見たり読んだり聴いたり

映画、読書、音楽等の覚書です。

『オリヴィエ オリヴィエ』~彼は誰?

 

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絶版のようです。

↓作品のデータ詳細は映画.comさんへどうぞ。


フランスの田舎町に住む獣医セルジュと妻エリザベト、その子どものナディーヌとオリヴィエの一家。
ある日、姉ナディーヌの代わりに祖母に食事を届けに行った8歳の男の子、オリヴィエが失踪する。
数年後、オリヴィエらしき青年が見つかった。
彼はパリで男娼をしていたのだ。
母エリザベトは、彼が無条件にオリヴィエであることを信じ、ナディーヌは、彼が偽物であると疑っている。
一体、彼は本物なのか偽物なのか?

ずいぶん前に1度見た映画だが、人物描写と曖昧さと不思議な雰囲気が渾然となっていてミステリアス。

幼いオリヴィエへのエリザベトの溺愛ぶり。
彼女の愛がナディーヌに向くことはなく、それが幼いころからナディーヌの弟の対する複雑な想いに影響しているようだ。
オリヴィエが失踪してから(失踪する前からその芽はあったけれど)、この家族はそれぞれ関係がぎこちなくなっている。
数年後に現れたオリヴィエはその家族の繋がりに波乱を巻き起こす。

ここから下はネタバレです(結論には触れていません)。

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『存在の耐えられない軽さ』~愛と性と政治と。


日本版予告篇 / 存在の耐えられない軽さ

 

1968年にチェコスロバキアで起こった政治改革運動「プラハの春」とその後のソ連の政治介入を背景にした男性1人トマシュと女性2人テレーザとサビーナの物語。
愛と性が重要な要素だけど、社会に抑圧される個人や恋愛だけではくくれない男女の微妙な関係の深さを考えさせられます。

エロティックなシーンが多いけれど、鏡を使ったイメージや写真などが使われているせいか、品の良さを感じます。芸術的といえば芸術的ということでしょうか。
二人の対照的な女性が興味深い。
この二人がお互いのヌード写真を撮るシーンの印象的(それぞれトマシュの妻、愛人と知っていながら)。
二人は相反する立場にありながら、どこか共犯関係めいている。

 

テレーザの一途で純真で情熱的なところは一歩間違うと、うっとうしいだけの存在(きらいではないのだけれど)。

けれど、あどけなさと強さを持ち合わせているジュリエット・ビノシュにはピッタリ。写真の才能を発揮しながら、それが政治に利用されてしまうのが悲しい。
サビーナ役のレナ・オリンも魅力的。画家として自立し、自分の個性(帽子のエピソードに象徴される)を認めてくれるトマシュとは対等な関係。

主人公、脳外科医トマシュの行動は典型的なプレイボーイでありながら、サビーナとの親友めいた関係、テレーザとの断ち切れない強い絆など、矛盾をはらみつつ、物語を引っ張っていきます。ダニエル・デイ・ルイスが演じると不思議なカリスマ性を感じます。
とは言え、私の興味は二人の女性に集中してましたが。

三人の行く末は、観る人の解釈にゆだねられるでしょう。不思議な余韻が残ります。

 

 

↓サントラ盤。日本ではもうユーズドでしか手に入らないようです。

このジャケットのデザインが好きだなあ。 

存在の耐えられない軽さ/オリジナル・サウンドトラック

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↓帽子をかぶったサビーナが象徴的。従来からこの写真が使われているけれど私はあんまり…。

存在の耐えられない軽さ [DVD]

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 ↓原作は結局未読です。

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

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 『トーク・トゥ・ハー』~眠り姫にキス

 

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映画「トーク・トゥ・ハー」日本版劇場予告

 

昏睡状態の美しいバレエダンサー、アリシアの介護をする看護士ベニグノ。失恋の痛手をひきずるフリーライターのマルコ。
この二人が出会ったとき、奇怪な、ある意味、美しく感動的な(人によっては生理的に受け入れられないかも)物語が展開します。

「彼女に話しかけて」。愛する女性闘牛士、リディアが事故で植物人間状態になり入院した病院でマルコはベニグノに説得される。
初めはベニグノにうさん臭さを覚えた彼だったが、熱意に押されてリディアの世話を始めた矢先、マルコにとってつらい真実が告げられる……更に物語は奇妙なねじれ方をしながら、衝撃的なクライマックスを向かえる。

 

アルモドバルの作品らしく、奇妙な人物の複雑な人間関係が巻き起こす愛憎劇。だけど、初期の頃のドタバタ感もなく洗練されています。

彼の映像の特徴の「赤」は更に深みを増しているみたい。そう、彼の映画は、ファッション(シャネルやシビラやゴルチェが提供)やインテリアのセンスでも楽しめます。
やっぱりアルモドバルがゲイだから? 今までの作品には、ゲイやレズビアン、性転換者に女装愛好者も登場するけど、この映画にはそういう人物は出てきません。ただ、失恋した頃のマルコの傷心ぶりや二人の男性の交流が「男性」という枠に押し込められていないような印象を受けます。

冒頭とラストに現れる現代舞踊のトップダンサー、ピナ・バウシュ振り付けのパフォーマンス、マルコがリディアとの恋の記憶を回想するシーン(実は裏があるけれど)で歌われるカエターノ・ヴェローゾグラミー賞受賞したブラジルのシンガー)の甘い声、サイレント怪奇映画の挿入などが印象的。現実的に考えればちょっと異様なこの物語を、ほんの少し美しい幻想へ導いてくれます。

そしてラストは確かに希望が感じられます。

  

 ↓サントラ

劇中で最も印象的だったカエターノ・ヴェローゾの『ククルクク・パロマ』もあります。(しかし日本ではもはやユーズド版しか手に入れられないのですね)

トーク・トゥ・ハー オリジナルサウンドトラック

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 ↓DVD版です。

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『プリティ・ベビー』~ノスタルジーに溶け込んでいく少女

少女娼婦が題材なんていうと、今の時代、現実でのスキャンダラスで悲惨なイメージを思い浮かべてしまうのだけど。

でも、この作品が描きたかったのは、1910年代のアメリカのニューオリンズのノスタルジックな雰囲気。
アメリカ南部といえば、フランス系の文化やジャズの発祥の地で、それに湿地帯などのイメージが混ざり合い、どこかエキゾチック。
監督のルイ・マルもそんなイメージをフィルムの写し込みたかったのだろうな。
娼婦たちの白いフリルやレース、ソックスなどの衣装、ヨーロッパ風の建築、娼家の雇われ黒人ピアニスト、ラグタイムの音楽、写真家の自宅の周りのうっそうとした森。
そんなイメージが印象に残る。

 

物語は娼家に生まれた少女ヴァイオレットの運命と彼女に次第に魅了される写真家ベロック。それを取り巻く人々。
ヴァイオレットの、無邪気な子どもの部分と大人の女の部分が混ぜこぜになった部分を引き出すのがうまいなと思う。
それを危惧し、何とか普通の子どもとして扱おうとするべロックだが、後半、ヴァイオレットと結婚(!)までしてしまう。

ヴァイオレットの無邪気なふるまいとまた大人の女性のような表情のギャップに魅了されるのだろうけど、結局痛々しい。それは映画のあちこちに、ちらちらと表現されているけれど、それが最も引き出されたのは、ラストかもしれない。
ヴァイオレットと離れて暮らしていた母親が迎えにきて、子どもらしい服を着せられた彼女。
駅でどこか茫然としているその表情。
"普通の"子どもとして、学校に通うことになるだろうけど、それまでの体験や思いは何だったのだろう。

この映画の公開された1978年には日本の映画雑誌でも美少女として話題になっていた記憶があります。
この頃の彼女は、本当に少女の美しさを最大に持っていたなぁ。
ティッシュのCMにも出てたと記憶しているんですが、ネットでは見つからなかったなぁ。
モロにプリティ・ベビーのイメージで「聖少女」とか、なんとかで、また観てみたい。

写真家のキース・キャラダインがいかにもアーティストっぽいし、ヒロインの母を演ずるスーザン・サランドンの色っぽさと言ったら! 最近の演技派ぶりとはまた違うんです(彼女はルイ・マルの『アトランティック・シティ』という作品にも出てる。これも観てみたい作品)。

監督のルイ・マルはフランス人。アメリカに渡って第一作がこの作品。
何作か撮ったあと、フランスへ帰った。
彼だから作れた作品だったのだろうな。残酷な運命だけど、どこかセピア色のイメージ。
これはやはりどこかノスタルジックな時代の物語。

 

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『プリデスティネーション』~宿命から抜け出せるのか?

映画『プリデスティネーション』を観た。

 

ハインラインの原作短編は事前に読んでいたので(細かいところは忘れたけれど)、ネタバレ的な核心部分も全て知っています。

映画的には爆弾魔フィルズ・ボマーを追うエピソードをつけ加えているらしい。

衝撃(?)の展開の割には、動きが少ないストーリーなので、いいのかも。

 

それにしても、奇妙な話だなと思う。

ハインラインのある種の性向的なものが出ているらしいです。

(ネタバレになるので書きませんが)

『悪徳なんかこわくない』などを読めばわかるということですが、あらすじは知っているけれど、未読なんですよ。

でも何となくわかります。

 

ここから下はネタバレ

 

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メモ代わりのブログスタート

これから、ここをメモ代わりにしようと思う。

つぶやき程度のことです。

 

あくまでメモで、読む方のことを想定していないので、映画や本等のあらすじはほとんど書かないことになります。

また、ネタバレ等も含みます(事前に警告は出しますが)。

 

あと、忙しい時には更新も止まります。

 

さて、のんびり行きますかね。