11 『シャーロック・ホームズ』
18 作品内にも登場するジェイムズ ラヴグローヴのマッシュアップ三部作『クトゥルフ・ケースブックス』
- 【本】『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』:1880年に起こった
- 【本】『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪異』:1895年に起こった
- 【本】『シャーロック・ホームズとサセックスの海の悪魔』:1910年に起こった
26 【本】『緋色の研究』コナン・ドイル
7 はじめに
7 ジェイムズ・ラヴグローヴ
7 2014年春のある日
- ロードアイランド州ブロヴィデンスにある、弁護士事務所からメール
- 差出人は、ラフリン・ジェイコブズ・トラヴァース法律事務所のシニア・パートナーのメイスン・K・ジェイコブズ三世
- 件名は「遺産」
7 【🔎】ロードアイランド州ブロヴィデンス
8 メールの内容
- ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフト氏が昨年秋に82歳でなくなった
- 生涯プロヴィデンスに住み、ラフリン・ジェイコブズ・トラヴァース事務所の長年の顧客だった
- 独身で子供もなく、心不全でなくなった
- 7万5千ドルの財産を遺した
- 彼は、スミス・ヒルにある質素なコンドミニアムに住んでいた
- この街(プロヴィデンス)は、あまり好まれない地域
- 遺産の大部分は、彼のマンションを売却したことにより生じたもので、9万5千ドルだった。そこから税金や諸経費、事務所の手数料を差し引いて残額が7万5千ドル。これは、メイン州のケネバンクポートに住む、ラヴクラフト氏のごきょうだいの孫娘を探しだし、遺産を無事ロンダ・ラシェイズさんに渡した。
- ラヴクラフト氏の遺産の中には、ロンダ・ラシェイズさんが受け取りを希望しないものがあった(書籍や文章、異国の道具、宗教的な目的でつくられたと思われる彫像や手工芸品などの収集もの・・・無価値で公衆衛生上もんだいがあると、処分された)
8 【🔎】7万5千ドルの財産
- 現在1ドル = 153.76円
- 1千153万2千円の財産
10 公共図書館、ブラウン大学ジョン・ヘイ図書館の担当者の遺産の鑑定
- 書籍や文章は、ほとんど価値なし
- 彫像や肖像画、呪物のたぐいの大半は、皮や髪の毛などの有機的な素材で作られていて、虫に食われたり不潔な状態だった
- ありふれた、粗雑な感じがあるので、ラヴクラフト氏が自分でつくったものかも
- その中で一つ、特に保存に値するものがあった
10 ジェイムズ・ラヴグローヴ
- 事務所の調査では、ジェイムズ・ラヴグローヴは故ラヴクラフト氏の遠縁に当たる
- その関係は、300年ほど前にさかのぼる親類
- 「ホームズ研究(ホーメジアーナ)」におけをる専門家
10 当事務所のジュニア・パートナーは、ジャンル・フィクションの熱心な読者であり、あなた(ジェイムズ・ラヴグローヴ)の作品をよく存じ上げている
- 当事務所のジュニア・パートナーが、ジェイムズ・ラヴグローヴが残った品を受け取るのにふさわしいと示唆した
- それは、本の原稿
10 本の原稿の内容
- タイプ打ちされた原稿3束
- 全体で一つの長い物語になったもの
- おそらく100年はたっている
- ジョン・ワトスン博士がかいたもの
- あなた(ジェイムズ・ラヴグローヴ)なら、ワトスン博士の作品に充分な知識がある
- この原稿は、ラヴクラフト氏の寝室のクローゼットの錆びた金庫の中から発見された
11 事務所の考え
- この原稿は、偽物であり、せいぜいよくてパスティーシュのようなものと考えている
- 【本】シャーロック・ホームズをめぐる物語に、ワトスン博士の著者名をつけたものである
- シャーロック・ホームズ愛好家たちが慣れ親しんだものとは異なる冒険
- 奇妙で不気味な出来事が中心
11 【🔎】パスティーシュ
12 ・・・ファンタジー小説やーーーあえて専門用語を使うならーーー「ホームズ研究(ホーメジアーナ)」におけをる専門家としての経験から、この原稿と質の信憑性を判断するには最適な人物であると考えています。・・・
12 ホームズ研究(ホーメジアーナ)
- イギリスではホームジアン (Holmesian)
12 ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトと私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)の関係
- 【本】ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトは、ホラー小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890~1937)の子孫に違いない
- プロヴィデンスという場所は、ラヴクラフトが生まれ、生涯のほとんどを過ごした土地
- 3人の共通の先祖は、バイエルンの貴族、フォン・ルフトグラーフ家
12 【🔎】ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
12 プロヴィデンス
- プロビデンス、プロヴィデンス(英: Providence)とはキリスト教における「すべては神の配慮によって起こっている」という概念。日本語では「摂理」(せつり)、「神の意思」と訳され、用法等によっては「天帝」とも訳される。摂理 (神学)の項で詳述。
13 【🔎】バイエルン州
13 ・・・バイエルンの貴族、フォン・ルフトグラーフ家であった。ルフトグラーフとは、ドイツ語で「高貴な伯爵」というような意味だ。・・・
13 【🔎】グラーフ
13 フォン・ルフトグラーフ家
- 1760年代に財政危機に見舞われて領地や城を失う
- オーバーフランケン地区の広い範囲を所有していた
- ある時、この名家の御曹司が、悪魔を育てる黒魔術師のカルト教団に関わり、発狂して、仲間の信奉(しんぽう)者に全財産を譲ってしまった。その後、彼は精神病院で最後の日々を過ごし、わけのわからぬことを口走っていたと言う。
- わずかに残ったフォン・ルフトグラーフ家の人々は、この事件による恥辱と窮乏から逃れ、再出発のために、北はイギリスへ、西はアメリカへと二手に分れ移住した。
- イギリスではラヴグローヴ、アメリカではラヴクラフトと苗字を短くしたり英語化して生活した。
- ヘンリー・プロテロ・ラヴクラフトは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(作家)を生んだ家系の中でも、18世紀半ばにニューイングランドに到着した最初の家系の幹となる、別の枝に属している。しかし彼は、親類の持っていたオカルトや神秘的なものへの強い関心を、共有していた。
- 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、10代の頃夢中になって読んだ著者H・P・ラヴクラフトからはるかに離れた、いとこである。
13 【🔎】1760年代
13 【🔎】オーバーフランケン地区
13 【🔎】ニューイングランド
14 ・・・彼(H・P・ラヴクラフト)のあまり健全ではない個人的属性、特に人種的偏見やアングロサクソン系以外の文化に対する嫌悪感は、・・・
- <確かに、だがそれが一般的な時代
14 H・P・ラヴクラフト
- ホラー作家
- 太古の神々や禁断の知識、敵対する超自然的な力、宇宙的な無関心主義を融合して探求・体系化したクトゥルー神話をつくりあげた男
14 【🔎】クトゥルー神話
14 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)とH・P・ラヴクラフトの共通点
- 物書きである
- DNAを共有している
- 特に目のまわりなど、漠然とした肉体的な類似性
- <まさか・・・w
15 2週間後、遺産の原稿が到着
- 専門家の紙の鑑定:透かしが入っていること、木綿のぼろ(ラグ)が多く含まれていることから、1920年代に使われていた、フールスキャップを綴ったものだった。
- 別の専門家の鑑定:使用されているタイプライターは、インペリアル・モデル50であると確認。
- 私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、1年ほどかけて、何度も調べた。
15 タイプライター インペリアル・モデル50
- このタイプライターは、2つの大戦の間の時期にイギリスで人気があったもの。
- ワトスンの序文の日付けからわかる執筆時期と一致する。
15 【🔎】インペリアル・モデル50
15 ・・・一見したところでは本物らしいということだ。と同時に、これはとんでもない(モンストラス)悪ふざけなのではないかとは思わずにはいられなかった・・・
15 【🔎】モンストラス
16 「シャーロック・ホームズの経歴における別の歴史」を書いたものかどうか
16 ・・・おそらくヘンリー・プロテロ・ラヴクラフト自身が作者であり、この作品はただ難解なメタフィクション的ジョークであり、・・・
16 【🔎】メタフィクション
16 【本】私(ジェイムズ・ラヴグローヴ)は、3つの原稿を、“クトゥルー・ケースブック”というシリーズタイトルで出版するつもり
- 『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』:1880年に起こった
- 『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪異』:1895年に起こった
- 『シャーロック・ホームズとサセックスの海の悪魔』:1910年に起こった
- <ぽいタイトル
16 【🔎】ジェイムズ・ラヴグローヴ
- James Lovegrove
18 序
18 ジョン・ワトスン博士
- 老人になった
- 鏡み映った老化の兆候と、隅に隠れているもの、視界の周辺に潜んでいるものも映し出される。そうしたものを一度でも目にすると、忍び笑いをささやいたり、時には黙ってこちらを見ていたりする。
- 今で誇りに思う友人シャーロック・ホームズの冒険を描いた好評を博した何十もの物語を書いてきた。
- 全てのことを語っていないどころか、ある話から注意を逸らすために、別の話をしてきた。それは、普通の人達のほとんだが、認識できない領域で、知らない方がといから。事実が知れると、文明は自信を失い、劇的かつ永続的な混乱に陥るので、ジョン・ワトスン博士は、暗くて腐った真実の核心のまわりに人工的な殻を作って、文明を守ってきた。
18 【🔎】ジョン・H・ワトスン
19 【🔎】演繹(えんえき)
19 シャーロック・ホームズ
- 演繹(えんえき)的な力や推理の力を論じ、問題の真相を突き止めて悪事を暴き不正を裁く無比の能力がある
- ジョン・ワトスン博士の友人
19 【🔎】シャーロック・ホームズ
19 ・・・世界中の遵法(じゅんぽう)精神に富む市民の生活を向上させ、ひいては遵法(じゅんぽう)精神に富まない人々の行為を無効にしてきたと・・・
19 【🔎】遵法(じゅんぽう)
19 シャーロック・ホームズが亡くなったのを期に
- 長い間隠してきた秘密を打ち明ける時がきた
- 真実を埋葬していたのは、シャーロック・ホームズの要請だった
- 埋葬していた真実は、ジョン・ワトスン博士を悩ましてきたので、死ぬ前にホームズに関する最後の作品として、3冊の本を書くことにした。
- 三部作は、ホームズが実際に行ったこと、人生で達成したことの全てをさらけ出す。それは、彼の経歴における別の歴史で構成しているが、真実である。
- 出版されることは、期待していない。絶対に人の目につかぬようにしたい。
- 3部作は、ラヴクラフトというアメリカの作家にたくすつもり。ラヴクラフトは問題とする深遠な領域に誰よりも精通しているから、この作品を金庫にしまって鍵を捨ててくれるだろうから。
20 ラヴクラフト
- 彼の作品は、アメリカの「パルプ雑誌」で評判になっている作家
- 煽情的な作品が扱っている冒涜的で、正道を踏み外す題材に、ラヴクラフトが精通しているとジョン・ワトスン博士は思い、文通している。
- ラヴクラフトは、問題とする深遠な領域に誰よりも精通している。
- ラヴクラフトの同業者であるロバート・E・ハワードやクラーク・アシュトン・スミスも同様に精通している。
20 「パルプ雑誌」
- イギリスでの「ペニー・ドレッドフル」や「シリング・ショッカー」と呼ばれる安っぽい犯罪小説が載る雑誌で、扇情的な作品ばかり。
20 【🔎】「ペニー・ドレッドフル」
20 【🔎】「シリング・ショッカー」
20 【🔎】ロバート・E・ハワード
20 【🔎】クラーク・アシュトン・スミス
22 序文
- 1928年 パディントンにて J・H・W
22 【🔎】1928年
22 【🔎】ロンドン・パディントン
23 1章 瘢痕組織(スカー・ティシュー)の研究
23 【🔎】瘢痕
23 【🔎】スカー・ティシュー
- scar tissue
23 1880年の秋のジョン・H・ワトソン
- アフガニスタンから心身ともに傷ついて英国本土に帰還
- カンダハール州の滅びた都市へ探検に赴き、そこに住まうものども邂逅(かいこう)した時のジョン・H・ワトソンが受けた身体的な傷と、精神の損傷。
- あの出来事の記憶が、激烈な悪夢となってジョン・H・ワトソンを苦しめた。正気を保つため、自己否定という、狂気といか言いようのない境地にひきこもったジョン・H・ワトソン
- 熱に浮かされ錯乱した脳の見せる妄想に吞み込まれないよう、現実の出来事ではなかったと自分に言い聞かせた。
23 【🔎】カンダハール州
24 ネトリー病院
- 2年前に、ジョン・H・ワトソンが軍医研修を受けた病院
- 英国に引き上げてきて、ネトリー病院に入院していた
- ハンプシャーにある陸軍病院
- 人目につかない翼練は、身体的な重傷ではなく、戦場の恐怖による心的外傷(トラウマ)を負った復員兵たち専用の病室があった。
- ジョン・H・ワトソンは、なかば無意識に、なかば本能的に、自らの感覚を受け入れまいとする決断をして、心的外傷(トラウマ)を負った復員兵たち専用の病室の一員にならずにすんでいた。
24 アフガニスタンでの真実
- アルガンダーブ渓谷の奥深くに分け入った第五ノーサンバーランド・フュージア連隊に、厄災となった進軍を煽動して真っ先に犠牲になったロデリック・ハロウビー大尉以下6人の死者がでた真実
- あの地下都市の住人達に襲われた兵士達の悲痛な叫びや、武装した小隊を殺戮することに残虐な喜びを覚える住人達のさらに忌まわしいわめき声。
- ジョン・H・ワトソンにできることは、マイワンドの戦いでジェザイル銃弾を受けたというふりをしつづけることだけだった。ペシャワールの本隊病院で思いついた嘘。祖国への忠義を果たした、勇敢さを褒めたたえられて帰国。
- <第二次アングロ・アフガン戦争に行っていた。
25 【🔎】マイワンドの戦い
25 再びロンドンに戻ったジョン・H・ワトソン
- 何週間か、抜け殻になったままでいた。
- ジョン・H・ワトソンに残った者は、わずかな軍人恩給、傷病復員兵の卑屈なとげとげしさと、闇の知識が宿る目。
25 闇の知識が宿る目
- 朝、ひげ剃りの時に鏡から見返してくる目。ジョン・H・ワトソンは、めったに目を直視できなかった。普通は目にすることはないもの、普通は知らずにいた方がいいものを見た目だった。
25 鏡に映るジョン・H・ワトソンが、一生帯びていく姿
- 左肩上部の肉がえぐりとられた、見ようによってはライフル銃弾が貫通したと言えなくもない、醜い溝。
- 曲がった鉤爪(かぎづめ)に三角筋を引き裂かれ、骨から肉をごっそり削られた跡のようにも見える。
- 傷は常に痛み、左腕を使うのに支障をきたした。
- ペシャワール滞在中には、傷が化膿し、医師達が腕を切断するか論議していた頃に比べて、危険は脱していた。急激に悪化した敗血症は治りも早かった。
26 【🔎】敗血症
26 しわの寄った瘢痕(はんこん)組織
- 傷を負わせた不快な生きもののことを努めて考えないようにした。
- 「銃弾」と、詠唱するように言い聞かせた。
26 その年の冬
- 懐が寒くなってきたころ
- 旧知のスタンフォードにばったり出くわす。
26 旧知のスタンフォード
- 【本】『緋色の研究』に記載したとおり、バーツ(聖バーソロミュー病院)でジョン・H・ワトソンの手術助手だった青年。
- 手術助手だったこと以外、彼との再会やその後のなりゆきについて記述したことは、事実に反する。
26 【🔎】バーツ(聖バーソロミュー病院)
26 ジョン・H・ワトソンの『緋色の研究』という小説とは違う、真実
- 旧知のスタンフォードとジョン・H・ワトソンが偶然会ったのは、ピカデリー・サーカスのすぐそばにあるクライテリオン・レストランのロング・バーという上品な場所ではなく、酒を飲むには不健全な、コマーシャル・ロード界隈の迷路のような貧民窟にある、裏路地のパブだった。
- 12月の初日の凍てつく首都。前日の雪で足首までぬかるむ裏通り。
- 根っからのギャンブラーだったジョン・H・ワトソンは、カードゲームのナポレオンで、残り少ない恩給を賭けて参戦して、1時間後、負けたのでゲームを降りた。
- 戸口で、一夜の相手をさせたい女の子の料金をめぐって、2人組のインド人水夫(ラスカー)と派手にやりあう男がいた。インド人水夫(ラスカー)達は、女の子の周旋(しゅうせん)人。その男が、スタンフォード。
27 【🔎】カードゲームのナポレオン
- イギリスのトランプゲーム
28 【🔎】周旋(しゅうせん)
30 女の子
- 青白く怯えた顔つきの浮浪児
- 一夜の相手に、2人組のインド人水夫(ラスカー)とジョン・H・ワトソンの旧知のスタンフォードとの間で、2シリングか5シリングかの値段交渉で、派手にもめられていた娘。
- ぼろきれと大差ないものの、ひだ飾りやフリルでこびを売るような服を着ている。
- 歳はせいぜい13といったところ
- ほこりにまみれた顔の目のまわりが黒ずみ、外反膝で背骨が湾曲ぎみなことから、幼少期に骨軟化症を患ったのだろう。
- 幼いころから、仲間の人間に虐待されてきたのは明白
- 花盛りを迎えられそうにない発育不全のバラのような姿
30 【🔎】外反膝
30 【🔎】骨軟化症
30 スタンフォード
- 記憶の中のスタンフォードは、陽気で元気溌剌(はつらつ)とした若者
- 血だの臓物だのが日常茶判事の手術室では、特に医療従事者のよすがとなる、気味の悪いユーモア感覚を率先して披露する男だった。
- 今は、快活さもうしない、相当神経が張りつめているらしく、いやな汗をかき、頬は土気色で疲れ果てた目をしている。
31 見かねて割って入ったジョン・H・ワトソン
- ラスカー達は憤慨し、海軍用のピーコートのポケットからジャックナイフを取り出した。
- ジョン・H・ワトソンは、両手の拳を固めた、これこそジョン・H・ワトソンが求めて彷徨いあるいていたものだった。
- その時、あの老人が現れた。
33 人目につかずジンをちびちび飲んでいた老人
- ジンのボトルを片手に担がれ、典型的な酔っ払いの千鳥足で奥の方から現れた
- 60歳くらい
- 肩が丸くすぼまり、白髪交じりの頭、びっしり針金状の顎ひげ
- 擦り切れたツイードのジャケットに、浅い縁なし帽(フラットキャップ)、襟なしのシャツと人目を引く青いネッカチーフという格好。
- 洋々たる前途がいつまでも運に見放されたまま遠のいて、失意のうちに取り残された男のように見える。
- 頬の毛細血管が切れて赤らんでいるのがアルコール好きの証拠。
- 球根のような形のざらざらした鼻は、飲酒歴の長さを物語っていた。
- 聞き取りにくい、強いヨークシャ訛り
35 ヨークシャの老人は、ラスカーのジャックナイフの攻撃をかわし、鋭敏な動きで反撃にでた。
- 二人とも真っ青な顔で、ほとんど人事不反省(じんじふせい)の状態になり、戦闘力はなくなった。
36 【🔎】人事不反省(じんじふせい)