の感情をただ、懐かしいだとか、若さ故の暴走だ等といって笑い飛ばしたのではなく、当時の感情を覚えていて、その上でこういう行動を取った方が良かったなとか、そういう違いを認識し、お互いにそういう部分があった事を認識して、ようやくあの丘で笑い合うことが出来たのではないかなと思います。

6.終わりに

まだ酒も飲めないような子供である私が、拙い文章でこうやって感想を書き起こしているのは、また数年後君望を改めてプレイした時にふとこのブログの存在を思い出し、過去の自分との感じた事の違いに自分の変化を感じとり笑えたらと思うからです。自分はこの作品の伝えたいことのほんの1%にも満たない量しか理解出来ていないのではと思います。なのでこれから何十年かかって読み解いていきたいです。

 

読みづらい文章に付き合って頂いてありがとうございました。このような事を考える機会を頂いて、âgeのスタッフの皆さんには感謝しかありません。本当に素晴らしい作品をありがとうございました。