インド太平洋問題研究会 第五回オフラインセミナー

2月27日第5回オフラインセミナーに飛び入り参加いただいた、チャタムハウスのクレオパスカル女史。その講演内容は短時間でありながらも非常に興味深い内容でしたが公開を前提としていませんので、一部だけ取り上げご報告します。

私から《英国ジョンソン政権のインド太平洋地域へのコミットメント》について質問したところ下記の興味深い回答をいただきました。

・ジョンソン氏は外務大臣の頃からトンガ、サモア、ボヌアツに高等弁務官事務所開設を提言しており、コモンウェルス思想の信奉者であり、海洋に関心があり、海軍の再建を主張している

・インド太平洋で唯一発展しているのは、インド、オーストラリア、日本であり、英国はそれらの国との関係強化を望んでいる

パスカル氏は中国マネーが英国金融に入り込んでくる事を危惧しており、今回のフェアウェー提案にNOと言えない事を不思議に思っている。

以下、私の考察です。

英国の現ジョンソン首相が当該インド太平洋問題へどのようなスタンスでいるかの凡そは、以上のパスカル氏のコメントで推測できるが、英国はEUから離脱し、新たな国際関係を構築する必要と機会を得ている(外交政策の自由度の広がり)訳で、日本はこの機会を捉え、かつての日英同盟の様なものを構築すべく積極的な外交を英国に対して展開すべきと思う(これは経済評論家の高橋氏がすでに論じている)。

翻ってみれば英国はその長い歴史の中で、植民政策の先鞭を付けた国であり、その渦中においては、様々な失敗や非難されるべき所業もあったが、コモンウェルスなる思想とその実行団体を創生したことからも解る通り、植民政策を殖民政策へ変貌させて来た知識&経験も、多分欧米各国の中では、一番蓄積している国だと思われる。一方日本の戦前の対外施策と言えば、中国や朝鮮半島の方々、一部東南アジアの方々からの非難の声があるとは言え、台湾統治に対する現台湾の方々の評価を見れば解る通り、概ね良き統治だったと言って過言ではないと思われる。

インド太平洋を中国の覇権から守るためには、同盟国による軍事力の整備・強化も必要であるが、何よりも現地の人々の生活レベルの向上が最強の防衛線構築に資するのではと強く思う。

よって今後、日本と英国が協力して、米国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド等々の諸国には乏しい(英国や日本よりは)良き殖民政策のノウハウを活かしてのインド太平洋戦略を構築する事が、この地域での重要政治課題の背骨になるべきだと考える。