シンガポールのユニークで斬新な建築デザイン6つ【建築巡り】
シンガポールに行ってきました。シンガポールは国土の面積が東京都23区ほどの小さな国で、マレー半島の南端に位置しているため古くから貿易の拠点となっていました。そのため街を歩いていると中国人、マレー人、インド人と多くの国籍の人々がおり、多民族・多宗教の国であることがわかります。そしてイギリスの植民地だったこともあり彼らが英語で通じているというのもおもしろいところです。
シンガポールといえばマリーナベイ・サンズなどの海岸沿いの高層ビル群のイメージが強いと思いますが、地震のない国なので内陸にも奇抜なデザインの建物が多くあります。今回はガイドブックには載っていないようなマイナーで斬新な建物を紹介したいと思います。
The Interlace / Ole Scheeren
ドイツの建築家オーレ・シェーレン(Ole Scheeren)による、ブロックを積み上げたような高級アパートです。一見乱雑に積み上げているように見えますが、俯瞰でみると六角形のグリッドで配列されていることがわかります。1ブロックは6階分で構成されていて、角度や高さを変えることでプライバシーを考慮しているそうです。超高層の住宅が多いシンガポールでこのような建物は珍しいと思います。中に入れるのは住人だけです。
建物の上空から俯瞰した全景。上部が北側で、右下側に敷地への入口が見える
LASALLE College of the Arts / RSP Architects
ラサール・カレッジ・オブ・アートは芸術関係の教育施設で、設計はシンガポールを拠点とするRSP Architectsです。MRTブギス駅とリトルインディア駅の間にあります。外から見ると黒い外壁で覆われていて閉鎖的ですが、建物の四方に裂け目があり、そこから中を覗くと白を基調としたかなり開放的な空間が広がっています。峡谷をコンセプトとしていて各フロアが地層のようにも見えます。
Reflections at Keppel Bay / Daniel Libeskind
ダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind)による集合住宅のプロジェクトです。高層棟が弓型に湾曲しているのが特徴で、さらに同じ形の建物がないのですべてのフロアで景観などが異なっています。遠くからみてもその存在感に圧倒されます。
シンガポール国立博物館(National Museum of Singapore)
シンガポール国立博物館は国内最古の博物館で、正面から見るネオクラシカル様式の建築が特徴です。また裏にはガラスや金属を用いた現代風の増築部分があり、新旧の融合を観ることができます。中ではシンガポールの歴史と文化について学ぶことができます。
また、チームラボによる大規模なインスタレーション作品も恒久展示されています。シンガポールの動植物の生態系を再現していて、幻想的な空間でした。必見です。
ナショナル・ギャラリー・シンガポール(National Gallery Singapore)
シティーホールと旧最高裁判所を改築してできた、世界最大規模の美術館です。アジア風の暖簾がかかっているところが入口です。ここは元々道路だった場所ですが、増築することで2つの歴史的建造物を繋いでいます。渡り廊下からは外壁や柱頭部分の装飾を間近でみることができます。
ヘリックスブリッジ(The Helix Bridge)
最後に、建物ではありませんが、かなり特徴的な橋を紹介したいと思います。マリーナベイ・サンズに繋がる橋で、オーストラリアの建築家、フィリップ・コックス(Philip Cox)がデザインを担当しました。この橋は二重螺旋構造となっていて、生物のDNAの形から着想を得ているそうです。夜にはライトアップされてとても綺麗です。
まとめ
東南アジアの中心地ともいえるシンガポールには、この他にもまだまだ奇抜なデザインの建築があります。街歩きやサイクリングをしても飽きないと思います。シンガポールに行ったときには、ぜひ建築巡りをしてみてください。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイも外せませんね。
東京都庭園美術館~アール・デコ装飾の建築~
目黒にある東京都庭園美術館に行ってきました。
東京都庭園美術館とは
この美術館は1933年に朝香宮邸として建てられました。多くのアール・デコ様式がみられ、本館自体が美術品といえます。部屋の内装には、フランスのアール・デコ様式において著名なデザイナーである、アンリ・ラパンやルネ・ラリックらが起用されました。
こちらは入ってすぐにある、香水塔です。モザイクの床、黒漆の柱、朱色の壁とアール・デコ特有の華やかな空間となっています。天井は白漆喰のドーム状で空間に調和をもたらしています。
アール・デコ様式について
アール・デコ様式とは、1910年から30年代にかけてフランスを中心にヨーロッパを席巻した工芸・建築・絵画・ファッションなどすべての分野に波及した装飾様式です。1925年にパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(Exposition Internationale des Arts Decoratifs et Industriels modernes)」の略称を由来とする名称です。
写真は正面玄関にあるガラスパネルの扉です。翼を広げる女性像が高くせり出ているのがわかります。フランスのガラス工芸家、ルネ・ラリックが制作したものです。
第一次世界大戦を契機とする大量生産・大量消費社会の到来とともに、装飾の分野においても新しいスタイルを築くことを狙いとしていました。建築では、鉄筋コンクリート造で薄く大きなガラスを用いたモダンな建築のことです。そして、躯体には地域性や伝統を表現した装飾的細部が施されています。主に、直線的、無機的、幾何学的な装飾がアール・デコといえます。
日本庭園
「庭園美術館」という名の通り、敷地内に日本庭園があります。
特に秋は紅葉に彩られ、日本的な情緒と西洋建築の対比が楽しめます。
美術館の様子
まず外観ですが近代建築らしく自由な立面であることがわかります。
中に入るとすべての部屋に違った装飾が施されています。
部屋によって壁や照明までそれぞれ装飾が施されています。
期間によっては美術館内で展示が行われています。私が行ったときは「装飾は流転する」というテーマでした。
また本館の他に新館が併設されています。新館には箱型の展示室やミュージアムショップ、カフェなどがあります。
まとめ
この美術館は、宮廷建築を担っていた宮内省内匠寮が手掛けた邸宅の中でも特色のある建築として、2015年に国の重要文化財に指定されました。ぜひ行ってみてください。
[住所]東京都港区白金台5-21-9
[電話]03-5777-8600(ハローダイヤル)
[開館時間]10:00~17:30
[休館日]第2・第4水曜日、年末年始、展覧会準備期間中
[入館料]展覧会によって異なる
安藤忠雄展~ダイナミックな建築家~
安藤忠雄は日本を代表する建築家で、世界でも多くのプロジェクトを担当し広く知られています。
「光の教会」について
この展覧会の目玉は、野外展示場にある「光の教会」の実大レプリカでしょう。正式名称は「茨木春日丘教会」といい、大阪府茨木市にあります。
実際の教会では、雨や風が入らないように、十字架のスリット部分にガラスがはめ込まれています。しかし、安藤忠雄は風が通る教会にしたかったそうで、レプリカではちゃんと空いています。
また、この展示はスケールが大きく建築物とみなされてしまうため、美術館側が増築の申請を出して、建築したということには驚きです。
直島について
直島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島です。教育的な文化エリアを築くという「直島プロジェクト」の一環として、1989年に安藤忠雄監修の直島国際キャンプ場が誕生しました。そして今では30年の時を経て、直島を含むエリアは現代アートを発信する場として世界的に注目されています。
展覧会では空間インスタレーションとして、直島の巨大模型の上に安藤建築が再現され、うしろのスクリーンで解説の映像が流されていました。
まとめ
今回紹介したものはほんの一部で、展覧会では安藤忠雄が手掛けた住宅から大きなプロジェクトまで、本当にたくさんの模型とともに展示されています。ぜひ行ってみてください。
[住所]東京都港区六本木7-22-2
[電話]03-5777-8600(ハローダイヤル)
[開館時間]10:00~18:00
[休館日]火曜日
[観覧料]一般1500円/大学生1200円/高校生800円
サンシャワー展~東南アジアの現代アート~
森美術館で開催されている、サンシャワー展に行ってきました。
サンシャワー展とは
この展覧会では、東南アジア地域の現代アートが展示されています。サンシャワーとは天気雨のことで、東南アジアでよくみられる気象現象であり、また急激な経済成長や戦争、植民地時代などの紆余曲折の歴史を経てきたことを暗示しています。国立新美術館と森美術館の2館で同時開催されています。
森美術館では入口で象が浮いています笑
気になった作品
《おじいちゃんの水路は永遠に塞がれた》スティラット・スパパリンヤー
この作品では、ダムとその下流の様子が映し出されています。急速な発展によって社会が電力に依存していくことや、ダムができたことで人々の生活が変わってしまうことがわかります。
《反射の中の対比》ホンサー・コッスワン
この作品、新聞紙を切って貼り付けたコラージュ作品なんです。水面のように反射した風景に別の世界が映っています。幻想的で驚きました。
《ムーンライト・フィエスタ》ウドムサック・クリサナミス
《荒れそうな空模様》フェリックス・バコロール
大量に吊り下げられたプラスチック製の風鈴は、東南アジアの大量生産に支えられたグローバル経済を表しているようです。
まとめ
サンシャワー展では、ほとんどの作品で撮影可能と参加型アートがメインとなっています。また、観覧料が他の展示よりも安く設定されているのでおすすめです。経済発展が目覚ましい東南アジアでは、変化する社会に対してメッセージ性の強い作品が多く勉強にもなります。
[住所]東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
[電話]03-5777-8600(ハローダイヤル)
[開室時間]10:00~22:00
[休館日]会期中無休
[観覧料]一般1000円/大学生500円
ブリューゲル「バベルの塔」展~壮大な風景と緻密に描かれた人々~
上野公園の東京都美術館で開催されている「バベルの塔」展に行ってきました。
ピーテル・ブリューゲル1世とは
ピーテル・ブリューゲル(1526/1530頃~1569)は、16世紀ネーデルラント絵画を代表する巨匠です。ネーデルラントとは、現在のオランダとベルギーを合わせた地域のことです。この一帯は、イタリアルネサンスに匹敵する「北方ルネサンス美術」の中心地で、15~16世紀に数多くの優れた作家を輩出し、油彩、版画、彫刻などの美術文化が開花しました。ブリューゲルは、聖書の物語を描く宗教画や、人々の暮らしを描く風俗画で有名です。ちなみに、自分の子に同じ名前を付けているので、ブリューゲル(父)やブリューゲル1世と表記して区別します。
ヒエロニムス・ボスとは
ヒエロニムス・ボス(1450頃~1516)もブリューゲルと同じくネーデルラントの画家です。地獄の情景や妖怪を創造力豊かに描き、奇想の画家と呼ばれています。この画風を真似る画家も多く現れ、ブリューゲルもその一人でした。本展覧会でもブリューゲルの版画が展示されていて、ことわざをモチーフにしたユーモアのある作品が並んでいました。
「バベルの塔」とは
バベルの塔は旧約聖書の創世記中の物語に登場する塔です。以下、会場で訳されていたものの引用です。
世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
聖書「創世記」11章1~9節(新共同訳)
実際に見てみるとかなり細密でした。巨大な塔、遠方の風景と3mmほどの人々の行動が同時に描かれていたのが驚きでした。また、3DCGの映像や拡大された複製画などが用意されていて非常にわかりやすかったです。
まとめ
教科書にも登場するブリューゲルはやはりかなり人気のようで、会場は大混雑でした。会期はそろそろ終わってしまいますが、ぜひ一度は生で見てみてください。
[住所]東京都台東区上野公園8-36
[電話]03-5777-8600
[開室時間]9:30~17:30
[休館日]月曜日
[観覧料]一般1600円/大学生1300円/高校生800円/65歳以上1000円
すみだ北斎美術館~世界に誇れる葛飾北斎の絵画~
葛飾北斎ゆかりの地、東京都墨田区にある「すみだ北斎美術館」へ行ってきました。
北斎美術館はJR総武線の両国駅から徒歩10分ほど。途中には、ダイナミックな江戸東京博物館があります。
建物の外観
建物の設計は、金沢21世紀美術館などで知られる妹島和世氏によるものです。公園に隣接していたり、建物の通路が敷地の四方に開いていたりと、公園や地域と一体となった美術館です。
一見、圧迫感のあるように感じますが、近くまで行くと建物の割れ目から建物内部が見えて引き込まれます。
北斎美術館とは
葛飾北斎(1760~1849)は現在の墨田区亀沢に生まれ、およそ90年の生涯のほとんどを墨田区内で暮らしたそうです。 墨田区では、この葛飾北斎とすみだとの関係を発信していくべく「すみだ北斎美術館」が開設されました。墨田区が収集した作品に加え、ピーター・モース(大森貝塚を発見したエドワード・モースの弟のひ孫)などの研究者から譲り受けた資料が収蔵されています。
常設展
常設展では、葛飾北斎の作品が年代順に並んでいます。各作品に、描かれている場所や解説がタッチパネルで見れるようになっています。誰もが一度は見たことのある、富嶽三十六景も高精細レプリカですが展示されています。また、錦絵の描かれる工程も詳しく解説されていました。
企画展
企画展は「てくてく東海道-北斎と旅する五十三次-」が開催されていました。東海道五十三次といえば歌川広重ですが、葛飾北斎も東海道を旅し、その作品が展示されていました。歌川広重は風景画を描くことが多いのに対し、葛飾北斎はその土地の名産品や職人を描いていたそうです。
次の企画展は「北斎×富士 ~富嶽三十六景 富嶽百景 揃いぶみ~」で、期間は6月27日~8月20日です。季節、時間、天候、場所などで見え方が変わる富士山を描き分ける、北斎の技法を観ることができます。
まとめ
すみだ北斎美術館では、葛飾北斎の作品を観るだけでなく、浮世絵や錦絵などの日本絵画の魅力にも触れられます。ぜひ、訪れてみてください。
[住所]東京都墨田区亀沢2-7-2
[電話]03-5777-8600
[開館時間]9:30-17:30
[休館日]月曜日
[常設展観覧料]一般400円/高校生・大学生・65歳以上300円
ホキ美術館~写真よりもリアルな絵画!?~
建物外観が奇抜と話題な「ホキ美術館」へ行ってきました。
ホキ美術館へはJR外房線の土気(とけ)駅からバスで5分ほど。しかし、1時間に2本しかない。そんなに遠くなさそうだったので、歩いていくことに。20分ほどで到着。
思ってたより住宅街にあったので突然現れました笑
建物の外観
入口から敷地に入るとこのカーブを通ります。ツンツン立った鉄骨は柵の機能を持つもの。いかにも美術館らしいです。右手には壁越しに昭和の森が見えます。
建物の正面にまわってみるとこんな感じ。
この突き出したギャラリー、実は結構長い。
建物の設計は日建設計。やはり凄いです。これだけでも来た甲斐はありますが、そろそろ中に入りましょう笑
ホキ美術館とは
ホキ美術館は写実絵画の精密画専門の美術館であり、とても珍しいです。というのも、ホキというのは館長の保木氏という名前から来ていて、個人が収集し展示しているのでかなりニッチなところをついています。
ここの写実絵画は写真のようだと言われますが、実際に見てみると写真よりもリアル笑。川の流れとか生き物のアップとかは動き出しそうだし、風景画では本当にそこに立っている様にも感じます。誰でも楽しめるのではないでしょうか。
私のお気に入り
私が気に入ったのは、森本草介氏の絵画。女性を描いた絵画が何枚かあったのですが、どれも色使いが優しくて理想の自然体って感覚です。
まとめ
ホキ美術館は少しアクセスしづらいかもしれませんが、建物や絵画は今までに見たことがないものでしょう。ぜひ、一度は訪れてみてください。
[住所]千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15
[電話]043-205-1500
[開館時間]10:00-17:30
[休館日]火曜日
[入館料]一般1800円/高・大生・65歳以上1300円/中学生900円