はじめに
書いた動機
詳しい動機
去る1月14日に行われた2023年度大学入学共通テスト、これの「世界史B」に問題訂正があった。誤りは2カ所、そのうち片方が、中国において過去に実施されていた官吏登用試験「科挙」を「科拳」と誤字をした、という内容である。受験生を中心に多くの人々が驚いたことだろう、私もそのうちの一人である。
科学の拳、二つ目の科挙、そんなものは寡聞にして知らない。書き文字ならこんな初歩的なミスは中学校の小テストで卒業するべきだろうし、そもそもどうやって予測変換で出したのか画像認識で取り込んだのか、などの疑問がインターネットを渦巻いていた。本当のことは何かと手繰っていると、奇妙な情報が流れてくることに気付いた。
―――科拳、実は存在するらしい―――
そんな胡乱な話があるわけがない、また悪いインターネットがまろび出ているぞ、何が科拳のエースだと思っていたが、どうにもおかしい。民明書房以外の出典を持ち出す人がいるではないか。しかも複数人。一体何が起きているんだ、もう既に術中なのか?などと考えていたこの辺りで、はたと気付く。思えば私自身も「科挙」について何も知らない、知らないことについては語ることはできないんじゃないか……?
そんな我らがヴィトゲンシュタインの導きに従って、いくつかの書籍を買い、読み漁った。その結果、色々なことを学ぶことが出来たので、なるほどなあと思った部分について本文の引用と共にまとめていく。内容としては大きく分けて二つ、
- 「科挙」というものについて
- 「科拳」というものについて
- 「漢字」という概念について
である。結論から言えば、科拳は無かったとは言い切れない気がしている。対戦よろしくお願いします。
- はじめに
- 『科挙 中国の試験地獄』 (中公新書) 宮崎市定
- 最強の科挙本
- 全体を通しての「科挙」
- 六世紀末に生まれた社会制度
- 合理的で不合理な
- 因果応報の場
- 「字を惜しむ」と書いて
- 歴史の闇に葬られた「武」の科挙
- 李徴という男の話
- 『謎の漢字 - 由来と変遷を調べてみれば』 (中公新書) 笹原宏之
- 地名にあるからJISに載る
- 未知に触れるということ
- 漢字から見る「科挙」
- 『諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家』 (中公新書) 湯浅 邦弘
- おわりに
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