価値観の相違で離婚寸前な両親

親が離婚しそうだ。現在進行形で。

母の長年の不満が爆発したそうだ。娘の私から見ると仲良い夫婦で、お互いに譲り合い労りあっているように見えたがそうでもなかったらしい。

母のすすり泣く声が聞こえる。胸が痛い。

兄も妹も、母が父に対する不満を感じストレスが溜まっていることに気づいていたらしい。
私も気づいてないことは無かった。でもここまで大きなものとは思いもよらなかった。

母が声を荒らげてる。父の声が小さい。何故か切なくて悲しい。

「父さんは、厳格な父親を意識しすぎていたんだよ。その厳格さが抜けて、距離感だけが残っちゃったのもあるよ。」

兄弟姉妹の中で一番母と父を長く見ていた兄が言っていた。兄は、父が不器用で、家族と柔軟に接することが難しかったのだ、と。長男ゆえ風あたりが強く、自分は早くから父親のことをそういうものだと認識できていた、とも言っていた。

私は、母の髪を梳かしつつ言葉を考えていた。

私から見た父は不器用で、真っ直で自分の意見ははっきり言うが、恥からか人に自分の素直な気持ちを伝えることが出来ない人だ。しかしちゃんと家族を愛していたし母のことも大切に思っていた。

私は父の行動からこのように考えたし、父と性格的に似ているから、そう父が思っているであろうと感じていた。


私がそう感じていただけで兄も妹もあまつさえ母もそう感じてはいなかったらしい。


母が諦めたような声を出している。


自分の思考回路を元に相手の考えを予測することは危険だ。自分ができるからと言って相手もできるなんて思い込みそれを強制するのは良くない。上手く表せないけど、良いことではない。

私や父は、家族であれば言葉に出さなくとも少なからず分かってくれると相手を信じ、自分の発信するという役目を怠っていた。

兄や母は、言葉にしないものは伝わらない、それが普通だと私に伝えてきた。私の普通ではない、と反発しそうになった。一般の尺度ではあるのかもしれないが、私が普通ではないから納得がいかないからではあろうが、そう諭してきた。

価値観が違うと思考の内容も違う。「普通」と考えていることでも、相手にとっては普通ではない。常識的に、の常識の範囲を私は知りたい。いや学ばなくてはならない。社会に出る前に身につけるべき教養だ。


母の声が小さくなっている。父がなにか語りかけている。頷く声も聞こえる。このまま事態が好転してくれることを願う。