【あじ文字】の世界

味のある「手書き(手作り)の文字」、名付けて【あじ文字】をめぐる旅

【あじ文字】「禁煙」第25号

 とある神社の参道沿いの老舗茶屋の店内で発見。

 

ボール紙にマジックで力強く書かれた【あじ文字】

近年の世の趨勢を味方につけたかのような勢いが感じられます。

 

自分はタバコ吸いませんし、煙も苦手なんで、

まあありがたいと言えばそうなんですがね。

なぜかちょっと寂しい…

 

東京がまだ江戸とよばれていたころ

田舎から数日あるいて参詣に来た親爺が

店先に出された年季の入った長椅子に腰掛け

キセルで一服しながら天をあおぐ

そんな情景はもうみられないのだね。

そんな感慨にふけってしまった【あじ文字】のご紹介でした。

 

【あじ文字】「えび しじみ」第24号

 

 

とある湖畔の田舎道をドライブ中に発見。

 

おさなごが初めて書いたような素朴な「えび」

 

ねえ、ママ、じょうずに「えび」って書けたよ!えらいでしょ!?

 

そして、墨が垂れるほどいちおしの「しじみ

この【あじ文字】、ほんと、すきだわぁ

 

もう言葉はいらない、しじみにしみじみ感じ入る【あじ文字】のご紹介でした。

 

【あじ文字】「本日休み」第23号

 街歩きの最中、お洒落な飲み屋さんの店先で発見。

 

力を極限まで抜いた「本日休み」という文字と、

ビックサイズを釣り上げる男のシルエット…

竿のしなりが「休み」の「み」と交差している…

 

わたくしはこの【あじ文字】と【あじ絵】のコラボを眺め、悟ったのです。

 

マスター、あなたは本当の遊びというものを知っている。

 

ちなみに、右上の修正液で何かを消し去ったような痕跡もすてきです。

 

釣った魚を肴に一杯やりたくなる【あじ文字】のご紹介でした。

 

【あじ文字】「トイレ左」第22号

 吞んべえの聖地と言われる東京の居酒屋で発見。

 

エッジの効いたカタカナの「トイレ」と、

曲がりくねった↑に加え、小さいけれど存在感のある「左」…。

ささやかな道標なのですが、「矢印と左」のコラボが、

酒飲みのしびれた頭には、とてもわかりやすかったです。

 

酔ったおじさんたちがぎゅうぎゅうにならんだ、せまい店内の細い通路を抜け、

ご覧の木枠のガラス戸を開け、

生活感の詰まった薄暗い通路をそろりそろりと進み、

あの「矢印と左」の【あじ文字】をたよりに、

無事「トイレ」に辿り着いたのでありました。

 

ほっと一息のあと、再び喧噪へと我がジョッキを目指す【あじ文字】のご紹介でした。

 

【あじ文字】「わらび買います」第21号

のどかな田舎道の花屋で発見。

 

のびやかな字体、みごとな御手前…

さして指摘すべきポイントはないのです。

むしろこの場合、「わらび買います」という訴えそのものに魅かれました。

折しもこの辺り、春の山菜が店先をにぎわすシーズン、

山菜採りにとっては、たまらない季節なんでありましょう。

そんな山菜採りに向けたメッセージなのでした。

 

都会の人はきっと知らない、

豊かな自然に手を合わせたくなる【あじ文字】のご紹介でした。

 

【あじ文字】「事務所前につき駐車禁止」第20号

f:id:kitarannkahiyo:20190529044943j:plain

ある商店の巨大倉庫のシャッター前で発見。

 

「事務所」の「務」は旧字体であろうか。努力の「努」みたいになっている。

「事務所」の「所」もステキに略され、単独では読み難い字体となっている。

「につき」の「に」はシャッターの凹み部分にはまり込み、若干苦しそうだ。

「駐車禁止」はどの文字も「とめ、はらい」の部分が、力強く躍動している。

 

事務所前に駐車しちゃおうか、と思う輩にだけは目に留まるようになっている、

一見何の変哲もない文字ですが、よく見るとなかなかどうして味わい深いもんです。

 

曇りなき眼(まなこ)でみてごらんと、街の片隅で囁く【あじ文字】のご紹介でした。

 

【あじ文字】「とまれ」第19号

東京の名もなき小路で発見。

 

どこでも見かける道路標識なのですが、

幾多の風雨や人々に踏まれた結果、

ご覧のようなカスレ具合。

 

今はもう幼き児童すら止まらない、かもしれない。

しかし其れゆえに【あじ文字】探究者である自分の目に留まり、

自分はこうして立ち止まってしまった…わけであります。

 

生き急ぐ我に、しばし止まって周りを眺めよと静かに諭す【あじ文字】のご紹介でした。