結果と雑感【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
マンション管理士試験は37点でボーダーラインぎりぎり、管理業務主任者試験は36点でボーダーライン+2点と、際どいところでなんとか合格できました。
受験前は結構自信がありました。どっちも38点は取れるだろうと思っていました。
しかし民法にやられました。どちらも正解したのは半分以下です。
合格できたのは、区分所有法と標準管理規約でしっかり得点できたのと、建築・設備関係が過去問焼き直しばかりで簡単だったおかげです。
正直、運に助けられました。
過去問中心の勉強では危うい
他の記事でもたびたび触れてきましたが、どちらの試験も、過去に出題されたことのない新たな知識が、毎回問われます。
管理業務主任者試験は、合格最低点が低いため、こういった新規問題はスルーしても合格できます。
一方マンション管理士試験では、新規問題からも少しは得点しないと、ボーダーラインを突破できない可能性があります。
しかしマンション管理士試験の教材は、どれも過去問がベースです。
試験範囲がものすごく広く、網羅的に解説したらとんでもない分量になってしまうので、過去問によく出てくる部分に集中して解説しているのです。
つまり、市販教材での勉強は、自ずから過去問中心の勉強となります。
これだと新規問題への対応が弱くなり、ボーダーラインを突破できない可能性があります。
このことは理解しておいたほうがいいと思います。
新規問題にも対応するには、テキストよりも広く深い勉強が必要です。
予備校に通うのが手っ取り早いですが、独学でも
- 条文の素読
- 試験対策以外の解説書の利用
なら、手軽に取り組めます。
模擬試験や直前問題集など、過去問以外の問題が手に入る機会は、ぜひとも利用しましょう。
その他分野の対策【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
不動産登記法
毎回1問は出題されるとはいえ、テキストの範囲を超えた問題もガンガン出てくるので、僕は捨て問だと思います。
テキストと問題集では勉強しましたが、それ以上は深追いしませんでした。
建替え等円滑化法・被災マンション法
区分所有法との違いに注意すれば、安定して得点できます。
テキストと問題集で十分カバーできますし、力を入れるべき分野だと思います。
マンション管理適正化法
暗記すれば確実に得点できる分野です。
後回しでいいので、しっかり勉強すべきです。
マンション標準管理委託契約書
マンション管理士試験では1問出るか出ないか程度のマイナー分野ですが、管理業務主任者試験では複数問出題されます。
国土交通省サイトに全文があるので、管理業務主任者試験前にはしっかり読み込む必要があります。
標準管理規約と同じく、勉強すればするほど点が伸びると思います。
会計・税務
他の出題分野と比べると毛色が違いますが、難しくはありません。捨てるのは勿体無いと思います。
特に消費税に関しては、覚えれば得点できます。
ダブル合格・トリプル合格は可能か【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
宅建士、管理業務主任者、マンション管理士の3つの国家資格を「不動産トリプルライセンス」と呼び習わし、全部コンプリートすることがお勧めされています。
ネット上では、「同時合格は可能」という声もあれば、「無理だからやめておいた方がいい」という声も、どっちもあります。
今回の合格で、数年かけてトリプル合格を果たしたので、僕の感覚を紹介します。
マンション管理士・管理業務主任者のダブル合格は可能
同一年度にマンション管理士試験・管理業務主任者試験の二つに合格するのは、十分可能だと思います。
出題範囲がほとんど同じだからです。
ただし、分野ごとの配点がかなり違うことは留意しなければいけません。
例えば、マンション管理士試験では、区分所有法や標準管理規約のウェイトが大きいですが、管理業務主任者試験ではそれほどではありません。
反対に、マンション管理士試験ではほとんど問われない標準管理委託契約書に関して、管理業務主任者試験ではがっつり出題されます。
マンション管理士試験と管理業務主任者試験は、例年1週間しか空いていません。
この一週間にみっちり勉強する必要があります。
トリプル合格は難しい
宅建・マン管・管業の全てに同一年度に合格するのは、かなり難しいと思います。
試験範囲の重複が少ないからです。
被っているのは民法と関連法令(都市計画法、建築基準法)くらいで、配点でみると20パーセント前後で、大したことありません。
宅建試験の得点源となる宅建業法は、マン管・管業ではわずかしか出題されません。(出たとして1問)
マン管・管業で重要な区分所有法や標準管理規約は、宅建には出題されません。
宅建→マン管&管業が無難か
トリプルライセンスを狙うなら、先に宅建合格してから、翌年に管業・マン管を受験するという流れがおすすめです。
民法の個別勉強法のページでも触れましたが、民法の問題は宅建が一番難しいです。
そのため、宅建レベルの民法知識があれば、マン管・管業試験で楽になります。
この流れのネックは、マン管・管業ともに5点免除が使えない点です。
1年目に管業も合格していれば、2年目のマン管がもっと楽になりますが、前述のとおり試験範囲が被っていないため、宅建・管業のダブル合格は難しいです。
受験コストが高くない(試験会場の近くに住んでいる等)なら、駄目元で一気に詰め込み勉強して受験してみるのもアリだと思います。
業界未経験者の場合、予備校は必要か【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
マンション管理士の場合:法令慣れしているなら独学も可
今回僕は業界未経験かつ独学で合格できましたが、以下のとおり法律分野で下駄を履いていたおかげだと思います。
業界未経験の場合、合格するなら法令(特に区分所有法)と標準管理規約でしっかり得点しなければいけません。
そのため、もともと法律に慣れ親しんでいるかどうかで、試験の難易度はかなり変わります。
過去に法律関係の資格試験に合格しているとか、日頃から法律を使って仕事をしているとか、法律分野に優位性がある方なら、独学での合格も狙えると思います。
反対に、法令分野の強みが無いなら、予備校でみっちり勉強した方が安全でしょう。
業界未経験、かつ法令の勉強もしたことがないという方は、まず宅建士試験に挑戦してみるのが良いかと思います。
法令への適性がわかりますし、マンション管理士試験にも繋がります。
管理業務主任者の場合:独学で対応可
マンション管理士試験と比べ、管理業務主任者試験は、知識を問う問題が多く、理解というよりは暗記が重要です。
加えて合格ボーダーラインも低めです。
そのため、独学でも十分対応できると思います。
建築・設備関連の対策【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
建築・設備問題の範囲は、ほぼ無限に広がっています。
マンションの設備に関係があれば何でも出題されかねないのです。
特に管理業務主任者試験では、毎回のように新規分野からの出題があります。
とはいえ、頻出分野もあります。
(コンクリート、外壁タイル等の劣化診断など)
頻出分野をとにかく押さえて、深追いは避けるのが無難でしょう。
『マンション管理の知識』をはじめ、専門書を使って網羅的に勉強するという方法もありますが、設備関係は民法以上に範囲が広くて深いです。
実際、『マンション管理の知識』だけでは、過去問の出題範囲すらカバーできません。
(試験で問われる細かい数値や特徴が書かれていない)
そのため、設備問題に万全の状態で臨もうとするなら、試験対策に使える専門書を探すところから始めなければいけません。
試験対策=限られた時間の中で得点を伸ばすという観点からは、あまりにも非効率です。
頻出分野だけ対策する、得点は他で稼ぐと割りきってしまうべきだと思います。
区分所有法・標準管理規約の対策【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
区分所有法と標準管理規約は、マンション管理士試験における貴重な安定得点源になり得ます。
どちらもボリュームが少なく、問題のバリエーションに限界があり、過去問と似た問題が再度出題される可能性が高いためです。
なるべく網羅的に勉強して、細かい知識・マイナーな知識が問われても対応できるようにすればいいと思います。
テキストと問題集中心の勉強で十分に対策可能だと思いますが、それに加えておすすめしたいのが、条文の素読です。
素読の効果
テキストには条文全部が書かれているわけではありません。
そのため、網羅的に勉強するには、条文そのものを読まなければいけません。
特に標準管理規約は、コメントを含め、細かい記述の知識が問われます。
標準管理規約は、単棟型だけでなく団地型・複合用途型も必須です。
最近どんどん出題が増えています。
解説本もおすすめ
区分所有法には、幸いにもわかりやすい解説本があります。
テキストよりもわかりやすいです。時間が許す限り一読を薦めます。
コンメンタールもありますが、試験対策では不要だと思います。
民法の対策【マンション管理士試験・管理業務主任者試験】
今回の受験で一番やられたのが民法です。
問題集とテキストを1周した時点では「もらった」と思いました。
正直、簡単だと思いました。
少なくとも宅建や公務員試験(地方上級)よりは簡単です。
問われる事項も基本的ですし、出題範囲も相当限定されています。
しかし、これは錯覚でした。典型的な後知恵バイアスです。
出題範囲が徐々に変わっている
問題集ではなく過去問そのものを年度別に解いていけばわかるのですが、マンション管理士・管理業務主任者ともに、民法の出題範囲が徐々に変化しています。
つまり、過去問を解いているだけでは、出題範囲をカバーしきれない(見たことない概念が飛び出してくる)のです。
問題が初見というレベルではなく、問われる知識そのものが初見なのです。
テキストも過去問ベース、新規出題には応じきれない
出題範囲の変化には、テキストを丸暗記しても対応しきれません。
なぜなら、テキストもまた、過去問で出題された範囲を中心に編集されているからです。
マンション管理士試験のテキストの民法部分は、民法全体(あるいは他の試験の民法のテキスト)と比べると、かなりコンパクトにまとまっています。
過去問で出題された範囲に絞って解説しているためです。
しかし前述のとおり、次の出題範囲が過去問と同じとは限りません。
初めて問われる分野、つまりテキストには書かれていない事柄が問われる可能性が非常に高いです。
要するに、市販テキストや問題集をいくら完璧にこなしたとしても、それらに載っていない事項が高確率で出題されるため、民法を得点源にするのは困難なのです。
民法対策:要点対策に特化or上位試験対策でカバーする
以上を踏まえると、民法の対策は大きく2通りに分かれるでしょう。
一つは、頻出事項に絞って対策して、深追いしないこと。
出題範囲が変わるとはいえ、ほぼ毎年出題される頻出事項もあります。
これらをしっかり押さえておいて、その他は諦めるのです。
点数でいえば、確実に半分得点するのを目指します。
もう一つは、より高難易度の民法問題が出題される資格試験の教材を使って勉強することです。
多くの受験生にとって民法が不安定要素であるなら、ここで得点できれば強みになります。
ただ、民法はものすごく範囲が広いし、深いです。
勉強効率は非常に悪いので、もともと民法の勉強をしっかりやっていた方や、上位の法律系資格を持っている方以外は、前者の方法の方が無難でしょう。