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!!!5秒以上1分未満な物語!!!

ブログ小説第2弾です!今回は主人公がいますwずっと描きたかったテーマだったので…上手く表現できれば…と思います!

【KADODE】113話 「仇は…まだ残っているのね…?」

第113話

 

「仇は…まだ残っているのね?」

 

ルピナスが村へ到着する前に村を襲撃し、興味を失い去って行った2匹がいた…

 

リーサの瞳に黒い、闇のようなものが宿る気がして、リージは慌てる。

 

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「リーサ、飛んで行ったワイバーンなんて

探そうとしても見つからない!

無茶を考えるより、救われた命を大切にするべきだろう?」

 

「…、分かってる。

ワイバーン種なんて、幾らでもいるし…

村を襲撃したワイバーンをピンポイントで当てるなんて不可能…

…それに、折角命懸けで救って貰った命を大事にしない訳が無い!」

 

「…それじゃあ、都市にでも戻ろう…

あそこなら、住み込みで働ける口くらいあるはずだ…」

 

リージの言葉に、リーサは静かに顔を上げる。

何かを決意したような、強い面差しは

どこか生前の父に似ていた。

 

「この村のような惨劇を、繰り返してはいけない。

あのワイバーン供はまた…どこかの村を襲うわ…!

私は…強くなりたい。

強くなって、今度こそワイバーンをこの手で止めたいの!」

 

 

(114話へ続く)

【KADODE】112話 自警団の団長をしていた父の…

第112話

 

自警団の団長をしていた父の壮絶な顔、言葉…

絶対に、古い虚のある大きな木へワイバーンを近付けさせまいと死力を尽くした。

 

「リージとて、単身で無事に助けを呼びに行け

たのは何故か…

自警団の彼らがワイバーンを引き付けていたからではないか?」

 

「…そうだ、僕ら…皆に守って貰ったんだよ」

 

村の全てを守れた訳では無いけれど…

守れたものもあったのだ。

 

「…う、うわぁぁぁぁ…!」

 

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焼け果てた村の森に、リーサの胸を締め付けるような悲痛な慟哭が木霊した。

熱にうなされた大地を鎮魂するかのように、声は村に響く。

 

「お父さん…自警団の皆…

お母さん…お兄ちゃん…、、、」

 

村の生き残りの私が覚えているから。

ここに村があり、穏やかに暮らしていた事を。

大好きな村を、皆を守ろうと死力を尽くして戦った者達が居た事を…

 

「リーサ。

けれど、ここで終わりでは無い。」

 

ルピナスな淡々と声を発する。

 

「…自分が村に到着し、上空にいた3匹のワイバーンは仕留めた。

 

だが…

 

最初に飛来したワイバーンは5匹程だと聞く」

 

「…あ、、、」

 

仇は…まだ残っているのだ…

 

 

(113話へ続く)

 

 

【KADODE】111話 自警団の彼らがいかに…

第111話

 

自警団の彼らがいかに、死力を尽くして戦い、燃え尽きるその瞬間まで生き、そして最期を迎えたか…

 

リーサは父や、自警団の皆を喪った悲しさよりも…

彼らの生きた証を聞いて欲しかった。

 

そして悔しかった。

 

あんなに傷付き、苦しみ

尚も立ち上がり…

犠牲を乗り越え、恐怖を乗り越え

戦い尽くしたのに…

 

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全てを、命さえ投げ打った代償を

ワイバーンはいともあっさり払い除けたのだ。

 

ましてリーサ自身…

何も出来なかった。

父の元へ駆け付け共に戦うと言ったはいいが…

仲間の死体の数々に慄き足が竦んだ。

何より、父の壮絶な剣幕に呑まれた。

『お前は木の虚へ隠れていろ!

決して表へ出るな!』

…よく喧嘩はしたけれど…

こんな恐い父は初めてだった。

 

リーサは何も出来ず、ただ怯え

…そして父や自警団の死力を尽くした戦いも無駄に終わったのだ…

 

何も守れず…村は滅んだのだ…

 

リーサは抱えていた膝を、爪が白くなる程痣になってしまう程握り締めた。

 

皆の死闘に意味など無かった。

皆の死に救いなど無かった。

 

それがリーサを絶望へと追いやる。

 

「自警団の死力は無駄では無い…」

 

「…え、、、?」

 

無機質で静かな声が響く。

ルピナスの声だ。

 

「…自警団はちゃんと守れたじゃないか…」

 

骨張った長い指が指し示す。

 

「…リーサを…、、、ちゃんと守った。」

 

 

(112話へ続く)

 

 

 

【KADODE】110話 涙声で発せられたリージの言葉に…

第110話

 

涙声で発しられたリージの言葉がリーサの意識に入ってきた。

 

ワイバーンは殺したから…」

 

リーサはゆっくりと顔を上げる。

呆けたような、信じられない事を聞いたような顔をして…

 

「…ホント…?

ワイバーンは…死んだ…?

…全部…、、、?」

 

「ああ。ルピナスさんがやっつけてくれたよ!

僕もルピナスさんも怪我一つしてない。

本当にルピナスさんは強かったよ!」

 

リージの話しを聞いているうちに、リーサの虚ろだった目に、みるみる大粒の涙が溢れてくる。

 

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「…お父さ…ん、、村の自警団の皆も…

いっぱい、頑張ったの…

村の戦えない人達守ろうって…

傷だらけになっても、皆…諦めないで…」

 

涙と嗚咽で途切れ途切れになりながらも

リーサは話す。

彼らの勇姿を、彼らの最期を…

 

 

(112話へ続く)

 

【KADODE】109話 古く大きな木の虚の中に…

第109話

 

古く大きな木の虚の中に、リーサは蹲っていた。

 

身を縮め、両手で膝を抱え

小刻みに震えながら…

 

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普段なら、そのクリクリとした大きな目はキラキラと好奇心を宿し輝いていたが…

 

今は泣き腫らしたのだろう、瞼は赤く腫れ虚ろな目を覗かせていた。

リージの呼びかけにも応じる素ぶりを見せない。

 

それでもリージは、リーサへ近付き肩を揺らす。

 

「リーサ!リーサ!しっかりしろ!」

 

リーサのそんな姿にリージさえも涙声になり、時折喉を詰まらせるが…

何度も何度もリーサに話し掛ける。

 

「リーサ!気をしっかりもて!

ワイバーンは…

皆を殺したワイバーンは倒したから…

皆の仇はルピナスさんが取ったから…」

 

懸命に堪えていたリージの涙腺もついに決壊する。

自身で発した言葉に改めて、これがただの悪夢では無い事を突き付けられた心地がして…

 

 

(110話へ続く)

 

 

 

【KADODE】108話「こっちからリーサの声が聞こえる…」

第108話

 

「こっちだ。

こっちから、リーサの声が聞こえる…」

 

抑揚の無い静かなルピナスの声が、リージの耳に届くと同時に

リージは頭で考えるより先に足が動いていた。

 

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様々な事が重なり震え、力を宿さなくなった足を、無理矢理叱咤し動かせる。

ルピナスの指差す方向…

恐らく100メートルにも満たない距離の、大きな木の虚だろう。

 

途中何度も足がもつれ、躓くが

リージは這うようにして目指す。

木の虚の中が見え、人の姿が確認できる距離まで来た。

残りほんの数メートルなのに…永遠のように長く感じる。

 

リージは叫ぶ。リーサの名前を。

 

喉は糊を付けたかのように貼り付き、舌は震え上手く動かせなかったが…

数年来、出すことは無かったろう大声を…

懸命に振り絞って叫ぶ。

 

「リーサ…!!」

 

 

(109話へ続く)

【KADODE】107話 「なんで…何で…」

第107話

 

「なんで…何で…」

 

リージの震える唇は、そう紡ぐばかりだった。

父は愛用の大斧を握り締めたまま絶えていた。

 

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帰宅したリーサから返却されたのだろう。

 

では、リーサはどこに?

 

村の近くで、リージを救援へ向かわせて

自らは村へ行ってしまった。

 

探すのが怖かった。

 

つい、十数時間前まで共に街まで出かけた…

元気だけが取り柄の双子の片割れ…

 

そんな片割れの変わり果てた姿なんて見たくなかった。

全てから目を逸らしたくなっていた時…

 

「…こっちだ…」

 

抑揚の無い、静かな声が聞こえた。

 

実際、ルピナスには人間の感情に共感する機能は無く…

嘆くリージを見て、仄かに胸の奥に細波を感じるだけだった。

 

その細波の意味を…知りたいと願いつつ

 

そっと指を指す。

 

「こっちだ。…声がする。

…リーサの声だ。」

 

 

(108話へ続く)