八百文字程度の映画ブログ

古今東西膨大な数の映画から、あなたが観たい映画を見つけるお手伝いが出来ればと思い、つづります。

「リンダ! リンダ! リンダ!」建物が想う記憶

こんな方におススメ!

・軽音サークルものが好き ・青春映画に浸りたい ・ブルーハーツ

 

はじめに

学校を舞台にした青春映画は多くあり、音楽活動を軸にした映画もまた同じです。それらの中で、この映画が異色なのは、第三者的な「視点」があることで、それが大きな見所にもなっています。そんな変化球を入れながらも、素直に、存分に楽しめる映画です。

 

見所1.ソンちゃん

途中までは王道の青春ものか、と思わせながら、サークルのメンバーに韓国人のソンちゃんが加わることで、一気に物語が色づいて来ます。カタコトで暴走するソンちゃんが可愛くも面白く、ぐいぐい映画を引っ張ってくれます。この微妙に味をずらすスパイスの利かせ方が素晴らしいです。

 

見所2.嗚呼、先生

生徒想いの良い担任なんだろうな、と感じられるのですが、主人公の方はどこ吹く風で、ぜんぜん通じていない感じが切ないです。さらに、放課後に練習をしている音を職員室で聴いている先生の姿が、切なさを超えて神々しくも感じられます。こういう距離感の描き方がまた絶妙です。

 

見所3.「学校」視点

映画を観ていて、なんとなく感じる違和感の理由は、クライマックスの学校祭での演奏シーンでなるほどなーと察することができます。この映画は、主人公目線で進んでいるように見えて、実は「学校」目線だったことに。

本来なら、主人公たちのシーンを華々しく映すラストが、校舎の様々な表情のカットを続けて、最後は主人公たちのステージを遠くに眺めるカットになります。

かつて学校でこんな営みが行われていたという、まるで校舎の「記憶」を覗いていたような、不思議な余韻を残す名シーンです。

 

おススメ度……90%

王道の枠組みを使いながら、描きたい表現を貫き、エンターテイメント性も保った監督にブラボーな一本。

この手のジャンルが苦手な方には、あえておススメはしませんが、名曲を少女たちが歌い上げるシーンや、学校祭の催しの一つとして登場する「マンガ喫茶」など、面白要素が散らばっているので、それらを拾い集めて観るのも楽しいかと思います。

 

(2005年、日本)

「ガタカ」狂おしいまでの努力

こんな方におススメ!

・才能は努力で補えると信じている ・夢に挫折したことがある ・腐女子

 

はじめに

DNAを軸としたSFでありながら、描いているテーマはどの時代にも通じる泥臭いものです。映像は残酷なほどに美しく、主人公が地べたを這いずり回る感じとの対比に胸があつくなります。

イーサン・ホークジュード・ロウというイケメンが共に20代半ばの充実した年代で、野心的な魅力をかもし出しているところも見所です。

 

見所1.音楽が美しい

映画音楽の雄、マイケル・ナイマンによるサントラが本当に美しいです。メインテーマの映画へのはまり具合は完璧といえるほどで、音楽を聴くだけで映像が目に浮かびます。このメインテーマが「見所2」でも流れますが、気持ちが高ぶることこの上ない使い方をしてきます。

 

見所2.兄弟競泳対決

DNAで優劣がつくはずの兄弟の立場が、「努力」によって覆される、海を泳ぐ印象的なシーンがあります。そこで主人公が放つ「子どもの頃は、戻ることも考えずに全力で泳いだ」が心に刺さりまくりです。

映画全編でも象徴的なシーンですが、SFであり、無菌室のような美しい映像が連なる中で、「海」をその象徴に選んだところが上手いです。

 

見所3.最後の一言が忘れられない!

ネタばれもいいところですが、クライマックスの検査場のシーンが素晴らしいです。意表をつく尿検で計画の失敗を悟った主人公が、「忘れないでくれ、ぼくは頑張った」というセリフは、才能は無くても己を信じて極言まで努力した全ての者に捧ぐ一言です。

主人公がハンディキャップを凄まじい努力で乗り越えようとしたことを、観手に納得させることができているからこそ、響く一言です。

自分が本当に頑張り切っているかどうかを振り返るときに、このセリフが脳裏に浮かびます。

ちなみに、同じシーンでの「右利きは左で持たない」も名言です。偽装するときは注意しましょう。

 

おススメ度……80%

100%おススメと言いたいところですが、1回目の衝撃と、思い出フィルターがかかりまくっていたせいか、2回目に観た時には1回目ほどの感動は無かったので、80%ぐらいに留めておきました。

おススメポイントは他にもたくさんあって、「ジュードロウ完全燃焼」「風にさらわれた…」「涙の全力疾走」など、見所の多い映画です。

 

(1997年、アメリカ)

「ドッグデイズ」これぞ観る拷問

こんな方におススメ!

・観るな、と言われると観たくなる ・暑さが好き ・我慢強い

 

はじめに

観ながら「もう許して下さい」と言いたくなる拷問のような映画です。軽い気持ちで初デートに選んだ挙句に気まずい関係になり、監督にクレームをつけるためにオーストリアまで行きました、という人がいても、「あるよね」と理解できる究極の不愉快映画。一言でどんな映画ですか? と聞かれたら、満面の笑顔で「地獄です」と答えます。

 

見所1. 不愉快なシーンの数々!

不愉快な人間たちが「最も暑い日=ドッグデイズ」に織りなす不愉快な日常の一シーンを、長回しで撮りまくる、全体を通るストーリーはなく、ただひたすらその連続です。劇場で観ながら、「えーと、いま自分は何に耐えているんだっけ……」と思わざるを得ない拷問のような時間を過ごせます。

 

見所2. モンニャという伝説

登場する不愉快な人間の中でも、ぶっちぎりで頂点に立つ女(個人的通称モンニャ)のことを思い出すと、目の前の物を蹴り飛ばしたくなる衝動に駆られます。むしろそこまで不愉快な人物なら観てみようかな、と思うかもしれませんが、そんなあなたに一言お伝えします。「やめときな」。

 

見所3. なぜか泣けてくる

とか言いながら、けっこう映画の細かい内容を覚えていて、思い出すとなぜか泣けてくるのです。その感情を一言で表すなら、「だってこれが人間だから」。

ささやかな幸せを求めて生きる中で、何かがずれてしまって、うまくかみ合わず、もがき、苦しみ、傷つけあう飾らない人間の営みが、ただ切り取られています。でも「それが人間だよね」と思うと、あまりに切な過ぎて、のた打ち回りたくなります。

 

おススメ度…10%

おススメは、致しません! と断言しつつも、こんなにも観て欲しいと思える映画も珍しいです。この拷問を耐え抜いた人だけが見える景色も確かにあり、その景色をぜひ観て欲しいです。

究極の表現からくる人間愛の描き方に感嘆すると同時に、映画とは何か、エンターテイメントとは何か、そして人生とは、と深いところに思考が落ちていくこと請け合いです。

 

(2001年、オーストリア

「エイプリルの七面鳥」家族は他人と言うけれど、やっぱり家族なんだよ

 

こんな方におススメ!

  1. 最近、家族と疎遠になっている
  2. 感謝祭って何?
  3. 赤毛女子が好き

 

はじめに

上映時にどういう広報をしたのかは分かりませんが、自分が観たのは行き着けの名画座でした。後にDVDやサントラも購入するほど、大好きな映画なのですが、これを観たことある方と未だに出会ったことがありません。

ある映画好きに紹介したところ、「嗚咽する」ほど感動していました。それほどの名画であっても、知られなければ無いのと同じ。このまま埋もれるには、あまりにもったいない一本です。

 

見所1.エイプリルが可愛い

家族を出迎えるために奮闘するエイプリルのパートでは、ユニークな住人たちを巻き込んでディナーを用意するのですが、その奮闘ぶりが、かわいい。とくに階段にたたずんで「ちがうもん」とつぶやく姿は、キュンとくる……いえ、それだけではなく、母親との関係性が象徴される姿でもあって、表現としても上質なワンカット。

 

見所2.家族がキャラ立ちし過ぎ

主人公エイプリルと家族、特に母親との関係が軸となる物語ですが、複雑な家族関係を、奮闘するエイプリルパートの裏で、限られた尺で上手いこと観手に理解してもらう必要があります。

エイプリルの所へ向かう道中で、今まで様々な問題をはらんできた家族の関係性を、不必要な言葉なく見え隠れさせる演出がうまいです。途中で、妻が死んだと思って涙する夫の姿には、胸詰まるものがあります。

 

見所3.セリフ無しの十数分

過程がきちんと描けていれば、ラストはセリフなどなくても良い、それが充分に発揮されるラストです。母親がファミレスのトイレで女の子を鏡越しに見つめるシーンから、セリフは一切ありません。でも、そこでの母親の心が手に取るように分かります。

ようやく母親とエイプリルが出会うカットでは、シャッター音と共に数枚の止め絵を使ってきます。これが効果的過ぎで、心憎くも深い余韻を残してくれるのです。

 

おススメ度…100%

独特の切り口を持った完成度の高い映画で、家族ものが好きな方には、そのライブラリーにぜひ加えて頂きたいです。サントラもおススメですよー。

 

(2003年、アメリカ)

「セッション」 音楽の9割は根性で出来ている!

こんな方におススメ!

  1. 演奏技術の壁にぶち当たっている
  2. 教育とは何かを考えている
  3. マゾ

 

はじめに

かつて映像の学校に通っていたとき、「映像から緊張感を出すこと」の重要さを教えられました。あれから20年、「緊張間感のあるシーン」はいくつか記憶にあるものの、「緊張感しかない映画」が存在するとは。それが、「セッション」です。

観終わった後に、血圧が低下してしばらく立ち上がれなくなり、放心状態に。家で観ていて良かった、とつくづく思いました。公開当時、失神した人はいなかったのだろうか……。4DXで再現されたら、半端なホラーよりよほど恐いです。

 

見所1.師弟関係以外ほぼ無し

映画の構成がシンプルで、軸がぶれていません。主要キャストは生徒(ニーマン)と鬼教師(フレッチャー)。父親や彼女、ライバルは出てくるものの、描き方は最小限。セリフも少なく、ただ映像でみせる!

冒頭から容赦ないです。ニーマンの演奏を少し聴いてあっさり部屋から出て行ってしまうフレッチャーの、感情の入る余地の無さっぷりが、これからの師弟関係の行く末ばかりか、この映画のスタイルをも印象付けます。

 

見所2.泣くほど恐い

鬼教師フレッチャーの鬼指導が、この映画の見せ所ですが、中でも印象的なのはフレッチャーの楽団に加入して初練習に参加するシーン。雑談しながら入ってくる上級生たちが、フレッチャーが教室に入ってきた瞬間に空気が張り詰める! まさに自分がその中に入り込んでいるように、4DXはついに空気の緊張感も伝えられるようになったぞ(自宅だけど)、とおもうほど伝わってきます。

問い詰められ泣き出す生徒もいて、自分も一緒に涙ぐんでしまうぐらい本気で恐い……。本物を目指すってこういうことか、と随所にある鬼指導にしびれます。

 

見所3.完璧なラスト

最高のラストシーン。まさかの仕打ちで心が砕けてステージを去るニーマンの、まさか返しのリベンジ! 完全にぶちのめされたはずなのに、戻ってきたぞこいつ! という驚きからの収束。

この映画は、感情の入る余地を極限までそぎ落としていますが、リベンジショーに入る前に、打ちのめされたニーマンを父親が抱擁する、というワンクッション入れたのが秀逸です。

そのワンクッションがあればこそ、ニーマンがステージに戻るのも違和感なく、フレッチャーと対決する構図も出来上がります。

さらにこの映画が素晴らしいのは、主人公が鬼教師に一泡ふかせて終わりではないところ。初期は一方的に指導を受ける立場、そして最終ステージで自分をぶつけ、最後にはフレッチャーと二人で「創り上げる」というプロセスを描ききっています。

ラストカットはそのステージ(あるいは天才)を創り上げる一音で終わりますが、これ以上のカットは何も必要ないという、必然的なラストカットで、まさに完璧。

ちなみに、この最終ステージで、手持ちカメラが左右に触れて主人公と鬼教師を交互に追うカットが続きますが、被写体を追いきれないカットが一つ入ります。通常なら絶対にありえない撮り方ですが、これを入れることで、「今とんでもないことが起きている!」という観手の心をも代弁してしまいます。この撮影が確信であってもアドリブであっても、凄いです。

 

おススメ度…100%だが

良い映画のお手本のような要素が詰まりまくりな一本。でも、かつて鬼教師の鬼指導でトラウマを負ったことのある方は、確実に傷口が開くので、観ない方が良いです。

 

「セッション」(2014年、アメリカ)

はじめに

最近なんの映画見た?

 

と聞かれて、答えられなくなってきました。

 

以前は年間100本以上は観ていて、趣味は映画鑑賞と言えましたが、最近は忙しさにかまけてぜんぜん観れていません。昨年はついに劇場で一本も観られない始末。

 

その反動で、年末年始に撮りためていた映画を一気に観ました。

 

映画って、面白い。

 

自分はやはり映画が好きなんだと思いました。

かつては映画監督になろうとして、自主制作映画も作って来ました(出来についてはあえて触れない)。

 

映画は面白い。

 

でも、世代を超えて語り継がれる映画は、ほんの一握りです。

 埋もれるには惜しい映画があります。

 

映画は、観る人のその時の精神状態や置かれている状況によって、印象が変わってきます。

いまの自分にうってつけの映画は、創られた時代や国を問わず存在します。

たまたま、出会えていないだけの「心の一本」が世の中にはたくさんあるはずです。

 

だから、映画と観手のお見合いを一つでも出来ればという、ただのおせっかいですが、それがこのブログを始める理由のひとつでした。

 

もうひとつの理由の方が動機としては大きいのですが、ブログを書くという目的があれば、また映画を観ることが習慣になるのではと思ったからです。

 

映画は観ると面白いけど、2時間取るのはなかなかおっくうなことが多いのが事実。でも、ブログを書くネタとして、という理由があると、観る動機になるはず!

ものぐさな自分には、こういう手法が良いと考えました。

 

不純な動機から始めましたが、このなかからもし、あなたのお気に入りの一本が見つかれば、この上なく幸せです。

 

>ブログの構成

  • 粗筋は省略し、基本ネタバレあり
  • 「こんな方にうってつけ」を冒頭に明示
  • 見所を3つに絞る
  • 字数は800字程度