ジェンダーSF小説 「心地よい弾丸 heavenly bullet」

純粋で、傷つきやすく、したたかで身勝手な、男女の生存戦略。

【8】カフカ

キノコは、マスコミの目を避けるために

安アパートを転々とする作戦をとっていた。

そんな生活のなか、いままでの自分といびき皮のことなどを

自伝風の小説にまとめたい、という気持ちがわきおこっていた。

 

その日、キノコは「小説はどうやって書けばいいのか」という漠としたテーマで

「死の山」の作者である先輩芸人、跨由と対談することになっていた。

対談は、雑誌「カフカ」の企画として行われることになっていた。

 

カフカは、群像やすばる等のいわゆる文芸誌ではなく、

ファッション雑誌のように写真ページが多めで大きめの版の、

タレントや俳優~ミュージシャンなどが好きな本について語るなど、

ライト層向けに小説を紹介するような雑誌であった。

 

キノコが先について待っていると、後から跨由がやってきた。

「ごめんごめん、思ったよりだいぶ遅なってしもたわ」

キノコ「あー、股由さん今日はありがとうございます」

跨由「自分、今日はどうしたん!?」

キノコ「いや、小説を書いてみたいんですよ、自伝の」

跨由「いや、かっこよ。雰囲気だいぶ変わるなぁ」

キノコは普段とは違い、撮影用にと赤いドレスのような服を着ていた。

 

キノコ「撮影もあるいうことで、スタイリストの方が用意してくれたんですよ、

 こんなんも面白いかなぁおもて」

跨由「面白いよ」

キノコ「なんかバカにしてます?w」

跨由「いやしてないて、新鮮やなぁ。髪の毛もだいぶ伸びて

 今後はそんな感じでいくん?」

キノコ「いや、今日はたまたまですよ、

 明日なったら坊主になってるかもしれへんしw」

 

キノコ「跨由さんは、それで撮影するんですか?」

跨由が「俺は、このままやな。そうすよね?」と近くにいる記者に聞くと、

「あ、跨由さん、そのままで大丈夫です」と記者の女が答えた。

【7】櫛本

太陽を盗んだ男 予告編

https://www.youtube.com/watch?v=5j_XDeTO2Yg

 

水のないプール(予告編)

https://www.youtube.com/watch?v=akUSKkv5r0c

www.youtube.com

www.youtube.com

沢田研二 太陽を盗んだ男 / サントラ盤 79

https://www.youtube.com/watch?v=UEP7H09osfE

www.youtube.com

 

【】

少年ははじめ、自分の母親が宗教に入っていることを知らなかった

ただ、昔から「本をたくさん読みなさい、本ほど安いものはないのよ」というのが母の口ぐせだった

彼の家にはあふれるほどの本があり、滑稽なことにそのほとんどは誰にも読まれていなかった

原因の半分は、あまりにも本が多すぎたからなのだが

それにしても読みもしない本に囲まれているというのはふつうに異常であった

 

【6】黄泉の國

1

「ここではないどこかへ」

それが彼らのキャッチコピーだった

 

新興宗教団体「黄泉の国」は、

この世の中に不満を抱える人、生きがたさを抱えている人、

貧乏人、変人、マイノリティなどを中心に信者を増やしていた

 

池上紳助は、2代目の教祖だが

先代はいわば箱を用意しただけで

実質、団体を大きくしたのは彼だった

 

「ぜったいに勧誘してはならない」と紳助は言っていた

 

2

「ダイヤモンドになりなさい」と紳助は言った

 

「あなたが本物のダイヤモンドなら

誰かが見つけたら必ずそれを拾います

 勧誘するというのは、偽物を売りつけよう、

自分が得がをしようという欲や焦りなのです

 

偽物を売りつけるのではなく、あなたがまず

本物のダイヤモンドになりなさい」と言うのだった

 

【】

黄泉の国の一般の人に向けた活動には

ラジオ体操や、小さな私営の塾などがあった

そこでも勧誘のようなことは一切なかった

 

さらに「来るもの拒まず、去る者追わず」で

信者をやめるのも自由だということになっていた

 

しかし、それは表向きの話で実は

信者にはライトコースを本格コースのような

二段階に分かれているという噂もあった

「勧誘してはいけない」とか、「去る者追わず」というのは

あくまでライトコース向けの話だというのだ

 

3

紳助は詐欺師であるという噂もあった

あまりに欲がなさすぎたからこそ生まれた噂であった

勧誘をしない、金に執着しない

それが彼の特徴だった

 

紳助は言う

「お金というのは、なんですか?

これは物々交換をする際に、便利であるという理由で生まれと言われてます

つまり、手段、道具ですね

本来は、お金そのののが目的ではなかったはずです

 

 私が、お金を考えるときによく言うのが、『お金は水道管である』と。

お金を水道管にたとえます。

 水道管というのは、なんですか?

水を運ぶためのものですね。

水道管そのものが目的ではない。

水道管ばっかり水も流さずに、集めまくったり、作りまくってもしょうがないわけです。

 

4

 しかし世の中、お金は、なにかに使う、

ものやサービスに支払うとか、募金とか、国の財政もそうですね

使うために、目的のためにあるのに、

ただ、とりあえず増やしたいという傾向が、あまりに強すぎる。

まぁ一般の方が、ある程度もしものために蓄えるというのは必要でしょうが、

とにかくお金そのものが目的になっている面もあります。

こういう常識というか、屁理屈というか

どう受け止めていいのか、その真意をはかりかねるようなことを

紳助はたえず言っていた。

 

5

「金、人気、名誉、外見、あとは異性ですかね。

私は男なので、女性ということになりますが、

女性も同じくらい男性に執着してるものでしょうか?

まぁ、ちょっとその度合は同じかはわかりませんけども、

そういう人が暴走しがちな、欲望の対象というものがあります

 

たとえば人気というものね

これは私が、勧誘しないとしている理由とも関連する話です」

 

5

「人気ね

人気が先か、価値が先か

人気のあるものは、つねに価値があるのか

価値のあるものは、つねに人気があるのか

 これを考えてください

【5】死の山

【5】●<死の山>編の【その1】 ● ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」
https://togetter.com/li/2306101

 

222
当日、テレビ局は約束どおり
彼女のところへ向かった

電撃突撃の空気を高めるために
しばらく前に事前に話を決めただけで
電話などの打ち合わせをしないことになっていた

アナウンサーがインタホンを鳴らすと
ウサギの夫が出た

  
2024020114:14:02

223
さりげないひと手間に
アナウンサーは「演出を入れたな」と思った
ところが、ウサギはいないという
どういう演出なんだと思っていると

夫は
「これ今ライブですか?」としきりに訪ねた
「これ今、中継じゃないってことですよね
収録して、あとで流すってことですよね」
何度も確認した

  
2024020114:17:45

224
そして夫は
テレビ局は1つしか来てないこと、
周囲に他にだれもいないこと確認した

夫は、インタホンの向こうから小声で
ウサギは明日テレビ局がくると勘違いして
今、「あした渡す用のお土産」をスーパーに買いに行ってるという

  
2024020114:20:08

225
ウサギの天然をくらったカメラマンは、
「まいったなぁ」とカメラを降ろし、
女性アナウンサーも「困りましたね」と言って
とりあえず待つかと表にでると
スーパーの袋を持って帰ってくるウサギを見て
またカメラを担ぎ直した

「このまま行きましょう」と
アナウンサーはウサギに向かっていった

  
2024020114:24:05

226
アナ「ウサギさん、
 相方のキノコさんの小説を読み終えたそうですが、
 なにか感想はありますか?」

ウサギは、カメラマンとアナウンサーの顔を
キョロキョロ何度も交互に見ていた

アナ「読み終えて、なにか
 ここは実際と違ったな、みたいなとこは
 あったりするんでしょうか?」

  
2024020114:26:48

ウサギは、スーパーの袋のなかから
買ってきたクリームパンを取り出し
アナウンサーに渡した
答えを欲していた彼女は、とっさに受け取った

ウサギは、もう一つクリームパンを取り出し
カメラマンに差し出した

ウサギは全国の視聴者にむかって言った
「嘘は書いてません
だいたい、あんな感じです」

  
2024020114:30:57

228
-----
<死の山>

キノコには、尊敬する先輩芸人がいた
特別交流があったわけではないが
彼の才能と世界には憧れていた

彼は芸人でありながら、小説を執筆し芥川賞を受賞していた
彼の小説「死の山」はこんな話だった

  
2024020114:33:20

229
---
主人公の「僕」には先輩がいた
それは高校の部活の先輩で、女の先輩だった

恋愛感情はなかったが
後輩として彼女のことを慕っていた

彼女は、きっぷのいいところがあるというか
Sというか彼女の言うことには「絶対服従」だった
といってもそれは冗談のようなもので
理不尽な関係ではなかった

  
2024020114:40:34

230
「先輩」は、高校を卒業したあと
芸人を目指しプロデビューまで果たしていた

もともとお笑いも好きだった「僕」は
先輩の後を追い、お笑いの世界を目指した

やがてそこそこの売れっ子になった先輩と
僕は再会し、名前にさん付けや、「ねえさん」ではなく
「先輩」と呼び続けていた

  
2024020114:43:13

231
先輩は、はまり出すとなんでも追求するタイプで
「お笑いはすごい」とデビューし売れだしたあとも
慢心することなく、お笑いの研究をし独自の世界を切り開いていった

彼女には、2つの得意分野があって
シュール系に近いものと
志村けんのようにオジサンに変装してやるネタとがあった

  
2024020114:45:31

232
先輩は、女だがオジサンに扮装にして
一般受けしやすい、しかし独特の持ち味のある
志村けん+キャシー塚本のような世界を作っていた

これはわかりやすさと、一種の狂気性、その味わいによって
広くマニアまで大爆笑させていた

  
2024020114:47:41

233
僕はある日、そんな先輩の新しい姿に驚いた
まさかと思った

彼女は「カツラをかぶるのが面倒くさい」と
自分の髪の毛を抜き、帽子をかぶるようになった

僕は「帽子を普段かぶるほうが面倒くさいのでは?」と思った

  
2024020114:51:57

234
次にまた驚かされたのは、

「メイクの時間を省略するため」と
「よりリアリティをもたせるため」に
と整形までして
オジサンの顔に近づけていった

幾分、昔の面影ものこってはいるが
彼女は、ますますバーコード頭のオジサンになっていった

  
2024020114:53:48

235
最後に、彼女は
「性転換手術する」といい出した
「これが一番効率がいい」というのだ

これまでどうにか、先輩の才能の裏返しと
言い訳していた僕もここまでくると
「やっぱり頭がおかしくなってしまったんだな」
と認めざるをえなかった

  
2024020115:16:28

236
しかも先輩は、性転換でおさまらなかった

僕は、そのときの僕に
「そんなことで驚いてる場合じゃないよ」
と鼻で笑いたくなる

結果的にいうと
先輩は「この世界を破壊した」のである

  
2024020117:17:43

237
異変に気づいたのは
僕が駅で先輩を見かけた日だった

その日、先輩は僕の何メートルか先におり
それを見つけた僕は彼女を追いかけた

  
2024020117:18:48

238
先輩は、切符を買わずそのまま改札に向かった
すると駅員のいるところに向かいなにか言うと
そのまま定期なども見せずに、改札をぬけてしまった

僕はおいていかれると思い声をかけると

  
2024020117:19:58

239
先輩は振り向き、改札をなにも言わずにすりぬけ
僕の手を握り、一緒に行こうというのだ

そうしてまた駅員のところへ行くと
「二人です」といった
駅員は、ぷっと吹き出すと僕たちを通らせた

まったく不思議なできごとだった

  
2024020117:21:15

240
話すと同じ駅に向かうことがわかったので
一緒に電車で話をしていた

目的の駅につくと、先輩は、また改札の駅員のところへ行き
「マジで二人です」というのだ

「なにがマジなのか」と思ってると
駅員は僕たちをそのまま通した

  
2024020117:22:30

241
駅員は大爆笑していた

僕はあっけにとられるしかなかった
これはまだ誰にもいっちゃいけないと、先輩に言われた
絶対服従である

  
2024020117:23:36

242
そんなことが何度かあり
僕はまったく理解できなかったが
ふと簡単な答えにたどりついた

ドッキリである
これはいつ放送されるのか
もう放送されているのか

  
2024020117:24:29

243
水曜日のダウンタウンなどチェックするが
まったくそんな放送はなかった

先輩はこう説明した
相手の空気を読み、一定の角度で「入れる」と
人を動かすことができるのだという
これはお笑いと同じなんだよ、と

  
2024020117:25:52

244
これが見え始めたから、自分は
「お笑いの力はすごい」といってたんだと話した

もともと善人で普通の道徳心
もちあわせていた先輩は、その「お笑いのちから」を

それ以上の犯罪などに使うことはなかった

 
2024020117:27:36

245
そんな先輩もやがて、たがが外れはじめた

先輩がやったことは犯罪ではなかった
テロリズム? クーデター?
いやそんなものも超えていた

我々は、先輩がはじめたことを
形容する言葉をまだ持ちあわせていなかった

 

246

先輩は、各国の指導者やマスコミを動かし

互いに戦争をさせはじめた。

「それは世界大戦ではないのか?」

いや、ある意味ではそうだが、これまでの人類の歴史のなかで

一人の個人が各国を扇動して、互いに戦争をさせるということはなかったはずだ。

しかも、それは領土やエネルギー資源など経済的な目的でも、宗教や政治的な思想信条が理由でもなかった。

先輩の動機はわからない。

「これもお笑いの実験なんだよ」とでも言うのだろうか?

 

BGM

tool - The Grudge

https://www.youtube.com/watch?v=RsDXxIXGIq4

www.youtube.com

 

247

騒然とする戦時下の新宿で、僕は先輩の姿を見つけた

マスコミはまだ彼女がこの戦争をはじめたことに気づいていなかった

今、僕が先輩を説得すればこの大騒動を止めることができる。

誰にも気づかれないうちに一刻も早く。

僕は先輩を追いかけた。

 

248

「先輩!篠山先輩!」

僕は大声で叫ぶが、先輩は聞こえていないかのようにどんどん歩いていく。

後もう少しで追いつくところでビルの角を曲がった。

もう腕でもつかもうと思い、自分もその角を曲がったところ、

先輩の姿はこつ然と消えていた。周りのビルになんのドアもないのに。

今のは自分の妄想だったのかと思うくらいに呆然とした。

これもお笑いの力なのだろうか?

 

249

東口にある巨大モニタ、アルタビジョンには

アメリカの様子が写しだされていた。

街の様子を報道するアナウンサーは「アルマゲドン」とかなんとか言っているようだ。

すると急に、アナウンサーと住人の何人かが後ろのほうを振り返っている。

なんだろうと思っていると、マンホールが開き中から一人の男が出てくる。

いや、それは男ではなく、先輩だった。

先輩は一瞬で、東京からアメリカの街に瞬間移動していたのだった

 

250

アナウンサーたちがおののいて身構えるなか、

先輩が、彼らに近づいていくと彼らのうち何人かがくすくすと笑いはじめる。

大爆笑しはじめた彼らの中から、一人の男の手を引っ張り路地裏に連れていく。

正気を取り戻した報道陣と、連れ去れさられた男の恋人らしき女が後を追うが、

またもや先輩は、こつ然と消えていた。

今度は、連れてっいた男も一緒に。

 

251

やがて先輩のことが話題になりはじめた。

ある人は、空を飛んでいるところを見たという。

口から火を吐いているのを見た、という人もいた。

 

252

そのころ日本は、秘密裏に開発した核ミサイル「太陽黒点」を使用することにした。

太陽黒点は、着弾すると地中深くにまでめり込み、地下にある核シェルターやミサイル基地をも破壊する機能をもっている。

地中で反応し、山のように周囲の地表を盛り上げ火山のようにマグマを吹き上げた。

人々はそれを死の山と呼んだ。

 

253

いっぽう僕はもうどうでもよくなっていた

それが本気、本音なのかはともかく

もはや夢を見てるような気分でいた。

 

人間そんなものかもしれない。

この僕の人生そのものが、神様が僕に見せてる一種の映画のような気にすらなっていた。

 

新宿の地面に座り込み、絶望へと集団自決する人類のなかで

そうやって永遠の夏休みのような気分でいる僕の前に

ふたたび、先輩は姿を現した。

 

254

ビルの陰から姿を現し、ゆらりと立ちつくしている先輩は、

いまやバーコード頭の禿おじさんであるどころか、

アメコミのベノムを細身にしたような、どこかもののけのような雰囲気をしていた

そのとき僕の近くに、戦時下の騒動のなかで命を失った警官が横たわっていて、

自分でも驚いたのだが、僕はその警官から銃を奪った

先輩は、僕に気づいていない

 

255

僕は、人生ではじめて銃口を人に向けた

本物の銃を持ったことじたいは初めてではなかった

そこまでガンマニアではないが銃に興味のあった僕は、一度先輩と韓国旅行に行ったときに

せっかくの機会ということで射撃場で何種類かの本物の銃を体験したのだ

先輩は、あたしは興味ないからと別行動をしたが、

その時の標的は今でも実家の押入れにあるはずだ

あの時の僕も先輩も、いずれ二人が銃を介して

こんな状況になるとは夢にも思わなかっただろう

 

256

僕は、まだ指を引き金に置いていなかったが

ちょうどそのとき先輩がこっちを見た

僕はまだ撃つ覚悟もなく、見られた戸惑いとで固まっていた。

先輩が少し悲しむような表情をしたような気がした

そしてそのまま、出てきたビルの陰の隠れてしまった

 

257

僕は世界を救う唯一のチャンスを失ってしまったのかもしれない

先ほどの一瞬の気の迷いが人類の滅亡を決定したのかもしれない

撃っても後悔、撃たなくても後悔

僕はこういう感じになることがよくある

 

258

僕はシュール系がいまいちよく分からなかった

ある日、先輩のシュール系メインのライブに行った、客席は大爆笑だった

自分的には正直わからないとこもありながらも

「めちゃくちゃ面白かったです」と言うと

先輩は「まぁ今日は結構攻めてたからな」返した

分かってないくせに無理して褒めてることを見抜かれてるような気がした

 

259

僕はまたもや地面に座り込んでいた

モバイルバッテリをつないで

スマホにダウロードしておいた先輩のネタを見ていた

 

スマホのなかで先輩は、スーツ姿バーコード頭のおじさんに扮して

アンガールズ田中の蟹のような動きでスタジオを動きまわっていた

まだ整形も性転換もする前のだいぶ前の動画だ

僕は、こっちのネタのほうが好きだった

 

259

「シュール系のわからんアホが多い」と、はすに構えてた先輩が、

これで一気に売れ始めたのだった

この頃は良かった

なんでこんなことになってしまったのだろう

どこで道を間違えたのか

今から思えば、何度でも僕に、先輩と世界を救う機会はあったはずだ

僕は、ぽろぽろと涙を流していた

 

260

スマホで先輩のネタをリピート再生して

バーコードの禿おじさんに扮して、奇っ怪な動きをする先輩を見ながら

僕は泣いていた、悔しいのか悲しいのか

そして僕は今頃気づいた、自分が先輩を好きだったことに

先輩に恋愛感情がないというのは嘘だった

こんな未来もありえたなら、もっと現実的に

僕と先輩が、結婚する未来もあったのかもしれない

 

261

僕はいつでも気づくのが遅い気がする

そのせいでありえた未来のなかから、あろうことかこんな事態になっいているのだ

 

そしてまた今も気づくのがおそかった

でも一応は間に合った

僕はゆっくりとスマホを置いた

そしてそのままスマホの横にある銃を手に取った

これが最後のチャンスなんだろう

 

目の前で、後ろ向きで先輩があぐらをかいている

まるで神様が用意した標的のように

 

262

スマホから先輩のネタの音声が聞こえている

先輩は、聞こえていないのかのように

撃たれるのを待っているかのように後ろを向いている

 

263

森田童子 - たとえばぼくが死んだら

https://www.youtube.com/watch?v=817-MDcen9U

www.youtube.com

 

264

放心状態の僕の眼の前に

先輩が、電源をオフしたかのように倒れている

僕は念のため、彼女にふれてその様子を確認した

先輩は、背中から胸をぶち抜かれて完全に死んでいた

お笑いの力を使いすぎたからなのか、

先輩の体は、少し小さくなっていた

 

265

----

本当はそれは先輩ではなかった

先輩そっくりに整形した彼女の弟子だったのだ

先輩はお笑いの力で洗脳した芸人を生み出し

その芸人たちがまた師匠から受け継いだ力で

ネタを遂行していたのだ

先輩が日本からアメリカの瞬間移動したというのも

芸人2人によるトリックだった

 

266

先輩が火を吹いたり、空を飛んでいたというのは

彼らが自作自演で広めた噂か、単なる都市伝説のようなものだったのだろう

先輩自身は、戦いの途中ですでに死んでおり

作戦は、弟子たちによって、先輩のネタどおり忠実に遂行されていた

---

 

267

僕はシュール系がわからないおかげで、先輩の洗脳をまぬかれることができた

世界には、僕のような人間があちこにいて、各国で彼らが先輩の弟子たちを倒していた

「シュール系のわからないアホ」が世界を救ったのだ

 

268

先輩(の弟子)を殺した僕が、呆然としてると

向こうから一人の青年がやってきた

「すごいね」と彼は、二人が相打ちしたと思ったのか、

倒れてる警官と先輩を見て言った

彼の視線が、破れた僕のTシャツの胸元あたりを見てるような気がしたので

右手で、左腕をかくようにして隠した

 

269

「これもらっとくか」彼が地面にある拳銃を手に取ろうとしたので

「あ、それ」と僕は声をだした

 

「こんなの女の子が持ってたら危ないでしょ」彼はそう言ったが

納得してない僕の顔を見て

「でも危ないときに、これがないのも危ないか」と

銃を僕の横に置き直した

 

270

彼はつづけて言った

「君行くとこなかったら、ラブホテルに住んでるんだけど来る?

変な意味じゃないんだけど」

 

僕はなんだか場所の名前に驚いたように

あわてて首を小刻みに横に振った

なにか罠かもしれないけど、単なる親切心だったのかもしれないが

 

僕は(これから人類は死滅した分の人間を増やさないといけないな)とも

思ったけど、相手はこの人じゃないし、そのホテルである必要もないし

それはいま僕が急いでする必要もないとも思った

 

271

青年が来たのと同じ方から

一人の自衛隊の女の人がやってきた

 

しかし服装か顔つきか、なにか雰囲気がおかしかった

脱走兵か、もしくは自衛隊の死体から服をはぎとってきた一般人という感じで

普通のちゃんとした自衛隊の人という感じがしないのだ

 

彼女が、青年に話しかけると

青年は、うんうんと頷いて聞いている

彼はこっちをちらっと見て「じゃあ」と言うと

後ろを向いて歩き出した

 

272

女は急に、持っていた89式小銃を構え銃口を僕に向けた

僕はとっさに銃に手を伸ばした

僕が彼女に銃口を向けるまえに、女の発射した銃弾が

僕の太ももから胸元をあたりを撃ち抜いた

青年のおどろいた声が聞こえる

 

273

女は自衛隊員としては怪しかったが、先輩の弟子という感じでもなかった

「急に銃口を向けてきたから」と女は嘘をついた

青年は「これもう助からんな…マジかよ」

 

地面に横たわり、生まれて初めての体験に悶絶してる僕の目には

青年にしなだれかかる女が映っていた

「やばいからとりあえず帰ろう、外はやばいから」と青年がいうと

女はそのままディープキスをはじめた

 

人類が滅亡するのも地獄だけど、これも地獄では?と思った

こんなクソみたいな世界とおさらばして、

僕も早くそっちに行きたいよ

 

篠山先輩、僕たちは天国で結婚できるのかな

【4】女芸人の百合小説<いびき皮>編【その3】「事件」

【4】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その3】●事件~● ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」
https://togetter.com/li/2305457

連載中
https://twitter.com/dsa0/status/1752490414295384308        

 

164
---
ウサギのもとに、キノコがマンションで倒れていた
という情報が届いた
自殺の可能性もあるという

彼女は半狂乱になって
「かえちゃんのお葬式に行かないと!
かえちゃんのお葬式に行かないと!」と言った

「あたしが今行ったら、まだ起き上がるかもしれない!!」というのだ

  
2024013109:34:09

165
この話をあとで聞いた、ウサギのアンチは
ネットで「またウサギのビジネス天然がでた」と言った

「自殺未遂してすぐお葬式するわけないだろ」
「アホのふり寒い」
「こんな時にも、自己アピールやばない?」など叩かれた

  
2024013109:36:20

166
キノコが、実際にやらかした暴走を中心に叩かれるのに対して
ウサギは、噂や憶測、雰囲気で叩かれていた
・ビジネス天然
・アホ、ポンコツ、役立たず
・ブタ
・キノコのおまけ
・性悪、腹黒
・ビッチ
彼女が、二丁目やマッチングアプリで男女構わずやりまくっているという噂もあった

  
2024013109:39:44

167
もちろん、そんな証拠はなかった

しかしウサギは彼氏を作り、結婚もした
前のマネージャーとはやっていたわけだ
程度の差はあれ、絶対になにもなかったという証拠もない

「自分の知らないウサギがいるのかもしれない」
キノコはそう思った

  
2024013109:42:57

168
キノコが倒れた話を聞いたウサギに、

夫が、
<まだキノコは生きており、
倒れて病院に運ばれて、
倒れた原因が「自殺(未遂)」かもしれない>

ということをウサギに説明した

  
2024013109:45:59

169
ウサギはそれを聞いてもそわそわして
近所でたまたまやっていた他人の葬式に
「知り合いかもしれないので、顔だけ確認させてください」と意味不明なこと言って乗り込んだ

困惑する遺族が許可したので、棺桶の窓を開けると
しらないお爺さんが入っていた

  
2024013109:48:15

170
ウサギは「本当に申し訳ない」と何度も謝り
「お餞別のかわりですが」とお札を取り出した

「香典」と間違えてるその変な女に
遺族はさらにおののき「結構です」と断った
一人のおじさんが「貰っといたらいい」と言って周囲にたしなめられていた
ウサギは関わるとやばい人として丁寧に追い出された

  
2024013109:55:08

171
<事件>

その日、マネージャーは
しばらくキノコに連絡がとれないので
「万一のこと」も念頭に、彼女のマンションへ向かった

  
2024013111:09:29

172
マネージャーが
マンションの管理人に事情を説明すると
管理人は、念のためということで警察官を呼んだ

マネージャーが嘘をついており
キノコのストーカーかなにかかもしれないとも思ったのだ

マネージャー、管理人、警官の
3人でマンションに入ることにした

  
2024013111:12:49

173
マネージャーは、管理人と警官に
社員証を見せ、名刺を渡し
免許証の名前と同じであることの確認をとってもらった

1階のオートロックの横にあるインタホンで
キノコの部屋番号を押して、呼び鈴を押すが
反応はなく「ピンポーン」だけが何度も響いた

  
2024013111:15:31

174
マネージャーは、救急車呼びましょうかねと言い
残りの二人から、今はまだ早すぎるんじゃないかと言われた

管理人がオートロックを開け、
マネージャーは、119にワン切りのようにして
発信履歴を作り、発信ボタンを押すだけで
すぐに救急車を呼べるようにスタンバイした

  
2024013111:17:55

175
エレベータのなか、
マネージャーは、どの段階で救急車を呼べばいいのか聞き
とりあえず本人を確認してからでいいのでは、と言われた

キノコの部屋の前に着き
管理人が呼び鈴を鳴らすがやはり反応がない

  
2024013111:20:56

176
管理人が、一応まわりの住人にも配慮した感じで
ドアをノックして「木下さん、おられますかー?」と言った

マネージャーが、ドアを叩いて「キノコさん!」大きな声で呼んだ
警官も「木下さーん」と少し大きめだが落ち着いた声で言った

まるでマンション全体に誰もいないかのように静かだった

  
2024013111:27:17

177
警官は「入りましょう」と言った

管理人がドアの鍵を開けようとするが
手こずっている
一度カギを引き抜き、
カギについた札の番号と部屋番号を確かめるが一致している

「あ、こっちか」と言って逆のほうに回すと
カチャリと鍵があいた

中に入ろうとすると、鍵がかかっている
「あれぇ?」

  
2024013111:30:09

178
管理人「あ、わかった、開いてたんだな」
彼はもう一度カギを挿し直し
カチャリとやると確かにカギが開いた

警官「あ、ちょっと待ってください
 カギは最初開いてたんですか?」

管理人「はい、今カチャンて2回やりましたよね
 1回めは開いてたのを閉めてしまって、
 2回めで開きました」

  
2024013111:33:15

179
警官は一人で来たことを後悔した
二人以上で来るべきだった

警官「いまので状況が変わりました
 これ事件の可能性があるので
 強盗とかの可能性があるので
 ここから慎重になります、中に犯人がまだいるかも知れないので」

  
2024013111:35:15

180
警官「お二人はここに来られるのは初めてですか?
 部屋の中に入るのは?」

二人は頷いた

警官はふと思った
「このマネージャーという男が犯人で、証拠を隠滅するためにまた戻ってきたのかもしれない
中に入れていいのだろうか?」

  
2024013111:37:12

181
警官は言った
「僕一人だけで入ります
 お二人は中に入ったことがないということで
 指紋がないことになります

 もし事件だった場合、中に指紋がつくと取り調べや最悪、冤罪の疑いをかけられることにもなります
 その辺ややこしいので一旦僕だけが入ります」

  
2024013111:40:30

182
これは裏返せば
「入ったことがない」のに中に万一指紋があれば
かなり怪しいということにもなる

警官がドアをあけた
すべての明かりではないが灯りがついいて
そこまで物騒な気配はなかったが
部屋のなかの廊下から見えるリビングには
ドアがあいて、うつ伏せになっている人の姿が見えた

  
2024013111:43:26

183
部屋の外から
それを見たマネージャーは顔色を変え
「救急車呼びます」と言ってスマホをタップした

警官は念のため、もう一度二人に「入らないで下さいね」と言った

どう動くのが正解か、何を優先すべきなのか
靴をはいたままだと現場を汚すことになるが
潜伏してる犯人が逃げた、追う必要がある

  
2024013111:47:34

184
迷ってるよりもまず、ガイシャを確認しなくては。
警官は急いで靴を脱いで奥に入っていった

「おい、大丈夫か、えと木下さん、大丈夫?」
キノコがうつ伏せだったので
横を向かせ気道を確保したつもりでいた
「確かこれで良かったはず」

見たところ外傷はないが、まわりに薬がちらばっていた

  
2024013111:50:34

185
自分なりに「順番」を考えてから
一度玄関の近くにあるバスルームに向かい
中を確認したが洗面所にも、風呂場にも誰もいない

それからトイレも確認したが誰もいない

もう一度リビングに戻り
キノコを素通りし、カーテンを開け
ベランダに誰もいないことを確認した
窓のロックもかかっている

  
2024013111:54:22

186
そうして警官はやっと応援を呼んだ
「こちら杉並区のマンション
女性が室内で倒れており、まわり薬物散乱

ただし部屋にカギがかかっておらず
誰かに飲まされた可能性あり

見たところ外傷なし
傷害又は強盗事件の可能性あり
呼吸は確認しましたが、生命の危険あり
救急車は呼んでいるところです」

  
2024013112:03:08

187
警官
「現場には、マンションの管理人と
ガイシャ女性の職場の方と
3人でおるところです
場所は…えと、細かい住所お願いします」

玄関に立つ警官が、管理人を見た

廊下にいる管理人が、住所を言う

警官
「場所は、
杉並区阿佐谷南成田東8-4-3
 メゾンカルマ
至急、応援願います」

  
2024013112:10:36

188
警官が無線機で話している途中から
マンションに向かっている救急車の
サイレンが聞こえていた

警官が、住所を言い終わっているあたりで到着し
救急隊員らは、タンカや救命道具などを
車からおろしていた

  
2024013112:17:02

 

189
部屋の外から「通ります、あけてください」と
救急隊員らの声が聞こえ
3人の隊員が、キノコの部屋にばたばたと入ってきた

彼らは慣れた手付きで対応していた
途中、意識のないキノコがぶっとおならをするも
彼らは真剣なままだった

  
2024013112:21:08

190
タンカに載せる時、「さっきスベったキノコ」は
生死の境を彷徨いながらも、今度は
ぶぅぅうぅ~っと長めのおならをした

彼女の「実力」のおかげか、
そろそろ肩の荷が少しのりたのか
隊員の一人はマスクごしに吹き出し

彼は警官の手前すぐに真顔に戻り会釈をした
彼らはキノコを運んでいった

  
2024013112:26:34

191
キノコの意識はすぐには戻らなかった
警察の鑑識班が調べると、
コンビニの買い物、薬局でもらった薬など
内外に持ち運びできるもの以外には、
キノコと別の指紋しかなかった

そして合鍵を持っているという理由で
管理人は指紋が調べられた
マネージャーも念のために

  
2024013114:10:13

192
マネージャーが
「この指紋は、警察にこの後も残るんですか?」と聞くと
警官は「かたち的には残りますが、あくまでも今回、
お二人の無罪を証明するためのものになります」と論点をずらした。

こういう時のために、よく使われる言い回しなのだろうか

  
2024013114:13:26

193
二人の指紋は、
キノコのマンションにある「もう一つの指紋」とは
一致しなかった

連絡をうけ、ウサギも指紋を調べられることになった
照合すると、バッチリとウサギの指紋と一致した

ウサギは「つまり誰も部屋に入ってないということやね」と言った

  
2024013114:16:26

194
室内はこれといって荒らされた形跡はなかったが
元から多少乱雑としていたのかどうかは警察にはわからなかった

あいかわらず、キノコの意識はまだ戻らなかった

しばらくして、ウサギは「私がやるわけがない! 
私はなにもやってません!」と
自分に嫌疑がかかる可能性があることに気づいた

  
2024013114:19:13

195
もしこのままキノコが命を失うと
ウサギが何かしたという可能性にもなる

入り口の監視カメラの修理を送らせていた管理人は
まさか、こんなことになるとは思っていなかった

エレベータにもカメラはあるが、非常階段で上まで上がることも可能なのだ

  
2024013114:21:20

196
ウサギは、キノコの自殺未遂の連絡を受けた頃から
「こんなことになるなら、結婚なんてしなければよかった」とさえ思っていた

ネットでは、「ウサギ犯人説」まで出てきて
泣きっ面に蜂で、さすがのウサギも
「私がやるわけないやんか!」と憤慨していた

  
2024013114:23:51

197
そんなとき、ようやくキノコの意識が戻ったという
皆は胸をなでおろし、ウサギとマネージャーは涙を流して喜んでいた

しかし、まだ人に会える状態ではなく
治療と療養のときを過ごしていた

  
2024013114:27:05

198
それからしばらくして、
ある体力も回復してきたキノコは
ウサギにお別れの挨拶をしにきた

ウサギの近くの公園で、二人きりであった

キノコは「もう、あんなことしないよ」言いうと
ウサギは「絶対にやで。
 私が悪い、ごめんさない、ほんまにごめんさない」と泣いた

  
2024013114:30:37

199
キノコも涙がぽろぽろと流れ出し
抱き合って泣いて、
ドラマ等でよく見る「顔をゆがめながら泣く」というのをふたりともはじめて経験した

公園で会うことにしたのは、そこからHになったりしたら情が移って変になりそうだったからだ
ウサギは、夫がついていこうかというのを断っていた

  
2024013114:34:21

200
ウサギは、リュックを背負い何度も振り返りながら手をふるキノコを泣きながら見送った

それからキノコは引っ越しし、誰にも居場所はつげなかった
ウサギは「何かあったら連絡してや、気持ちが変わったら住所教えてほしい」とLINEした
電話で話すこともあったが、それもだんだんと途切れていった

  
2024013114:37:52

201
その後のキノコについて様々な噂が流れた
・大学に入った
・海外に留学、移住した
・映画を作ってる、バンドをやってる
・名前を隠し放送作家を続けている
・お遍路参りをしている
・新しい彼女ができた
・ニューハーフと同棲している
・また自殺して死んでいる

  
2024013114:41:58

202
<消息不明のキノコ
新しい彼女とデート!>

一度、週刊誌にスクープされた

その女性は、一般人らしく目元は隠されているが
とてもウサギに雰囲気が似ていた

  
2024013114:44:35

203
ネットでは
・やっぱりああいうのがタイプなんだ
・よほど忘れられないんだな、可哀想に
などの声があがった

キノコは張り込みを疎ましく思ったのか
静かな生活を求めてすぐに引っ越したらしい

それから、彼女の姿を見る人はだれもいなかった

  
2024013114:45:33

204
何年たっただろうか
彼女は突如、自伝的な小説を発表した

それは彼女なりに、工夫や実験的な試みをした
未熟ながらも独特の世界観のある小説だった

彼女は小説は書いたことはなかったが
文学賞を受賞した先輩芸人がいたので
彼のアドバイスなどを受け書き始め、
最後にはそれを完成させた

  
2024013114:49:14

キノコの小説は、女芸人コンクールで優勝したネタ
「私は、人工子宮になりたい」をタイトルにしていた

小説「私は、人工子宮になりたい」
その最後はこう締められていた

---
結局、私は
漫才もやめ、放送作家もやめてしまった

恋愛もうまくいかず、仕事もなげだしてしまった

  
2024013114:54:35

私は、障害や病気のせいで
子供が産めないわけではないが
女の子、いや、ゆっこのことだけを愛していたから
赤ちゃんを産むことはないだろう

もし私が人工子宮だったら、
愛する人を奪われ、傷つくこともないし
誰かになにかを期待して、疎まれることもない

  
2024013114:56:18

207
人工子宮は、ただそこにいて
なにも要求せず、役目を果たし
なんと強く、立派なことだろうか

そんなことを考えると、
ゆっこが人工子宮に似ているような
気もするのであった。

私は、人工子宮になりたい。

---

  
2024013115:01:02

207
人工子宮は、ただそこにいて
なにも要求せず、役目を果たし
なんと強く、立派なことだろうか

そんなことを考えると、
ゆっこが人工子宮に似ているような
そんな気もするのであった。

私は、人工子宮になりたい。

---

  
2024020111:11:58

@The_MuRaMaSa @PmjGkM2wxmpBCqt いいね、ありがとう。
少し書き換えました。
今後もまた無断でそういうことがあるかもしれないけど
よかったらまた読んでね。
いびき皮はいったん終わるけど、話はまた続く予定です。
twitter.com/dsa0/status/17…

  
2024020111:13:34

208

<いびきの時のなかで
あなたの夢を見てた

ゆっこ is everything
ゆっこが私のすべて
誰が思うよりも強く

厳しい現実(いま)ならいらない
欲しいのはゆっこ

あたしは見た目より弱い

悲しい未来(あす)ならいらない
欲しいのはゆっこ>

 

布施明 Everything

https://www.youtube.com/watch?v=XnV3kWokmTQ

 

209
ベッドのなかの二人

き「ゆっちゃん、大好き!」
う「あたしも、かえちゃん大好き」
き「ずっと一緒におろな」
う「ずーっといっしょ、私のこと離さんとってな?」
き「ぎゅぅ離しまへんでぇ」
う「こそばいw」
き「ぎゅ~離さへんよ~」
う「ちょっとwこそばいこそばいw」
き「ゆっちゃん~」

  
2024020111:20:55

210
キノコの小説発表後
巷では、その内容がどこまで真実であるのかどうか
ちょっとした話題になっていた

たとえば、楽屋で暴力をふるっていた話については
小説に書いてある真実はこうだった

  
2024020111:25:38

215
キノコが楽屋で一人の時、
マネージャーのことを思いながら
クッションを殴り「お前のせいや!」と怒鳴り、
そこに入ってきたウサギがそれをみて
「私のせいやごめんなさい」と泣いていたのだという。

  
2024020111:27:00

 

216
そしてキノコが、ウサギのことを
「脂肪の塊が」と罵倒していたという噂は、

ウサギの夫は「大の巨乳好き」であり
もしも、ウサギの胸がもっと貧乳だったら、
こんなことになってなかったと思って言ったのだった。

  
2024020111:30:10

217
かつて、パスカル
「もし、クレオパトラの鼻が
もう少し低かったならば
世界の歴史は変わっていただろう」
と言ったが

もし、ウサギの胸がぺしゃんこだったら
二人の未来も、また
違ったものになったかもしれなかった

  
2024020111:32:29

218
マスコミは、いびき皮のボケ、ウサギに
キノコの小説についてコメントを求めた

元来、本を読むのが苦手な彼女は
まだ「私は、人工子宮になりたい」を読めていなかった

マスコミは期間をおいて何度も連絡をとるが
なかなかウサギに取材をすることができなかった

  
2024020111:34:48

219
ウサギは、Bや2Bの鉛筆で
ほとんどのページにぐりぐりと線を引き、

「なるほど!」「うまいこと書いてある」
「ありがとう」「これ!」「かえちゃんならでは」
など相槌や感想を書き込みながら
ゆっくりと読み勧めていった

  
2024020111:37:20

220
ウサギは気分が乗らないときは
数週間、本を開かないときもあった
それがウサギの読み方だった

  
2024020111:37:50

221
半年以上たった頃だろうか
ウサギが読み終えた連絡を受け
テレビ局は彼女に取材を申し込んだ

事前連絡もして「電撃突撃」ではないのだが
芸能人ということもあり
自宅前で「電撃取材のてい」でインタビューをしたい
との話になっていた

ウサギも芸能人のはしくれとして
そんな演出にも慣れていた

  
2024020111:41:22

まとめを更新しました。「【4】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その3】●事件~● ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」」 togetter.com/li/2305457

  
2024020114:07:39

222
当日、テレビ局は約束どおり
彼女のところへ向かった

電撃突撃の空気を高めるために
しばらく前に事前に話を決めただけで
電話などの打ち合わせをしないことになっていた

アナウンサーがインタホンを鳴らすと
ウサギの夫が出た

  
2024020114:14:02

223
さりげないひと手間に
アナウンサーは「演出を入れたな」と思った
ところが、ウサギはいないという
どういう演出なんだと思っていると

夫は
「これ今ライブですか?」としきりに訪ねた
「これ今、中継じゃないってことですよね
収録して、あとで流すってことですよね」
何度も確認した

  
2024020114:17:45

224
そして夫は
テレビ局は1つしか来てないこと、
周囲に他にだれもいないこと確認した

夫は、インタホンの向こうから小声で
ウサギは明日テレビ局がくると勘違いして
今、「あした渡す用のお土産」をスーパーに買いに行ってるという

  
2024020114:20:08

225
ウサギの天然をくらったカメラマンは、
「まいったなぁ」とカメラを降ろし、
女性アナウンサーも「困りましたね」と言って
とりあえず待つかと表にでると
スーパーの袋を持って帰ってくるウサギを見て
またカメラを担ぎ直した

「このまま行きましょう」と
アナウンサーはウサギに向かっていった

  
2024020114:24:05

226
アナ「ウサギさん、
 相方のキノコさんの小説を読み終えたそうですが、
 なにか感想はありますか?」

ウサギは、カメラマンとアナウンサーの顔を
キョロキョロ何度も交互に見ていた

アナ「読み終えて、なにか
 ここは実際と違ったな、みたいなとこは
 あったりするんでしょうか?」

  
2024020114:26:48

ウサギは、スーパーの袋のなかから
買ってきたクリームパンを取り出し
アナウンサーに渡した
答えを欲していた彼女は、とっさに受け取った

ウサギは、もう一つクリームパンを取り出し
カメラマンに差し出した

ウサギは全国の視聴者にむかって言った
「嘘は書いてません
だいたい、あんな感じです」

  
2024020114:30:57

228
-----
<死の山>

キノコには、尊敬する先輩芸人がいた
特別交流があったわけではないが
彼の才能と世界には憧れていた

彼は芸人でありながら、小説を執筆し芥川賞を受賞していた
彼の小説「死の山」はこんな話だった

  
2024020114:33:20

 

【3】女芸人の百合小説 <いびき皮>編【その2】

【3】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その2】 ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」

https://togetter.com/li/2304344


注意●158が2つあるが、中身が違う。番号のつけ間違い。そこから1つ番号がズレてるはず。
とりあえず、そのままで。

●(連載中)
https://twitter.com/dsa0/status/1751859311733858368        

 

111
キノコは、泥酔事件を理由に活動自粛を命じられた
それは、いびき皮の自粛も同然だった

自粛中にもかかわらず、キノコの暴走は続いた

<いびき皮キノコ今度は傷害事件!!
 オカマバーで
 ニューハーフと大喧嘩>

<ホストで豪遊していたキノコ
 備品を破壊し、600万円の損害賠償!
 出禁に!>

  
2024012915:32:21

112
頭を悩ませた事務所は、とうとう
いびき皮と契約解除することにする

いびき皮が契約していた事務所
ジャスミンズは、

元お笑い芸人の男
ジャスミン南山が開設した事務所だ

  
2024012915:36:27

113
通称ジャスさんは、
インポで女性恐怖症だが
女芸人マニアだという

学生時代には落研に所属しており、
芸人をやめた後は、南山ユーモア教室をやっていたが
芸人としては成功しなかったが
人を発掘、指導する能力はあったようだ

  
2024012915:38:06

114
インポで女性恐怖症ということで
彼がスキャンダルを起こすことはないと
太鼓判を押されていたが

雇用していたマネージャーが
いびき皮の活動の障害となったことを
とても残念に思っていた

  
2024012915:40:09

115
そんななか、
いびき皮に再起してほしいと思っていたが
事務所全体のことを考えて
いびき皮を退所させることにした。
苦渋の決断だった。

ところが捨てる神あれば、拾う神あり
ということで、いびき皮は間を置かずして
別の事務所に移籍することができた

  
2024012915:43:02

116
事務所を移籍したキノコは
前の事務所の悪口をいいはじめた

ジャスさんには恩義はあったし
前事務所での活動などに
楽しい思い出もないわけではないが

同時に、頭の片隅に「ゆっこに浮気させたのは
前の事務所が仕組んだ陰謀」という考えが浮かんでいた
「マネージャーとジャスさんはグルだ」と

  
2024012915:46:22

117
新しい事務所は、ドラゴンフォース
名前こそ大げさだが、前事務所よりだいぶ規模の小さいポンコツ会社だった。

ドラゴンフォースは、
DM法律事務所=ドラゴンマウンテンの代表が
半分、趣味の片手間でやってるような事務所だった。

  
2024012918:16:47

118
DMも大きな事務所ではなかったが、
一度、棚からぼたもちのような感じで
偶然「死刑を無罪に」できた裁判があり
そのことを例に「死刑を無罪にした法律事務所」ということで週刊誌に載ったことがある。

  
2024012918:19:07

119
キノコは、ドラゴンに移ってから
あまり大小を気にせず
コツコツと仕事をするようになった。

ドラゴン的には「いびき皮」目当てで仕事が増えて
知名度もあがり喜んでいた。
「法務に強いタレント事務所」として
問題児「いびき皮」を安値買いしたのは大成功だった

  
2024012918:21:53

120
誰もが使いづらい、問題児いびき皮。
芸能事務所としてはポンコツだが、法律トラブルに強いドラゴン。
うってつけの組み合わせだった。

彼女らが問題を起こしても、
ドラゴンは問題を仕事にしてる弁護士事務所が母体なのだ。

売れっ子だった二人を
手に入れるにはまたとないチャンスだった。

  
2024012918:26:38

121
キノコはその日、精神科の診察を終え
薬待ちをしていた
彼女は、広い薬局のイスの1つに座って
ミルミルを飲んでいた

最近の彼女は調子がよかった
薬も自分なりに減薬していた

そんな彼女がふと目を落とすと
受け取りカウンター近くの下の方に
「とんでもないもの」があるのを目にした

  
2024013013:03:43

122
キノコは以前、YouTubeの動画でこんな話を聞いた

人は「白熊のことは考えないで下さい」というと考えないことができないのだそうだ。

そう言われると、むしろ白熊のことを考えはじめるので、白熊を考えないためには、他の「戦車とかケーキとか他のこと」を考えるが必要があるのだという。

  
2024013013:09:18

123
キノコは、白熊を考えないために
遊んだり、仕事をしたり、あれこれと工夫をした

それでも時折、その白熊がひょこひょこでてくるので
ありとあらゆる救援を呼び寄せて、どうにかその白熊を
頭の中の奥の奥の小さな箱に、マトリョーシカのように何重にもして閉じ込めていた

  
2024013013:12:18

124
白熊は、広い薬局のいくつかある受け取りカウンターの
その横の足元に、ひょっこりと顔をだしてこちらを見ていた

キノコは戦慄した
また「あの時の顔」になる思いがした

待ってる間に読む用の書棚があり
そこにある雑誌にはこう書いてあった

<いびき川 ウサギ結婚!!
 相手は元マネージャー>

  
2024013013:21:23

125
彼女は「すーっとした感じ」を使うことにした

「すーっと」は、
「あの時の顔」になった時にできる防御を、
自分にダメージなくできる彼女が編み出した技だった。
いわば「あの時の顔」の良いとこどりだった

今の彼女は進化していた

  
2024013013:32:56

126
白熊の攻撃に耐えながら
すーっとで応戦していた彼女は
「おちんちんがついてないか」調べたくなった

もしついていれば、これは夢ということになる
トイレに行こうかと思ったとき

自分の番号が呼ばれた
厳しい状況であったが、これは気をそらす援軍になるかもしれないと思った

  
2024013013:35:02

128
キノコが受け取りカウンターに向かうと
薬剤師の女の人がいたが
「あっ、ちょっと待ってくださいね」と奥に引っ込む

その間に、キノコはポーチから頓服用に飲む薬を取り出した
これは不安やイライラや眠れないときに飲む用で
彼女はこれを、錠剤の割れ目で半分にしてピルケースに入れていた

  
2024013018:00:17

129
キノコはいつも半分ずつ飲んで様子を見るのだが
その時は3粒、つまり1.5錠分を残っていたミルミルで飲みこんだ
医師からは、1錠飲んだら数時間あけるように言われてる薬である

彼女は、薬剤師に早く帰ってこいと思い始めた
一刻も早く家に帰りたかった

  
2024013018:02:25

130
薬剤師の女の人が戻ってきて言った
「すいませんー、これで全部ですかね
3種類、おくすりお変わりないですかね」

キノコは言葉を発せずコクリとうなずいた

彼女の薬は3つあり、
・朝夕きまった時間にのむもの
・頓服で飲むもの
・イライラを抑えるという漢方、これも朝夕に飲んでいた

  
2024013018:05:15

131
3つ目の漢方は、前の病院のときからもらっていたもので
そこの先生とは相性が良くないので今の病院に変えたが
漢方は良いような気がして、ここでも出してもらっていた

  
2024013018:07:35

132
薬剤師「お薬のほう、先生からご説明されてますかね
 なにか変わったこととかないですか?」

キノコ「ハイ…」
 ほとんど声にならず唇が動いただけのように頷いた

薬剤師「今日はちょっと調子悪い感じですかね」

キノコは愛想として、すこし困ったように眉を八の字にし、力なく微笑んで頷いた

  
2024013018:10:34

133
薬剤師「じゃあ、お会計のほうさせていただきます…xxxx」

キノコは、ペイペイで支払いをすまし
ビニール袋に入れてもらったのを空気を抜いてきゅっとくくり、リュックの中に放り込んだ

途中バレないように、股間をさわり確かめたが
やっぱりおちんちんはなかった

  
2024013018:13:24

134
支払いをキノコはもう一度、白熊のところに戻った
まだ薬は聞いてないかもしれないが
飲んだことでちょっと安心し、はやくも少し生気が戻っている

その恐ろしい怪物を手に取ると
キノコは、ウサギの結婚を知らせるページをめくった

  
2024013018:16:24

135
---
その日、記者はカメラマンと一緒に
なにかネタはないかと
ウサギのマンションの近くに車を停め
ダメ元で張っていた

そこにウサギが男と一緒に出てきたのである
カメラマンは何枚も写真をとる

二人のあとをついていくと彼らは区役所に入っていくのである

  
2024013018:19:48

136
記者らは一般利用者のような顔をし中に入る

ウサギと彼氏は、一応ちょっとした変装のような格好をし
用意していた婚姻届けを提出したのだ

カメラマンは隠しカメラで写真を取り続け
偶然おとずれた大スクープに胸を踊らせていた
彼らにとって今までで一番のネタである

  
2024013018:22:28


137
彼らは慎重に二人がすべてを終え
区役所を出た瞬間に、一眼レフを構え声をかけた

彼氏は「違います、税金の相談で」ととっさに適当な嘘をついたが
ウサギは下を向き、難問にクラスでたった一人答え、
先生に誉められた小学生のような顔で、はにかんでいた

  
2024013018:25:14

138
---
その結果生まれた記事が、今薬局で、
キノコの両手で開かれていた

キノコはざっと見ただけだが
「中身は、いま見ないほうが良かったかもしれない」と思った
今や全身に、白熊との戦いによる傷を負っていた

  
2024013018:29:21

139
「早く帰ろう」
このままでは行き倒れてしまうような気がして
キノコは家路をいそいだ

だが、最後の力を振り絞って
コンビニでこれからの回復を過ごすための
食料を買いだめしておくことにした

  
2024013018:33:41

140
コンビニに入る時、
店から出る二人組の男の片方が
連れと話しながら、キノコの肩にドシンとぶつかった

キノコ「ああ、すいません、大丈夫です?」
よろけるキノコ
あきらかに自分がぶつかられたのに謝った

男は「いやっこちらこそ、大丈夫すか、
 ごめんなさい」と片手チョップを顔にかかげた

  
2024013018:36:57

141
はやけに低姿勢で、愛想のいい
しかしそれに似つかわしくない表情と様子の女に
なにかヤバイ奴の感じを察した

キノコも相手の顔をみて、それを感じた
キノコの思い込みかもしれないが

  
2024013018:38:41

まとめを更新しました。「【2】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その1】 ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」」 togetter.com/li/2303653

  
2024013019:39:23

142
キノコはコンビニでいろいろなものを買った
おにぎり、アンパン、バナナ、
そしてタンパク質をとるために
ゆで卵、プリン、かまぼこなども買った

タンパク質は栄養を考えない、いびき皮の二人に
「意識してとるように」言い、
それぞれにダンボール箱プロテインも買い与えていた

  
2024013019:43:00

143
キノコは、いつも豆乳でプロテインを割っていたが
大きいのがなかったので牛乳を久しぶりに買った

お酒も買おうかと思ったが、今買うとやけ酒になりそうなので買わないでおいた
その辺もキノコは「進化」していた

  
2024013019:44:51

144
部屋につくと、キノコは思った

「次の仕事は無断ですっぽかそう
その次の、その次の仕事もそうしてやってもいい

事務所も、世間もあたしを大目に見てくれるだろう
前の<浮気>のときもそうだった
大暴れさえしなければ、多少の粗相には寛大だろう」

  
2024013019:47:56

145
キノコ
「私はこれから長い冬眠につくんだ

芸能界もやめてもいい
いびき皮を解散したっていいんだ
これから、あたしの新しい人生が始まるんだ

さぁ何をはじめようか
これは神様にあたしに休めと言ってくれてるんだ
これはあたしにとって一つのチャンスなんだ」

  
2024013019:50:43

146
そうしてキノコは、トイレに向かた
冬眠するには、うんちとしっこを
出しておいたほうがいいだろう
とくに、もよおしているわけではないが、

一応トイレにむかうと、普通の量のおしっこと
小さめのうんちが出た

  
2024013019:53:11

147
石鹸で手を洗いながら、キノコは歌いだした
薬局にいたときよりだいぶ気分が落ち着いていた
半分以上は、くすりのおかげだろう

「いび~きの ときぃの な~かでぇえ~
いびぃ~きの とき-の なぁかで~」

  
2024013019:55:47

148
「いびきの時のなかで」は
いびき皮の1つ目のコンビ名だった

その由来は、彼女たちの中学生時代にあった
あるとき、うさぎの家族が全員家をあけ
うさぎが一人で夜を過ごすことになった

二人は悪だくみのような気持ちで
一泊、一緒にうさぎの家で過ごすことにした

  
2024013019:59:47

149
最初お菓子を食べたりテレビを見ながら
わいわい、だらだらと過ごしていた二人は
一緒にベッドの中に入った
そういうことは初めてではなかった

抱き合って、いたずらのようなキスをして
キノコは「ゆっちゃん」と甘えだした

  
2024013020:02:54

150
「ゆっちゃん」は、キノコが
ウサギと二人きりのとき
最大に甘えだすと呼び始める言い方だった

ウサギは「また赤ちゃんになりましたかぁ?」と言った
キノコは、ウサギを抱きしめてもぞもぞした

  
2024013020:05:51

151
キノコがまた「ゆっちゃん」と言って
おっぱいを求めると、ウサギは
服をまくりあげてキノコの好きにさせた

ウサギは、赤ちゃんにされてるのではない声を出した

  
2024013020:06:29

152
そうして二人は
「彼女たちなりのプレイ」を終えると
二人で一緒に寝てしまった

しばらくしてキノコが目を覚ました
ウサギは、ぐぅ~ぐぅ~と大きないびきをあげていた

「うるさいなぁ」と思いつつ
もう一度寝ようとするが、いびきが気になって
寝ることができなかった

  
2024013020:09:29

154
「あたしがいびきで寝れへんあいだ、
この子は呑気に夢を見てんのか」と思ったが
自分が出てきたと言われたのは嬉しかった

ウサギがトイレに行ってるあいだに
キノコは眠りにつくことができた

  
2024013020:12:19

153
一度、ウサギがトイレに起き
キノコが
「ゆっこ、いびきすごいな目ぇ覚めたわ」と言うと
ウサギは
「かえちゃんが夢に出てきたよ」と言った

  
2024013020:43:23

154
キノコは
「あたしがいびきで寝れへんあいだ、
この子は呑気に夢を見てんのか」と思ったが
自分が夢に出てきたと言われたのは嬉しかった

ウサギがトイレに行ってるあいだに
キノコは眠りにつくことができた

  
2024013020:44:01

155
再びキノコは目を覚ました
横ではまた、ウサギがいびきをかいていた

キノコは「もうあかんな」と思い
1階のリビングのソファで寝ることにした
階段を降りながらも聞こえるウサギのいびき

まさかと思いながら1階につくとキノコは驚いた
リビングの天井の向こうからウサギのいびきが聞こえるのだ

  
2024013020:48:12

156
ほどなくして、キノコは
ソファですやすやと眠ることができた
夢のなかにはウサギが出てきた

その日、二人は愛し合った
2時間はベッドのなかで
8時間は夢のなかで

  
2024013020:52:12

157
翌朝、キノコは自分の夢に
ウサギが出てきたことを伝えた

お互いが、お互いの夢のなかに出てきたのだ

人生のなかで最高の、
それこそ夢のようなお泊まり会だった

  
2024013020:56:12

158
そして二人は、朝ごはんを食べながら
misiaの everythingの替え歌を歌った

き「いび~きの、ときぃのなかでぇ~」
う「あなぁ~たのぉ、いびーきを聞いたぁ~」
き「そこそのままでええねんw
  あなぁ~たとぉ、あなたとめぐり会えたぁ~」

二人「いび~きのぉ、ときぃのなかでぇ~」

  
2024013020:58:46

158

<昨日はゆっこのうちで寝た
あの子と手をつないで

悪い予感のかけらもないよ

あの子のいびきを聞いたよ
1階で2階のいびきを聞いたんだ

二人夢を見たのよ
とってもよく似た夢を>

 

RCサクセション スローバラード

https://www.youtube.com/watch?v=-mQElMb3R5c

  
2024013021:05:27


159
キノコはスローバラードが大好きだった
だからお泊まり会で、夢にお互いが出てきたことがすごく嬉しかった

まえにスローバラードの元ネタが
ストーンズの「Love in Vain(むなしき愛)」だと聞いて
ウサギと一緒に聴いたが、キノコは断然スローバラードのほうがいいと思った


2024013109:13:37

160
ウサギは「むなしき愛」の方が好きといった
キノコはどこがいいのかわからなかった

ウサギは「こっちのほうがゆっくりした気分になる」といった

ウサギはあまり自分から音楽にハマるタイプではなかったが、キノコや友だちがカラオケで歌う曲や
勧めてくれる曲を聴いた

 

The Rolling Stones - Love In Vain (Live) - Official

https://www.youtube.com/watch?v=ryRDcE2sB2A

 

  
2024013109:19:47

161
キノコは絵はあまりうまくないが
漫画がそれなりに好きだったので漫画に所属していた

漫画部は、ゆるい部活で、顧問の先生も部員の自由にさせていた
描く派と読む派がいて、絵の下手なキノコはほとんど描くことはなかった

さらに図書館に行くと称して、ぶらぶらするのが部員活動だった

  
2024013109:24:03

162
ウサギは吹奏楽部で、ホルンも吹いていた

吹いていたといってもとりんずホルンを選択していただけで
発表会に出ることすらなかった
あまりにも上達しないので、図書館に行ってキノコと会ったりしていた

他の部員も、部員としてポンコツ落ちこぼれだが、どこか憎めない彼女の好きにさせていた

  
2024013109:26:47

163
一度だけ、発表会に出れることがあって
キノコは吹奏楽にはあまり興味がなかったが
ウサギの奮闘ぶりを見に行くことにした

ウサギは、たまにキョロキョロしながらも
自分のパートになると一生懸命吹いていた

キノコは、参観日や運動会に来たお母さんのように
そんなウサギを微笑ましく見ていた

  
2024013109:29:57

164
---
ウサギのもとに、キノコがマンションで倒れていた
という情報が届いた
自殺の可能性もあるという

彼女は半狂乱になって
「かえちゃんのお葬式に行かないと!
かえちゃんのお葬式に行かないと!」と言った

「あたしが今行ったら、まだ起き上がるかもしれない!!」というのだ

  
2024013109:34:09

 

【2】女芸人の百合小説<いびき皮>編【その1】

【2】女芸人の百合小説。●<いびき皮>編の【その1】 ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」
https://togetter.com/li/2303653

最新話はこちらから
https://twitter.com/dsa0/status/1751504547972026444
●これは夢日記です。同姓同名の人物はたまたまであり、実在の人物とは一切関係ありません。
ジェンダーSF小説「心地よい弾丸 heveanly bullet」

【2】<いびき皮>編

----

48.
女芸人コンテストで優勝した
女漫才師
 いびき川(旧名、いびき皮、いびきの時のなかで)
優勝ネタは、「私は人工子宮になりたい」だった。

 

Charisma.com / HATE

https://www.youtube.com/watch?v=ffH_Mp74xh4

  
2024012816:16:40

49.
<いびき皮>

「私は人工子宮になりたい」というネタで優勝した
女芸人
いびき皮(いびき・がわ)

・ボケ  うさぎ(宇佐美優子)
・ツッコミ きのこ(木下かえで)
二人は、YouTube出身の芸人だった。

  
2024012817:10:05

50.
いびき皮の二人は、
ボケのウサギが勝手気ままにボケて、
ツッコミのキノコがどうにか形になるように
それを整えていくというスタイルだ

  
2024012817:19:55

51.
はじめ彼女らは、YouTube
ダブルボケのような感じで
わけのわからないことを言い続けていた
それは二人の単なる遊びとしてはじまったことだった

二人はガキ使のハガキコーナーとうそぶいていたが
そんなものではなく
まったく意味不明なものだった

  
2024012817:21:17

52.
キノコはネタを作りたかったが
作り方はわからず

ボケのウサギは、そもそも
ネタをろくに覚えることもできなかった
だから「人のコピーで練習」することもできなかった

ウサギはシュール系というか、天然で
やるたびに言う事が変わるのである

  
2024012817:23:20

53.
だから「練習」はつねに
お互いアドリブでやるしかなかった

それでも二人のなかでは「進化」していて、
その練習という遊びは続いていた

膨大な無駄にも思える時間を費やし
キノコは、「アドリブでやりながらそれをネタに書き起こす」というよくあるスタイルの一つを
偶然自分で「発見」する。

  
2024012817:28:54

54.
そこで逆に問題が生じてくる。
キノコは、ネタを作って書き直し、最高の完成作をやりたいが
ウサギは、絶対にネタを完全に覚えるなどできないのだ。

キノコは、3歩すすんだつもりが、2歩さがるような気分になっていた

  
2024012817:32:41

55.
ウサギはネタを覚えることができず、
やるたびに違うことを言う

結局、ウサギがネタどおりにやるということは諦めて
キノコは大筋をつくっておくが
ウサギがそこから外れたら、その都度
そのときの気分、客の反応で
対応していくというスタイルに落ち着いた

  
2024012818:36:51

56.
やがて、いびき皮は
幸いにも芸能事務所から声をかけられ
「いびき・かわ」と呼ばれるという理由で
「いびき川」に名前を変えた

  
2024012818:39:13

57.
そもそも、もっと前のコンビ名
「いびきの時のなかで」

その「いびき」はどこから来てるかというと
中学生時代に、Youtubeでやっていた「ネタ」から来ている

  
2024012818:41:27

58.
デビュー後も彼女たちのチャンネルはそのままで
検索すると彼女たちの
中学生時代の黒歴史が見れた
---
優子「いび~きのぉ、ときぃのな~かでぇ~え~!」

かえで「いいよ、いいよぉ!」

優子「いび~きのぉ、とき-のな~かでぇ~えぇえ~♪」

かえで「いいですよ、ゆっこさん!」

  
2024012818:43:47

59.
女芸人コンテストの決勝で
いびき皮は、ネタ「私は人工子宮になりたい」をやった
---
ウサギ「あたし人工子宮になりたいねん!
 ほしたら、なんも考えんでええやろ?」

キノコ「今でもなんも考えてへんやん!」

ウサギ「まぁ」

キノコ「まぁて、その返しがなんも考えてへんねん」

  
2024012818:49:41

漫才はシメに近づく
こんなので優勝できるのか?
--
ウサギ「じゃあ諦めて、地蔵になるわ」

キノコ「もう夢あきらめるんか!
 コロコロ変わりすぎやろ」

ウサギ「ほいでな、頭のとこに切れ込みが入ってて
 そこからグレープフルーツの薄い皮むいて
 食べやすくしたやつがのぞいてんねん」

  
2024012818:53:08

キノコ「気持ちわるっ
 ていうかそのグレープフルーツは
 あんたが食べたやつなんか、
 誰かが食べるためなんかどっちやねん!
 あんたとおったら、こっちまで頭おかしなるわ」

ウサギ「えー」

  
2024012818:56:01

キノコ「もう、顔もみたくない…」

ウサギ「え…そんなん」

キノコ「嘘やんか~、大好き!」

ウサギ「嬉しい~」

---
「こっちまで頭おかしなるわ」
「顔も見たくない」からの「大好き」

これがいびき皮の代表的なシメだった

  
2024012818:59:52

63
昔は「次の患者さんどうぞ-」でシメていたが
放送コード的にと、こっちのほうが客の反応がいいのでこっちになった。

キノコは当初から恥ずかしがっていたが、
事務所のすすめもあってこれをやっていた。

  
2024012819:03:35

64
そうこうして、いびき皮は女芸人コンテストで優勝した
ファンは大喜びし、面白いと言ってくれる人もいたが
ネットでは批判や疑問の声も少なくなかった。
出来レース
・あれはシュール系じゃない
・子供の学芸会レベル
・あんなもんゴールデンタイムに流すなよ
・ウサギは天然じゃなくて計算

  
2024012820:17:30

65
うさぎはスマホで自分たちへの声を見ていた
「うん、なるほどねぇ」

きのこ「ほぉ、なにか面白い意見ありましたか?」

うさぎ「いろんな意見があるねぇ」

きのこ「それだけかいな」

キノコは褒められて喜び、貶されて気にするタイプだが
ウサギは褒められてもどこふく風
つねに飄々としていた

  
2024012820:21:55

66
そうして彼女たちは優勝を機に、どんどんテレビに出るようになっていった。

番組で、いびき皮の魅力はどこにあるのかと聞かれ
少し間をおいて、ウサギは自分の鼻を指さした

きのこ「喋らな」

じゃあ売れたのは、ウサギさんの力が大きいのかと問われると、ウサギは首をかしげた

  
2024012820:27:59

67
きのこ「誰のおかげで売れたのかって」

ウサギは手のひらを上にして
キノコのほうを指した

--
そんな彼女たちの成功への道は
スタートした途端にスキャンダルが発生した

ウサギが恋人とのデートを週刊誌がスクープしたのだ
相手はマネージャーの男だった

  
2024012820:32:50

68
恋人発覚くらい大したことない
これも話題作りではないかとの声もあったが
問題は大きかった

いびき皮の二人は「できている」というのは昔から
ファンのあいだでは噂になっていたのだ

つまり、ウサギの浮気発覚ということになる

  
2024012820:34:59

69
いびき皮は、(どちらがという説明もなく)
「急病のため」ということで突如、休業することになった。

スキャンダルは関係ないという事務所の説明だったが、
真相はわからない。
ファンのあいだでは、解散するのではという心配もされた。

  
2024012820:36:43

70
しばらくして
いびき皮は活動を再開した。
マネージャーは変更されたが、前のマネージャーはウサギと交際を続けているようだった。

「絶対にスキャンダルの話をしないこと」を条件に
番組に出演していた。

  
2024012820:52:33

71
一度、破天荒が売りの芸人が
彼女にほのめかすようなボケをぶっこんだ

彼は、いびき皮より遥かに先輩の売れっ子だったが
キノコはそのボケを無視した
彼女は完全に横をむいて冷えたような固まったような顔をしていた

先輩はとっさに振りを変えた
キノコ「すいません!今ぼーとしてましたwやば」

  
2024012821:00:11

(72)
それから二人は活動を再開したが
ネットでこんな声が聞こえだした

キノコの「顔がおかしい」というのだ
フリートークでも、ネタ中でも
キノコが硬直したような、心ここにあらずのような
独特の顔をするのである

先輩の話を無視した時とあの顔と同じだと言われ
「あの時の顔」と言われるようになった

73
だんだんと「あの時の顔」になる割合が増えていき
ほぼ初めから最後まで「あの時の顔」でネタを一本するときもあった
いびき皮は再度活動を中止することになった

二度目の活動中止のまえ、
ウサギの浮気発覚から精神科に通っているという噂もあった
ファンは、キノコが回復するのを願っていた

  
2024012821:12:38

74
復活したキノコはだいぶ快活としていた
ところがツッコミが暴力的になっていた

もちろん本当の暴力ではないのだが
客がちょっと引いたりして
ネタの邪魔になっているのだ

ましになったのかもしれないが
事務所としては結局、使いづらかった

  
2024012821:17:10

75
楽屋でキノコがウサギに暴力をはたらいている
という噂もあった。
舞台ではみね打ちのポーズだが楽屋では実際に殴ったり蹴ったりしているという。

キノコが「お前が悪いんやろ!」と怒鳴りながら
ウサギを殴り、ウサギは「ごめんなさい、全部私のせいや」と泣いている声がしたというのだ。

  
2024012908:47:52

76
キノコは「この脂肪のかたまりが!」とウサギを罵り
楽屋から子供のようにしゃくり上げるウサギの声が聞こえていた

細身で少し色黒のキノコと比べ
ウサギは、色白でキノコより少し身長が高く多少むちっとしてた
デビューしてから少し体重は増えていたが
世間でいうデブの範疇ではなかった

  
2024012908:55:23

77
いびき皮のファンは、きのこ派、うさぎ派に分かれ
スキャンダル前から敵対しているところがあった

ウサギの浮気スキャンダルを機に、うさぎ派の旗色は悪くなっていた
暴力事件の話で、きのこ派も反撃をくらっていた

全てはネット戦の話で、劇場では「ネタを普通に楽しむこと」がルールだった

  
2024012909:02:11

78
キノコは、コンビを継続したまま
ソロで活動することが多くなっていた

天然でさらにいじり方にコツのいるウサギと違って
元気で「普通の人間」のキノコは使いやすかった
放送作家として仕事もするようになっていた

  
2024012909:05:30

79
ウサギもソロ活動として、ライブハウスで
女芸人イベント「寝る子は育つ」を
共同主催したりしていたが
キノコとは収入には大きな差があった

キノコが、ウサギに新しい銀行口座を開設させ
「男に貢がないこと」を条件に
生活費を援助しているという話もあった

  
2024012909:08:54

80
その銀行口座は、キノコとウサギの
共同の財布のような面もあった

キノコもパスワードを把握し
いつでもネットでどれだけ使ったかなど
明細を見ることができ、多めにおろされてるときは
「これは何に使ったの?」とチェックしているのだという噂もあった

  
2024012909:11:54

81
キノコは、病状を悪化させることもあったが
自分なりに波を乗りこなしながら活動を続けいた。

その頃から彼女は、xでのネタ発表もやっていたが
波に溺れそうなときは意味不明にも思える投稿をし
「キノコの病状が悪化してる」
「これは新しいネタの実験なのか」とファンを中心に話題をよんだ

  
2024012909:17:02

82
キノコはxにて「、」と「。」のみで綴る
「ネタ」を発表しはじめた。

「最高傑作ができました。
ーーー
、、、、、。、、、、。、。
。。、。。。。、。、、
。   、   、  。、。」

彼女はそれに随分とハマり、
長短いくつものバリエーションの「作品」を生み出した。

  
2024012909:19:58

83
「わかる」「わからない」で話題になり
「そうやって話題にすることが狙いだ」という人もいた
「モールス信号化か?」などいろいろな憶測もでた。

一部、彼女の「、。」シリーズに大笑いする人達もいた
みな「お仲間」と呼ばれていた。

  
2024012909:25:00

84
xで「、。」を一番評価して
その議論の中心になって「わかる派」を代表してる人が、精神病院の入退院を繰り返しているだったのだ。

またその人のフォロワーや「わかる派」には、そういう人が多いと言われていた。
そうするうちに、だんだんと「わかるようになった」という人が出てきたのだ。

  
2024012909:27:01

85
「私もわかるようになった!」という人がチラホラ出始めるようになる頃。

松本興業の名誉会長、松本人志
「ネタバレになっても良かったら、これのなにが面白いのか私が説明してもいいか?」と
キノコに直接、リプライを返してきたのだ

  
2024012909:28:52

86
松本人志は、かつてラジオで
「お笑いの才能があるかどうかは、
いくつもある赤い玉と白い玉を、どういう順番で出すかでわかる」
と言っていたのだ

その頃かなりご高齢の松本会長は、「俺のお笑い人生の最期の仕事としても、これについて触れたい」と言っていた

  
2024012909:32:19

87
その頃、ツイッターで一番議論の中心になっていた
「わかる派」の人が、自殺したことがニュースになった

テレビで流れたある女性の自殺から、ネット住人が
それが彼女だと発見したのだ
実際、彼女のツイートはそれ以降ピタリと止まっていた

  
2024012909:34:25

88
それを機に「あれを分かるようになると死ぬ」という噂が流れはじめた
「、。」シリーズは、小説ドグラ・マグラのような扱いになっていた

  
2024012909:35:37

89
そんなころ松本会長の訃報が流れた。
自殺ではなく老衰だった。

天珠をまっとうした彼の遺書の初めには、

彼の相方、そして幼馴染の放送作家
そして妻と子供の名前が書かれ、

続いてこんなことが書かれていた。

---

  
2024012910:10:39

90
---
それから私の人生で出会ったすべての皆さん
ありがとう

私の耳は、世界一笑い声を聞いた耳であったばかりでなく
私自身、口から肛門がでるほど笑わせていただきました
ほんまにありがとう

日本、そして世界の平和を願って
  松本人志
---

  
2024012910:13:25

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そしてその遺書の横には
漫画「北斗の拳」の1ページ

ラオウが天を拳で指して立ち
「我が生涯に一片の悔いなし」
と書かれたものが置かれていたという

それは後年、松本会長が自分の人生の終わりを感じ始めたころに
単行本から取り外し、引き出しにしまっていたものだった

  
2024012910:17:41

92
<「お前が悪いんや!」
 キノコ、新宿二丁目の公園で
 泥酔、号泣
 失禁して眠る>

週刊誌はスキャンダルを報じた

  
2024012910:20:16

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新宿二丁目のバーで飲んだあと
キノコは公園で寝てしまっていた

地面に大の字になって寝ていた彼女は、
目を覚ましたときに股間に違和感を感じた

スウェットのパンツの中に手を入れると
彼女は驚いて声をあげ
慌てて公園のトイレに駆け込んだ

  
2024012912:00:30

94
彼女は驚きのあまり
一度女子トイレに行こうとしたが、間違えたと思ったのか
男子用に行きかけ
思い直してまた女子用に行った

彼女は個室に入り、ゆっくりと
スウェットパンツとパンティを
開けて股間をみおろした
そこには小学生くらいのおちんちんがついていた

  
2024012912:05:37

95
キノコは、おちんちんが
ついていることに驚くと同時に
おそるおそる元の自分のアソコあたりを触ってみた
玉のむこうには何もなかった

何もないところにおちんちんが付いたという感覚と同じくらいに
自分のアレがなくなったことに衝撃を覚えた
「こんなんで生きていけるのか?」

  
2024012912:09:01

96
「男はこれで普通なんだから大丈夫なんだろう」
そう思った

人間が鳥になったときに
翼が生えたこと以上に
腕がなくなったことに違和感をおぼえるようなものだろうか

キノコは次の瞬間こう思った
「これでウサギと結婚できる!」

キノコは鳥のように、ウサギのマンションに飛んでいった

  
2024012912:11:23

97
キノコは、ウサギのマンションにつき
エレベータのなかでスウェットパンツを開け、
自分のおちんちんを何度も見た。

それがドッキリや勘違いではなく、
「本当についてること」「自分に生えていること」を確かめるためにあれこれと触り、
また元のアソコがツルツルであることも確認した

  
2024012912:15:34


98
キノコが、彼女のドアのベルを何度も鳴らすが
壊れているのか音はせず、当然返事もない
近所迷惑にならないようにドアを何度か軽くノックしたが反応がない

キノコはなぜか不穏なものを感じ、
仕方なく試しにドアノブをひねってみると
鍵があいている
「ゆっこ-、開いているよ、大丈夫?」

  
2024012912:19:14

99
キノコがドアを開けなかを除くと
廊下のむこうに、ベッドからのそりと起き上がったウサギがいた

「大丈夫? 入るよ」
キノコは鍵を締め中に入った

ウサギはTシャツ一枚でぼんやりして
それでも?マークのような何事かという顔をしていた

きのこ「今から言うこと絶対に誰にも言ったらあかんで」

  
2024012912:23:17

うさぎは、わかったと真剣な顔でこくりと頷いた

きのこは自分が男になったことを伝えた

しかし、おちんちんが付いたこと
「結婚できるようになったこと」と
うさぎに男の恋人がいることは別の問題だった

それでもきのこは、この奇跡で何かが変わると確信していた

  
2024012912:27:32

101
うさぎは驚きの言葉を発した

「じゃあ一緒やね
あたしも男になったんよ」

Tシャツにパンティで寝ていた彼女が立ち上がり
無造作に下をずりおろすと
キノコより立派な、毛は生えていないが
中学、高校生くらいのおちんちんがついていた

  
2024012912:31:31

102
キノコは思った
「この子はいつでも間が悪い」
愕然とした

うさぎは「世界中の男女が入れ替わったんやろか?」と言って
二人でスマホやテレビを見たが
なにひとつそのことには触れていなかった

「今から出てくるんちゃう」とウサギは言ったが
どうやら自分たちだけに起きたことらしかった

  
2024012912:33:28

103
思えば、彼女の部屋で
こうやって会うのは久しぶりだった

キノコはまだ寝たりなかったので
そのまま二人で寝ることにした

疲れたキノコが、
ウサギの胸に顔をうずめるようにして眠りかけると
近くの部屋だろうか、
ジム・モリソンの「禁じられた二人」が聴こえてきた

  
2024012913:22:31

104
「禁じられた二人」は
「後年オネエ化していったジム・モリソン」が
AKB48の原曲を聴き、その歌詞とメロディに感銘をうけ
大胆なアレンジをして歌っていた

海外で爆発的な大ヒットソングとして成功し
日本でも「坂本九のスキヤキ」に次ぐものとして
とらえられていた

  
2024012913:25:12

105
「他の人ではだめなんです

男に生まれなかったなら
別れこなかった
僕が女に生まれていたならば
結ばれてた、二人

永遠を信じあってた
罪は男同士
残酷な運命に見をまかせ
禁じられた二人

泳ぎ疲れたら僕の腕で眠ればいい
水晶の船が僕達をいざなってくれるから」

 

前田敦子大島優子 - 禁じられた2人

https://www.youtube.com/watch?v=kByOKnWAX00

  
2024012913:32:34

106
しばらく寝て、キノコは目を覚ました
マンションに来る前に公園の地面で寝ていたために
自分が汗や砂で汚れていることに気づいた

なにも言わないのもウサギらしかった
もし謝ったら「洗濯すれば大丈夫」とでも言うだろう

眠っているウサギをそのままにして
勝手にシャワーを浴びることにした

  
2024012913:45:59

107
この部屋には何度となく来てるし
シャワーも何度も使っている

言い方は悪いが、ここはキノコにとって
仮眠室でもありラブホテルでもあった
相手はもちろんウサギだけだ

前までは気が向いたら
いつでも来ていいような感じだった

  
2024012913:48:57

108
裸になったキノコは
シャワーの蛇口をひねるが
お湯が出てこない

水のほうにしてみてもお湯が出ない
元栓のようなものがあるわけでもなさそうだ

もう一度ひねろうとすると
さっき今度はきつく締めすぎたのか
固くてひねることができない

  
2024012915:13:11

109
シャワーヘッドを片手に奮闘するが
どうにもならないので諦めようとしてると
おしっこがしたくなってきた

そうやってもう一度ひねってみると
蛇口のハンドルが回転し
キノコの股間にお湯があたる

「もうこのまま、おしっこしてしまえ」
初のおちんちんおしっこだった

  
2024012915:16:50

110
新宿二丁目の公園で
目をさましたキノコはおしっこを漏らしており

近くのオカマバーからは
「禁じられた二人」のカラオケが聴こえていた

股間を触ってみたが
何もついているわけがなかった

キノコは虚しく、とぼとぼ家に帰っていった

  
2024012915:24:48

111
キノコは、泥酔事件を理由に活動自粛を命じられた
それは、いびき皮の自粛も同然だった

自粛中にもかかわらず、キノコの暴走は続いた

<いびき皮キノコ今度は傷害事件!!
 オカマバーで
 ニューハーフと大喧嘩>

<ホストで豪遊していたキノコ
 備品を破壊し、600万円の損害賠償!
 出禁に!>

  
2024012915:32:21

112
頭を悩ませた事務所は、とうとう
いびき皮と契約解除することにする

いびき皮が契約していた事務所
ジャスミンズは、

元お笑い芸人の男
ジャスミン南山が開設した事務所だ

  
2024012915:36:27

113
通称ジャスさんは、
インポで女性恐怖症だが
女芸人マニアだという

学生時代には落研に所属しており、
芸人をやめた後は、南山ユーモア教室をやっていたが
芸人としては成功しなかったが
人を発掘、指導する能力はあったようだ

  
2024012915:38:06

114
インポで女性恐怖症ということで
彼がスキャンダルを起こすことはないと
太鼓判を押されていたが

雇用していたマネージャーが
いびき皮の活動の障害となったことを
とても残念に思っていた

  
2024012915:40:09

115
そんななか、
いびき皮に再起してほしいと思っていたが
事務所全体のことを考えて
いびき皮を退所させることにした。
苦渋の決断だった。

ところが捨てる神あれば、拾う神あり
ということで、いびき皮は間を置かずして
別の事務所に移籍することができた

  
2024012915:43:02

116
事務所を移籍したキノコは
前の事務所の悪口をいいはじめた

ジャスさんには恩義はあったし
前事務所での活動などに
楽しい思い出もないわけではないが

同時に、頭の片隅に「ゆっこに浮気させたのは
前の事務所が仕組んだ陰謀」という考えが浮かんでいた
「マネージャーとジャスさんはグルだ」と

  
2024012915:46:22

117
新しい事務所は、ドラゴンフォース
名前こそ大げさだが、前事務所よりだいぶ規模の小さいポンコツ会社だった。

ドラゴンフォースは、
DM法律事務所=ドラゴンマウンテンの代表が
半分、趣味の片手間でやってるような事務所だった。

  
2024012918:16:47

118
DMも大きな事務所ではなかったが、
一度、棚からぼたもちのような感じで
偶然「死刑を無罪に」できた裁判があり
そのことを例に「死刑を無罪にした法律事務所」ということで週刊誌に載ったことがある。

  
2024012918:19:07

119
キノコは、ドラゴンに移ってから
あまり大小を気にせず
コツコツと仕事をするようになった。

ドラゴン的には「いびき皮」目当てで仕事が増えて
知名度もあがり喜んでいた。
「法務に強いタレント事務所」として
問題児「いびき皮」を安値買いしたのは大成功だった

  
2024012918:21:53

120
誰もが使いづらい、問題児いびき皮。
芸能事務所としてはポンコツだが、法律トラブルに強いドラゴン。
うってつけの組み合わせだった。

彼女らが問題を起こしても、
ドラゴンは問題を仕事にしてる弁護士事務所が母体なのだ。

売れっ子だった二人を
手に入れるにはまたとないチャンスだった。

  
2024012918:26:38

121
キノコはその日、精神科の診察を終え
薬待ちをしていた
彼女は、広い薬局のイスの1つに座って
ミルミルを飲んでいた

最近の彼女は調子がよかった
薬も自分なりに減薬していた

そんな彼女がふと目を落とすと
受け取りカウンター近くの下の方に
「とんでもないもの」があるのを目にした

  
2024013013:03:43

122
キノコは以前、YouTubeの動画でこんな話を聞いた

人は「白熊のことは考えないで下さい」というと考えないことができないのだそうだ。

そう言われると、むしろ白熊のことを考えはじめるので、白熊を考えないためには、他の「戦車とかケーキとか他のこと」を考えるが必要があるのだという。

  
2024013013:09:18

123
キノコは、白熊を考えないために
遊んだり、仕事をしたり、あれこれと工夫をした

それでも時折、その白熊がひょこひょこでてくるので
ありとあらゆる救援を呼び寄せて、どうにかその白熊を
頭の中の奥の奥の小さな箱に、マトリョーシカのように何重にもして閉じ込めていた

  
2024013013:12:18

124
白熊は、広い薬局のいくつかある受け取りカウンターの
その横の足元に、ひょっこりと顔をだしてこちらを見ていた

キノコは戦慄した
また「あの時の顔」になる思いがした

待ってる間に読む用の書棚があり
そこにある雑誌にはこう書いてあった

<いびき川 ウサギ結婚!!
 相手は元マネージャー>

  
2024013013:21:23

125
彼女は「すーっとした感じ」を使うことにした

「すーっと」は、
「あの時の顔」になった時にできる防御を、
自分にダメージなくできる彼女が編み出した技だった。
いわば「あの時の顔」の良いとこどりだった

今の彼女は進化していた

  
2024013013:32:56

126
白熊の攻撃に耐えながら
すーっとで応戦していた彼女は
「おちんちんがついてないか」調べたくなった

もしついていれば、これは夢ということになる
トイレに行こうかと思ったとき

自分の番号が呼ばれた
厳しい状況であったが、これは気をそらす援軍になるかもしれないと思った

  
2024013013:35:02