光つかまえて~雫と海と季節のフォトブログ~

写真を通してつかまえた光をお届けしていきます

すさみ町・口和深の小褶曲

 今回ご紹介するのは、こちら。私が何度足を運んだかもう数え切れないすさみ町の、口和深の海岸で見つけた岩です。

 ご覧の通り、硬いはずの岩が、ぐにゃりと曲がっています。地学用語で「褶曲」と呼ばれるもので、地殻変動の影響で圧力を受けると、こんなふうに曲がることもあるのです。

 しかもよく見ると左右の両側の岩が逆方向に曲がっているわけで、ずいぶん複雑な力が影響していたことがうかがえます。

 もともと水平に積み重なっていた地層がほぼ垂直になっていることだけでも悠久の歲月の間に度重なる地殻変動の影響を受けてきたことが偲ばれますが、それに加えての褶曲。人類のスケールを超えた、千万年単位の長い歴史を刻んで地上に姿を現しているのです。

 より広角で撮るとこんな感じ。真夏の青々とした海が向こうに見えます。

 さらに広角に引くとこう。奇岩がいっぱいのこのあたりですが、すさみの海岸美のひとこまとして溶け込んでいます。

 逆にズームしての一枚ですが、見ると、水面下にも褶曲は続いているようです。いくらかは光の屈折の影響でしょうが。

 場所は、このあたり。海沿いを走る国道42号線からすぐに出られる海岸にあります。

 ほぼ同じ場所から和深崎方向を望んで。このあたりは海の青さがとりわけ美しい場所、真夏の燦々たる日差しでコバルトブルーが映えます。

 ここからしばらく行った先には、すさみ町を代表するジオサイトの一つ・フェニックス褶曲があります。

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 ご覧の通り、ロールケーキのようにぐにゃりと地層が曲がっています。こちらは、先の小さな褶曲とはスケールが段違い。中学や高校の理科の教科書にも載せられるほどでの名の知れた場所となっています。

 別の部分。

 ですが、ここは褶曲までの遊歩道が整備される代わりにジオガイド(要予約)の同伴なしには立ち入ることが出来なくなってしまいました。

 整備に国の役人が関わった結果らしく、これには地元の方々も満足ではないようです。

 ということで、上の写真は自由に立ち入れた頃に撮ったものですが、このフェニックス褶曲からそう離れていない場所にもやはり地殻変動の影響は及んでいたようで、探してみるとさっきのような岩が見つかるわけです。実際にはすさみの海岸にはまだまだ褶曲した岩はいくつも見つかります。

 特にこの口和深は奇岩の宝庫とも言えるスポットで、ジオサイトの一つに数えられてもいいはずの場所。みなさまもよろしければ探してみてください。

 ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。



山桜から新緑へ、季節の移り行き~京都・八瀬にて~

 これと決めた、定点で撮る。

 その醍醐味は、「季節の移り行き」をウォッチできることです。

 春と秋、わけても4月と11月というのは、日々刻々と季節の彩りも変化していく季節。数日経てばまるで装いを変えてしまうことがありますが、それを見届けるという趣向です。

 それができるスポットを、私は近場にもいくつも知っています。

 ということで、そのメインフィールドの一つ、八瀬のとある里山から。

 

 まず、3月末。

 例年なら新緑には早すぎる時期で、まだ冬枯れのままの樹木のも多いですが、わずかに芽吹き始めた緑も見られます。そしていち早く山を彩る山桜。

 

 こちらは4月初旬。

 ちょうど平地のソメイヨシノ満開の時期でしたが、山桜もほぼ満開。そして新緑の色づきもはっきり見られるようになってきています。

 

 その翌日。

 たった1日違いでも、ご覧のように緑の色は確実に深まっています。日刻みで装いを変えていくのが春の息吹き、みなぎる生命力というものでしょう。

 

 4月も中旬に入ろうという時期。

 山桜は散って春紅葉に。そして新緑の淡く繊細ながら瑞々しい色合いは、これぐらいが一番の見頃というところでしょう。

 

 4月下旬。

 山もすっかり緑一色に。けれども緑の色合いにまだ微妙な違いが見られるのが、新緑の時期らしさでしょう。けれどもこれだと4月中に色づききってしまいそうで、今年の季節の進みの早さです。

 

 春色が美しい場所は秋色も美しい。新緑と紅葉は表裏一体の現象なのだから当然です。

 ということで、せっかくなので去年撮影した、11月初めから12月初めまでの、秋色の移り行きもお目にかけましょう。

 いかがでしょうか。

 名所として知られているわけでもないのですが、このような季節の彩りの変化を見届けられるスポットが近くにあって良かったところ。それで、読者のみなさまにもお届けしたいと思いました。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。

 

5月の桜、まさかの京都で

新緑の振り返りとか、連休前半の撮影など、このブログで語りたいことは他にもありますが、まずはこちらで話題にしたいことがあります。

 

それが、こちら。

 桜の花です。

 ですが、撮ったのは今日、5月3日です。

 つまり、5月に入ってなお、咲き続けていた桜ということになります。

 寒冷地ならまだしも、これは京都でのことです。高野川の桜並木、松ヶ崎橋付近での撮影です。

 

 今年は3月から暖かかったため桜の開花も例年になく早く、春分の日の頃にはもうかなり咲いていました。

 

 いちばんの見頃は3月末ぐらい。

 

 4月に入って1週間ほどで見頃は過ぎ、中旬に入るとほとんどが葉桜になっていました。

 それでも、まだ残っている花はないかと、当の高野川の桜並木で見つけては撮っていたものです。

 こちらは4月も半ば、16日の撮影。すでにほとんどが葉桜になっていましたが、こんなふうにまとまって残っている花もありました。

 これもあと数日もすれば散り、完全に葉桜になるだろうと思っていたのですが、4月末でこちら。

 まだこれだけまとまって咲いている花が残っていたのです。

 これは、「5月の桜」も夢ではない。そんな期待も高まってきたのです。

「桜チャレンジ」とでも名づけましょうか。5月まで、持つかどうか。

 これを撮った後京都ではひと雨降るとの予報、これを乗り切れるかどうかが気がかりでした。

 5月に入って1日、2日と撮りに行く機会がなかったので今日足を運んでみましたが、最初は残る花は見当たらず、やはりもう全部散ってしまったか、やはり「5月の桜」は叶わなかったか……と諦めかけたとき、見ると高いところの葉に。

 かろうじて残っている花びらがありました。

 これでともかくも「5月の桜」は実現、「桜チャレンジ」は成功というところでしたが、探してみると、まだまだ花びらはちらほら残っていました。

 細々と散らずにいるだけとはいえ、5月に入っても桜が見られるとはびっくりです。

 それも北国とかではなく、京都でのことなのです。

 3月の春分の日頃から咲き出したので、ほぼ1か月半、咲き続けていたことになります。実は例年になく息の長い今年の桜でした。

 ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。

新緑の彩り豊かさを求めて~京都・八瀬より~

 前記事で先週日曜の新緑撮影のことを語りましたが、その前日、土曜日も好天に恵まれたため、絶好の新緑ウォッチング日和でした。

 もっとも、土曜日は午後から仕事だったので、近場での限られた時間での撮影となりました。ということで、季節写真の私のメインフィールドともいうべき八瀬へ。

 新八瀬橋の上から。藤色が緑に彩りを添えます。

 やはり新緑は、青空とともにあってこそ映えるものです。

 手前のケヤキの二本の樹をはじめ、新緑もすっかり緑を深めてきた感じです。

 このアングルでの撮影が定番なのですが、新緑らしいさわやかで明るい色合いをとどめつつも、藤の花のほかは、ほとんど緑一色の光景となりつつあります。

 稜線。この対角線構図もここでは好んで撮っています。

 道路側から少し遠望してのショット。しばらく前は山桜も咲き乱れていましたが、今ではほとんど緑一色で、常緑のスギとも、それほど変わらない色になっています。

 これぐらいになると、新緑の見頃もほぼ終盤。あとは秋に色づくまでほとんど変化のない景観が続き、「緑の深まる過程を楽しむ」ことができる時期は、終わりに差し掛かっています。

「新緑は5月より4月」というのも、この過程を楽しめるのは4月中だからですが、それは例年なら4月いっぱいぐらいなのに、今年は月末の1週前でおしまいのようです。

 新緑の彩りの本当の見頃はいつかということで、4月の2度目の週末に同じ八瀬で撮った光景をご覧いただきましょう。

 同じく新八瀬橋のあたりから。

 上にもほぼ同じ画角で撮ったショットがありますが、緑の色づきもまだ浅い。低層は鮮やかでみずみずしい萌黄色、上層は淡いパステルグリーンと、スギの深緑とあわせ、緑と言ってもとりどりです。

 こちらも上の写真とだいたい同じ構図で撮った、稜線。

 このアングルも、上の写真にありますよね。

 淡くも繊細な、芽吹いたばかりのミントグリーン。この色合いが見られるのは、ほんの僅かの期間です。

 いろんな緑が春の山を彩る。こういう時期こそ新緑が一番美しいと思います。散りきらない山桜と春紅葉も彩りを添えています。

 山腹の一角を切り取って。この繊細な彩りは1年で数日間しか見られない儚さです。

 新緑ならではの春のカラフル。例年なら4月20日前後なのに、10日ほど早く訪れた見頃。4月だからこそ見られるものといっても、さすがに早すぎでした。

 まだ緑が深まる前の遠望です。

 いかがでしたでしょうか。新緑の本当の味わいは4月にこそある。そして同じ4月でも、半月ほどでこれだけ変わる。それを堪能していただければと思います。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。

 

嵐山の新緑、二つの表情

 今日は昼過ぎまでは快晴で、絶好の撮影日和。

 長期予報ではゴールデンウィークの天気はあまり良くなさそうなので、その前の休みを最大限に生かそうということで、まずは嵐山に出かけました。

 もちろん目的は新緑です。

 ということで、いかにもという感じの渡月橋からの撮影。季節の進みの早い今年では、4月下旬にしてもう緑はほとんど色づききっていて、これ以上はほとんど季節の色合いの変化は見られないぐらいになっています。

 新緑の見頃も、もう完全に終盤という感じです。

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  新緑の見頃は5月より4月とは言っても、ここでもう終盤とはさすがに今年は早すぎです。

 まだ新緑らしいみずみずしさは残しているとはいえ、もうほとんど緑一色で、かなり濃い。芽吹き具合、色づき具合によって緑でも濃淡差が見られる時期は完全に過ぎています。

 この辺りに、まだどうにか緑の色合いの違いが残っているというところでしょうか。

 そして、新緑の山に彩りを添えるのは藤の花。

 より上流に進んでみると。新緑も随分濃くなった山肌です。

 屋形船とともに。

 ここ3年と比べてもコロナ禍がひとまず落ち着いたおかげか観光客も多くなっており、外国人の姿もたくさん見かけました。

 ということなのですが、嵐山には4月の初めにも一度足を運んでいます。

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 この記事でも触れましたが、高雄にミツバツツジを撮りに行く前のことです。

 この時の嵐山の新緑模様と比べてみると違いもよくわかるので、ここで改めて特集します。

 まずは定番、渡月橋の上から。新緑も淡く、まだ若葉を芽吹かせていない樹もあり、また山桜がそれに先立って山腹を彩っています。

 桜の名所として知られる嵐山ですが、ソメイヨシノの並木だけでなく、こうした山桜も味わい深いものです。自生しているものもありますが、奈良・吉野から持ち込まれたものもあるということです。

 まだ芽吹いたばかりの淡い新緑と山桜のコラボ。

 山桜は個体差があるので、花の色もそれぞれ違います。

 いち早く芽吹いた緑も、まだ深まりが浅い萌黄色。

 より上流で。今日撮ったのと同じ場所から。

 とりわけ山桜をフィーチャーして。

 ちょうど満開だった桜と、まだ淡い青もみじ越しに。

 新緑も3週間でこれだけ変わります。その違いを楽しんでいただけたでしょうか。

 ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。

彩りの新緑〜京都・八瀬より〜

 新緑は5月より4月。

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 アクセス解析を見るとこちらの記事は多くの方にご覧いただいているようで、また「新緑 4月」で検索しても上位に表示されるようになっていて、「新緑を撮るなら4月のうち」という認識もちゃんと広まってくれていると嬉しいところです。

 もっとも、桜の開花と同じく新緑の季節の訪れも今年は例年よりかなり早く、4月後半に入った今はもう先の記事で触れたようなベストな見頃は完全に過ぎてしまっています。こちらの記事を読んでから、まだ4月だから新緑を撮ろうと思った方もおられるかもしれませんが、それでは残念なことになっているかもしれません。

 私にとっては、もう新緑の季節はふりかえりモードに入りつつあります。

 ということでこちらのブログでも、今年の新緑の彩りをいろいろと特集していくことにしましょう。

 私が季節の彩りを撮るうえでメイフィールドにしている京都郊外・八瀬にて。

 今回の写真は4月初めの撮影であり、例年なら桜も咲き初め、新緑の芽生えはまだまだ先という時期なのですが、今年はこんなに早くから彩り豊かな新緑が見られました。

 手前のケヤキはもうずいぶん若葉が芽吹いています。まだうっすらと新緑に色づきはじめた背後の山ですが、山桜もちらほら見られます。

 山桜が山のいたるところを飾っています。

 まだ緑は淡く、早春という雰囲気です。

 でもよく見ると、冬枯れから少しずつ緑を芽生えさせているのがわかります。

 過去の時代には「花見」と言えば、山桜を見ることでした。

 こんなふうに稜線を撮る画角が好きです。淡い新緑と山桜のコントラストが映えます。

 手前のケヤキをメインとして撮ると、他の淡い春色とのコントラストも際立つところです。

 名も無い里山の頂に向けて。

 淡い新緑と山桜が奏でる春のハーモニー。

 芽吹きはじめた青もみじもあわせて。

 このあたりは随分緑も色づいていました。

 新緑の色づきはまだまだこれからという時期でしたが、例年ならこれぐらいになるのは4月でも10日前後。季節の移り行きが10日ほど早いのが見てとれます。

 これからさらに季節が進むと、どうなるでしょうか。また後の記事でご紹介しようと思います。

 ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。

クスノキの春紅葉

 以前の記事でも取り上げた「春紅葉」という現象。

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春に芽吹いた若葉が、まだ十分に葉緑素を生成する前に、秋の紅葉をもたらすのと同じアントシアニンという赤い色素を生成することが原因です。

 

このため、春先には野山で、意外と赤っぽい彩りが見られることがあります。

 

 モミジやヤマザクラほか、いろいろな樹種で見られますが、これらとは別に注目したいのが、クスノキの春紅葉です。

 

 ということで、次の写真をどうぞ。

 鴨川上流、柊野堰堤付近で今月上旬に撮影したものです。

 右側の樹がクスノキですが、ご覧のように秋のようにほとんど真っ赤に色づいています。

 左側のカツラの樹が見るからに新緑色なので、これを秋の風景と間違えることは無さそうです。でもここまでの赤く色づいた葉を春に見るのは意外な気がするかもしれません。

 クスノキは、常緑樹です。ですから秋に紅葉して葉を散らすことはなく、冬の間も青々とした葉を茂らせています。

 けれども、春に一斉に葉を落とし、代わって若葉を芽生えさせるので、そのときに秋のように紅葉する光景が見られるのです。

 新緑のカツラの樹とツーショットでの対比。

 個体差があるので、ここで取り上げたように樹全体が真っ赤に見えるぐらい色づくこともあれば、葉先が赤く色づくだけのこともあります。

 街路樹、公園や学校の植栽としても色々なところに植えられているクスノキで、今の季節ならまだまだこうした赤く色づいた葉が至る所で見られます。ちょっと注目して観察してみると、この新緑の時期の季節感をより味わえるのではないかと思います。

 ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。